2022年05月05日
危険な好奇心7
その二週間後の新学期、登校すると、淳の姿はなかった。
慎は来ていたので、慎と二人で『もしかして淳、あの女に…』と思いながら、学校帰りに二人で淳の家を訪ねた。
家の呼び鈴を押すと、明るい声で『はぁーい!』と淳の母親が出て来た。
俺が『淳は?』と聞くと、おばさんは『わざわざお見舞いありがとうねー。あの子、部屋にいるから上がって。』
と言われ、俺と慎は淳の部屋に向かった。
『淳!入るぞ!』と淳の部屋に入ると、淳はベットで横になりながら漫画を読んでいた。
意外と兵器そうな淳を見て俺と慎は少し安心した。
慎『何で今日休んだん?』
俺『しんぱいしたぞ!風邪け?』
淳『・・・』
淳は無言のまま漫画を閉じ、俯いていた。
そこにおばさんが菓子とジュースを持ってきて
『その子、10日ぐらい前からずっとジンマシンが引かないのよ』
と言って
『駄菓子の食べすぎじゃないのー?』
と続けた。笑いながらおばさんは部屋を出ていった。
俺と慎は笑って
『何だよ!脅かすなよー、zンマシンかよ!拾い食いでもしたんだろ?』
とおどけたが、淳は俯いたまま笑わなかった。
慎が『おい!淳どうした?』と尋ねると淳は無言でTシャツを脱いだ。
体中に赤い斑点。確かにジンマシンだった。
俺は『ジンマシンなんて薬塗ったら治るやん。』と言うと、淳が
『これ、あの女の呪いや…』
と言いながら背中を見せて来た。確かに背中も無数にジンマシンがある。
慎が『何で呪いやねん。もう忘れろ!』と言うと
淳は『右の脇腹見て見ろや!』と少し声を荒げた。
右の脇腹‥たしかにジンマシンが一番酷い場所だったが、なぜ『呪い』に結びつけるかが解らなかった。
すると淳が『よく見ろよ!これ、顔じゃねーか!』
よく見て俺と慎は驚いた。確かに直径五センチ程の人、いや、女の顔のように皮膚がただれて腫れ上っている。
俺と慎は『気にしすぎだろ?たしかに顔に見えないことも無いけど。』
と言ったが
『どー見ても顔やんけ!俺だけやっぱり呪われてるんや!』
と言った。
俺と慎は淳に掛ける言葉が見つからなかった。と言うより淳の雰囲気に圧倒された。
いつもは温厚で優しい淳が‥少し病んでいる。青白い顔に覇気のない目、きっと精神的に追い詰められているのだろう。
俺と慎は急に淳の家に居づらくなり、帰ることにした。
帰り道、俺は慎に『あれ、どー思う?呪いやろか?』と聞いた。
慎は『この世に呪いなんてあらへん!』と言った。なぜかその言葉に俺が勇気づけられた。
それから三日過ぎた。依然、淳は学校には来なかった。
俺も慎も淳に電話がしづらく、淳の様子は解らなかった。ただクラスの先生が『風疹で淳はしばらく休み』と言っていたので少し安心していた。
しかし、この頃から学校で奇妙な噂が流れ始めた。
【学校の通学路にトレンチコートにサンダル履きのオバさんが学童を一人一人睨むように顔を凝視してくる】
という噂だ。
その噂を聞いた放課後、俺は激しく動揺した。何故なら俺は唯一、間近で顔を見られている。
慎に相談した。
慎は
『大丈夫!夜やったし見えてないって!それにあの日見られてたとしても、忘れてるって!』
と、俺を落ち着かせる為か、意外と冷静だった。
何よりも嫌だったのが、俺と慎は通学路が全くの正反対。俺と淳は近所なのだが、淳が休んでいる為、俺は一人で帰らなければならない。
俺は慎に
『しばらく一緒に帰ろうよ!俺、怖い。』
と慎に頼んだ。慎は少し呆れた顔をしていたが、
『淳が来るまでやぞ!』
と言ってくれた。
その日から、帰りは俺の家まで慎が付き添ってくれる事になった。
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