2022年05月03日
危険な好奇心5
興奮の為、明け方まで眠れず、朝から昼前まで仮眠を取り、俺達は山に向かった。
皆、あの『中年女』に備え、バット・エアーガンを持参した。
山の入口に着いたが、慎が『まだアイツがいるかも知れん』と言うので、いつもとは違うルートで山に入った。
昼間は山の中も明るく、蝉の鳴き声が響き渡り、昨夜の出来事なぞ嘘のような雰囲気だ。
が、『中年女』に出くわした地点に近づくに連れ緊張が走り、俺達は無言になり、又、足取りも重くなった。
少しずつ昨日の出来事が鮮明に思い出す地点に差し掛かった。バットを握る手は緊張で汗まみれだ。
例の木が見えた。女が何かを打ち付けていた木。
少し近づいて俺達は言葉を失った。
木には小さな子供(四・五歳ぐらいの女のコ?)の写真に無数の釘が打ち付けられていた。
いや、驚いたのはそれでは無い。その木の根元にハッピーの変わり果てた姿が。
舌を垂らし、体中血まみれで、眉間に一本、釘が刺されていた。
俺達は絶句し、近づいて凝視することが出来なかった。
蝿や見たことの無い虫がたかっており、生物の『死』の意味を俺達は始めて知った。
俺はハッピーの変わり果てた姿を見て、今度中年女に会えば、次は俺がハッピーのように…と思い、すぐにでも家に帰りたくなった。
その時、淳が
『タッチ‥、タッチの死体が無い!タッチは生きてるかも!』
と言い出した。すると慎も
『きっとタッチは逃げのびたんだ!きっと基地にいるはず!』
と言い出した。
俺もタッチだけは生きて欲しい。と思い、三人で秘密基地へと走り出した。
秘密基地が見える場所まで走ってきたが、慎が急に立ち止まった。
俺と淳は『!中年女!』と思い、慌てて身を伏せた。
黙って慎の顔を見上げると、慎は
『‥なんだあれ‥?』
と基地を指差した。
俺と淳はゆっくり立ち上がり、基地を眺めた。何か基地に違和感があった。何か…
基地の屋根に何か付いている‥。
少しずつ近づいていくと、基地の中に昨夜忘れていた淳の巾着袋(淳は菓子をいつもこれに入れて持ち歩いている)が基地の屋根に無数の釘で打ち付けてあるではないか!
俺達は驚愕した。
【この秘密基地、あの中年女にバレたんだ!】
慎が恐る恐る、バットを握りしめながら基地に近づいた。
俺と淳は少し後方でエアーガンを構えた。基地の中に中年女がいるかもしれない。
慎はゆっくりとドアに手を掛けると同時に、すばやく扉を引き開けた。
『うわっ!』
慎は何かに驚き、その場に尻餅を付きながら、ズルズルと俺達の元へ後ずさりをしてきた。
俺と淳は何に慎が怯えているのか解らず、とりあえず銃を構えながら基地の中をゆっくりと覗いた。
そこには変わり果てたタッチの死体があった。
『うわっ!』
俺と淳も同じような反応をとった。
やはりタッチも眉間に五寸釘が打ち込まれていた。
俺はその時、思った。あの中年女は変態だ。いや、キチ●イだ!普通、こんなことしないだろう。
とてつもない人間に関わってしまったと、昨夜、この山に来た事を心から後悔した。
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