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2021年04月08日

非常事態宣言の終わり(四月五日)



 イースターの時期に規制を緩和すると、感染の拡大が起こるのは明らかだとして、規制緩和を拒否してきたチェコ政府だが、イースター開けの規制のあり方を巡って、駆け引きが始まった。一つは、学校への子供たちの登校の再開で、現在の非常事態宣言が切れる四月十二日月曜日からという方向で調整が進んでいるようだ。

 問題は、どのような条件で学校での授業の再開を認めるかで、文部省と厚生省の間で行われている調整にバビシュ首相が不満をたれて、実現するかどうかが怪しくなっている。当初の予定では、義務教育九年のうち、前半の五学年だけを対象に通学を再開し、一学年おきに隔週で通学させるということになっていた。つまり、今週、一年、三年、五年の子供たちが学校に出たら、来週は二年、四年の子供たちが学校で授業を受けるという形なのかな。隔週の振り分けは違うかもしれないし、各学年日とクラスしかないような小さな学校は、五年生まで全員一度に登校できるようだ。
 これに対して、バビシュ首相が、通学する子供たちは定期的に検査を受けることになっているのだから、隔週にする意味がわからないと言い出した。実は、この検査に関しても教育現場からは問題が指摘されている。検体の採取から自分でやる簡易検査キットを使うことになっているのだが、小学校の低学年の子供たちが、特に最初のうちは自分ひとりでできるかどうか心配だというのである。教員が指導、補助するにしてもクラスの子供たちの数を考えると、時間がかかりすぎるし対応し切れるとも思えない。

 それで、案として上がっているのが、保護者が、どうせ学校まで子供を送ってくるのだから、自分の子供の検査の補助を行うというものである。特例として検査のために保護者が教室に入るのを認めるなんて話も出ていた。問題は、子供たちには検査を受けて陰性であることを確認する義務があるけれども、保護者が感染していないことを確認するすべがないことである。もちろん、職場で検査を受けさせられたとか、すでにワクチンの接種を受けたとかいう保護者はいるだろうが、大半は子供が在宅授業のため、自分も仕事を休んで子供の面倒を見ている人たちである。陰性の検査結果を有しているとは思えない。
 また検査自体も、現時点で義務付けられているのはアンチゲン方式の簡易検査キットを使うことで、その精度に疑問がもたれている。どうせ、安全のためと称して検査を導入するなら、手間はかかるけれども精度の高いPCR検査を実施したほうがいいのではないかという意見もある。ブラトニー厚生大臣は、今は検査のキャパシティの問題でできないけれども、いずれは切り替えたいというようなことを言っていた。簡易検査キットを納入する予定の会社と縁のある政治家が異を唱えそうだけど。

 そして、現状では、非常事態宣言の延長が下院で認められる見込みがないことから、バビシュ首相は、延長を求めない方針を固めたようである。R指数が1以下となり、新規の感染者の数も、平日で七、八千、休日で千から二千と、一番多かったころと比べると半数以下に減っていることも、非常事態宣言を終わらせる理由になっているのだろうが、これまで閣外支援をしてきた共産党が、バビシュ政権への対応を見直そうとしていて、支持が得られなさそうなのも原因となっている。二度も、非常事態宣言の延長を求めて否決されるというのは、秋の選挙に向けては避けたいはずである。
 非常事態宣言が終結しても、規制の多くは継続されることだろう。ただ、オクレス間の移動の禁止だけは、非常事態宣言なしには不可能だというから、これは撤回されると見られている。ただ、これまでも警察の能力の限界でそれほど厳密に移動を阻止できていたわけではなく、実質的にはほとんど変わるまいと予測しておく。週一の検査の義務付けも残るだろうから、こちらの在宅勤務は続く。

 最後に、この件に関するチェコ人の冗談を紹介しておこう。バビシュ首相の非常事態宣言の「延長」はなしだと断言したのだが、それに対して、「nájezdy」にならないか心配だとコメントした人がいて、うちのは大笑いしていた。説明を受けるまでわからなかったのだけど、非常事態の「延長」も、スポーツの試合の「延長」も同じ言葉を使うことから、延長はなくても、アイスホッケーで延長でも決着がつかなかったときに行われる「nájezdy」、つまりはサッカーのPK戦みたいなものになると困るねということだったようだ。流石はアイスホッケー大国チェコである。
2021年4月6日18時30分。












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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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