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2020年08月07日

武漢風邪選挙(八月四日)



 チェコでは、今年の秋に、四年に一度の地方議会選挙と、二年に一度、国内の三分の一で行われる上院議員の選挙が行なわれることになっている。それで、武漢風邪の流行が再度拡大し、収束の気配を見せず、感染者だけでなく感染の疑いで自宅監禁状態に置かれている人の数も増え続ける現状で、どのように選挙を実施するかで政治家たちが話し合いを始めた。

 もちろん、自宅監禁状態にない人に関してはいつも通りに選挙を行えばいいのだが、外出禁止常態に置かれる人たちに対してどのように選挙権の行使を可能にするかが問題になっている。増え続けるとは言っても、人口比にすれば1パーセントにも遠く及ばないのだから、国政レベルの選挙であれば、投票できなくても選挙結果にはほぼ影響はないといっていい。上院の選挙なんて全国81の選挙区のうち27箇所でしか行われないし、投票率も20〜30パーセントというところだから、普通に投票できない人たちの中に、投票を希望する人がほとんどいない可能性もある。
 問題は今回の選挙の中心が地方選挙だというところで、こちらは下院の選挙ほどではないが投票率は高い。それに、局地的に集団感染が発生している小さな自治体だと、人口の10パーセント以上が感染者で、その何倍かの外出禁止の人が出ることも考えられる。そうなると、投票できない人の存在が選挙結果に大きな影響を与えることになる。選挙権を行使するかどうかはともかく、行使できるようにするのが政治家の役割だとかいっている人もいたけど、ここで存在感を発しておかないと忘れ去られそうな政治家も多いからなあ。

 とまれ、国会での話し合いを前に、各政党がいくつかの案を出して、そのうちのどれを正式に審議にかけるかの話し合いをしていた。どんな案が出たのかすべてを知っているわけではないが、郵送での投票という、他の国で特に国外在住者の場合に使われているらしい方法は、内務大臣のハマーチェク氏によってなんだかよくわからない理由で否定されていた。

 それで、最終案として残ったのは以下の四つ。

@代理人、もしくは仲介人を使って投票する。
 ただでさえ、選挙違反、特に票の買収の多いチェコで、これはないだろうと思っていたら、政党間の話し合いで撤回された。珍しく建設的な話し合いがなされたようである。
 代理人というと普通の弁護士なんかと縁のない人たちは血縁者を選んで委任状を持たせることになるのだろうけど、今回は家族全員で自宅から出られないと言うことになっている人が多いはずだから、そもそも導入しても意味のない制度だったのだ。代理人の資格を認定するなんて話になったら、代理人の売込みで大変なことになりそうだ。どこの党なんだろう、こんなの提案したの。

Aドライブスルー方式
 ファーストフードの販売方式を真似て、自家用車で特設の投票所まで来て、一歩も外に出ないまま投票するのだとか。選挙管理委員が感染防止のための防護服を着て車の窓越しに本人確認をして、投票用紙を受け取る形になるようだ。
 そもそも自宅を出てはいけないのではないのかなんて質問はしても無駄である。選挙は特例扱いで、自宅監禁の対象者だけが集まる投票所を設定するから、他者との接触は最小限になるはずだという答えが帰ってくるに決まっている。もちろん車を持たない人もいるので、採用されるとしてもいくつかの方法のうちの一つとなるだろう。

B移動投票所
 投票所というのは正確ではないか。感染防止対策をした選挙管理委員が有権者の下に出向いて投票してもらうというもの。共産党政権下で行なわれた形だけの選挙で投票率を100パーセントに近づけるために、選挙に来なかった人のところに選挙管理委員が押しかけて投票を強要していたという話を思い出すが、すべての隔離対象者の元に出向くわけではなく、希望者は事前に連絡を入れて時間などを決めることが想定されているようだ。

C出張投票所
 老人ホームや病院などで集団感染が発生して施設全体が隔離状態におかれている場合に、施設内に特設の投票所を設置することが提案されている。地方議会選挙だから施設のある自治体とはちがうところに住所を置いている人はどうするんだろう。

 どれもこれも問題ありそうな案ばかりだけど、特別な事態なんだから仕方がない。来年に予定されている下院の選挙を前に、武漢風邪蔓延下の選挙制度を確立させて思惑もあるのだろう。すべての党が投票者が減ると自党が不利になると考えているように見えるのがおかしいけどさ。
2020年8月5日12時。









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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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