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2022年05月13日
危険な好奇心13
『は?』と俺と慎は驚いた。この人は何を言っているんだろう!と。
続けて警官は
『いや、君達を信じてない訳じゃないよ。じゃあもう少し詳しく教えて。ここが頭?』
警官は冗談を言っている訳では無く、本当に解らないようだ。
俺はハッピーの写真を取り上げ
『だから、、、』
と説明しかけて言葉が詰まった。
確かに、この写真を客観的に見ると犬の死骸には見えないかも‥。と思った。
薄茶色に変色した骨に所々わずかに残っている毛。。。
俺と慎はハッピーが死体になった翌日も見ているので、腐食が進んでいても元の形(倒れた角度、姿)を知っているが、知らない奴から見るとただの汚れた石に汚い雑巾の様なものが絡んでいるようにしか見えないかもしれない。。
俺は冷静に他の写真も見てみた。
板に刻まれた『淳呪殺』・少女の写真に無数の『釘』。。
たしかに『中年女』の存在に直接結び付けるのは難しいのか?
ひょっとして警官は『小学生の悪戯』と思っていて、先程から『親・担任』などと言っているのか?
俺はこのまま此処にいては危険だと感じ出した。
『絶対、親を呼び出すつもりだ!』
俺は慎に小さな声で耳打ちした。
慎は無言で頷き、アゴをクイッと動かし、『外に出る合図』を送ってきた。
すると次の瞬間には慎は勢いよく振り向き、走り出した。俺もすぐさま後を追い、交番から抜け出した。
後ろから『おいっ!』と警官が呼び止める声がしたが、俺達は振り向かずに走り続けた。
警官が追い掛けてくる気配は無かった。警官はおそらく
『悪戯しにきた小学生が、嘘を見破られそうになり逃げ出した。』
とでも思っているのだろう。
俺と慎は警官が追って来ないことを充分に確認し、道端に坐り込み、緊急ミーティングを開催した。
『これからどーする?』
『どーしよ‥』
俺達は途方に暮れていた。最後の切り札の警察にも信じてもらえず、『中年女』から身を守る術を失った。
『これで全てが解決する』
と俺達は思い込んでいただけにショックはデカかった。
危険な好奇心14へ
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2022年05月12日
危険な好奇心12
俺達は山を駆け下りた。山を下り、俺達は駅前の交番へ急いだ。
『このカメラに納められた写真を見せれば、中年女は捕まる。俺らは助かる。』
その一心だけで走った。
途中でカメラ屋に寄り現像を依頼。出来上がりは30分後と言われたので俺達は店内で待たせてもらった。
その間、慎との会話はほとんど無かった。ただただ、写真の出来上がりが待ち遠しかった。
そして30分が過ぎた。
『お待たせしましたー。』
バイトらしき女店員に声をかけられた。俺と慎は待ってましたとばかりにレジに向かった。
女店員は少し不可解そうな顔をしながら
『現像出来ましたので中の確認をよろしくお願いします。』
といいながら写真の入った封筒を差し出した。
まぁ現像後の写真が犬の死骸や釘に差された少女の写真のみだから、不可解な顔をするのも当然だが…
慎はその場で封筒から写真を取り出し、すべての写真を確認し
『大丈夫です。ありがとうございました』
と言い、代金を支払った。
店を出て、すぐさま交番に向かった。
これで全てが終わる。
駅前の交番へと二人して飛び込んだ。
『ん?!どうしたの?』
中にいた若い警官が俺達を迎え入れてくれた・
俺達はその警官の元へ歩み寄り
『助けてください!』
と言った。
俺と慎は『あの夜』の出来事を話した。裏付ける写真も一枚一枚見せながら話した。
そして、今も『中年女』に狙われている事を。
一通り話し終えるとその警官は穏やかな表情で、
『お父さんやお母さんには言ったの?』
俺たちは親に伝えていないと言うと
『ん〜、ぢゃ家の電話番号教えてくれるかな?』
と警官は言い出した。
慎が『なんで親が関係あるの?狙われているのは俺達だよ?!』とキレ君に言い放った。
ちなみに慎の両親は医者と看護婦。高校生の兄貴は某私立高校生。
俺達3人の中で一番裕福な家庭だが、一番厳しい家庭でもある。
『あの夜』親に嘘をついて秘密基地に行き、このような事に巻き込まれた、などバレれば:、俺も淳もだが、慎が一番洒落にならないのである。
『助けてよ!警察官でしょ!』
と慎が詰め寄る。
警察は少し苦笑いして
『君達小学生だよね?やっぱり、こーゆー事はキチンと親に言わなきゃダメだよ。』
としばらくイタチゴッコが続いた。
あげくに警察は
『じゃあ君達の担任の先生は何て名前?』
など、俺達にとっては《脅し》に取れる言葉を投げ掛けてきた。
まぁ、警察にとっては俺達の『保護者及び責任者』から話を聞かないと…って感じだったのだろうが、俺達にとっれ、こういう時の『親・先生』は怒られる対象にしか考えられなかった。
そうこうしているうちに俺達の心の中に、目の前にいる警官に対して《不信感》が芽生えてきた。
[このまま此処にいれば、無理矢理住所を言わされ、親にチクられる!]と。
(この警察は俺達の話を信じていないのでは?)
と俺は思い始めた。
俺や慎が必死に助けを求めているのに、『親』『先生』ばかり言ってくる。
俺達は『中年女』の存在を裏付ける証拠写真まで持参しているのに。。
俺はもう一度警官に写真を見せつけ
『犬をこんな殺し方する奴なんだよ!』と言った!
すると警官はしばらく黙り込み、写真を手に取り、意外な一言を言った。
『ん〜。。これって犬?なの?』
危険な好奇心13
2022年05月11日
危険な好奇心11
慎はカメラを再び構え、『あの木』を撮ろうとしていた。
『ん?!おい!ちょっと来てーや!』
何かを発見し、俺を呼ぶ慎。俺は恐る恐る慎の元に歩み寄った。
慎が『これ、この前無かったよな?』と何かを指差す。
その先に視線をやると、無数の釘の刺さった写真が…
ん?たしか前もあったはずじゃ…
いや!
写真が違う!
厳密に言うと、この前見た『4・5歳ぐらいの女の子』の写真はその横にある。
つまり、写真が増えている。
写真の状態からして、ここ二・三日ぐらいに打ち込まれているであろう。
この前に見た写真は既に女の子がどうかもわからないぐらいに雨風で表面がボロボロになっている。新しい写真も『4.5歳ぐらいの女の子』のようだ。
この時、慎には言わなかったが、俺は一瞬『新しい写真が俺だったらどうしよう!!』とドキドキしていた。
慎はカメラに打ち込まれた写真を撮った。そして
『後は秘密基地の掘り込みを撮ろう』
と言い、又走り出した。
俺は近くに中年女がいるような錯覚がし、一人になるのが怖く、慌てて慎を追った。
秘密基地に近づいてきて、俺は違和感を感じ
『慎!』
と呼び止めた。
違和感
いつもなら秘密基地の屋根が見える位置にいるはずなのだが、屋根が見えない。
慎もすぐ気が付いたようだ。このとき脳裏に『中年女』がよぎった。
胸騒ぎがする。
鼓動が激しくなる。
慎が『裏道から行こう。』と言った。俺は無言で頷いた。
裏道とは獣道を通って秘密基地に行く従来のルートとは別に、茂みの中をくぐりながら秘密基地の裏側に到達するルートの事である。
この道は万が一秘密基地に敵が襲って来た時の為に造っておいた道。
もちろん、遊びで造っていたのだが、まさかこんな形で役に立つとは‥
この道なら万が一、基地に『中年女』がいても見付かる可能性は極めて低い。
俺と慎は四つん這いになり、茂みの中のトンネルを少しずつ進んだ。
そして秘密基地の裏側約5メートル程の位置にさしかかった時、基地の異変の理由が解った。
バラバラに壊されている。
俺達が造り上げた秘密基地はただの木材になっていた。
しばらく様子を窺ったが、中年女の気配もないので俺達は茂みから抜けだし、秘密基地『跡地』に到達した。
俺達はバラバラに崩壊された秘密基地を見、少し泣きそうになった。
『秘密基地』言わば俺達三人と2匹のもう一つの家。
バラバラになった木材の片隅に大きな石が落ちていた。恐らく誰かにこれをぶつけて壊したのだろう。
『誰かが』‥いや、多分『中年女』が。
慎が無言で写真を撮りだした。そして数枚の材木をめくり、『淳呪殺』と彫られた板を表にし、写真を撮った。
その時、わずかな板の隙間からハエが飛び出し、その隙間からタッチの遺体が見えた。
ハッピーとタッチ。
秘密基地よりもかけがえの無い2匹を俺達は失った事を痛感した。
慎は立ち上がり、
『よし、このカメラを早く現像して警察に持って行こう。』
と言った。
危険な好奇心12へ
2022年05月10日
危険な好奇心10
さっそく、明日の放課後、裏山に二人で行く事になった。
明日の放課後、裏山に行く。その話が纏まり、俺達は家に帰ろうとしたが、『中年女』が何処に潜伏しているのか解らない為、俺達は恐ろしく遠回りした。
通常なら20分で帰れるところを二時間かけて帰った。
家に着いて俺はすぐに慎に電話をした
『家とかバレてないかな?今夜きたらどーしよ!』
などなど。俺は自分で自分がこれほどチキンとは思わなかった。
名前がバレ、小屋に『淳呪殺』と彫られた淳が精神的に病んでいるのが理解できた。
慎は『大丈夫、そんなすぐにバレないよ!』と俺に言ってくれた。
この時俺は思った。普段対等に話しているつもりだったが、慎はまるで俺の兄のような存在だと。
もちろんその日の夜は眠れなかった。
わずかな物音に脅え、目を閉じれば、あのニヤッと笑う中年女の顔がまぶたの裏に焼き付いていた。
朝が来て、学校に行き、授業を受け、放課後、午前3時半。
俺と慎は裏山の入口まで来た。
俺は山に入るのを躊躇した。『中年女』『変わり果てたハッピーとタッチ』『無数の釘』
頭の中をグルグル鮮やかに『あの夜の出来事』が甦ってくる。
俺は慎に様子を伺った。慎は黙って山を見つめていた。慎も怖いのだろう。
『やっぱ、入るの怖いな…』
と言ってくれ!と俺は内心願っていた。
俺はズボンからインスタントカメラを取り出し、右手に握ると、俺の期待を裏切り
『よし。』
と小さく呟き、山に入るとすぐさま走り出した。
俺はその後ろ姿に引っ張られるように走りだした。
慎は振り返らずに走り続ける。
俺は必死で慎を追った。一人になるのが怖かったから必死で追った。
今思えば慎も怖かったのだろう。怖いからこそ周りを見ずに走ったのだろう。
『あの場所』が、徐々に近づいてくる。
思い出したくもないのに『あの夜』の出来事を鮮明に思い出し、心に『恐怖』が広がり出した。
恐怖で足がすくみだした時、『あの場所』に着いた。そう、『中年女が釘を打っていた場所』『中年女がハッピー、タッチを殺した場所』『中年女に引きずり倒された場所』
【中年女と出会ってしまった場所】
俺は急に誰かに見られているような気がして周りを見渡した。いや、『誰かに』では無い、中年女に見られているような気がした。
山特有の『静寂』と自分自身の心に広がった『恐怖』がシンクロし、足が震えだす。
立ち止まる俺を気にかける様子無く、慎はあの木に近づきだした。
何かに気付き、慎はしゃがみ込んだ。
『ハッピー…』
その言葉に俺は足の震えを忘れ、慎の元に歩み寄った。
ハッピーは既に土の一部になりつつあった。頭蓋骨をあらわにし、その中心に少し錆びた釘が刺さったままだった。
俺は釘を抜いてやろうとすると、慎が『待って!』と言い、写真を一枚撮った。
慎の冷静さに少し驚いたが、何も言わずに俺は再び釘を抜こうとした。
頭蓋骨に突き刺さった釘をつまんだ瞬間、頭蓋骨の中から見たことの無い、多数の虫がザザッと一斉に出てきた。
『うわっ!』
俺は慌てて手を引っ込め、立ち上がった。
ウジャウジャと湧いている小さな虫が怖く、ハッピーの死体に近づく事が出来なくなった。それどころか、吐き気が襲って来てえずいた。
慎は何も言わずに背中を摩ってくれた。
俺はあの夜、ハッピーを見殺しにし、又、ハッピーを見殺しにした。
俺は最高に弱く、最低な人間だ。
危険な好奇心11へ
2022年05月09日
危険な好奇心9
バレたのか?俺の顔を思い出したのか?バレたなら何故襲って来ないのか?
俺の頭はひたすらその事だけがグルグル巡っていた。
内藤が『うわーっ、まだこっち見てるぜ!佐々木!お前の言った悪口聞かれたぜ!俺知らねーっ!』っとおどけていた。
もうガチャガチャどころではない。曲がり角を曲がり、女が見えなくなった所で俺は慎の腕を掴み
『帰ろう!』
と言った。
慎は俺の目をしばらく見つめて『あ、今日塾だっけ?帰らなやばいな!』と俺に合わせ、俺達は走った。
家とは逆の方向に走り、しばらくして俺は誠に
『アイツや!あの目、間違いない!俺らを探しに来たんや!』
慎は意外と冷静に
『マジマジと名札見てたもんな。。学年とクラス、淳の巾着でバレてるし。。』
俺はそんな落ち着いた慎に腹がたち
『どーすんだよ!もう逃げきれネーよ!家とかそのうちバレっぞ!!』
慎『やっぱ警察に言おう。このままはアカン、助けてもらお。』
俺『・・・』
俺はしばらく黙っていた。たしかに他に助かる手は無いかもしれないと思った。
『でも、警察には何て言う?』
と俺が問うと慎は
『山だよ。あの山に打ち付けられた写真とかハッピー、タッチの死体。あれを写真に撮って、あの女が変質者って言う証拠を見せれば警察があの女を捕まえてくれるはずや!』
俺は納得したが、もうあの山に行くのは嫌だったが、仕方が無かった。
さっそく、明日の放課後、裏山に二人で行く事になった。
危険な好奇心10
2022年05月06日
危険な好奇心8
その日から慎と帰ることになった。
その日は学校で噂の『トレンチコート女』(推定・中年女)には会わなかった。
次の日も、その次の日も会わなかった。
しかし、学校では相変わらず【トレンチコートの女】の噂は囁かれていた。
慎と一緒に下校することになり五日目、俺達は久しぶりに淳の見舞いに行くことにした。
お土産に給食のデザートのオレンジゼリーを持って行った。
淳の家に着き、チャイムを押した。いつもの様に叔母さんが明るく出て来て俺達を中に入れてくれた。
淳は相変わらず元気が無かった。ジンマシンはだいぶ消えていたが、淳本人は
『横腹の顔の部分が日に日に大きくなっている。』
と言っていたが、俺と慎には全く解らなかった。むしろ、前回見たときよりマシになっているように見えた。
精神的に淳はショックを受けているのだろう。
俺達は学校で流れている『トレンチコートの女』の噂は淳には言わなかった。
帰り間際に淳のおばさんが俺達の後を追い掛けて来て、『淳、クラスでイジメにでも合っているの?』と不安げな顔で聞いて来た。
俺達は否定したが、本当の理由を言えないことに少し罪悪感を感じた。
それから三日後、その日は珍しく内藤と佐々木と俺と慎の四人で下校した。
内藤は体がデカく、佐々木はチビ。実写版のジャイアンとスネ夫みたいな奴ら。
もう俺と慎の中で『中年女』の事は風化しつつあった。学校で噂の『トレンチコート女』も実在したとしても、全くの別人と思えて来ていた。
その日は四人で駅前にガチャガチャをしに行こうと言う話になり、いつもと違う道を歩いていた。
これが間違いだった。
楽しく四人で話しながら歩いていると、佐々木が『あ、あれトレンチコート女ぢゃね?』
内藤『うわっ!ホンマや!きもっ!』と言い出した。
俺はトレンチコート女を見てみた。心の中で《別人であってくれ》と願った。
トレンチコート女はスーパーの袋を片手に持ち、まだ残暑の残るアスファルトの道で、ただ、突っ立っていた。うつむいて表情は全く解らない。
慎は警戒しているのか、小声で俺達に『目、合わせるなよ!』と言ってきた。
少しずつ、女との距離が縮まっていく。緊張が走った。女は微動だにせず、ただ、うつむいていた。
女との距離が5メートル程になったとき、女は突然顔を上げ、俺達四人の顔を見つめてきた。そして、その次に俺達の胸元に目線を送っているのが解った。
名札を確認している!
俺は焦った。平常心を保つのに必死だった。
一瞬見た顔であの日の出来事がフラッシュバックし、心臓が口から出そうになった。
間違いない。『中年女』だ!
俺はうつむきながら歩き過ぎた。俺はいつ襲い掛かられるのかとビクビクした。
どれくらい時が過ぎたのだろう。いや、ほんの数秒が永遠に感じた。
内藤が『あの目見たけ?あれ完全にイッテるぜ!』と笑った。
佐々木も『この糞暑いのにあの恰好!ぷっ!』と馬鹿にしていた。
俺と慎は笑えなかった。
佐々木が続けて言った。
『やべ!聞こえてたかな?まだ見てやがる!』
俺は咄嗟に振り返った。
『中年女』と目が合った…
まるで蝋人形のような無表情な『中年女』の顔がニヤっと、凄くイヤらしい微笑みに変わった。
背筋が凍るとはこの事か。。。
俺は生まれて始めて恐怖によって少し小便が出た。
危険な好奇心9へ
2022年05月05日
危険な好奇心7
その二週間後の新学期、登校すると、淳の姿はなかった。
慎は来ていたので、慎と二人で『もしかして淳、あの女に…』と思いながら、学校帰りに二人で淳の家を訪ねた。
家の呼び鈴を押すと、明るい声で『はぁーい!』と淳の母親が出て来た。
俺が『淳は?』と聞くと、おばさんは『わざわざお見舞いありがとうねー。あの子、部屋にいるから上がって。』
と言われ、俺と慎は淳の部屋に向かった。
『淳!入るぞ!』と淳の部屋に入ると、淳はベットで横になりながら漫画を読んでいた。
意外と兵器そうな淳を見て俺と慎は少し安心した。
慎『何で今日休んだん?』
俺『しんぱいしたぞ!風邪け?』
淳『・・・』
淳は無言のまま漫画を閉じ、俯いていた。
そこにおばさんが菓子とジュースを持ってきて
『その子、10日ぐらい前からずっとジンマシンが引かないのよ』
と言って
『駄菓子の食べすぎじゃないのー?』
と続けた。笑いながらおばさんは部屋を出ていった。
俺と慎は笑って
『何だよ!脅かすなよー、zンマシンかよ!拾い食いでもしたんだろ?』
とおどけたが、淳は俯いたまま笑わなかった。
慎が『おい!淳どうした?』と尋ねると淳は無言でTシャツを脱いだ。
体中に赤い斑点。確かにジンマシンだった。
俺は『ジンマシンなんて薬塗ったら治るやん。』と言うと、淳が
『これ、あの女の呪いや…』
と言いながら背中を見せて来た。確かに背中も無数にジンマシンがある。
慎が『何で呪いやねん。もう忘れろ!』と言うと
淳は『右の脇腹見て見ろや!』と少し声を荒げた。
右の脇腹‥たしかにジンマシンが一番酷い場所だったが、なぜ『呪い』に結びつけるかが解らなかった。
すると淳が『よく見ろよ!これ、顔じゃねーか!』
よく見て俺と慎は驚いた。確かに直径五センチ程の人、いや、女の顔のように皮膚がただれて腫れ上っている。
俺と慎は『気にしすぎだろ?たしかに顔に見えないことも無いけど。』
と言ったが
『どー見ても顔やんけ!俺だけやっぱり呪われてるんや!』
と言った。
俺と慎は淳に掛ける言葉が見つからなかった。と言うより淳の雰囲気に圧倒された。
いつもは温厚で優しい淳が‥少し病んでいる。青白い顔に覇気のない目、きっと精神的に追い詰められているのだろう。
俺と慎は急に淳の家に居づらくなり、帰ることにした。
帰り道、俺は慎に『あれ、どー思う?呪いやろか?』と聞いた。
慎は『この世に呪いなんてあらへん!』と言った。なぜかその言葉に俺が勇気づけられた。
それから三日過ぎた。依然、淳は学校には来なかった。
俺も慎も淳に電話がしづらく、淳の様子は解らなかった。ただクラスの先生が『風疹で淳はしばらく休み』と言っていたので少し安心していた。
しかし、この頃から学校で奇妙な噂が流れ始めた。
【学校の通学路にトレンチコートにサンダル履きのオバさんが学童を一人一人睨むように顔を凝視してくる】
という噂だ。
その噂を聞いた放課後、俺は激しく動揺した。何故なら俺は唯一、間近で顔を見られている。
慎に相談した。
慎は
『大丈夫!夜やったし見えてないって!それにあの日見られてたとしても、忘れてるって!』
と、俺を落ち着かせる為か、意外と冷静だった。
何よりも嫌だったのが、俺と慎は通学路が全くの正反対。俺と淳は近所なのだが、淳が休んでいる為、俺は一人で帰らなければならない。
俺は慎に
『しばらく一緒に帰ろうよ!俺、怖い。』
と慎に頼んだ。慎は少し呆れた顔をしていたが、
『淳が来るまでやぞ!』
と言ってくれた。
その日から、帰りは俺の家まで慎が付き添ってくれる事になった。
危険な好奇心8へ
2022年05月04日
危険な好奇心6
しばらく三人ともタッチの死体を見て呆然としていたが、慎が小屋の中を指さし
『おい!!あれ…』
俺と淳は黙りながら静かに慎が指差す方向を覗き込んだ。
基地の中‥
壁や床板に兄か違和感が…何か文字が彫ってある‥
近づいてよーく見てみた。
『淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺・・・』
無数に釘で淳・呪・殺と壁や床に彫ってあった。
淳は『え??‥』
と目が点、というか、固まっていた。いや、俺達も驚いた。なぜ名前がバレてるのか!
その時、慎が
『淳の巾着や、巾着に名前書いてあるやん!』
『?!』
俺は目線を屋根に打ち付けられた巾着に持って行った。
無数に釘で打ち付けられた巾着には確かに
【五年三組〇〇淳】
と書かれてある。
淳は泣きだした。
俺も慎も泣きそうだった。学年と組、名前が中年女にバレてしまったのだ。もう逃げられない。俺や慎の事もすぐにバレてしまう。
頭が真っ白になった。
俺達はみんなハッピーやタッチのように眉間に釘を打ち込まれ、殺される。。。
慎が言った。
『警察に言おう!もうダメだよ、逃げられないよ!』
俺はパニックになり
『警察なんかに言ったら、秘密基地の事とか昨日の夜、嘘付いてここに来た事がバレて親に怒られるやろ!』
と冷静さを欠いた事を言った。いや、当時は何よりも親に怒られるのが一番怖いと思っていたのもあるが。。。
ただ、淳はずっと泣いたまま
『ッヒック、ヒック‥』
何も掛ける言葉が見つからなかった。
淳は無言で打ち付けられた巾着を引きちぎり、ポケットにねじ込んだ。
俺達は会話がなくなり、とりあえず山を下りた。淳は泣いたままだった。
俺は今もどこからか中年女に見られている気がしてビクビクしていた。
山を下りると慎が
『もう、この山に来るのは辞めよ。しばらく近づかんといたら、あの中年女も俺らの事を忘れよるやろ。』
と言った。
俺は
『そやな、んで、この事は俺らだけの秘密にしよ!誰かに言ってるのがアイツにヴァレたら、俺ら殺されるかもしれん。』
慎はうなずいたが淳は相変わらず腕で涙を拭いながら泣いていた。
その日、各自家に帰り、その後、その夏休みは三人で会うことは無かった。
危険な好奇心7へ
2022年05月03日
危険な好奇心5
興奮の為、明け方まで眠れず、朝から昼前まで仮眠を取り、俺達は山に向かった。
皆、あの『中年女』に備え、バット・エアーガンを持参した。
山の入口に着いたが、慎が『まだアイツがいるかも知れん』と言うので、いつもとは違うルートで山に入った。
昼間は山の中も明るく、蝉の鳴き声が響き渡り、昨夜の出来事なぞ嘘のような雰囲気だ。
が、『中年女』に出くわした地点に近づくに連れ緊張が走り、俺達は無言になり、又、足取りも重くなった。
少しずつ昨日の出来事が鮮明に思い出す地点に差し掛かった。バットを握る手は緊張で汗まみれだ。
例の木が見えた。女が何かを打ち付けていた木。
少し近づいて俺達は言葉を失った。
木には小さな子供(四・五歳ぐらいの女のコ?)の写真に無数の釘が打ち付けられていた。
いや、驚いたのはそれでは無い。その木の根元にハッピーの変わり果てた姿が。
舌を垂らし、体中血まみれで、眉間に一本、釘が刺されていた。
俺達は絶句し、近づいて凝視することが出来なかった。
蝿や見たことの無い虫がたかっており、生物の『死』の意味を俺達は始めて知った。
俺はハッピーの変わり果てた姿を見て、今度中年女に会えば、次は俺がハッピーのように…と思い、すぐにでも家に帰りたくなった。
その時、淳が
『タッチ‥、タッチの死体が無い!タッチは生きてるかも!』
と言い出した。すると慎も
『きっとタッチは逃げのびたんだ!きっと基地にいるはず!』
と言い出した。
俺もタッチだけは生きて欲しい。と思い、三人で秘密基地へと走り出した。
秘密基地が見える場所まで走ってきたが、慎が急に立ち止まった。
俺と淳は『!中年女!』と思い、慌てて身を伏せた。
黙って慎の顔を見上げると、慎は
『‥なんだあれ‥?』
と基地を指差した。
俺と淳はゆっくり立ち上がり、基地を眺めた。何か基地に違和感があった。何か…
基地の屋根に何か付いている‥。
少しずつ近づいていくと、基地の中に昨夜忘れていた淳の巾着袋(淳は菓子をいつもこれに入れて持ち歩いている)が基地の屋根に無数の釘で打ち付けてあるではないか!
俺達は驚愕した。
【この秘密基地、あの中年女にバレたんだ!】
慎が恐る恐る、バットを握りしめながら基地に近づいた。
俺と淳は少し後方でエアーガンを構えた。基地の中に中年女がいるかもしれない。
慎はゆっくりとドアに手を掛けると同時に、すばやく扉を引き開けた。
『うわっ!』
慎は何かに驚き、その場に尻餅を付きながら、ズルズルと俺達の元へ後ずさりをしてきた。
俺と淳は何に慎が怯えているのか解らず、とりあえず銃を構えながら基地の中をゆっくりと覗いた。
そこには変わり果てたタッチの死体があった。
『うわっ!』
俺と淳も同じような反応をとった。
やはりタッチも眉間に五寸釘が打ち込まれていた。
俺はその時、思った。あの中年女は変態だ。いや、キチ●イだ!普通、こんなことしないだろう。
とてつもない人間に関わってしまったと、昨夜、この山に来た事を心から後悔した。
危険な好奇心6へ
2022年05月02日
危険な好奇心4
俺は女から目が離せなかった。話した瞬間、金づちで殴られると思った。
そんな状況でも、いや、そんな状況だったからだろうか、女の顔はハッキリと覚えている。
年齢は40ぐらいだろうか、少し痩せた顔立ち、目を剥き、少し受け口気味に歯を食いしばり、小刻みに震えながら俺を見下す。
俺にとってはその状況が10分?20分?全く覚えていない。
女が俺の事を踏み付けながら、背を曲げ、顔を少しずつ近づけて来た。その時、タッチが女の背中に乗り掛かった。
女は一瞬焦り、俺を押さえていた足を踏み外し、よろめいた。そこにハッピーも走って来て、女にジャレついた。
恐らく、2匹は俺達が普段遊んでいるから人間に警戒心が無いのだろう。
俺はそのすきに慌てて起きて走り出した。
『早く!早く!』
と離れたところから慎と淳がこちらを懐中電灯で照らしていた。
俺は明かりに向かい走った。
『ドスっ』
後ろで鈍い音がした。俺には振り返る余裕も無く走り続けた。
慎と淳と俺は山を抜けた時には0時を回っていた。足音は聞こえなかったが、あの女が追い掛けてきそうで俺達は慎の家まで走って帰った。
慎の家に着き、俺は何故か笑いが込み上げて来た。極度の緊張から解き放たれたからだろうか?
しかし、淳は泣き出した。
俺は
『もう、あの秘密基地二度と行けんな。あの女が俺らを捜しているかもしれんし。』
と言うと
淳は泣きながら
『アホ!朝になって明るくなったら行かなアカンやろ!』
と言い出した。
俺がハァ?と思っていると、慎が俺に
『お前があの女から逃げれたん、ハッピーとタッチのおかげやぞ!お前があの女に後から殴られそうなとこ、ハッピーが飛びついて、代わりに殴られよったんや!』
すると淳も泣きながら
『あの女、タッチの事も、タッチも‥ウッ‥』
と号泣しだした。
後から慎に話を聞くと走り出した俺を後から殴ろうとしたとき、ハッピーが女に飛びつき、頭を金づちで殴られた。
女は尚も俺を追い掛けようとしたが、足元にタッチがジャレついてきて、タッチの頭を金づちで殴った。
そそて女は一度俺らの方を見たが、追い掛けてこず、ひたすら2匹を殴り続けていた。
俺達はひたすら逃げた。
慎も朝になれば山に入ろうといった。もちろん、俺も同意した。
しかし、そこには、さらなる恐怖が待っていた。
危険な好奇心5へ