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2020年08月02日
メンチンスキ神父考再び(七月卅日)
最近また、偽物ブランド品の販売サイトの宣伝のための迷惑コメントが増えている。それで、三年以上も前に書いた、殉教するために日本を訪れたポーランド人のメンチンスキ神父についての記事にコメントがついたときにも、また削除するべきコメントかと思ったのだが、短くもありがたいまともなコメントだった。おかげでさらに一歩、調査を進め知らなかったことを知ることができた。
過去の記事を読めと強要するのも申し訳ないので簡単に説明しておくと、ポーランドの貴族階級の出身でイエズス会に入った後、殉教するという目的のために、島原の乱を経て鎖国したばかりの日本に渡って長崎で処刑されたメンチンスキ神父について、資料によって名前が違うことについて問題にした記事である。歴史系の資料では「Wojciech(ヴォイチェフ)」になっていて、キリスト教関係だと「Albert(アルベルト)」になっているのだ。
これについて、
「アルベルト・メンチンスキー」と「ヴォイチェフ・メンチンスキー」は、同じ人物です。ラテン語表記とスラブ語表記で、表記に仕方が異なります。
というコメントを頂いたのだが、ポーランドかキリスト教に詳しい方だろうか。
最初に読んだときは、同一人物というのは、納得できるけど、「ヴォイチェフ」と「アルベルト」が同じ名前で、ラテン語とスラブ語の違いだと言うのには、首をひねった。チェコ語にも「ヴォイチェフ」に相当する名前があるし、「アルベルト」という名前も存在しているのだ。チェコ語とドイツ語などの外国語で大きく形が変わる名前があるのは、いくつか知っているけど、この二つの組み合わせは聞いたことがない。
とりあえず、チェコ語のウィキペディアで見てみたのだが、「メンチンスキ」は項目すら立てられていなかった。仕方がないので、読めないけど名前の表記ぐらいはわかるだろうと、ポーランド語版でメンチンスキを探してみると、名前の部分は以下のようになっていた。
Wojciech Męciński (Męczyński), Alberto Polacco, Albertus de Polonia
最初がポーランド語での名前で、二つ目三つ目が外国語だと思うけど、どちらもポーランドの「アルベルト」とか「アルベルトゥス」という意味だろう。同一人物というのはこれで間違いはなさそうだ。問題は「Wojciech」と「Alberto/ Albertus」の関係である。これ以上はポーランド語版では手も足も出ないので、チェコ語版で「Vojtěch」を調べてみた。このときは、アルベルトと共通するあだ名が出てくればおもしろいぐらいの気持ちだったのだけどね。
そうしたら、この名前の外国語での形のところに、ドイツ語、フランス語、英語では「Adalbert」になるという記述が出てきた。ラテン語では「Adalbertus」である。「アルベルト」そのものではないけれども、「アダルベルト」とアルベルトは音が似ていなくもない。
ということで「Adalbert」も調べる。こちらはチェコ語でも使われるけれども、ドイツ語起源の名前で、同根の名前として、「Albrecht」と「Albert」があると書かれている。「Albert」のところにも同様のことが書かれていた。あら不思議、ボイテフとアルベルトがつながってしまった。
しかし、語源の説明をみると、チェコ語の「Vojtěch」は、戦争や軍隊に関係するもので、「戦いの喜び」とか、「微笑む戦士」と解釈できるようだ。それに対して、ドイツ語起源の「Adalbert」のほうは、「高貴な者」とか「素晴らしい者」となっている。なんでこの語源の違う二つの名前が同じものとして扱われているのだろうか。
答えは、「Adalbert」のところに書かれていた。チェコの聖人の一人、聖ボイテフが、「biřmovací jméno」(よくわからんけど洗礼名かな)として、おそらくはドイツ語やラテン語にこのスラブ起源の名前に対応する名前が存在しなかったからだろうけど、指導を受けたマグデブルグの大司教のアダルベルトに敬意を表して、その名前を使わせてもらったことによるという。それで以後、聖ボイテフは、西スラブ語圏以外では、聖アダルベルトとして知られることになったのだとか。
それで、チェコ語のボイテフに相当する名前の西スラブ圏の人が、ドイツ語圏に出て活動する際には、アダルベルト、もしくはその派生形であるアルベルトという名前を使うようになり、ヨーロッパ全域に広がったということであろう。百科事典などの資料では、現地名、この場合はポーランド語での名前を使い、キリスト教関係の資料では、ラテン語の名前を使うということか。でもラテン語だとアルベルトルスになりそうだなあ。そうするとイタリア語の形かな。
コメントを頂いたおかげで、前回たどり着けなかった結論にまで到達できた。ありがたいことである。最初ちょっと疑ってしまって申し訳ない。
2020年7月30日23時30分。
参照したウィキペディアのページは以下の通り。
https://pl.wikipedia.org/wiki/Wojciech_M%C4%99ci%C5%84ski
https://cs.wikipedia.org/wiki/Vojt%C4%9Bch
https://cs.wikipedia.org/wiki/Adalbert
https://cs.wikipedia.org/wiki/Albert
サッカー界の武漢風邪騒動終わらず(八月朔日)
今シーズンのチェコのサッカーリーグは、三部以下のアマチュアが中心のリーグは早々に中止が決まり、二部は中断があけた後、トシネツチームの感染者発生という問題を乗り越えて何とか最後までリーグが行われたが、一部は、カルビナーの感染者発生で再中断し、再度再開しようという日にオパバで感染者が出て、順位が確定しないままリーグ戦が終了した。
これで終われば平和だったのだが、それではチェコではない。カルビナーのチームで陽性が判明してリーグが再中断に追い込まれたときには、降格を逃れるために意図的に感染させたんじゃないかという億節が流れたが、今回はモラビアシレジア地方の保健所からオパバチームで発生した患者についての情報を入手したチェコサッカー協会か、リーグ協会が、武漢風邪対策におけるルールを破った可能性があるとして、規律委員会にかけることを発表した。
感染者を出したことが咎められているのではなく、対策が不十分だった、もしくは決められた対応を取らなかったことが咎められているようである。考えられるとすれば、体調を崩して感染が判明した選手が検査前に練習に参加したことが問題にされているのだろうか。その結果、チーム全体が隔離、自宅待機状態におかれることになり、リーグは6試合を残して未完のまま終了することになったわけだし。ただ体調のおかしくなった日の練習に参加していなかった場合に、チーム全体の隔離が回避できたとも思えない。
オパバのチームの側では、当然この疑惑を否定しており、協会がかけた嫌疑のネタもとになったモラビアシレジア地方の保健所の関係者も、当の選手が当初練習中に感じていたのが疲労感で、それが練習による疲労感と区別できるものではないこと、実際に発熱などの症状が出た後は即座にチーム側の指導で医者と連絡を取って検査を受けていることから、チームと選手がこれ以上のことができたとは思えないというコメントを出している。
カルビナーの疑惑のときにも思ったのだが、協会としてはリーグが完結できなかった責任を誰かに押し付けたいのではないかとすら思えてくる。チェコ語でいうところの「熱いジャガイモの投げ合いと」いう奴である。感染者がでてリーグが完結しなかったことに関しては協会には責任はない。協会が責められるとしたら、リーグが全試合行われなかった場合どうするかについて、誰もが納得するようなルールがなかったことだろうけど、前代未聞の今年の状況では、これも責められることではなかろう。
規律委員会でのオパバの審議は来週行われるらしいが、罪ありと認められた場合には、最大で1千万コルナを超える罰金と、15点の勝ち点の剥奪が待っているようだ。オパバのような地方の弱小チームには、罰金もきついし、勝ち点の剥奪もこれが来シーズンに適応されるのであれば、降格チームも増えるし、残留の可能性を極めて低くすることになりそうだ。最終的にはお咎めなしということでけりがつきそうな気はするけどね。
武漢風邪で大変なことになっているのはサッカー界だけではなく、3月の時点で、始まっていたプレーオフを中断してシーズンの打ち切りを決めたアイスホッケーでは、すでに来シーズンに向けたキャンプが始まっているチームもあるのだが、どこぞのチームでは感染者が出てキャンプが中止になったという話もあるし、二部のホモウトフは武漢風邪騒動による収入の減少もあって経営が破綻し、来シーズンはプロチームを解散してアマチュアレベルのリーグに参戦することを決めている。以前から財政的に苦しんでいたチームは、選手側と給料の未払い分の減額の交渉をしていたようだが、合意に至らなかったようだ。現在の経済状況でホモウトフの代わりに三部からあがってくるチームはあるのかね。
来年に延期されたオリンピックの開催もどうなるかわからないし、スポーツ界の混乱はまだまだ続きそうである。スポーツが日常的に行われるというのは、人々の心の余裕にもつながるから、できるだけ早く元に戻ってほしいところではある。オリンピックはもう廃止でもいいけどさ。
2020年8月1日24時。