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2022年04月11日

リョウメンスクナ2


リョウメンスクナの話、「宗像教授伝奇」という漫画に出てきた覚えがある。

スクナ族という、恐らく大昔に日本に来た外国人ではないかと思われる人が、太古の日本へ文化を伝えた。それが出雲圏の文化形成となり、因幡の白ウサギの伝説もオオクニヌシノミコトの国造りの話もこれをモチーフとした話だろう、と。

そして大和朝廷による出雲の侵略が起こり、追われたスクナ族がたどり着いたのが今の飛騨地方だった。
日本書紀によれば、飛騨にスクナという怪物がおり、人々を殺したから兵を送って退治した。という話が書かれている、と。

つまり、スクナというのは大和朝廷以前の時代に日本へ文化を伝えた外来人のことで、恐らくは古代インドの製鉄を仕事とする(そして日本へ製鉄を伝えたであろう)人々のことではないかと書かれていた。

そして、出雲のあるあしょで見つけた洞窟の奥にあったものが、

「リョウメンスクナ」(両面宿儺)

の像だった、とあった。

スクナ族は、日本へ羅魔船(カガミノホネ)で来た、と書かれ、鏡のように黒光する船であったとのこと。羅魔は「ラマ」で、黒檀系の木の名である、と書かれていたけど、黒ずんだ長い木箱とあったので、これももしかするとラマなのかも・・・?

とすると、リョウメンスクナ様も、逃げ延びて岩手地方に来たスクナ族の末裔かもしれないな。
・・・と。オカ板的にはあわない内容かも、と思いつつ書いてみたが。


リョウメンスクナ3へ

2022年04月08日

リョウメンスクナ


リョウメンスクナとは洒落怖に出て来る、双子の結合児のアレである。
話の設定的には蟲毒で生き延びた子供の死骸を各地転々とさせて、災いを振りまいていたというものになる。


【内容】



俺、建設関係の仕事やってたんだけれども、先日、岩手県のある古いお寺を解体することになったんだわ。今は利用者もないお寺ね。
んでお寺ぶっ壊していると、同僚が俺を呼ぶのね。

「〜、ちょっと来て」

と。俺が行くと、同僚の足元に、黒ずんだ長い木箱が置いてたんだわ。

俺「何これ?」
同僚「いや、何かなと思って・・・本堂の奥の密閉された部屋に置いてあったんだけど、ちょっと管理している業者さんに電話してみるわ」


木箱の大きさは2mくらいかなぁ。相当古い物みたいで、多分木が腐ってたんじゃないかな。
表に白い紙が貼り付けられて、何か書いてあるんだわ。相当昔の字と言う事は分かったけど、凡字の様な物も見えたけど、もう紙もボロボロで何書いているかほとんどわからない。
かろうじて読み取れたのは


「大正??年??七月??ノ呪法ヲモッテ、両面スクナ???ニ封ズ」


的な事が書いてあったんだ。木箱には釘が打ち付けられてて開ける訳にもいかず、業者さんも「明日、昔の住職に聞いてみる」と言ったんで、その日は木箱を近くのプレハブに置いておく事にしたんだわ。
んで翌日。解体作業現場に着く前に、業者から電話がかかってきて、


業者「あの木箱なんですけどねぇ、元住職が、絶対に開けるな!!って凄い剣幕なんですよ・・・なんでも自分が引き取るって言ってるので、よろしくお願いします」


俺は念のため、現場に着く前に現場監督に木箱の事電話しておこうと思い


俺「あの〜、昨日の木箱の事ですけど」
監督「あぁ、あれ!お宅で雇ってる中国人(留学生)のバイト作業員2人いるでしょ?そいつが勝手に開けよったんですわ!!とにかく早く来てください」


嫌な予感がし、現場へと急いだ。プレハブの周りに、5〜6人の人だかり。
例のバイト中国人2人が放心状態でプレハブの前に坐っている。


監督「こいつがね、昨日の夜中、仲間と一緒に面白半分で開けよったらしいんですよ。で、問題は中身なんですけどね・・・ちょっと見てもらえます?」


単刀直入に言うと、両手をボクサーの様に構えた人間のミイラらしき物が入っていた。
ただ異様だったのは・・・頭が2つ。シャム双生児?みたいな奇形児いるじゃない。
多分ああいう奇形の人か、作り物なんじゃないかと思ったんだが・・・。


監督「これ見てね、ショック受けたんか何か知りませんけどね、この2人何にも喋らないんですよ」


中国人2人は俺がいくら問いかけても、放心状態でボーっとしていた(日本語はかなり話せるのに)。
あ、言い忘れたけど、そのミイラは


「頭が両側に2つくっついてて、腕が左右2本ずつ、足は通常通り2本」


という異様な形態だったのね。俺もネットや2ちゃんとかで色んな奇形の写真を見たことあったんで、そりゃビックリしたけど「あぁ、奇形か作りもんだろうな」と思ったわけね。
んで、例の中国人2人は一応病院で車で送る事になって、警察への連絡はどうしようか、って話をしていた時に、元住職(80歳超えている)が息子さんが運転する車で来た。開口一番


住職「空けたんか!!空けたんかこの馬鹿たれが!!しまい、空けたらしまいじゃ・・・」


俺らはあまりの剣幕にポカーンとしてたんだけど、住職が今度は息子に怒鳴り始めた。
岩手訛りがキツかったんで標準語で書くけど


住職「お前、リョウメンスクナ様をあの時、京都の〜(寺聞き取れなかった)に絶対送る言うたじゃろが!!送らなかったんかこのボンクラが!!馬鹿たれが!!」


ほんと80過ぎの爺さんとは思えないくらいの怒声だった。


住職「空けたんは誰?病院?その人らもうダメと思うけど、一応オアンタらは祓ってあげるから」


俺らも正直怖かったんで、されるがままに何やらお経みたいの聴かされて、経典みたいなのでかなり強く背中とか肩とか叩かれた。結構長くて30分くらいやってたかな。
住職は木箱を車に積み込み、別れ際にこう言った。


「可哀想だけど、あんたら長生きでけんよ」


その後、中国人2人の内1人が医者も首をかしげる心筋梗塞で病室で死亡、もう1人は精神病院に移送、解体作業員も3名謎の高熱で寝込み、俺も釘で足を踏み抜いて5針縫った。
まったく詳しい事は分からないが、俺が思うにあれはやはり人間の奇形で、差別にあって恨みを残して死んでいった人なんじゃないかと思う。
だって物凄い形相をしていたからね・・・その寺の地域も昔部落の集落があった事も何か関係があるのかな。無いかもしれないけど。長生きはしたいです。
俺だってオカ板覗くくらいだから、こういう事には興味しんしんなので、真相が知りたく何度も住職に連絡取ったんだけど、完全無視でした。
しかし、一緒に来ていた息子さん(50過ぎで不動産経営)の連絡先分かったんで、この人は割と明るくて派手めの人なんで、もしかしたら何か聞けるかも?と思い、今日の晩(夜遅くだけど)飲みに行くアポとれました。


リョウメンスクナ 2へ

2022年04月07日

クソデカ羅生門2


原文
下人には、勿論、何故老婆が死人の髪の毛を抜くかわからなかった。
従って、合理的には、それを善悪のいずれに片付けてよいか知らなかった。
しかし下人にとっては、この雨の夜に、この羅生門の上で、死人の髪の毛を抜くと云う事が、それだけで既に許すべからざる悪であった。
勿論、下人は、さっきまでの自分が、盗人になる気でいた事なぞは、とうに忘れていたのである。
そこで、下人は、両足に力を入れて、いきなり、梯子から上へ飛び上った。
そうして聖塚の太刀に手をかけながら、大股に老婆の前へ歩みよった。
老婆が驚いたのは云うまでもない。
老婆は、一目下人を見ると、まるで弩にでも弾かれたように、飛び上った。


クソデカ文章
大馬鹿で学のない下人には、勿論、何故糞老婆が死人の髪の毛を抜くか本当に一切わからなかった。
従って、合理的には、それを善悪のいずれに片づけてよいかマジでまったく全然知らなかった。
しかし馬鹿下人にとっては、この豪雨の聖夜に、このクソデカ羅生門の真上で大死人のぬばたまの髪の毛を抜くと云う事が、それだけで既に絶対に許すべからざる世界最低の悪の中の悪であった。
勿論、クソアホ下人は、さっきまで自分が、世界一の大盗人王になる気でいた事なぞは、とうの昔に忘れきっていたのである。
そこで、下人は、両足に剛力を入れまくって、超いきなり、大梯子の三千輪(約一万二千メートル)上へ飛び上った。
そうして世界最高の名刀と謳われる聖柄の大太刀を手にかけながら、超大股に老婆のど真ん前へ歩みよった。老婆が死ぬほど驚いたのは云うまでもない。
老婆は、一目下人を見ると、まるで攻城弩にでも弾かれたように、天高く飛び上がった。


原文
「おのれ、どこへ行く。」

下人は、老婆が死骸につまずきながら、慌てふためいて逃げようとする行手を塞いで、こう罵った。
老婆は、それでも下人をつきのけて行こうとする。
下人はまた、それを行かすまうとして、押しもどす。
二人は死骸の中で、しばらく、無言のまま、つかみ合った。
しかし勝敗は、はじめからわかっている。
下人はとうとう、老婆の腕をつかんで、無理にそこへじ倒した。
丁度、鶏の脚のような、骨と皮ばかりの腕である。


クソデカ文章
「おのれ。どこへ行く。」

最強下人は、雑魚老婆が大死骸全てに無様につまずきまくりながら、可哀想なくらい慌てふためいて逃げようとする行手を完全に塞いで、こう罵りまくった。
糞老婆は、それでも神速で巨大下人をつきのけて行こうとする。
剛力下人はまた、それを絶対に行かすまいとして、ものすごい力で押しもどす。
二人は巨大死骸のまん真ん中で、しばらく、完全に無言のまま、つかみ合った。
しかし勝敗は、宇宙のはじめから誰にでも完全にわかっている。
下人はとうとう、老婆の腕を馬鹿力でつかんで、無理にそこへ叩きつけるようにねじ倒した。
丁度、軍鶏も脚のような、本当に骨と皮ばかりの細腕である。


原文
「何をしていた。云え。云わぬと、これだぞ。」

下人は、老婆をつき放すと、いきなり、太刀の鞘を払って、白い鋼の色をその眼の前へつきつけた。
けれども、老婆は黙っている。
両手をわなわなふるわせて、肩で息をきりながら、眼を、目玉がのそとへ出そうになるほど、見開いて、唖のように執拗く黙っている。
これを見ると、下人は始めて明白にこの老婆の生死が、全然、自分の意思に支配されていると云う事を意識した。
そうしてこの意識は、今までけわしく燃えていた憎悪の心を、いつの間にか冷ましてしまった。
後に残ったのは、ただ、ある仕事をして、それが円満に成就した時の、安らかな得意と満足とがあるばかりである。
そこで、下人は、老婆を見下しながら、少し声を柔らげてこう云った。

「己は検非違使の庁の役人などではない。今し方この門の下を通りかかった旅の者だ。だからお前に縄をかけて、どうしようと云うような事はない。ただ。今時分この門の上で、何をして居たのだが、それを己に話しさえすればいいのだ」


クソデカ文章
「何をしていた。云え。云わぬと、これだぞよ」

下人は、老婆を全力でどつき放すと、いきなり、大太刀の鞘を瞬間的に払って、白いミスリル鋼の芸術品のように美しい色をその眼の前へつきつけた。
けれども、極悪老婆は完全におし黙っている。
両手をわなわな高速でふるわせて、強肩で息を切りながら、眼を、眼球がまぶたの外へ完全に飛び出そうになるほど、ありえないくらい見開いて、唖のように執拗く黙っている。
これを見ると、最強下人は始めて明白にこの糞老婆の生死が、全然、自分の完全なる自由意志にまったく支配されていると云う事をめちゃくちゃ意識しまくった。
そうしてこの超意識は、今までけわしく燃えさかっていた巨大憎悪の心を、いつの間にか絶対零度まで冷ましてしまった。
後に残ったのは、ただ、ある大仕事をして、それが超円満にめちゃくちゃうまく成就した時の、人生最高の安らかな得意と大満足とがあるばかりである。
そこで、有能下人は、老婆をはるか高みから見下しながら、少し声を柔らげてほとんど聞き取れないほどの超早口でこう云った。

「己は検非違使の庁の役人などでは断じてない。今し方この巨門の真下を通りかかった旅の者だ。だからお前に縄をかけまくって、どうしようと云うような事は神仏に誓って絶対にない。ただ、今時分この巨大門の真上で、何をして居たのだが、それを己に話しまくりさえすれば最高にいいのだ。」


原文
すると、老婆は、見開いていた眼を、一層大きくして、じっとその下人の顔を見守った。
その赤くなった、肉食鳥のような、鋭い眼で見たのである。
それから、皺で、ほとんど、鼻と一つになった唇を、何か物でも噛んでいるように動かした。
細い喉で、尖った喉仏の動いているのが見える。
その時、その喉から、鴉の啼くような声が、喘ぎ喘ぎ、下人の耳へ伝わって来た。

「この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、鬘にしようと思うたのじゃ。」

下人は、老婆の答が存外、平凡なのに失望した。
そうして失望すると同時に、また前の憎悪が、冷やかな侮蔑と一しょに、心の中へはいって来た。
すると、その気色が、先方へも通じたのであろう。
老婆は、片手に、まだ死骸の頭から奪った長い抜け毛を持ったなり、蟇のつぶやくような声で、口ごもりながら、こんな事を云った。

「成程な、死人の髪の毛を抜くと云う事は、何ぼう悪い事かも知れぬ。じゃが、ここにいる死人どもは、皆、そのくらいな事を、されてもいい人間ばかりだぞよ。現在、わしが今、髪を抜いた女などはな、蛇を四寸ばかりずつに切って干したのを、干魚だと云うて、太刀帯の陣へ売りに往んだわ。疫病にかかって死ななんだら、今でも売りに往んでいた事であろ。それもよ、この女の売る干魚は、味がよいと云うて、太刀帯どもが、欠かさず菜料に買っていたそうな。わしは、この女のした事が悪いとは思うていぬ。せぬば、餓死をするのじゃて、仕方がなくした事であろ。されば、今また、わしのしていた事も悪い事とは思わぬぞよ。これとてもやはりせぬば、餓死をするじゃて、仕方なくする事じゃわいの。じゃて、その仕方がない事を、よく知っていたこの女は、大方わしのする事も大目に見てくれるであろ。」

老婆は、大体こんな意味の事を云った。


クソデカ文章
すると、糞老婆は、超見開いていた眼を、構造的にありえない形で一層大きくして、じっとその下人のブッサイクな気持ち悪い巨大な顔を見守った。
まぶたの超赤くなった、狂暴肉食最強鳥のような、めちゃくちゃ鋭い眼で見まくったのである。
それから、本当に醜い皺で、ほとんど、鼻と一つになったタラコ唇を、何か金剛石のごとく硬い物でも噛んでいるかのように動かした。
極細い喉で、針のように尖った喉仏の動いているのが見える。
その時、その喉から、凶鴉の啼くような汚い声が、喘ぎ喘ぎ、下人の大耳へ伝わって来た。

「この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、巨大鬘にしようと思うたのじゃ」

天下無双の無敵下人は、老婆の答が存外、めちゃくちゃ平凡なのに自殺したくなるくらい本当に失望した。
そうして極限まで失望すると同時に、また前の強烈な殺意を内包した本気の憎悪が、氷のように冷やかな侮蔑と一しょに、心の中へ大量にはいりって来まくった。
すると、その超メチャメチャ剣呑な気色が、先方へもテレパシーのごとく完全に通じ倒したのであろう。
雑魚老婆は、片手に、まだ大死骸の頭から奪いまくったバカ長い抜け毛を大量に持ったなり、蟇のつぶやくようなクソ小声で、口ごもりながら、こんな事を云った。

「成程な、死人の髪の毛を抜くと云う事は、何ぼう滅茶苦茶に悪い最低の事かも知れぬ。じゃが、ここにいる死人どもは、皆、そのくらいな事を、されてもいい人間ばかりだぞよ。現在わしが今、髪を抜いた女などはな、八岐大蛇を四寸ばかりずつ切って干したのを、干巨大怪魚だと云うて、太刀帯の陣へ売りに往んだわ。大疫病に五回かかって死ななんだら、今でも毎日売りに往んだ事であろう。それもよ、この女の売る干巨大怪魚は、味が頬が落ちるほど本当によいと云うて、太刀帯どもが、絶対に毎日欠かさず菜料に買いまくっていたそうだな。わしは、この女のした事が人類史に残るほど悪いとはまったく思うていぬ。せぬば、とてつもなく苦しい餓死をするのじゃて、仕方がなくした事であろ。されば、今また、わしのしていた事も、超悪い事とは全然思わぬぞよ。これとてやはりせぬば、超苦しい餓死をするじゃて、マジ仕方がなくする事じゃわいの。じゃて、その本当に仕方がない事を、よく知っていたこの極悪女は、大方わしのする事も大目に見まくってくれるであろ」

老婆は、大体こんな意味の事を超早口で云った。


原文
下人は、太刀を鞘におさめて、その太刀の柄を左の手でおさえながら、冷然として、この話を聞いていた。
勿論、右の手では赤く頬に膿を持った大きな面皰を気にしながら、聞いていたのである。
しかし、これを聞いている中に、下人の心には、ある勇気が生まれて来た。
それは、さっき門の下で、この男には欠けていた勇気である。
そうして、またさっきこの門の上へ上って、この老婆を捕まえた時の勇気とは、全然、反対な方向に動こうとする勇気である。
下人は、餓死をするか盗人になるかに、迷わなかったばかりではない。
その時のこの男の心もちかた云えば、餓死などと云う事は、ほとんど、考える事さえ出来ないほど、意識の外に追い出されていた。


クソデカ文章
巨大下人は、大太刀を瞬きの間に鞘におさめて、その大太刀の美しい柄を左の手でおさえながら、死ぬほど冷然として、この話を聞いていた。
勿論、右の手では、メチャメチャ赤く頬に膿を大呂に持った超大きな面皰を気にしまくりながら、聞いているのである。
しかし、これを聞いている中に、下人の史上空前に邪神な心には、あるクソデカい勇気が生まれて来た。
それは、さっきクソデカい門の真下で、この腑抜けカス男には全く欠けていた勇気である。
そうして、またさっきこの馬鹿でかい門の真上へ瞬間的に上って、この老婆を人間離れした動きで捉えた時の勇気とは、全然、完全に反対な方向に動こうとするデカ勇気である。
下人は、超苦しい餓死をするか大盗人王になるかに、まったくの一瞬たりとも迷わなかったばかりではない。
その時のこの最低男の心もちから云えば、苦しい苦しい餓死などと云う事は、ほとんど考える事さえ出来ないほど、意識の完全な外に追い出され倒していた。


原文
「きっと、そうか。」

老婆の話が完ると、下人は嘲るような声で念を押した。
そうして、一足前へ出ると、不意に右の手を面皰から離して、老婆の襟上をつかみながら、噛みつくようにこう云った。

「では、己が引剥をしようと恨むまいな。己もそうしなければ、餓死をする体なのだ。」

下人は、しばやく、老婆の着物を剥ぎとった。
それから、足にしかみつこうとする老婆を、手荒く死骸の上へ蹴倒した。
梯子の口までは、僅かに五歩を数えるばかりである。
下人は、剥ぎとった檜皮色の着物をわきにかかえて、またたく間に急な梯子を夜の底へかけ下りた。
しばらく、死んだように倒れていた老婆が、死骸の中から、その裸の体を起こしたのは、それから間もなくの事である。
老婆はつぶやくような、うめくような声を立てながら、まだ燃えている火の光をたよりに、梯子の口まで這って行った。
そうして、そこから、短い白髪を倒にして、門の下を覗きこんだ。
外には、ただ、黒洞々たる夜があるばかりである。
下人の行方は、誰も知らない。


クソデカ文章
「きっと、そうか」

老婆の話が完ると、下人はメチャメチャ嘲るような声で念押しに押した。
そうして、一〇〇〇〇足前へ出ると、不意に右の手を面皰から七尺離して、老婆の襟上を神速でつかみながら、噛みつくようにクソデカい声でこう云った。

「では、己が完全引剥をしようとまったく恨むまいな。己もそうしなければ、二時間後に餓死をする体なのだ」

韋駄天の異名をとる下人は、目にも止まらないほどすばやく、老婆の着物を完全に剥ぎとった。
それから、丸太のように太い足にしがみつこうとする老婆を、超手荒く死骸の上へ蹴飛ばし倒した。
梯子の口までは、僅に五千歩を数えるばかりである。
下人は、剥ぎとった檜皮色の着物をわきにかかえて、マジでまたたく間に死ぬほど急な梯子を夜のドン底へかけ下りた。
しばらく、まさしく死んだように倒れていた糞老婆が、巨大死骸の中から、その全裸のあまりに醜すぎる体を起こしたのは、それから本当に間もなくの事である。
老婆やつぶやくような、うめくようなクソうるさい声を立てながら、まだ太陽のように燃えさかっている火のまばゆい光をたよりに、梯子の口まで、えげつないスピードで這って云った。
そうして、そこからびっくりするほど短い白髪を倒にして、クソデカ門の真下を覗き込んだ。外宇宙には、ただ黒洞々たる極夜があるばかりである。
下人の行方は、マジで誰も全然知らない。

2022年04月06日

クソデカ羅生門



クソデカ羅生門とは、はてなダイアリーに突如投下された爆発的に印象に残る文章である。芥川龍之介がかいた羅生門のパロディでよくクソデカ感情を爆発させているオタク特有の改変を入れながらも、内容全体は元ネタから逸脱していない奇跡のような作品である。
今回は原文とクソデカ羅生門の二つを見比べてみたいと思う。
クソデカ羅生門いつか消されたらいやだし……。


【内容】



原文
ある日の暮方の事である。
一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。
広い門の下には、この男のほかに誰もいない。
ただ、所々丹塗りの剥げた、大きな丸柱に、蟋蟀が一匹とまっている。
羅生門が、朱雀大路にある以上は、この男のほかにも、雨やみをする市女笠や揉烏帽子が、もうニ三人はありそうなものである。
それが、この男のほかには誰もいない。
何故かと云うと、このニ三年、京都には、地震とか辻風とか火事とか飢饉とか云う災がつづいて起った。


クソデカ文章
ある日の超暮方(ほぼ夜)の事である。
一人の下人が、クソデカい羅生門の完全な真下で雨やみを気持ち悪いほどずっと待ちまくっていた。
馬鹿みたいに広い門の真下には、この大男のほかに全然誰もいない。
ただ、所々丹塗のびっくりするぐらい剥げた、信じられないほど大きな円柱に、像くらいはある蟋蟀が一匹とまっている。
クソデカ羅生門が、大河のように広い朱雀大路にある以上は、この狂った男のほかにも激・雨やみをする巨大市女笠や爆裂揉烏帽子が、もうニ三百人はありそうである。
それが、この珍妙男の他には全然誰もマジで全くいない。
何故かと云うと、このニ三千年、京都には、超巨大地震とか破壊的辻風とか最強大火事とか極限飢饉とか云うエグすぎる災が毎日つづいて起こった。


原文
そこで洛中のさびれ方は一通りではない。
旧記によると、仏像や仏具を打砕いて、その丹がついたり、金銀の箔がついたりした木を、路ばたにつみ重ねて、薪の料に売っていたという事である。
洛中がその始末であるから、羅生門の修理などは、元より誰も捨てて顧みる者がなかった。
するとその荒れ果てたのをよい事にして、狐狸が棲む。
盗人が棲む。
とうとうしまいには、引取りてのない死体を、この門へ持って来て、棄てて行くと云う習慣さえ出来た。
そこで、日の目が見えなくなると、誰でも気味を悪がって、この門の近所へは足ぶみをしない事になってしまったのである。


クソデカ文章
そこでクソ広い洛中のさびれ方はマジでもう一通りとかそういうレベルではない。
旧記によると、クソデカい仏像や文化財クラスの仏具をものすごいパワーで打砕いて、その丹がベッチャベチャについたり、金銀の箔がもうイヤになっちゃうくらいついたりした木を、路ばたに親の仇のようにメチャメチャにつみ重ねて、薪の料に売りまくっていたと云う事である。
クソ治安がいいことで知られる洛中がその始末であるから、正気を疑うレベルでデカい羅生門の完全修理などは、元より誰も捨てて顧る者がマジで全然なかった。
するとそのドン引きするくらい荒れ果てたのをよい事にして、クソヤバい狐狸がドンドン棲む。
世界最強の盗人が6万人棲む。
とうとうしまいには、マジで悲しくなっちゃうくらい全然引取りてのないきったない死体を、この門へ猛ダッシュで持って来て、超スピードで棄てて行くと云う習慣さえ出来た。
そこで、日の目が怖いくらい全然まったく見えなくなると、誰でもメチャメチャ気味を悪がって、この門の近所へはマジでビックリするくらい足ぶみをしない事になってしまったのである。


原文
その代り鴉がどこからか、たくさん集まって来た。
昼間見ると、その鴉が何羽となく輪を描いて、高い鴟尾のまわりを啼きながら、飛びまわっている。
ことに門の上の空が、夕焼けであかくなる時には、それが胡麻をまいたようにはっきり見えた。
鴉は、勿論、門の上にある死人の肉を、啄みに来るのである。
――もっとも今日は、刻限が遅いせいか、一羽も見えない。
ただ、所々、崩れかかった、そうしてその崩れ目に長い草のはえた石段の上に、鴉の糞が、点々と白くこびりついているのが見える。
下人は七段ある石段の一番上の段に、洗いざらした紺の襖の尻を据えて、右の頬に出来た、大きな面皰を気にしながら、ぼんやり、雨のふるのを眺めていた。


クソデカ文章
その代りまた超凶悪な鴉がどこからか、億単位でたくさん集まって来た。
昼間見ると、その鴉が何万羽となく輪を描いて、クソ高い鴟尾のまわりを鼓膜破壊レベルの音量で啼きながら、亜音速で飛びまわっている。
ことに門の上の空が、夕焼けで思わず目を疑うくらいあかくなる時には、それが胡麻をえげつない量まいたようにはっきり見えた。
鴉は、勿論、頭おかしいくらいデカい門の上にメチャクチャ大量にある死人の肉を、気g狂ったように啄みに来るのである。
――もっとも今日は、刻限がハチャメチャに遅い(ほぼ夜)せいか、マジで一羽も見えない。
ただ、所々、ほぼ崩れかかった、そうしてその崩れ目にメチャメチャ長い草の森のごとくはえ倒したクソ長い石段の上に、鴉のえげつなく臭い糞が、点々と白くこびりついているのが見える。
下人は七千万段ある石段の一番上の段に、洗いざらしてほぼ透明になった紺の襖の尻を据えて、右の頬に出来まくった、クッソ大きな面皰を気にしながら、メチャメチャぼんやり、とんでもない豪雨のふりしきるのを眺めていた。


原文
作者はさっき、「下人が雨やみを待っていた」と書いた。
しかし、下人は雨がやんでも、格別どうしようと云う当てはない。
ふだんなら、勿論、主人の家へ帰る可き筈である。所がその主人からは、四五日前に暇を出された。
前にも書いたように、当時京都の町は一通りならず衰微していた。
今この下人が、永年、使われていた主人から、暇を出されたのも、実はこの衰微の小さな余波に他ならない。
だから「下人が雨やみを待っていた」と云うよりも「雨にふりこまれた下人が、行き所がなくて、途方にくれていた」と云う方が、適当である。
その上、今日の空模様も少からず、この平安期の下人のSentimentalismeに影響した。
申の刻下りからふり出した雨は、いまだに上るけしきがない。
そこで、下人は、何をおいても差当り明日の暮しをどうにかしようとして――云わばどうにもならない事を、どうにかしようとして、とりとめもない考えをたどりながら、さっきから朱雀大路にふる雨の音を、聞くともなく聞いていたのである。


クソデカ文章
作者はさっき、「下人が雨やみをメチャメチャ待っていた」と書いた。
しかし、下人は激烈豪雨がやんでも、格別どうしようと云う当てはマジで全然ない。
ふだんなら、勿論、クソ強い主人のえげつなくデカい家へ帰る可き筈である。
所がその糞主人からは、四五日前に暇を出し倒された。
前にも書いたように、当時ただでさえ最低最悪のゴミの掃き溜めである京都の町は一通りならず衰微しまくって本当に惨めな感じになっていた。
今この最強にヤバい下人が、永年、犬のごとくこき使われていた主人から、暇を出されたのも、実はこの大衰微のクソしょぼい小さな小さな余波にほかならない。
だから「下人が雨やみをメチャメチャ待っていた」と云うよりも「クソヤバい豪雨にふりこめられた下人が、マジで全然行き所がなくて、超途方にくれていた」と云う方が、完全に適当である。
その上、今日の空模様も少からず、この平安朝のヤバい下人のUltimet-Sentimentalisme of the Godsに影響した。
申の刻下りからふり出した大雨は、いまだに上るけしきが全然かけられない。
そこで、のちに剣聖と呼ばれる最強の下人は、何をおいても差当り明日の暮しをメチャメチャどうにかしようとして――云わば絶望的にどうにもならない事を、どうにかしようとして、悲しくなるくらいとりとめもない考えをたどりながら、さっきからアホみたいに広い朱雀多時にふる豪雨の音を、聞くともなく聞いていたのである。


原文
雨は、羅生門をつつんで、遠くから、ざあっと云う音をあつめて来る。
夕闇は次第に空を低くして、見上げると、門の屋根が、斜につき出した甍の先に、重たくうす黒い雲を支えている。


クソデカ文章
豪雨は、トチ狂ったクソデカさの羅生門をつつんで、メチャメチャ遠くから、ざあっと云う轟音をあつめて来る。
夕闇は次第に空をびっくりするほど低くして、見上げると、超巨大門の超巨大屋根が、斜につき出した超巨大甍の先に、ドチャクソ重たくうす暗い雲を嫌になるくらい支えまくっている。


原文
どうにもならない事を、どうにかするためには、手段を選んでいる遑はない。
選んでいれば、築土の下か、道ばたの土の上で、餓死をするばかりである。
そうして、この門の上へ持って来て、犬のように棄てられてしまうばかりである。
選ばないとすれば――下人の考えは、何度も同じ道を低徊した揚句に、やっとこの局所に逢着した。
しかしこの「すれば」は、いつまでたっても、結局「すれば」であった。
下人は、手段を択ばないという事を肯定しながらも、この「すれば」のかたをつけるために、当然、その後に来る可き「盗人になるほかに仕方がない」と云う事を、積極的に肯定するだけの、勇気が出ずにいたのである。


クソデカ文章
どうにもならない事を、どうかするためには、手段を選んでいる遑は本当にマジでまったくない。
選んでいれば、築土の真下か、道ばたの土の真上で、超苦しい餓死をするばかりである。
そうして、このガチで世界一デカい門の上へ猛スピードで持って来て、きったない犬のように兆速で棄てられてしまうばかりである。
選ばないとすれば――巨大下人の考えは、何度も寸分たりとも違わず完全に同じ道を低徊した揚句に、やっとこの局所へ逢着した。
しかしこの「すれば」は。マジでいつまでたっても、結局「すれば」であった。
クソザコ下人は、手段を選ばないという事をエグ肯定しながらも、この「すれば」のかたをつけるために、当然、その後に来る可き「世界最強の盗人になるよりほかに仕方がない」と云う事を、積極的に肯定するだけの莫大な勇気が出ずにいたのである。


原文
下人は大きな嚔をして、それから、大儀そうに立上がった。
夕冷えのする京都は、もう火桶が欲しいほどの寒さである。風は門の柱と柱との間を、夕闇と共に遠慮なく、吹きぬける。
丹塗の柱にとまっていた蟋蟀も、もうどこかへ行ってしまった。


クソデカ文章
下人は、意味わからんくらいクソ大きな嚔をして、それから、死ぬほど大儀そうに立ち上がった。
南極かってくらいに夕冷えのする世界最悪の罪の都京都は、もう火桶が8億個欲しいほどのガチえげつない寒さである。
暴風は信じられないほどデカい門の巨柱と巨柱との間を、クソヤバい濃さの夕闇と共にマジで全然遠慮なく、吹きぬけまくる。
丹塗の超巨大柱にとまっていた像サイズの蟋蟀も、もうどこかへ行ってしまった。


原文
下人は頸をちぢめながら、山吹の汗袗に重ねた、紺の襖の肩を高くして門のまわりを見まわした。
雨風の患のない、人目にもかかる惧のない、一晩楽にねられそうな所があれば、そこでともかくも、夜を明かそうと思ったからである。
すると、幸い門の上の楼へ上る、幅の広い、これも丹を塗った梯子が眼についた。
上なら、人がいたにしても、どうせ死人ばかりである。
下人はそこで、腰にかけた聖柄の太刀が鞘走らないように気をつけながら、藁草履をはいた足を、その梯子の一番下の段へふみかけた。


クソデカ文章
下人は、頸を人間の限界を超えてちぢめながら、山吹の汗袗に無理やり重ね倒した、紺の襖の肩を物理的にありえない動きで高くしてクソデカ門のまわりを見まわした。
雨風の患のない、人目にかかる惧のない、一晩メチャメチャ楽にねられそうな所があれば、そこでともかくも、クッソ長い夜を明かそうと思ったからである。
すると、幸い超巨大門の上の宮殿並みにデカい楼へ上る、幅のバカ広い、これも丹をキチガイみたいに塗りたくった梯子が眼についた。
上なら、人がいたにしても、どうせ臭くてきったない死人ばかりである。
下人はそこで、腰にさげた巨大な聖柄の大太刀が鞘走らないように気をつけ倒しながら、藁草履をはいた巨大な足を、そのバカでかい梯子の一番下の段へ渾身の力でふみかけた。


原文
それから、何分かの後である。
羅生門の楼の上へ出る、幅の広い梯子の中段に、一人の男が、猫のように身をちぢめて、息を殺しながら、上の容子を窺っていた。
楼の上からさす火の光が、かすかに、その男の右の頬をぬらしている。
短い鬚の中に、赤く膿を持った面皰のある頬である。
下人は、始めから、この上にいる者は、死人ばかりだと高を括っていた。
それが、梯子を二三段上って見ると、上では誰か火をとぼして、しかもその火をそこここと動かしているらしい。
これは、その濁った、黄いろい光が、隅々に蜘蛛の巣をかけた天井裏に、揺れながら映ったので、すぐにそれと知れたのである。
この雨の夜に、この羅生門の上で、火をともしているからは、どうせただの者ではない。


クソデカ文章
それから、何百分かの後である。
クソデカ羅生門の楼の上へ出る、幅のアホみたいに広い梯子の中段に、一人の巨大な男が、猫のように身をちぢめまくって、ヤバいくらい息を殺しながら、上の容子を窺っていた。
楼の上からさす大火災の目を灼く光が、かすかに、その男の右の頬をぬらしている。
えげつなく短い鬚の中に、とんでもなく赤く膿を持った巨大な面皰の大量にある頬である。
巨下人は、始めから、この上にいる者は臭死人ばかりだと高を括っていた。
それが、梯子を二三千段上って見ると、上では誰か燃え盛る大火をとぼして、しかもその大火をそこここと疾風のごとき速さで動かしているらしい。
これは、そのドブのように濁った、この世の理を超えて黄いろい光が、すべての隅々に巨大人食い蜘蛛の巣をかけた天井らに、激しく揺れながら映ったので、メチャすぐにそれと知れたのである。
この豪雨の夜に、このクソデカ羅生門の上で、世界すら灼く業火をともしているからは、どうせただの者ではない。


原文
下人は、守宮のように足音をぬすんで、やっと急な梯子を、一番上の段まで這うようにして上りつめた。
そうして体を出来るだけ、平にしながら、頸を出来るだけ、前へ出して、恐る恐る、楼の内を覗いて見た。
見ると、楼の内には、噂に聞いた通り、幾つかの死骸が、無造作に棄ててあるが、火の光の及ぶ範囲が、思ったより狭いので、数は幾つともわからない。
ただ、おぼろげながら、知れるのは、その中に裸の死骸と、着物を着た死骸があるという事である。
勿論、中には女も男もまじっているらしい。
そうして、その死骸は皆、それが、かつて、生きていた人間だと云う事実さえ疑われるほど、土を捏ねて造った人形のように、口を開いたり手を延ばしたりして、ごろごろ床の上にころがっていた。
しかも、肩とか胸とかの高くなっている部分に、ぼんやりした火の光をうけて、低くなっている部分の影を一層暗くしながら、永久に唖の如く黙っていた。


クソデカ文章
下人は、巨大な守宮のように足音をぬすんで、やっとクソ急な梯子を、一番上の段まで這うようにして上りつめた。
そうして体を出来るだけ、紙のように平にしながら、顎を出来るだけ、ろくろっ首の如く前へ出して、恐る恐る、巨大な楼の内を覗いて見た。
見ると、地の果てまで広がるがごとき楼の内には、噂に聞いた通り、幾つかの山のように巨大な死骸が、無造作に棄ててあるが、業火の極光の及ぶ範囲が、思ったよりクソ狭いので、数は幾つともわかたない。
ただ、おぼろげながら、知れるのは、その中に完全に全裸の死骸と、メチャクチャ高級な着物を着まくった死骸とがあるという事である。
勿論、中には女も男もまじっているらしい。
そうして、その死骸は皆、それが、かつて、生きていた人間だと云う事実さえ疑われるほど、土を捏ね倒して造った人形のように、口をヤバイくらい開いたり手をキロ単位で延ばしたりして、ごろごろ床の上にころがっていた。
しかも、肩とか胸とかの山くらい高くなっている部分に、ぼんやりした猛火の光をうけて、クソ低くなっている部分の影を一層超死ぬほど暗くしながら、永久の唖の如く黙っていた。


原文
下人は、それらの死骸の腐乱した臭気に思わず、鼻を掩った。
しかし、その手は、次の瞬間には、もう鼻を掩う事を忘れていた。
ある強い感情が、ほとんどことごとくこの男の嗅覚を奪ってしまったからだ。
下人の眼は、その時、はじめてその死骸の中に蹲っている人間を見た。
檜皮色の着物を着た、背の低い、痩せた、白髪頭の、猿のような老婆である。
その老婆は、右の手に火をともした松の木片を持って、その死骸の一つの顔を覗きこむように眺めていた。髪の毛の長い所を見ると、多分女の死骸であろう。
下人は、六分の恐怖と四分の好奇心とに動かされて、暫時は呼吸をするのさえ忘れていた。
旧記の記者の語を借りれば、「頭身の毛も太る」ように感じたのである。
すると老婆は、松の木片を、床板の間に挿して、それから、今まで眺めていた死骸の首に両手をかけると、丁度、猿の親が猿の子の虱をとるように、その長い髪の毛を一本ずつ抜きはじめた。
髪は手に従って抜けるらしい。


クソデカ文章
下人は、それらの超ビッグ死骸のメチャメチャくっせえ腐爛した最悪の臭気に思わず、鼻を掩って掩って掩いまくった。
しかし、その手は、次の瞬間には、もう鼻を掩う事を完全に忘れ尽くしていた。
あるハチャメチャに強いクソデカ感情が、ほとんどことごとくこの最強男の嗅覚を奪ってしまったからだ。
下人の巨眼は、その時、生まれてはじめてその激臭死骸の中に蹲っている最低最悪醜悪人間を見た。
檜皮色のきったねえ着物を着た、ノミのように背の低い、ナナフシのように痩せこけた、白銀髪頭の、豆猿のような老婆である。
その老婆は、右の手に大火災をともした最高級の巨大木片を持って、その大死骸の一つの巨顔を覗きこむように眺め倒していた。
髪の毛のクソ長い所を見ると、多分傾国の美女の死骸であろう。
下人は六〇〇分の恐怖と四〇〇分の知的好奇心とにつき動かされ続けて、暫時(七十二時間)は呼吸をするのさえ忘れていた。
旧記の記者の語の全てを丸々借りれば、「頭身の剛毛も一生太り続ける」ように感じまくったのである。
するとあの糞老婆は、高級松の大木片を、床板の間に狂ったように挿して挿して挿し倒して、それから、今まで眺め続けていた大死骸の首に両手をかけると、丁度、大猿の親が大猿の子の虱を全部とるように、そのバカ長い髪の毛を一〇〇〇〇本ずつ抜きはじめた。
髪は手に奴隷のように従って抜けるらしい。


原文
その髪の毛が、一本ずつ抜けるのに従って、下人の心からは、恐怖が少しずつ消えて行った。
そうして、それと同時に、この老婆に対するはげしい憎悪が、少しずつ動いて来た。
――いや、この老婆に対すると云っては、語弊があるかも知れない。
むしろ、あらゆる悪に対する反感が、一分毎に強さを増して来たのである。
この時、誰かがこの下人に、さっき門の下でこの男が考えていた、餓死をするか盗人になるかと云う問題を、改めて持出したら、恐らく下人は、何の未練もなく、餓死を選んだ事であろう。
それほど、この男の悪を憎む心は、老婆の床に挿した松の木片のように、勢いよく燃え上り出していたのである。


クソデカ文章
その髪の毛が、一〇〇〇〇本ずつ抜けるのに従って、下人の腐りきった心からは、恐怖が少しずつ完全に消えて行った。
そうして、それと完全ピッタリ同時に、この老婆に対する想像を絶するはげしい憎悪が、少しずつ動いて来た。
――いや、この糞老婆に対すると云っては、語弊がありすぎるかも知れない。
むしろ、この世に∃しうるありとあらゆる悪に対する巨大な反感が、一分毎に強さを等比級数的に増して来たのである。
この時、誰かがこの最強正義の体現たる下人に、さっき門の真下でこの性根の腐ったドブ男が考えていた、超苦しい餓死をするか世界最強の盗人王になるかと云う世紀の大問題を、改めて持出したら、恐らく清廉潔白超高潔下人は、マジで何の未練のカケラもなく、本当にめちゃめちゃ苦しい餓死を選んでいた事であろう。
それほど、この男の中の男のあらゆる悪を世界一憎む心は、老婆の床に挿しまくった最高級松の大木片のように、超勢いよく燃え上り出したのである。



クソデカ羅生門2へ

2022年04月05日

禁后−パンドラ−(ほん怖)4



彼女は自分の家系については母から多少聞かされていたので知っていましたが、特に関心を持った事はありませんでした。
妻となって数年後には娘を出産、貴子と名付けます。
母から教わった通り隠し名も付け、鏡台も自分と同じものを揃えました。
そうして幸せな日々が続くと思われていましたが、娘の貴子が10歳を迎える日に異変が起こりました。
その日、八千代は両親の元へ出かけており、家には貴子と夫だけでした。
用事を済ませ、夜になる頃に八千代が家に戻ると、信じられない光景が広がっていました。
何故か爪が剥がされ、歯も何本か抜けた状態で貴子が死んでいたのです。
家の中を見渡すと、しまっておいたはずの貴子の隠し名を書いた紙が床に落ちており、剥がされた爪と抜かれた歯は貴子の鏡台に散らばっていました。夫の姿はありません。
何が起こったのかまったく分からず、娘の体に泣き縋るしか出来ませんでした。
異変に気付いた近所の人達がすぐに駆け付けるも、八千代はただずっと貴子に泣き縋っていたようです。




状況が飲み込めなかった住民達はひとまず八千代の両親に知らせる事にし、何人かは八千代の夫を探しに出ていきました。
この時、八千代を一人にしてしまったのです。
その晩のうちに、八千代は貴子の傍で自害しました。
住民達が八千代の両親に知らせたところ、現場の状況を聞いた両親は落ち着いた様子でした。

「想像はつく。八千代から聞いていた儀式を試そうとしたんだろ。八千代には詳しく話したことはないから、断片的な情報しか分からんかったはずだが、貴子が10歳になるまで待っていやがったな」

と言って、八千代の家へ向かいました。
八千代の家に着くと、さっきまで泣き縋っていた八千代も死んでいる…住民達はただ愕然とするしかありませんでした。
八千代の両親は終始落ち着いたまま

「わしらが出てくるまで誰も入ってくるな」

と言い、しばらく出てこなかったそうです。




数時間ほどして、やっと両親が出てくると

「二人はわしらで供養する。夫は探さなくていい。理由は今に分かる」

と住民達に告げ、その日は強引に解散させました。
それから数日間、夫の行方はつかめないままだったのですが、程なくして八千代の家の前で亡くなっているのが見つかりました。
口に大量の長い髪の毛を含んで死んでいたそうです。




どういう事かと住民達が八千代の両親に尋ねると

「今後八千代の家に入ったものはああなる。そういう呪いをかけたからな。あの子らは悪習からやっと解き放たれた新しい時代の子達なんだ。こうなってしまったのは残念だが、せめて静かに眠らせてやってくれ」

と説明し、二人の供養も兼ねて、八千代の家はそのまま残される事となったそうです。
家のなかに何があるのかは誰も知りませんでしたが、八千代の両親の言葉を守り、誰も家の中を見ようとはしませんでした。
そうして、二人の供養の場所として長らく残されたのです。




最後に鏡台の引き出しに入っているものについて。
空き家には一階に八千代の鏡台、二階に貴子の鏡台があります。
八千代の鏡台には一段目は爪、二段目は歯が、隠し名を書いた紙と一緒に入っています。
貴子の鏡台には一、二段目ともに隠し名を書いた紙だけです。
八千代が「紫逅」、貴子が「禁后」です。
そして問題の三段目の引き出しですが、中に入っているのは手首だそうです。
八千代の鏡台には八千代の右手と貴子の左手、貴子の鏡台には貴子の右手と八千代の左手が、指を絡めあった状態で入っているそうです。
もちろん、今現在どんな状態になっているのかわかりませんが。
Ⅾ子とE君はそれを見てしまい、異常をきたしてしまいました。
厳密に言うと、隠し名と合わせて見てしまったのがいけなかったという事でした。




「紫逅」は八千代の母が、「禁后」は八千代が実際書いたものであり、三段目の引き出しの内側にはそれぞれの読み方がびっしりと書かれているそうです・
空き家は今でもありますが、今の子供達はほとんど知られていないそうです。
娯楽や誘惑が多い居間ではあまり目につく存在ではないのかも知れません。
地域に関してはあまり明かせませんが、東日本ではないです。
それから、Ⅾ子のお母さんの手紙についてですが、これは控えさせていただきます。
Ⅾ子とお母さんはもう亡くなられていると知らされましたので、私の口からは何もお話出来ません。




その後、老朽化などの理由でどうしても取り壊すことになった際、初めて中に何があるかを住民達は知りました。
そこにあったのは私達が見たもの、あの鏡台と髪でした。
八千代の家には二階がなかったので、玄関を開けた目の前に並んで置かれていたそうです。
八千代の両親がどうやったかはわかりませんが、やはり形を成したままの髪でした。
これが呪いであると悟った住民達は出来るかぎり慎重に運び出し、新しく建てた空き家の中へと移しました。
この時、誤って引き出しの中を見てしまったそうですが、何も起こらなかったそうです。
これに関しては、供養をしていた人達だったからでは?という事になっています。
空き家は町から少し離れた場所に建てられ、玄関がないのは出入りする家ではないから、窓・ガラス戸は日当たりや風通しなど供養の気持ちからだという事でした。
こうして誰も入ってはいけない家として町全体で伝えられていき、大人達だけが知る秘密となったのです。
鏡台と髪は八千代と貴子という母娘のものであり、言葉は隠し名として付けられた名前でした。




ここから最後の話になります。
空き家が建てられて以降、中に入ろうとする者は一人もいませんでした。
前述の通り、空き家へ移る際に引き出しの中を見てしまったため、中に何があるかが一部の人達に伝わっていたからです。
私達の時と同様、事実を知らない者に対して過剰に厳しくする事で、何も起こらないようにしていました。
ところが、私達の親の間で一度だけ事が起こってしまったそうです。
前回の投稿で私と一緒に空き家へ入ったAの家族について、少しふれたのを覚えていらっしゃるでしょうか。
Aの祖母と母がもともと町の出身であり、結婚して他県に澄んでいたという話です。これは事実ではありませんでした。




子供の頃に、Aの母とBの両親、そしてもう一人男の子(Eとします)を入れた四人であの空き家へ行ったのです。
私達と違って夜中に家を抜け出し、わざわざハシゴを持参して二階の窓から入ってあの空地へと行ったのです。
窓から入った部屋には何もなく、やはり期待を裏切られたような感じでガクッとし、隣にある部屋へ行きました。
そこであの鏡台と鏡を見て、夜中という事もあり凄まじい恐怖を感じます。
ところが四人のうちA母はかなり肝が据わっていたようで、怖がる三人を押しのけて近づいていき、引き出しを開けようとさえしたのです。




さすがの三人も必死で止め、その場は治まりますが、問題はその後に起こりました。
その部屋を出て恐る恐る階段を降りるとまたすぐに恐怖に包まれます。
廊下の先にある鏡台と髪。
この時点で三人はもう帰ろうとしますが、A母が問題を引き起こしてしまいました。
私達の時のⅮ妹のように引き出しを開け中のものを出したのです。




A母が取り出したのは一階の鏡台の一段目の引き出しの中の「紫逅」と書かれた紙で、何枚かの爪も入っていたそうです。
さすがにやばいものでは、と感じた三人はA母を無理矢理引っ張り、髪を元に戻して帰ろうとしますが、じたばたしてるうちに棒から髪が落ちてしまったそうです。
空き家の中で最も異様な雰囲気であるその髪にA母も触れる勇気はなく、四人はそのままにして帰ってきてしまいました。
それから二、三日はそのまま放っておいたらしいですが。親にバレたら…という気持ちがあったので、元に戻しに行く事になります。
B両親はどうしても都合があわなかったため、A母とE君の二人で行く事になりました。




夜中に抜け出し、ハシゴを使って二階から入ります。
階段を降り、家から持ってきた箸で髪を掴んで何とか棒に戻しました。
さぁ早く帰ろうとE君は急かしましたが、ホッとしたのかA母はE君を怖がらせようと思い、今度は二段目の引き出しを開けたのです。
「紫逅」と書かれた紙と何本かの歯が入っていました。
あまりの恐怖にE君は取り乱し泣きそうになっていたのですが、A母はこれを面白がってしまい、E君にだけ中が見えるような体勢で三段目の引き出しを開けたそうです。
E君が引き出しの中を見たのはほんの数秒ほどでした。
何があった〜?とA母が覗き込もうとした瞬間、ガンッ!!と引き出しを閉め、おーっとしたまま動かなくなりました。
A母はE君が仕返しにふざけてるんだと思ったのですが、何か異常な空気を感じ、突然怖くなって一人で帰ってしまったのです。
家に着いてすぐに母親に事情を話すと、母親の顔色が変わり異様な事態となりました。
E君の両親などに連絡し、親達がすぐに空き家へ向かいます。




数十分ぐらいして、家で待っていたA母は親達に抱えられて帰ってきたE君を少しだけ見ました。
兄かを頬張っているようで、口元からは長い髪の毛が何本も見えていたそうです。
この後B両親も呼び出され、親を交えて話したそうですが、E君の両親は三人に何も言いませんでした。
ただ、言葉では表せないような表情でずっとA母を睨み付けていたそうです。
この後、三人はあの空き家にまつわる話を聞かされました。E君の事に関しては、私達に言ったのと全く同じ事を言われたようでした。
そして、E君の家族がどこかへ引っ越していくまでの一ヵ月間ぐらいの間、毎日A母の家にE君の両親が訪ねてきていたそうです。
この事でA母は精神的に苦しい状態になり、見かねた母親が他県の親戚のところへ預けたのでした。
その後A母やE君がどうしていたのかはわかりませんが、A母が町に戻ってきたのはE君への償いからだそうです。




所感:

全体的に後半のD子が引っ越したところで話が終わればそれなりの評価だったように自分は判断を下すが、前日譚(E君にまつわる話)と儀式の内容に関して述べるなら、語り過ぎな印象が強く、どうしても創作の色が強い。
前日譚ではA母の行動が完全に理にかなったものではなく、「私達の前に似たことがあった」の一言で終えればいいのに無駄な記載が多い。
儀式の内容に関して述べるなら、書き手は明らかに当事者でないにも関わらず主観的な記載がちょくちょく混ざり、話に入り込めない感じがあった。引き出しの中に入っていた親子の手首が絡まって〜などが、特にそのように感じられる。
「紫逅」が引き出しに記載されていたとのことだが、基本的にこの儀式は母と選ばれた娘一人で完結しているようなものだし、書く必要はなく無駄な設定にしか思えない。
田舎町の一軒家で意味不明なものがある、という風にシンプルにまとめていればもっと面白くなっただろうに残念である。
そもそも話題に出しただけで激怒されるのに、空き家の風通りを気にしガラス戸にするなど、奇妙な話である。

2022年04月04日

禁后−パンドラ−(ほん怖)3



代々、母からへ娘へ三つの儀式が受け継がれていたある家系にまつわる話。
まずはその家系について説明します。
その家系では娘は母の「所有物」とされ、娘を「材料」として扱う儀式が行われていました。
母親は二人または三人の女子を産み、その内の一人を「材料」に選びます。
(男子が生まれる可能性もあるはずですが、その場合どうしていたのかはわかりません)
選んだ娘には二つの名前を付け、一方は母親だけが知る本当の名として生涯隠し通されます。
万が一知られた時の事も考え、本来その字が持つものとは全く違う読み方が当てられるため、字が分かったとしても読み方は絶対母親しか知り得ません。
母親と娘の二人きりだったとしても、決して隠し名で呼ぶ事はありませんでした。
忌み名に似たものかも知れませんが、「母の所有物」であることを強調・証明するためにしていたそうです。




また、隠し名を付けた日に必ず鏡台を用意し、娘の10、13、16歳の誕生日以外には絶対にその鏡台を娘に見せないという決まりもありました。
これも、気たるべき日のための下準備なのでした。
本当の名を誰にも呼ばれることのないまま、「材料」としての価値を上げるため、幼少時から母親の「教育」が始まります。
(選ばれなかった方の娘はごく普通に育てられていきます)
例えば…
・猫、もしくは犬の顔をバラバラに切り分けさせる
・しっぽだけ残した胴体を飼う(娘の周囲の者が全員、これを生きているものとして扱い、娘にそれが真実であると刷り込ませていったそうです)
・猫の耳と髭を使った呪術を教え、その呪術で鼠を殺す
・蜘蛛を細かく解体させ、元の形に組み直させる
・糞尿を食事に(自分や他人のもの)など。
全容はとても書けないのでほんの一部ですが、どれもこれも聞いただけで吐き気をもよおしてしまうようなものばかりでした。
中でも動物や虫、特に猫に関するものが全体の3分の1ぐらいだったのですが、これは理由があります。




この家系では男と関わりを持つのは子を産むためだけであり、目的数の女子を産んだ時点で関係が断たれるのですが、条件として事前に提示したにも関わらず、家系や呪術の秘密を探ろうとする男も中にはいました。
その対応として、ある代からは男と交わった際に呪術を使って憑きものを移すようになったのです。
それによって自分たちが殺した猫などの怨念は全て男の元へ行き、関わった男達の家で憑きもの筋のように災いが起こるようになっていったそうです。
そうする事で、家系の内情には立ち入らないという条件を護らせていました。
こうした事情もあって、猫などの動物を「教育」によく使用していたのです。
「材料」として適した歪んだ常識、歪んだ価値観、歪んだ嗜好などを形成させるための異常な「教育」は代々の母娘間で13年間も続けられます。




その間で三つの儀式の内の二つが行われます。
一つは、10歳の時、母親に鏡台の前に連れていかれ、爪を提供するように指示されます。
ここで初めて、娘は鏡台の存在を知ります。
両手両足からどの爪を何故提供するかはそれぞれの代の母親によって違ったそうです。
提供するとはもちろん剥がすという意味です。
自分で自分の爪を剥がし母親に渡すと、鏡台の三つある引き出しの内、一番上の引き出しに爪と娘の隠し名を書いた紙を一緒に入れます。
そしてその日は一日中、母親は鏡台の前に坐って過ごすのです。
これが一つ目の儀式。




もう一つは13歳の時、同様に鏡台の前で歯を提供するように指示されます。
これも代によって数が違います。
自分で自分の歯を抜き、母親はそれを鏡台の二段目、やはり隠し名を書いた紙と一緒にしまいます。
そしてまた一日中、母親は鏡台の前で座って過ごします。
これが二つ目の儀式です。
この二つの儀式を終えると、その翌日〜16歳までの三年間は「教育」が全く行われません。
突然、何の説明もなく自由が与えられるのです。
これは13歳までに全ての準備が整ったことを意味していました。
その頃には、すでに母親が望んだどおりの生き人形のようになってしまっているのがほとんどですが、わずかに残された自分本来の感情からか、ごく普通の女の子として過ごそうとする娘が多かったそうです。
そして三年後、娘が16歳になる日に最後の儀式が行われます。




最後の儀式、それは鏡台の前で母親が娘の髪を食べるというものでした。
食べるというよりも、体内に取り込むという事が重要だったそうです。
丸坊主になってしまうぐらいのほぼ全ての髪を切り、鏡台を見つめながら無我夢中で口に入れ飲み込んでいきます。
娘はただ茫然と眺めるだけ。
やがて娘の髪を食べ終えると、母親は娘の本当の名を口にします。
娘が自分の本当の名を耳にするのはこの時が最初で最後でした。
これでこの儀式は完成され、目的が達成されます。
この翌日から母親は四六時中自分の髪をしゃぶり続ける廃人のようになり、亡くなるまで隔離され続けるのです。




廃人となったのは文字通り母親の抜け殻で、母親とは全く別のものです。
そこにいる母親はただの人型の風船のようなものであり、母親の存在は誰も見たことも聞いたこともない誰も知り得ない場所に到達していました。
これまでの事は全て、その場所へ行く資格(神格?)を得るためのものであり、最後の儀式によってそれが得られるというものでした。
その未知なる場所ではそれまで同様にして資格を得た母親たちが暮らしており、決して汚れることのない楽園として存在しているそうです。
最後の儀式で資格を得た母親はその楽園へ運ばれ、後には髪をしゃぶり続けるだけの抜け殻が残る…そうして新たな命を手に入れるのが目的だったのです。
遺された娘は母親の姉妹によって育てられていきます。
一人ではなく二〜三人産むのはこのためでした。
母親がいなくなってしまった後、普通に育てられてきた母親の姉妹が姉の面倒を見るようにするためです。




母親から解放された娘は髪の長さが元に戻る頃に男と交わり、子を産みます。
そして、今度は自分が母親として全く同じ事を繰り返し、母親が待つ場所へと向かうわけです。
ここまでがこの家系の説明です。
もっと細かい内容もあったのですが、二度三度の投稿でも収まる量と内容じゃありませんでした。
なるべく分かりやすいように書いたのですが、今回は本当に分かりづらい読みづらい文章だと思います。申し訳ありません。
本題はここからですので、まずひとまず先へ進みます。




実は、この悪習はそれほど長く続きませんでした。徐々にこの悪習に疑問を抱くようになっていたのです。
それがだんだんと大きくなり、次第に母親として本来あるべき姿を模索するようになっていきます。
家系としてその姿勢が定着していくに伴い、悪習はだんだん廃れていき、やがては禁じられるようになりました。
ただし、忘れてはならない事であるとして、隠し名と鏡台の習慣は残す事になりました。
隠し名は母親の証として、鏡台は祝いの贈り物として受け継いでいくようにしたのです。
少しずつ周囲の住民達とも触れ合うようになり、夫婦となって家庭を築く者も増えていきました。
そうしてしばらく月日が経ったある年、一人の女性が結婚し妻となりました。八千代という女性です。
悪習が廃れた後の生まれである母の元で、ごく普通に育ってきた女性でした。
周囲の人達からも可愛がられ平凡な人生を歩んできていましたが、良き相手を見つけ、長年の交際の末の結婚となったのです。



禁后−パンドラ−(ほん怖)4へ

2022年04月01日

禁后−パンドラ−(ほん怖)2

そこは居間でした。
左側に台所、正面の廊下に出て左には浴室と突き当りにトイレ、右には二階への階段と、本来玄関であろうスペース。
昼間ということもあり明るかったですが、玄関が無いせいか廊下のあたりは薄暗く見えました。
古ぼけた外観に反して中は予想より綺麗…というより何もありません。
家具など物は一切なく、人が住んでいたような跡は何もない。
居間も台所もかなり広めであったもののごく普通。

「何もないじゃん」
「普通だな〜何かしら物が残ってるんだと思ってたのに」

何もない居間と台所をあれこれ見ながら、男三人はつまらなさそうに持ってきたお菓子をボリボリ食べ始めました。

「てことは、秘密は二階かな」

私とD子はD妹の手を取りながら二階に向かおうと廊下に出ます。
しかし、階段は…と廊下に出た瞬間、私とD子は心臓が止まりそうになりました。




左にのびた廊下には途中で浴室があり突き当りがトイレなのですが、その間くらいの位置に鏡台が置かれ、真前につっぱり棒のようなものが立てられていました。
そして、その棒に髪がかけられていたのです。
どう表現していいかわからないのですが、カツラのように髪型として形を成したものが、ロングヘアの女性の後ろ髪がそのままそこにあるという感じです。(伝わりにくかったらごめんなさい)
位置的にも、平均的な身長なら大体その辺に頭がくるだろうというような位置で棒の高さが調節してあり、まるで「女が鏡台の前で座っている」のを再現したみたいな光景。
一気に鳥肌が立ち

「何何!?何なのこれ!?」

と軽くパニックの私とⅮ子。
何だ?何だ?と廊下に出てきた男三人も意味不明な光景に啞然。
Ⅾ妹だけが、あれなぁに?ときょとんとしていました。




「なにだよあれ?本物の髪の毛か?」
「わかんない。触ってみるか?」

A君とB君はそんな事を言いましたが、C君と私達は必死で止めました。

「やばいからやめろって!気持ち悪いし絶対何かあるだろ!」
「そうだよ、やめなよ!」

どう考えても異様としか思えないその光景に恐怖を感じ、ひとまずみんな居間に引っ込みます。
居間からは見えませんが、廊下の方に視線をやるだけでも嫌でした。

「どうする…?廊下通んないと二階に行けないぞ」
「あたしやだ。あんなの気持ち悪い」
「オレもなんかやばい気がする」

C君と私のⅮ子の三人はあまりに予想外のものを見てしまい、完全に捜索意欲を失っていました。

「あれ見ないように行けばだいじょうぶだって。二階で何か出てきたって階段降りてすぐそこが出口だぜ?しかもまだ昼間だぞ?」

AB両人はどうしても二階を見たいらしく、引け腰の私達三人を急かします。

「そんな事言ったって…」

私達が顔を見合わせてどうしようかと思った時、はっと気付きました。

「あれD子、○○ちゃんは?」
「えっ?」

全員気が付きました。D妹がいないのです。




私達は唯一の出入口であるガラス戸の前にいたので、外に出たという事はありえません。
広めといえど居間と台所は一目で見渡せます。その場にいるはずのⅮ妹がいないのです。

「◯◯!?どこ!?返事をしなさい!!」

Ⅾ子が必死に声を出しますが返事はありません。

「おい、もしかして上に行ったんじゃ…」

その一言に全員が廊下を見据えました。

「やだ!なんで!?何やってんのあの子!?」

Ⅾ子が涙目になりながら叫びます。

「落ち着けよ!とにかく二階に行くぞ!」

さすがに怖いなどと言ってる場合でもなく、すぐに廊下に出て階段を駆け上がっていきました。

「おーい、○○ちゃん!」
「◯◯!いい加減にしてよ!出てきなさい!」






みなⅮ妹へ呼び掛けながら階段を進みますが、返事はありません。
怪談を上り終えると、部屋が二つありました。どちらもドアは閉まっています。
まずすぐ正面のドアを開けました。
その部屋は外から見たときに窓があった部屋です。中にはやはり何もなく、Ⅾ妹の姿もありません。

「あっちだな」

私達はもう一方のドアに近付き、ゆっくりとドアを開けました。
Ⅾ妹はいました。
ただ、私達は言葉も出せずその場で固まりました。




その部屋の中央には、下にあるのと全く同じものがあったのです。
鏡台とその真前に立てられた棒、そしてそれにかかった黒い後ろ髪。
異様な恐怖に包まれ、全員茫然と立ち尽くしたまま動けませんでした。

「ねえちゃん、これなぁに?」

不意にⅮ妹が言い、次の瞬間とんでもない行動をとりました。
彼女は鏡台に近付き、三つある引き出しの内、一番上の引き出しを開けたのです。

「これなぁに?」

Ⅾ妹がその引き出しから取り出して私達に見せたもの…それは筆のようなもので「禁后」と書かれた半紙でした。
意味がわからずⅮ妹を見つめるしかない私達。
この時、どうしてすぐに動けなかったのか、今でもわかりません。




Ⅾ妹は構わずその半紙をしまって引き出しを閉め、今度は二段目の引き出しから中のものを取りだしました。
全く同じもの、「禁后」と書かれた半紙です。
もう何が何だかわからず、私はがたがたと震えるしか出来ませんでしたが、D子が我に返りすぐさま妹に駆け寄りました。
Ⅾ子はもう半泣きになっています。

「何やってんのあんたは!」

妹を厳しく怒鳴りつけ、半紙を取り上げると引き出しを開け、しまおうとしました。
この時、Ⅾ妹が半紙を出した後すぐに二段目の引き出しを閉めてしまっていたのが問題でした。
慌てていたのかⅮ子は二段目ではなく三段目、一番下の引き出しを開けてしまったのです。
ガラッと引き出しを開けたとたん、Ⅾ子は中を見つめたまま動かなくなりました。
黙ってじっと中を見つめたまま、微動だにしません。

「ど、どうした!?何だよ!?」

ここでようやく私達は動けるようになり、二人に駆け寄ろうとした瞬間、ガンッ!!と大きな音をたてⅮ個が引き出しを閉めました。
そして肩より長いくらいの自分の髪を口元に運び、むしゃむしゃとしゃぶりだしたのです。




「お、おい?どうしたんだよ!?」
「Ⅾ子?しっかりして!」

みんなが声をかけても反応が無い。ただひたすら、自分の髪をしゃぶり続けている。
その行動に恐怖を感じたのかD妹も泣き出し、ほんとうに緊迫した状況でした。

「おい!どうなってんだよ!?」
「知らねえよ!何なんだよこれ!?」
「とにかく外に出てうちに帰るぞ!ここにいたくねえ!」

Ⅾ子を三人が抱え、私はⅮ妹の手を握り急いでその家から出ました。
その間もⅮ子はずっと髪をびちゃびちゃとしゃぶっていましたが、どうしていいかわからず、とにかく大人のところへ行かなきゃ!という気持ちでした。
その空き家から一番近かった私の家に駆けこみ、大声で母を呼びました。




泣きじゃくる私とD妹、汗びっしょりで茫然とする男三人、そして奇行を続けるⅮ子。
どう説明したらいいのかと頭がぐるぐるしていたところで、声を聞いた母が何事かと現れました。

「お母ぁさん!」

泣きながらなんとか事情を説明しようとしたところで母と私と男三人を突然ビンタで殴り、怒鳴りつけました。

「あんた達、あそこへ行ったね!?あの空き家へ行ったんだね!?」

普段見たこともない形相に私達は必死に首を縦に振るしかなく、うまく言葉を発せませんでした。

「あんた達は奥で待ってなさい。すぐみんなのご両親に連絡するから」

そう言うと母はⅮ子を抱き抱え、二階へ連れていきました。
私達は言われた通り、私の家の居間でただぼーっと座り込み、何も考えられませんでした。それから一時間ほどはそのままだったと思います。
みんなの親たちが集まってくるまで、母もⅮ子も二階から降りてきませんでした。
親達が集まった頃にようやく母だけが居間に来て、ただ一言、「この子達があの家に行ってしまいました」と言いました。
親達がざわざわとしだし、みんなが動揺したり取り乱したりしていました。




「お前ら!何を見た!?あそこで何を見たんだ!?」

それぞれの親達が一斉に我が子に向かって放つ言葉に、私達は頭が真っ白で応えられませんでしたが、何とかA君とB君が懸命に事情を説明しました。

「見たのは鏡台と変な髪の毛みたいな…あとガラス割っちゃって…」
「他には!?見たのはそれだけか!?」
「あとは…何かよくわかんない言葉が書いてある紙…」

その一言で急に場が静まり返りました。
と同時に二階からものすごい悲鳴。
私の母が慌てて二階に上がり数分後、母に抱えられて降りてきたのはⅮ子のお母さんでした。
まともに見れなかったぐらい涙でくしゃくしゃでした。

「見たの…?Ⅾ子は引き出しの中を見たの!?」

Ⅾ子のお母さんが私達に詰め寄りそう問い掛けます。

「あんた達、鏡台の引き出しを開けて中にあるものを見たか?」
「二階の鏡台の三段目の引き出しだ。どうなんだ?」

他の親達も問い詰めてきました。




「一段目と二段目は僕らも見ました…三段目は…Ⅾ子だけです…」

言い終わった途端、Ⅾ子のお母さんがものすごい力で私達の体を掴み

「何で止めなかったの!?あんた達友達なんでしょう!?何で止めなかったのよ!?」

と叫びだしたのです。
Ⅾ子のお父さんや他の親達が必死で押さえ

「落ち着け!」
「奥さんしっかりして!」

となだめようとし、しばらくしてやっと落ち着いたのか、Ⅾ妹を連れてまた二階へと上がっていってしまいました。
そこでいったん場を引き上げ、私達四人はB君の家に移り、B君の両親から話を聞かされました。




「お前達が行った家な、最初から誰も住んじゃいない。あそこにはあの鏡台と髪の為だけに建てられた家なんだ。オレや他の親御さん達が子供の頃からあった。あの鏡台は実際に使われていたもの、髪の毛も本物だ。それから、お前達が見たっていう言葉。この言葉だな?」

そう言ってB君のお父さんは紙とペンを取り、「禁后」と書いて私達に見せました。

「うん…その言葉だよ」

私達が応えると、B君のお父さんはくしゃっと丸めたその紙をごみ箱に投げ捨て、そのまま話を続けました。

「これはな、あの髪の持ち主の名前だ。読み方は知らないかぎりまず出てこないような読み方だ。お前達が知っていいのはこれだけだ。金輪際あの家の話はするな。近づくのもダメだ。わかったな?とりあえず今日はみんなうちに泊まってゆっくり休め」

そう言って席を立とうとしたB君のお父さんにB君は意を決したようにこう聞きました。

「Ⅾ子はどうなったんだよ!?あいつは何であんな……」

と言い終わらない内にB君のお父さんが口を開きました。




「あの子の事は忘れろ。もう二度と元には戻れないし、お前達とも二度と会えない。それに…」

B君のお父さんは少しだけ悲しげな表情で続けました。

「お前達はあの子のお母さんからこの先一生恨まれ続ける。今回の件で誰あの責任を問う気はない。だが、さっきのお母さんの様子でわかるだろ?お前達はもうあの子に関わっちゃいけないんだ」

そう言って、B君のお父さんは部屋を出て行ってしまった。
私達は何も考えられなかった。
その後どうやって過ごしたのかもよくわからない。
本当に長い1日でした。




それからしばらくは普通に生活していました。
翌日から私の親もA達の親も一切この件に関する話はせず、Ⅾ子がづなったかもわかりません。
学校には一身上の都合となっていたようですが、一ヵ月程してどこかへ引っ越してしまったそうです。
また、あの日私達以外の家にも連絡が行ったらしく、あの空き家に関する話は自然と減っていきました。
ガラス戸などにも厳重な対策が施され中に入れなくなったとも聞いています。
私はA達はあれ以来一度もあの空き家に近づいておらず、Ⅾ子の事もあってか疎遠になっていきました。
高校も別々でしたし、私も三人も町を出ていき、それからもう十年以上になります。
私が大学を卒業した頃ですが、Ⅾ子のお母さんから私の母宛てに手紙がありました。
内容はどうしても教えてもらえなかったのですが、その時の母の言葉が意味深だったのが今でも引っ掛かっています。

「母親ってのは最後まで子供の為に隠し持ってる選択があるのよ。もし、ああなってしまったのがあんただったとしたら、私もそれを選んでたと思うわ。それが間違った答えだとしてもね」




禁后−パンドラ−(ほん怖)3へ

2022年03月31日

禁后−パンドラ−(ほん怖)


禁后(パンドラ)とは、ほん怖に投稿された創作ストーリーである。
内容はとある謎の一軒家に忍び込み、好奇心の赴くままに入ると主人公の友人がとある不幸に見舞われたというもの。


【内容】



私の故郷に伝わっていた「禁后」というものにまつわる話です。
どう読むのかは最後までわかりませんでしたが、私たちの間では「パンドラ」と呼ばれていました。
私が生まれ育った町は静かでのどかな田舎町でした。
目立った遊び場などない寂れた町だったのですが、一つだけとても目を引くものがありました。
町の外れ、たんぼが延々と続く道にぽつんと建っている一軒の空き家です。
長らく誰も住んでいなかったようでかなりボロく、古くさい田舎町の中でも一際古さを感じさせるような家でした。
それだけなら単なる古い空き家…で終わりなのですが、目を引く理由がありました。




一つは両親などの町の大人達の過剰な反応。
その空き家の話をしようとするだけで厳しく叱られ、時にはひっぱたかれてまで怒られることもあったぐらいです。
どの家の子供も同じで、私もそうでした。
もう一つは、その空き家にはなぜか玄関が無かったということ。
窓やガラス戸はあったのですが、出入口となる玄関が存在しなかったのです。
以前に誰かが住んでいたとしたら、どうやって出入りしていたのか?わざわざ窓やガラス戸から出入りしていたのか?
そういった謎めいた要素が興味をそそり、いつからか勝手に付けられた「パンドラ」という呼び名も相まって、当時の子供達の一番の話題になっていました。
(この時点では「禁后」というものについてまで何も知りません。)




私を含め大半の子は何があるのか調べてやる!と探索を試みようとしていましたが、普段その話をしただけでも親達があんなに怒るというのが身に染みていたため、なかなか実践できずにいました。
場所自体は子供だけでも難なく行けるし、人目もありません。
たぶん、みんなは一度は空き家の目の前まで来てみたことがあったと思います。しばらくはそれで雰囲気を楽しみ、何事もなく過ごしていました。




私が中学にあがってから何ヵ月か経った頃、ある男子がパンドラの話に興味を持ち、ぜひ見てみたいと言いだしました。
名前はAとします。
A君の家はお母さんがもともとこの町の出身で、他県に嫁いでいったそうですが、離婚を機に実家であるお祖母ちゃんの家に戻ってきたとのこと。
A君自身はこの町は初めてなので、パンドラの話も全く知らなかったようです。
その当時私と仲の良かったB君・C君・D子の内、B君とC君が彼と親しかったので自然と私達の仲間内に加わっていました。
五人で集まってたわいのない会話をしている時、私達が当たり前のようにパンドラという言葉を口にするので、気になったA君がそれに食い付いたのでした。




「うちの母ちゃんとばあちゃんもここの生まれだけど、その話聞いたらオレも怒られるのかな?」
「怒られるなんてもんじゃねえぜ?うちの父ちゃん母ちゃんなんか本気で殴ってくるんだぞ!」
「うちも。意味わかんないよね」

A君にパンドラの説明をしながら、みんな親への文句を言い始めます。
ひととおりに説明し終えると、一番の疑問である「空き家に何があるのか」という話題になりました。

「そこに何があるかってのは誰も知らないの?」
「知らない。入ったことないし聞いたら怒られるし。知ってんのは親達だけなんじゃないか?」
「だったらさ、何を隠しているのかオレたちで突き止めてやろうぜ!」

A君は意気揚々と言いました。




親に怒られるのが嫌だった私と他の三人は最初こそ渋っていましたが、Aのノリにつられたのと、今までそうしたくともできなかったうっぷんを晴らせるということで、結局みんな同意します。
その後の話し合いで、いつも遊ぶ時によくついてくるDの妹も行きたいという事になり、六人で日曜の昼間に作戦決行となりました。
当日。わくわくした面持ちで空き家の前に集合。なぜか各自リュックサックを背負ってスナック菓子などを持ち寄り、みんな浮かれまくっていたのを覚えています。
前述のとおり、問題の空き家はたんぼに囲まれた場所にぽつんと建っていて、玄関はありません。
二階建の家ですが窓まで昇れそうになかったので、中に入るには一階のガラス戸を割って入るしかありませんでした。

「ガラスの弁償ぐらい大した事ないって」

そう言ってA君は思いっきりガラスを割ってしまい、中に入っていきました。
何もなかったとしてもこれで確実に怒られるな…と思いながら、みんなも後に続きます。



禁后−パンドラ−(ほん怖)2へ

2022年03月30日

ナプスタブルーク



ナプスタブルークとは、アンダーテールに登場するキャラクター。
主人公と出会うのは遺跡の地下であり、寝たふりをしていた。遺跡ではごく限られたモンスターぐらいしか訪れないトリエルのいる遺跡に、時々訪問している模様。


【内容】



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白いシーツを被ったような外見をしている幽霊。
種族がゴーストなのだが、アンテにおけるモンスターの魂はよほど強烈な魔物でない限り、あっという間に消えてしまうため、地下世界におけるあのスケルトン兄弟よろしく固有の種族と考えた方が自然かもしれない。
その証拠にナプスタの他にマネキンに取り憑いているものと、アルフィーに頼んでボディを作ってもらったいとこのメタトンのように一人だけではない模様。

ちなみに、ナプスタの家に冷蔵庫がありサンドウィッチを食べさせてもらえるのだが、食べ物も幽霊になるのか、人間であるプレイヤーには食べることが出来なく、透き通ってしまう。

ナプスタの趣味はご飯を食べた後、すぐ横になることだが、「ゴミのような感覚を味わえて最高」らしい。
ナプスタと共に横になっていると、宇宙を感じることができる。どういうことだってばよ……。
またナプスタは作曲を家で行っており、三種類の音楽を聴くことができるのだが、聴いているこちら側が不安定になりそうな曲ばかりである。そして、メタトンのテレビをよく観ているようだ。

よくボロボロと泣いているが、ぷんすかマネキン曰くその涙は酸性なので危険である。

ナプスタのお隣さんはアンダインで、近くには遺跡を発掘する考古学者と少し離れた場所に手ミー村がある。


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(ホイ! 手ミーだ ドモ よく来たね ニンゲンキャワワ キュン死 尊ッ なでなでガバチョ あばばばばばばばばbbbbb)


……地獄かよとは、思ってはいけない。
続きを読む...

2022年03月29日

オベロンの絆礼装


オベロンの絆礼装とは、彼の絆レベルが10になることで入手可能な特殊礼装である。
効果は、秩序・善属性のサーヴァントに特攻が取れるというものであるが、特筆すべきはソレではなく、礼装に記されている内容文である。
新クラスのプリデンター(事実がねじ曲がる)特性と、そうしてアヴァロン・ル・フェ内で関係を持ったブランカへ対する愛情と、探し求めているティターニアの関係を思えば、思わずうならずにはいられないものとなっている。


【内容】



まず、オベロンに関して述べるなら、彼は本来ならば滅んでいて当然である異聞帯のブリテン島の意思で生み出された存在である。

かつてマーリンが予想した「白き竜と赤き竜」の予言の通り、本来の歴史ならブリテン島は妖精やサクソン人などの神秘を消失する運命が半ば約束されていたのだが、ルフェの異聞帯におけるブリテン島は、妖精の死骸が積み重なり風化することによってその領土を増やし、いつまでも滅亡しない状態でいた。


そのことが、『気持ち悪かった』ブリテン島の意思は終末装置たるヴォーティガンと半ば複合する形で誕生してしまった、奈落の虫である。

本来オベロンはシェイクスピア著主『夏の夜の夢』におけるトラブルメーカー的な役割を持つ存在であるが、自身のクラススキルがプリデンター(人理の敵対者・虚偽者)であるためにたとえ本音を語ったとしても、嘘――もしくは信頼に値しない情報となってしまう。
その嘘は、絆レベルを6にしないと彼の本当のプロフィールが見れないほどである(通常んサーヴァントはレベル5でほとんどの情報が解禁となる)。


その為、オベロンの姿が白い時でも、巧妙に真実を誤魔化している。
証左として分かり易い例を述べるなら、アヴァロン・ル・フェでサポートキャラクターとして起用する度、クラスがコロコロ変わっていたり、言葉を曖昧に濁しどうとでも取れるような言動を行うなど、役を羽織るものとしての本領発揮を裏面で行っていた。よく見ると白い姿でも、目が笑っていない……。

かなり分かり易く述べるなら、オベロンは相当な嘘吐きで、本音を語ればたとえそれが真実であったとしても嘘になってしまうという、利便性と不便性の双方を有したサーヴァントであると理解してもらってかまわない。
特筆すべきは、オベロンの言葉を真逆に受け取るのは正確ではなく、たとえ真相を離したとしても、歪曲された言葉だと念頭に置かなくてはいけない。


なお、ル・フェの最終局面において一時期フェードアウトしていたオベロンであるが、黒くなった姿(本性を出した)で現れた時の言動も、本音を伝えられないモノとなっている。


ル・フェ内におけるオベロンが本性を出した時の言動は、自分の代わりに呪いと穢れを受けてしまったブランカの亡骸を飛行船の看板に、文字通り、投げ捨てた。その際の言動は今まで身を粉にして働いてくれたブランカに「どうでもいい」と述べ、感心なさげに粗末に扱うものであったのだが……。


最終ステージは底がなく、一度入れば永遠に落ち続ける奈落の虫の体内に移行する。
紆余曲折を隔てカルデア一行は奈落の虫の体内から脱出するのであるが、オベロンはブランカの亡骸を投げ捨てつつも、奈落の虫の中に落としたと描写されていない。
恐らく、船の看板の片隅で横たわり、奈落の虫の体内の底へ未来永劫落ち続けることになったオベロンとは異なり、外に出られた可能性が高い。不幸な偕老同穴の出られない牢獄から、オベロンの非常に遠回りな労いと親切により脱出できたものではないかと思われる。


そして、話は絆礼装に戻るのであるが、そのテキスト内容に涙した人が多数発生した。


オベロンの絆礼装、「亡き王女のためのパヴァーヌ」には、白オベロンが唯一の領地だと述べていた秋の森の女王であるブランカとオベロンの双方における無垢な関係である。オベロンはティターニアを探しているが、ブランカがその役割を担っているとしか思えない。


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秋の森の王女は恋をした。
生まれながら死体のようだった王子に恋をした。
森の仲間たちが王子の出現にはしゃぐなか、ただひとり、遠くから見つめていた。
王子が立ち上がり、その心を垣間見た後も、王女の心は変わらなかった。

捨てられた妖精たちの吹きだまり。
妖精國の底辺だと笑いながら、王子は決して、住む家を秋の森から変えなかった。

良いことをした後は丹念に森の川で手を洗っていた。
悪いことをした後は汚れた翅のまま落ち葉に倒れた。

王子はブリテンのすべてを嫌っていた。
妖精たちも、秋の森の仲間たちも嫌っていた。
けれど、
「神様じゃないんだ。放っておいても消える連中までは、手に負えないさ」

王子が本当に嫌っているものを知って、王女は、最後まで王子のために羽ばたくことを胸に秘めた。
それが唯一、冷え切った手足を温める火だと信じて。

  ◆

これは語られなかった断章。
大嘘つきが隠し通した、誇り高い、ある王女の物語。
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