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2021年04月10日
またまた厚生大臣更迭(四月七日)
すでに三月中には噂に上っていた厚生大臣の交替だが、四月に入って一週間、感染症対策の重大なポイントとされたイースターが終了すると共に、実行に移された。三月下旬のインタビューでバビシュ首相は「三月中の大臣の交代はない」と語っていたのだけどね。もう一人、更迭を噂されていた文部大臣のほうは、結局解任されずに留任となった。
バビシュ首相による公式の解任理由としては、ブラトニー大臣の厚生省内のマネージメントがうまく行っていないこと、コミュニケーションが取れていないことが挙げられているが、信じている人は誰もいない。これが解任の理由になるのであれば、政府内の大臣とのコミュニケーションがまともに取れていないバビシュ首相が真っ先に解任されるべきである。何せ、首相と大臣と言う関係なのに、厚生大臣と文部大臣が話し合って決めた規制の緩和について、手紙で不満を告げるという体たらくである。直接あって話せよというのが普通の反応であろう。
では、実際の解任理由は何かというと、ブラトニー厚生大臣が、ゼマン大統領周辺からのロシアと中国製のワクチンの使用を認めろという圧力を受けながら、かたくなにEUで認可されていないワクチンの使用は絶対に許可しないと頑張っていることである。すでに、三月半ばの時点で、ゼマン大統領は、ワクチン不認可を理由にバビシュ首相に大臣の更迭を求めていた。どこのワクチンでもいいから接種を進めることが大切だというのだが、もんだいはロシアや中国を信用できるかと言うところにある。ゼマン大統領は国民の大半と反対で、全面的に信用するのだろうけどさ。
辞任を余儀なくされたマトビチ首相が、独断でロシアのワクチンを輸入したスロバキアでは、EUとは別枠でワクチンの認証プロセスが進んでいるのだが、その途中経過で、納入されたワクチンの組成が書類に記されているものとは違うことが明らかになって物議をかもしている。ロシア側からは使わないなら返品しろなどという声も上がっているようで、もう意味不明である。
こんな、正体不明なワクチンをチェコにも導入することが、正直いいことだとは思えないし、世論調査でロシアのワクチンを信用すると答えた人の割合は5パーセント、中国は1パーセントしかなかったというニュースもある。そうなると、足元を見られてぼったくり価格で輸入しても、接種を拒否する人が続出して、大半は廃棄処分になるのが関の山である。その場合の責任は大統領が取るなんてことはないだろうなあ。チェコだし、ゼマン大統領だし。
そもそも、下院の総選挙で新しい内閣が半年後には成立することが決まっている現時点で、大臣を代える必然性が理解できない。ブラトニー氏自身は、解任は政治的な理由で、自分は大臣として専門家の意見を元に判断してきたことを恥じるつもりはないと語っていた。ただ、クリスマス前に規制を大きく緩和して、感染拡大につながったことについては失敗を認めている。あのときは、イギリス型の変異種がチェコに蔓延しつつあることがわかっていなかったといういいわけはつけているけど。
それでも、問題はあれこれあったけれども、自分のなした仕事に対して責任を持とうとする姿勢は、悪くない。バビシュ首相が、全てを他人のせいにして、今回の感染症対策、ワクチン政策の失敗もブラトニー氏の責任にして、自分は悪くないと開き直るのにくらべればはるかにましである。一年前には全ては首相である自分の責任だと断言して喝采を浴びていたが、それを忘れたかのような最近の責任転嫁ぶりには、支持者の中からも見限る人が出てきたようで、世論調査でのANO支持率は、下がり続けている。それでも20パーセントは越えているのかな。
後任として即座に任命されたのは、プラハのビノフラディにある大学病院の院長を勤めるアレンベルグル氏。就任の際には特に表明はしなかったけれども、恐らくゼマン大統領、バビシュ首相との間でロシアのワクチンを導入する方向で話がついているのだろうと言われている。現場の医師の中にロシアのワクチンを求める人がいるというのは意外であった。
ところで、ブラトニー氏の解任は、文部大臣とともに、来週の月曜日からの学校での授業の再開と、そのルールについて記者会見をしている裏側で進められていた。そんな部下の背中で陰謀をめぐらすようなやり方も批判されていて、バビシュ政権が末期症状を起していると見る人も多い。今のバビシュ政権以上に評価がひくくなるのは難しそうだから、秋の総選挙で誕生すると見られる新政権にとっては比較のハードルが下がり続けているといってもいい。まともな政権であることを望むのは高望み過ぎるので、チェコに害をもたらさない新政権が誕生することを願っておこう。期待薄だけどさ。
2021年4月8日23時
2021年04月09日
カレル・ポラーチェク(四月六日)
テレビドラマ「Bylo nás pět」の原作で知られるポラーチェクは、戦前のチェコスロバキアを代表する作家の一人である。チェコ語版のウィキペディアによれば生年は1892年、没年は1945年。亡くなった場所は、ナチスドイツの強制収容所。ユダヤ系のチェコ人だったのである。ポラーチェクは1943年にテレジーンの「模範強制収容所」に収容されるが、その直前に娘をイギリスに逃がすことに成功した。しかし、本人はテレジーンからアウシュビッツに移され、最後はグリビツェというポーランドの町にあった強制収容所で亡くなったという。
チェコの文学的な伝統に基づいて、新聞記者として働きながら作家活動を行ったポラーチェクの代表作も、日本語に翻訳されている作品も児童文学に含まれるものが多いが、チャペク同様、子供向けの本ばかりを書いていたのではなく、一般向けの作品も執筆していたようだ。名前を聞いたことがあるのは、『Muži v offsidu』というサッカーの世界を舞台にした作品。戦前にフゴ・ハース主演で映画化されているから、それを見た記憶があるのかな。
とまれ、ポラーチェクの作品で、日本語訳されているのが、国会図書館オンラインで確認できるのは以下の三作。
@小野田澄子訳『魔女のむすこたち』(岩波書店、1969)
原題は『Edudant a Francimor』で1933年に発表された作品。エドゥダントとフランルィモルというのが主人公で魔女の子供たちということになるのだろうか。ビロード革命後の1993年に子供向けの番組「ベチェルニーチェク」で「三年B組の生徒の日記、もしくはエドゥダントとフランツィモル」と題してアニメ化されて放送されている。後には続編も制作されているから好評をはくしたものと思われる。
翻訳者の小野田澄子氏は、チェコの児童文学の翻訳を手がけている人のはずだが、「honto」で確認できたのは、ポラーチェクの二作と、ラダの一作だけだった。もっといろんなところで見かけた記憶があるのだけど、古い時代の児童文学、絵本などの翻訳について情報を得るのは結構大変なのである。
この『魔女のむすこたち』は、現在でも2018年に出た最新の少年文庫版が手に入るようである。いや、それどころか電子書籍も購入できるようになっている。
A 小野田澄子訳『ぼくらはわんぱく5人組』(岩波書店、1990)
言わずと知れた『Bylo nás pět』の翻訳。原作がチェコスロバキアで刊行されたのは、著者の没後、第二次世界大戦後の1946年のことだった。この作品、子供向けの本だと思って読んでみたら、普段は使わないような難しい、古い表現が頻出して投げ出してしまった。主人公の子供が背伸びして、気取った表現を使ったという設定だったのだろうか。日本語訳がどうなっているかも気になるところだけど、残念ながら絶版で手に入らない。
チェコでは1995年にチェコテレビで放映されたドラマが人気で、今でもしばしば再放送される。この前は、外に出られないお年より向けのチェコテレビ3で放送していて、びっくりした。日本でも放送されたらしい連続ドラマ「ラビリント」の監督を務めたイジー・ストラフが、主人公の兄役で出演している。このころはまだ俳優としてのキャリアが中心だったのである。
B元井夏彦訳「医者の見立て」『ポケットのなかの東欧文学 : ルネッサンスから現代まで』(成文社、2006)
日本語訳の収められた成文社のアンソロジーはすでに何度か収録作品を紹介したことがあるはずである。原題は「Můj lékař mně poradil」だと思われるが、作品についても役者についてもよくわからない。
2021年4月7日15時30分。
2021年04月08日
非常事態宣言の終わり(四月五日)
イースターの時期に規制を緩和すると、感染の拡大が起こるのは明らかだとして、規制緩和を拒否してきたチェコ政府だが、イースター開けの規制のあり方を巡って、駆け引きが始まった。一つは、学校への子供たちの登校の再開で、現在の非常事態宣言が切れる四月十二日月曜日からという方向で調整が進んでいるようだ。
問題は、どのような条件で学校での授業の再開を認めるかで、文部省と厚生省の間で行われている調整にバビシュ首相が不満をたれて、実現するかどうかが怪しくなっている。当初の予定では、義務教育九年のうち、前半の五学年だけを対象に通学を再開し、一学年おきに隔週で通学させるということになっていた。つまり、今週、一年、三年、五年の子供たちが学校に出たら、来週は二年、四年の子供たちが学校で授業を受けるという形なのかな。隔週の振り分けは違うかもしれないし、各学年日とクラスしかないような小さな学校は、五年生まで全員一度に登校できるようだ。
これに対して、バビシュ首相が、通学する子供たちは定期的に検査を受けることになっているのだから、隔週にする意味がわからないと言い出した。実は、この検査に関しても教育現場からは問題が指摘されている。検体の採取から自分でやる簡易検査キットを使うことになっているのだが、小学校の低学年の子供たちが、特に最初のうちは自分ひとりでできるかどうか心配だというのである。教員が指導、補助するにしてもクラスの子供たちの数を考えると、時間がかかりすぎるし対応し切れるとも思えない。
それで、案として上がっているのが、保護者が、どうせ学校まで子供を送ってくるのだから、自分の子供の検査の補助を行うというものである。特例として検査のために保護者が教室に入るのを認めるなんて話も出ていた。問題は、子供たちには検査を受けて陰性であることを確認する義務があるけれども、保護者が感染していないことを確認するすべがないことである。もちろん、職場で検査を受けさせられたとか、すでにワクチンの接種を受けたとかいう保護者はいるだろうが、大半は子供が在宅授業のため、自分も仕事を休んで子供の面倒を見ている人たちである。陰性の検査結果を有しているとは思えない。
また検査自体も、現時点で義務付けられているのはアンチゲン方式の簡易検査キットを使うことで、その精度に疑問がもたれている。どうせ、安全のためと称して検査を導入するなら、手間はかかるけれども精度の高いPCR検査を実施したほうがいいのではないかという意見もある。ブラトニー厚生大臣は、今は検査のキャパシティの問題でできないけれども、いずれは切り替えたいというようなことを言っていた。簡易検査キットを納入する予定の会社と縁のある政治家が異を唱えそうだけど。
そして、現状では、非常事態宣言の延長が下院で認められる見込みがないことから、バビシュ首相は、延長を求めない方針を固めたようである。R指数が1以下となり、新規の感染者の数も、平日で七、八千、休日で千から二千と、一番多かったころと比べると半数以下に減っていることも、非常事態宣言を終わらせる理由になっているのだろうが、これまで閣外支援をしてきた共産党が、バビシュ政権への対応を見直そうとしていて、支持が得られなさそうなのも原因となっている。二度も、非常事態宣言の延長を求めて否決されるというのは、秋の選挙に向けては避けたいはずである。
非常事態宣言が終結しても、規制の多くは継続されることだろう。ただ、オクレス間の移動の禁止だけは、非常事態宣言なしには不可能だというから、これは撤回されると見られている。ただ、これまでも警察の能力の限界でそれほど厳密に移動を阻止できていたわけではなく、実質的にはほとんど変わるまいと予測しておく。週一の検査の義務付けも残るだろうから、こちらの在宅勤務は続く。
最後に、この件に関するチェコ人の冗談を紹介しておこう。バビシュ首相の非常事態宣言の「延長」はなしだと断言したのだが、それに対して、「nájezdy」にならないか心配だとコメントした人がいて、うちのは大笑いしていた。説明を受けるまでわからなかったのだけど、非常事態の「延長」も、スポーツの試合の「延長」も同じ言葉を使うことから、延長はなくても、アイスホッケーで延長でも決着がつかなかったときに行われる「nájezdy」、つまりはサッカーのPK戦みたいなものになると困るねということだったようだ。流石はアイスホッケー大国チェコである。
2021年4月6日18時30分。
2021年04月07日
ボヘミアの醜聞(四月四日)
昨日の夜、あまり大きな声では言えない方法で入手した「シャーロック・ホームズの冒険」のチェコ語吹き替え版「ボヘミアの醜聞」を見た。全体のストーリーにも興味はあるが、「ボヘミア」がどのように使われているかも興味の対象である。何せ、この作品を読んだり見たりしていたころは、まだチェコのことなどろくに知らず、ボヘミアはドイツの一部だとしか思っていなかったのである。現在の無駄にチェコに詳しくなった目で見ると、いろいろ言いたくなることが出てくるに違いない。
そういうと、まず、この回のチェコ語の題名からして、微妙なものを感じさせられてしまう。「Skandál v Čechách」がそれしかない訳だというのも、自分で訳してもそうするだろうというのも重々承知の上で、ドイツの印象の強い歴史上の「ボヘミア」をチェコ語で「Čechy」と訳すのに慣れないのである。逆に、チェコ語の「Čechy」を「ボヘミア」と日本語訳するのには慣れて違和感も感じなくなっているから不思議である。
作品中に最初に登場するチェコと関係のある物は、紙である。正体不明の依頼人が残して行った手紙の書かれた紙に刷りこまれた文字から、紙の生産地を確定して、差出人はボヘミアのドイツ人だと断定する。その生産地が「エグル」とかいう地名なのである。ボヘミアの地名で、ドイツ名「エグル」となると、日本では「エーガー」と書かれるヘプのことじゃないか。三十年戦争の英雄ワレンシュタイン将軍が暗殺されたことで知られるチェコの最西部の町である。
続いて、手紙の差出人でホームズに事件の解決を依頼するためにボヘミア王が登場する。昔は、ボヘミアという地名があるからには、そこに王がいるのは当然だと考えて不思議にも思わなかったのだが、チェコスロバキア独立以前のこの時期、ボヘミア王位はハプスブルク家のもので、オーストリア=ハンガリー二重帝国の皇帝が兼任していたはずである。仮面を取って名乗りを上げるときに、どんな名前を使うかと楽しみに待っていたら、長すぎて聞き取れなかった。ハプスブルクもオーストリアも出てこなかったことは確かだけど。
それで、原作ではどんな名乗りを使っているのか確認することにした。幸いなことに青空文庫に大久保ゆう訳「ボヘミアの醜聞」が上がっていて読めるようになっている。それによると、「ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・ジギースモーント・フォン・オルムシュタイン、つまりカッセル=フェルシュタイン大公」と言ったようだ。貴族の正式な名前にありがちな、いくつも名前の連なるものだけど、「オルムシュタイン」ってどこだ? 架空の地名と考えるのがいいか。
コナン・ドイルの時代のイギリスの人たちにとっては、やはりボヘミアなんて名前だけしか知らない僻遠の地だったのだろうなあ。その点では、昔の自分も同じだし、こうやってボヘミア王の名前が云々なんてことが言えるのも、こちらに来てボヘミアの歴史というものを実感を以て知ることができたからに他ならない。これが他の国のことなら、気づきもしないで、そんなもんかという感想で終わったはずである。
そして、もう一つ、驚きが待っていた。この物語の主人公といってもいい女性の名前が、アイリーンではなかったのだ。かの『しゃべくり探偵』でも、「愛人アドラ」として、むりやり、「アイリーン・アドラー」に結び付けていたのに、チェコ語版では「イレーナ・アドレロバー」となっていた。やはり登場人物の名前の響きは、作品の印象と密接に結びついているのだなあ。同じ語源の名前が、英語では「アイリーン」となり、チェコ語では「イレーナ」になるのは、わかってはいるけど、ここは「アイリーン」で通してほしかったと考えるのは、外国人のわがままなのだろうか。
この時代は、名前も使用する言葉によって翻訳していた時代だ(と思う)から、アメリカ出身の「アイリーン」が、ボヘミア王とワルシャワで出会ったときには「イレーナ」と名乗っていたとしても不思議はないのだけど。そういえば青空文庫の「ボヘミアの醜聞」では、冒頭から「イレーナ」が使われていて、最後のホームズに宛てた手紙の署名だけが「アイリーン」になっていた。恐らく意図的に使い分けられているのだろうが、英語名とスラブ語での名前の事情を知らない人が読んだら混乱するかもしれない。
そんな細かいところを気にしながら見たとはいえ、満足満足。これは第二回の「踊る人形」も手にいれずばなるまい。そして、来週からは毎週土曜日の午前中に録画して、お昼時に見るという生活になりそうである。
2021年4月5日11時。
タグ:シャーロック・ホームズ
2021年04月06日
シャーロック・ホームズの冒険(四月三日)
自らをシャーロキアンというほどのめりこんではいないが、小学校の高学年から中学校にかけて推理小説の面白さに目覚めたころから、シャーロック・ホームズはお気に入りの探偵の一人で、あれこれ、パロディやらオマージュ作品やらの派生作品も含めて、読んできた。その手の派生作品で、一番のお気に入りは黒崎緑の「しゃべくり探偵」シリーズなのだけど、二冊で止まっていて、続編を待ち続けてウン十年である。
映像作品のほうは、最初に見た作品のインパクトが強すぎて、以後はどれを見ても、いまいちというか納得しきれないものが残る。完全に現代化を施したBBCの「シャーロック」は、あれはあれでありだと思ったけれども、他はどうしても記憶の中のシャーロック・ホームズと比べて、違うと思ってしまう。
こんな感情は、1980年代半ばから90年代にかけてNHKで放送されていた「シャーロック・ホームズの冒険」を見ていた人の多くが感じているに違いない。それほど、あのイギリスのグラナダTVが制作したドラマの完成度は高かった。日本語の吹き替えも悪くなかったし、珍しくまたいつか見てみたいと思えるテレビ番組だった。
だから、チェコに来て、あのジェレミー・ブレットがホームズを演じるテレビドラマが放送されるのを知ったときには、何のためらいもなく録画することを決めたのだった。しかし、残念ながら放送されたのは、同一のシリーズなのだろうけど、2時間物の長編ばかりで、かつてNHKで見た短編までは放送されなかった。長編の出来が悪いと言うつもりはないけど、冗長な感じは否めない。昼食時に見るにはちょっと長すぎるし。
それが、昨日だっただろうか。何気なくテレビの番組表を眺めていたら、「Dobrodružství Sherlocka Holmese」の文字が目に入ってきた。日本語に訳すと「シャーロック・ホームズの冒険」である。イギリスのドラマで、制作年は1984年となっていた。これまでも何度か期待してははずれということがあったので、念のためにチェコテレビのホームページで確認したら、大当たりだった。
大当たりだったのはいいのだけど、先週、先々週とすでに二回分の放送が済んでいて、今後の再放送の予定もないようだった。何だって、こんな名作を土曜日の午前十時からなんて中途半端な時間帯に放送するんだ。いや、それはまだいい。一体どうして、大々的に予告編を流さなかったのだろう。現代版の「シャーロック」のときには何度も予告編が流されて、第一回の放送を見逃すなんてありえないような状態だったのに。
一回目、二回目は見逃したとはいえ、三回目以降を見逃すわけにはいかない。休日とはいえ午前中からテレビをつける気にはなれないから、セット・トップ・ボックスで録画である。この時点で、全部放送された場合に備えて、録画して保存するためのUSBメモリーを新たに買うかなんてことを考え始めていた。ファイルの形式を変換するのには異常に長い時間がかかり、毎週一回一時間分なんてやりたくないから、DVDをMP4に変えたビデオ保存用のハードディスクに一緒にしたくはない。
それはともかく、昼食時に再生した「シャーロック・ホームズの冒険」は、本当に昔見たあれだった。オープニングの特徴的な音楽といい、ブレット演じるホームズのときに奇矯な振る舞いといい、長らく見たいと思っていたあのホームズだった。この回の題名は「námořní smlouva」、すぐには日本語題が思いつかなかったのだが、「海軍条約」である。小説も読んだし、このドラマも見たはずなのだけど、あまり覚えておらず、頓珍漢な推理をしながら最後まで見た。
そして、深い満足感を感じると共に、一回目の「ボヘミアの醜聞」と二回目の「踊る人形」が見られないことを残念に思う気持ちが改めて沸き起こった。特に「ボヘミアの醜聞」のほうは、チェコに関る話だけに、どのような形で出てくるのかが気になる。ということで、いかに見逃した二回分を手に入れるカを考えることにする。チェコテレビが再放送してくれればそんなことする必要はないのだけどねえ。
2021年4月4日21時。
タグ:シャーロック・ホームズ
2021年04月05日
暑さ寒さも(四月二日)
職場に入るのに感染していないことを証明する検査結果を求められるようになったことで、在宅勤務に切り替えたことで、外に出る機会がめっきり減った。人間というのは、と一般化するのは不適切かもしれないが、えてして楽なほうに流れようとするもので、外に出られない理由ができてしまえば、出なくなってしまうものだ。
去年と同様、チェコに住まわせてもらっている身としては、規制を意図的に破るなんてことはしづらいので、外出するためだけに外出するというのはしたくない。散歩や運動のための外出は禁止はされていないのだが、推奨されているようでもないし、外出が許可される特別な理由に含まれると解釈していいのか難しいところである。という言い訳で、散歩や運動のための外出を避けているのだけど、それでは去年以上の引きこもりになってしまう。
去年のこの時期、規制の緩和が始まるまでは、せいぜいゴミがたまったときに捨てに行くぐらいだったのだが、それを完全に再現するのは避けたいので、外出する理由を作ることにした。買い物である。在宅勤務になってコーヒーの消費量が増えているため、普段なら二週間に一回でいい、コーヒーの購入が毎週必要になる。それで、先月半ばの在宅勤務以降以来、毎週一回は、街中まで出るという「運動」を行えている。
去年は、在宅での仕事の強要がそこまで強くはなかったから、たまに必要なときには職場に出てスキャンとかしていたのだったかな。ただ、回数で言うと、コーヒー以外の買い物にも出ることのある今年のほうが多い。この前も、歯磨き粉とかフィルターとか買いに行ったし、とにかく一回の外出では一つの店にしか行かないようにして、外出の回数を増やしている。
それでも、外に出ない日のほうが多いのだけど、たまに出て思うのは、部屋の中では外の気温、寒さ、暖かさはわからないということで、着る物間違えて寒さに震えたり、汗まみれになったりすることがないのは在宅勤務の利点だなあなんてことを考える。ごみ捨てならすぐ終わるから間違えたままでも問題ないし、何時までという時間の制約のない買い物なら、間違えたら一度戻って着替えることができる。
というのも、この冬から春になる時期のチェコの天候は非常に不安定で、気温が上がる日と、下がる日が、何日かごとに繰り返し訪れる。日本の三寒四温というのは、じつは日本ではなく朝鮮半島北部の春のはじめの様子を表したものだとも言うけれども、チェコの場合には、三と四に入る数字が一定ではなく、一のこともあれば、十以上のこともあるという極端さである。
さらに極端なのは、上がり下がりの幅で、天気予報で見る限り今年は例年以上に大きいようだ。三月末には、暖かくなって、最高気温が25度に迫る、場所によっては越えて夏日になるという暖かさが何日か続き、これで完全に冬の寒さとはおさらばだと喜んだのだけど、イースターの直前になって寒の戻りがあった。最低気温はマイナスまで落ち、最高気温も十度を超えないという二十度ちかくの気温の低下で、平地でも雪がちらついていた。この寒さがイースター明けぐらいまで続くらしい。
それで思い出したのがこちらに着た一年目のイースターの前後のことで、今よりも厳しい冬を越えて暖かくなり始めて春が来たと大喜びしていたら、イースターの直前になって大雪に見舞われたのだった。あのときは外を出歩く生活をしていたから冬の再来に絶望的な気分になったものだが、今年は外に出ないから実害はない。とはいえ、この時期の気温の変化対策として買った薄手のコートの活躍する機会がないのはちょっと残念。
ところで、日本では暑さ寒さも彼岸までなんて言い方をするのだけど、チェコなら寒さもイースターまでと言えそうな気がしてきた。イースターの後に寒さが戻ってきたとしても、それは春の寒さでオロモウツ辺りならマイナスになることはないし、雪が降ることもほとんどない。ちゃんと統計を取っているわけでもなく、単なる思い付きに過ぎないのだけど、これが最後の寒さだと思えれば、気持ちも楽になる。これで、またひとつ寒さに強くなれるのか?
2021年4月3日24時。
2021年04月04日
これはプラハかベルギーか(四月朔日)
国会図書館オンラインで、古いチェコ関係の記述を探して遊んでいたら、『建築写真類聚』という本に突き当たった。写真集、もしくは図版集というべきもので、解説はもちろん、刊行の事情を説明した前書きも後書きも、場合によっては目次、奥付さえなく、写真と図版が簡潔なキャプションつきで並んでいるだけという書物である。
編集は建築写真類聚刊行会で、出版社は建築関係の本を多く手がけていたと見られる洪洋社。第一期の第一冊が、大正9年というから、1920年に刊行され、以後巻をついで、1943年の第十一期まで刊行が続いたようである。各巻には、例えば最初の巻の「玄関」のように、テーマが設定され、それに沿った写真が類従されている。
その第一期の第13冊が、「劇場建築」の写真が収められた巻となっていて、そこにあれ? と言いたくなるキャプションの着いた図版が3枚あるのだ。順番に、「チェッチ国立劇場配景(白国プラグ)」「チェッチ国立劇場配景(白国プラグ)」「チェッチ国立劇場観覧席(白国プラグ)」で、その次には「独逸劇場配景図(白国プラグ)」というのもある。
さて、問題は「白国プラグ」という表記である。「白国」というと普通は、「白耳義」と表記されたベルギーのことを指す。「プラグ」と表記しうる町がベルギーにあるのかも疑問であるし、「チェッチ国立劇場」と訳せる劇場があるのかもわからない。
逆に「プラグ」をプラハのことだと考えると、「チェッチ」は、普通は英語の発音にあわせて「チェック」と読まれるものを、誤って「チェッチ」と読んだものと考えることができる。昔、たしか川原泉の漫画で、本来「アーク」と発音される英語の言葉を、「アーチ」と読むものだと思い込んでいて、作中に使用した後、英和辞典で発音を確認して愕然としたなんてことが描かれていたのを思い出す。「Czech」の最後の「ch」を「チ」と読んでしまったのかな。
ただし、当時のチェコスロバキア、もしくはボヘミアを「白」という漢字で代表させた例は、発見できない。官報などでもすべてベルギーを指している。チェコスロバキアの略称として「致国」というのは見かけたことがあるけれども、これも一般的に使われていたものではないようだ。
幸いなことにこの写真集はインターネット公開されているので、収められた写真を見ると、「チェッチ国立劇場」は、プラハの国民劇場の外観に似ているように思われる。念のためにセズナムの地図で国民劇場を探して現在の写真を表示させて見たら、間違いなく同じものだった。現在では日本では国民劇場という呼称が定着してしまっているが、当時は国立劇場と訳す人もいたのだなあとちょっと感心してしまった。
それなら、もう一つの「独逸劇場」に相当するものも、プラハにあるはずである。20世紀初頭に存在した劇場だということから、あたりをつけた最初の候補、駅の近くの国立歌劇場が、大当たりだった。劇場の歴史を確認すると、もともとは、プラハ市内のドイツ系の住民たちが建てたのがこの劇場だった。それで「独逸劇場」と呼ばれていたのである。
念のために収録された写真の国ごとの配列を確認すると、フランスのパリから始まり、イギリスを経てロシアに向かい、その後、ドイツ、オーストリア、ハンガリーを経て、「白国」と並んでいる。「白国」のあとは、スイス、オランダと続いているから、この写真集における「白国」はベルギーではなく、チェコスロバキアのことだと考えてよさそうだ。ベルギーならオランダの前後に入るはずだしさ。いや、普通に誤記、誤植と考えるのが自然か。
それにしても、こちらが想定していない表記が使われていると発見するのは難しいなあ。チェコスロバキアのカタカナ表記に関しては、入念に探してきたつもりだけど、見落としもまだ結構ありそうだ。
2021年4月2日24時30分。
2021年04月03日
国会図書館オンライン利用者登録(三月卅一日)
国会図書館オンラインの検索機能には、あれこれお世話になっているのだが、「遠隔複写」を申し込むことも可能になっている。これまでも、存在は知っていたけど、どうしても必要なときには、日本にいる知り合いにお願いをして、職場近くの図書館に所蔵されている本や雑誌のコピーをお願いしてきた。都合よく所蔵図書館の近くに、連絡を取り合っている知り合いがいない場合は諦めていた。専門的に、研究しているというわけではなく個人的な趣味で読んでみたいと思っているだけだしさ。
それが、現状では国会図書館ですら入館制限をして予約制で、普段よりも少ない人しか入れないようになっているようだ。他の公共図書館や、大学の図書館などでも入館制限や営業の停止などがなされているだろうことは想像に難くない。日本はヒステリックに大声で叫ぶ意見のほうが、非論理的であっても通りやすいという変な国だし、知り合いにそんな状況の中図書館に足を運んでもらうのは申し訳ない。自分が日本に行ったとしても、国会図書館に入れるとは限らないようだ。
ということで、遠隔複写サービスを試してみることにした。国外からの以来も受け付けているようだし、支払いにクレジットカードも使えるようである。国外の研究者向けのサービスでもあることを考えると、書かれていないけど外国発行のクレジットカードにも対応していると考えていいのかな。その辺の細かい情報が少ないのはやはりお役所仕事というところか。大切なのは複写に対応してくれることだから、文句は言うまい。
その前に、利用者登録が必要だった。日本語至上主義者としては、ユーザー登録ではなく、利用者登録になっているところに、国会図書館のプライドが垣間見える気がして好ましい。入館にはさらに登録利用者カードの発行が必要になるようだが、こちらが日本に行けるめどは立っていない。行きたいかと言われると、答に窮してしまうのだが、いずれは銀行の手続きなどで行かねばなるまいとは思っている。
登録方法は、特に目新しいところもなく、メールアドレスを登録したら本登録用のアドレスが送られてきて、必要事項を入力するだけだった。外国の電話番号でも問題なく入力できたのはありがたかった。電話番号の入力を必須にしておきながら、日本の電話番号にしか対応していないところがあるけれども、実家の電話番号が使えなくなったらどうしようと不安になってしまう。
登録して、ログインして利用者情報のページをみたら、外国の住所を登録したのに居住国が日本になっていた。チェコに変更。問題なく変更できて、すぐに変更されたという連絡のメールが届いた。郵便番号のところにチェコの郵便番号を入れることもできたのだが、〒の後ろに5桁の郵便番号が並んで、その後に住所がつくという表記はチェコのものとは違うから、どうしようか考えているところである。
さて、一体何の複写をたのもうか。郵送料がかかることを考えると、いくつかまとめてお願いしたいところである。とはいえ、最初は使えるかどうかの確認だから、細かいことは考えなくてもいいような気もする。そうしたら、気になる本や雑誌を登録しておける機能があった。著作権はきれているはずなのに、インターネット公開されていない雑誌のチェコに関する記事や全集に納められている原典のわからない翻訳などを登録しておくことにしよう。
そういえば、マサリク大統領から日本の子供たちへのメッセージなんてのがあったなあ。どういう経緯で日本の雑誌がマサリク大統領に原稿を依頼したのかも気になるし、まず、これから依頼してみようか。いや、俳句雑誌に載っているらしいチャペクの翻訳も読んでみたいし、もう少し考えてからにしよう。
2021年4月1日24時30分。
タグ:国会図書館
2021年04月02日
スロバキア首相辞任(三月卅日)
マトビチ首相が、独断でロシアからワクチンのスプートニクVを輸入したことがきっかけで、勃発したスロバキアの連立与党内の対立は、マトビチ首相の辞任でけりがついた。だからといって解散、総選挙になるのではなく、首相の首の挿げ替え、いや、首相と財務大臣が役職を交代するだけということになるようだ。
マトビチ氏率いる政党OLaNOでは、ワクチン輸入が明らかになった際に、厚生大臣が辞任しているが、その後、マトビチ氏に対する抗議で、連立を組む政党SaSが、大臣を次々に辞任させ、キスカ氏の党の大臣も一人辞任していたため、マトビチ内閣は存在はするけれども、半数近くの大臣を欠くという状態に陥っていた。
SaS党が大臣が復任する条件として、マトビチ首相の辞任を求め、マトビチ首相が辞任する条件として、SaSに飲めそうもない条件を突きつけたことで、このまま機能しない内閣が続くか、内閣総辞職で解散、総選挙になるかと期待していたのだけど(制度上一院制の議会の解散ができるのかどうかは知らない)、マトビチ氏があっさり譲歩したことで、政治上の危機は一応終結した。
後任首相になると目されているのは、財務大臣のエドゥアルド・へゲル氏で、マトビチ氏の長年の政治上の盟友として知られている。ただ、マトビチ氏ほど攻撃的な性格ではなく、人当たりがいいため、反感をかいづらく、他の連立与党からも反対が出にくいと見られているようだ。この状況で、指導力よりも調整能力が評価されている人が首相で大丈夫かと心配にはなるけど、強引さで失敗したマトビチ氏の後任としてはこの手の人を選ぶしかないのだろう。
もう一つの心配としては、へゲル氏が首相になっても、実態はマトビチ氏の操り人形に針はしないかということで、そうなるとまた、連立を組むSaS党との対立が起こって、内閣が機能しない政治危機を迎えることになりかねない。この連立内閣は、成立当初からOLaNO党の党首マトビチ氏と、SaS党のスリーク氏の過剰なライバル意識が見え隠れしていたから、ワクチンの件がなくても遅かれ早かれ、二党の対立に至ったのではないかと思う。いや、今後も対立して倒閣の危機が繰り返されるだろうと予測しておく。
現時点でマトビチ氏は去年の選挙のときの熱狂的な支持が嘘のように、支持を落としているようだ。結局、去年の選挙の時点では、フィツォ政権の犠牲者とも言えなくはないジャーナリストのクツィアク氏が暗殺されて最初の選挙では、フィツォ党、コトレバ党以外であれば誰でもよかったのだろう。つまり、マトビチ氏が選ばれたのは、この人ならという積極的な選択ではなく、消去法で選ばれたということだ。だからこそ、迷走を始めるとやっぱり駄目だったかとすぐに見限られるのである。
言ってみれば、十年ほど前の日本の民主党政権みたいなものだ。お試しでチャンスを与えられて、能力を示せば、支持者を増やして長期的に政権をになうことになったのだろうけど、どちらも、批判するのは得意だけど、実務能力に欠け、それを批判されるのには耐えられないという典型的な野党体質を露呈してしまった。日本チェコに限らず、与党も野党も、偉そうなことを言っていても、なべてポピュリスト政党と化してしまっている世界的な傾向は、スロバキアも同じということか。
次の選挙で、すぐにフィツォ党が復活するとは思えないが、大統領だったキスカ氏が設立した新政党も期待したほど存在感を発揮できていないし、注目に値しそうなのは、フィツォ党内にいながらフィツォ氏からはちょっと距離を置いていて、フィツォ氏が対人を余儀なくされた後に首相を勤めたペリグリーニ氏が設立した新政党だろうか。無責任に予言しておく。
2021年3月31日24時。
2021年04月01日
国勢調査(三月廿九日)
土曜日の午前0時から始まったオンラインでの国勢調査は、10時間以上も回答を始められない状態が続き、技術的な問題だけでなく、渋滞も解消されて完全に問題なく回答できるようになったのは、日曜日になってからだと考えていいようだ。一日で初期不良を何とか解決できたのは、チェコにおけるデジタル化、オンライン化の流れの中では、比較的早かったといいたくなる。十年以上前の話だけど、自動車の登録システムの場合には、稼動に至るまでに何度も延期され、ようやく稼動したかと思ったら問題続出で、解決までに半年ぐらいかかったような記憶がある。
統計局もシステムが安定して稼動するかどうかに不安があるのか、オンラインでの回答期限を5月11日までと、一ヶ月延長した。当初の回答期間が、4月9日までと二週間ぐらいしか設定されていなかったから、延長期間のほうが長いという本末転倒ぶりである。それによって回答する人が同じ時間に集中しないようにということなのだろうけど、チェコ人なんて、スーパー何かの開店の際に行列を作ってまでできるだけ早く入ろうとする人たちが多いのだか、国勢調査でも開始直後に多くの人が殺到するのは予想できたと思うのだけどなあ。
うちのは日曜日の午後に回答したようだが、10分ほどで問題なく終えていたから、この時点で、ほぼ問題は解消されていたと考えてよさそうだ。ニュースでは土日だけで、全人口の十分の一、百万人ほどの人がオンラインで回答を済ませたと言っていた。それだけ、最初に済ませてしまいたいと考えた人が多かったということだろうし、初日の駄目っぷりを考えるとこれだけの人が回答を済ませられたのは意外でもある。
もちろん、チェコに居住する外国人として回答の義務があるので、今日うちのの指導の下、回答してみた。質問もあまり読まないまま、指示にしたがって答えていったので、細かい質問は覚えていないのだが、前回紙で回答したときよりは質問の数が減っていて、妙に偏っているような印象を受けた。特に前半は住まいのことについての質問がいくつも並んでいた。今後の住宅開発の参考にするのだろうか。
調査の目的の一つに、住民登録しているのとは違う住所に住んでいる人の数を把握して、より実態に近い人口を明らかにするというのもあるようだが、それには時期が悪いのではないかという疑念も残る。現在感染症対策の規制で、実家に戻っている学生が多く、本来であればオロモウツ在住で回答する学生が実家在住で回答した結果、オロモウツの人口が減る可能性もある。寮済みの学生は最初から実家で回答する可能性もあるけど。
回答をしていて、住所や、職種などを記入するところで、全部入力しなくても、ある程度入れると候補が限定されて、その中から選択できるというのは、オンラインならではの機能で回答を楽にすることが目的なのだろう。住所のほうは、通り名と建物の番号を入れると、町の名前まで入った候補が出てくる。ほかの町にも同じ名前の通りがあるのは知っていたけれども、こうして並んでいるのを見ると改めて実感がわく。
日本人的な感覚では、具体的な住所から町を確定するというのがちょっと落ち着かず、選ぶときに間違えるのではないかと不安だった。地方などの大きい地名から順番に小さいほうに選択していくほうが、間違いが少なくなるんじゃないかと考えるのは、日本的な住所表記になれているからだろうか。チェコもまあ通りの中での番号だけを先に書くようなことはしないから、アメリカ式の住所表記に比べればまだ対応しやすいのだけど。
一つだけ覚えている質問を挙げておくと、宗教を信じているかというものがあった。自分の考えの中に神道的なもの、仏教的なものがあるのは自覚しているが、直接信者かと聞かれて、そうだと答えるほどではない。日本の国勢調査でも直接具体的に仏教、神道の信者かどうかを問えば、日本の信者数が2億人なんておかしなことにはならないと思うのだけど、記名の調査だし、プライバシー云々でやっていないのだろうか。
ちなみチェコで最近増えているのが、この国勢調査の信仰する宗教に関する質問に、「ジェダイ教」と答える人だという。現実の宗教に絶望した人たちが、映画の中に救いを求めたのか、集団的な冗談なのかはわからないけど、ツィムルマンのことを考えたら後者かなあ。2011年の調査では1万5千人ほどの人が「ジェダイ教」の信者だと答えたらしい。そのうちカトリックを超えると面白いのだけどね。
2021年3月30日11時。