2018年01月16日
「寝る前の時間をどう過ごすか」で変わる熟睡までの時間
体を動かした後に、疲れていて急激な眠りが襲ってきた経験は誰しも一度や二度はあるはずだ。そういった時には、多くの方が疲れからか深い眠りへと入りやすいと思うのではないだろうか。
このようにこれまで、眠気(眠りへの落ちやすさ)と、睡眠デマンド(深い眠りへの入りやすさ)には関係があると思われていた。今回筑波大学の研究チームが、この2つは必ずしも関係があるわけではなく、それぞれ独立した状態で起こる現象であること、眠気は覚醒中の経験の影響を受けることを発見した。
この発見が、不眠症などの睡眠障害における新たな治療への貢献や、睡眠時の記憶固着化の解明につながることが期待される。
□眠気は寝る前の行動で大きく変化することを科学的に証明!
日常生活において、眠い状態で大きな音で音楽を聴いたり、スマートフォンの強い光を浴びたりすると眠気が収まるという経験をしたことがあるかもしれない。
しかし、私たちが日常的に経験しているこれらの現象が科学的に示されているかというとそうではなかった。
今回、筑波大学の柳沢 正史(やなぎさわ まさし)教授らの研究チームが動物実験を通して「眠る前にどのような環境にさらされるかによって、眠気と熟睡それぞれに変化がもたらされる」ということを証明したのだ(※1)。
□「寝る直前何をしていた?」で変わる 熟睡までにかかる時間
人間に置き換えて考えると、眠気がなんらかの環境によって阻害された際に、その時の環境によって熟睡に入るまでの時間が異なるということだ。
例えば、夜クラブなどの音がガンガンなっているところで遊んでいた人と、静かな環境で勉強していた人では、同じ徹夜によって眠気が増幅されているとはいえ、その時の環境が大きく異なる。
こういった場合に熟睡するまでの時間にも変化が出るということを、この研究では動物実験で示すことに成功したのだ。
□眠気と熟睡の関係を目で見られる日がやがて訪れるかもしれない
今回、眠気と熟睡の関係を研究していく中、これらの関係性を示す目に見える指標(バイオマーカー)として期待されるタンパク質が2つ発見された。
ここではそれぞれのタンパク質に関する解説は割愛するが、今後こういったバイオマーカーに関する研究がより深まっていくと、今まで目に見えなかった睡眠に関わる体内の変化や関係性を、より具体的にとらえられるに違いない。
今はまだ経験的にしか感じられないことでも、研究が発展していく中で、やがては明確な指標が解明される日がくるだろう。