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2022年03月31日

禁后−パンドラ−(ほん怖)


禁后(パンドラ)とは、ほん怖に投稿された創作ストーリーである。
内容はとある謎の一軒家に忍び込み、好奇心の赴くままに入ると主人公の友人がとある不幸に見舞われたというもの。


【内容】



私の故郷に伝わっていた「禁后」というものにまつわる話です。
どう読むのかは最後までわかりませんでしたが、私たちの間では「パンドラ」と呼ばれていました。
私が生まれ育った町は静かでのどかな田舎町でした。
目立った遊び場などない寂れた町だったのですが、一つだけとても目を引くものがありました。
町の外れ、たんぼが延々と続く道にぽつんと建っている一軒の空き家です。
長らく誰も住んでいなかったようでかなりボロく、古くさい田舎町の中でも一際古さを感じさせるような家でした。
それだけなら単なる古い空き家…で終わりなのですが、目を引く理由がありました。




一つは両親などの町の大人達の過剰な反応。
その空き家の話をしようとするだけで厳しく叱られ、時にはひっぱたかれてまで怒られることもあったぐらいです。
どの家の子供も同じで、私もそうでした。
もう一つは、その空き家にはなぜか玄関が無かったということ。
窓やガラス戸はあったのですが、出入口となる玄関が存在しなかったのです。
以前に誰かが住んでいたとしたら、どうやって出入りしていたのか?わざわざ窓やガラス戸から出入りしていたのか?
そういった謎めいた要素が興味をそそり、いつからか勝手に付けられた「パンドラ」という呼び名も相まって、当時の子供達の一番の話題になっていました。
(この時点では「禁后」というものについてまで何も知りません。)




私を含め大半の子は何があるのか調べてやる!と探索を試みようとしていましたが、普段その話をしただけでも親達があんなに怒るというのが身に染みていたため、なかなか実践できずにいました。
場所自体は子供だけでも難なく行けるし、人目もありません。
たぶん、みんなは一度は空き家の目の前まで来てみたことがあったと思います。しばらくはそれで雰囲気を楽しみ、何事もなく過ごしていました。




私が中学にあがってから何ヵ月か経った頃、ある男子がパンドラの話に興味を持ち、ぜひ見てみたいと言いだしました。
名前はAとします。
A君の家はお母さんがもともとこの町の出身で、他県に嫁いでいったそうですが、離婚を機に実家であるお祖母ちゃんの家に戻ってきたとのこと。
A君自身はこの町は初めてなので、パンドラの話も全く知らなかったようです。
その当時私と仲の良かったB君・C君・D子の内、B君とC君が彼と親しかったので自然と私達の仲間内に加わっていました。
五人で集まってたわいのない会話をしている時、私達が当たり前のようにパンドラという言葉を口にするので、気になったA君がそれに食い付いたのでした。




「うちの母ちゃんとばあちゃんもここの生まれだけど、その話聞いたらオレも怒られるのかな?」
「怒られるなんてもんじゃねえぜ?うちの父ちゃん母ちゃんなんか本気で殴ってくるんだぞ!」
「うちも。意味わかんないよね」

A君にパンドラの説明をしながら、みんな親への文句を言い始めます。
ひととおりに説明し終えると、一番の疑問である「空き家に何があるのか」という話題になりました。

「そこに何があるかってのは誰も知らないの?」
「知らない。入ったことないし聞いたら怒られるし。知ってんのは親達だけなんじゃないか?」
「だったらさ、何を隠しているのかオレたちで突き止めてやろうぜ!」

A君は意気揚々と言いました。




親に怒られるのが嫌だった私と他の三人は最初こそ渋っていましたが、Aのノリにつられたのと、今までそうしたくともできなかったうっぷんを晴らせるということで、結局みんな同意します。
その後の話し合いで、いつも遊ぶ時によくついてくるDの妹も行きたいという事になり、六人で日曜の昼間に作戦決行となりました。
当日。わくわくした面持ちで空き家の前に集合。なぜか各自リュックサックを背負ってスナック菓子などを持ち寄り、みんな浮かれまくっていたのを覚えています。
前述のとおり、問題の空き家はたんぼに囲まれた場所にぽつんと建っていて、玄関はありません。
二階建の家ですが窓まで昇れそうになかったので、中に入るには一階のガラス戸を割って入るしかありませんでした。

「ガラスの弁償ぐらい大した事ないって」

そう言ってA君は思いっきりガラスを割ってしまい、中に入っていきました。
何もなかったとしてもこれで確実に怒られるな…と思いながら、みんなも後に続きます。



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