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2020年08月23日

ツィムルマンの夏5(八月廿日)



12. Cimrman v říši hudby
 いつものスビェラークとスモリャクに、音楽の担当のクルサークを加えて、復元されたツィムルマンのオペラを題材とした作品。最初の研究発表の部分でも、音楽活動とか音楽教育について語られていたと思う。ただ、音楽家としてのツィムルマンについては、既に過去の作品でも取り上げられているのだけど、整合性が取れているのかどうか不安になる。細かいことにはこだわらずに、それぞれの作品に登場する冗談を楽しむのが正しいのだろうけど、どこが可笑しいのかわからなくて笑えないところが多いのが悲しい。
 それはともかく、復元されたというオペラは外国人でも笑えるところが結構ある。そもそも「チェコの技術者のインドにおける成功」なんて題名からしてどこか可笑しい。この前はアフリカが舞台の戯曲だったけど、今度はインドでオペラである(実際の初演の順番は違うと思う)。ストーリーは、多分、スモリャク演じるチェコのエンジニアが、インドで正しいビールの製造法を教えるというか、事前に導入されたドイツ製の設備がうまく動かないのを、修理して使えるようにするというものだったと思う。

 そういうあるものをうまく使って、もしくは機械に独自の改善を加えて使えるようにするというのは、チェコの人たちの得意技で、時には想定されていないような使い方で機械を動かして生産できてしまうのが、日系企業の悩みの種だったりもする。チェコの人たちは、それをチェコの「黄金の手」なんて言って誇っているのだが、それがそのまま歌詞になっている。「zlaté ručičky」なんて歌いながらスモリャクが金色の手袋をはめた手をちらちらと見せるのには、笑ってしまった。
 いや、オペラの歌詞に、「チェコの技術者」とか「チェコのボルト、ナット、釘」なんてのが並んでいるのはどうなんだろう。インドの荘園領主?もドイツから来ている(という設定の)技術者もチェコ語で歌うのはいいけど、ドイツ語で叫ぶまではドイツ人だとはわからなかった。インドの領主にチェコのビールを飲ませて感動させるというシーンもあったけど、スビェラークもいっしょになって感動していたけど、何の役だったんだろう。やっぱり、わかるようでわからないのである。

 普通のオペラや演劇の舞台は、チェコ語で歌ったりしゃべったりしているのを聞いても、何を言っているのか聞き取れないことが多いのだけど、ツィムルマンの舞台は、オペラの歌詞も含めて、何を言っているのかは大体聞き取れる。問題は聞き取れても、意味が、特に隠された意味がわからないところにある。見るたびにわかるところは増えているとは思うのだけどねえ。あまりしていないけど、修行はまだまだ続く。


13.Dlouhý, Široký a Krátkozraký
 チェコのことを知っている人なら、題名からチェコの有名な童話と関係があることがわかるだろう。本来は、「Dlouhý, Široký a Bystrozraký」で、確か背の高い男と、横に幅広い、つまり太った男と、目ざとい男の三人が登場してあれこれする話だったと思うけれども、あんまり覚えていない。内容は覚えてはいないけど、チェコでは最も有名な童話のひとつだということは覚えている。ツィムルマンバージョンは、目ざといのではなく近視の男が登場することになる。
 研究発表の部分は、ツィムルマンの子供向けの童話についての考え方だったかなあ。童話劇のほうは……。いくつかの童話をごちゃ混ぜにしたような印象で、子供たちには受け入れられなかったという(ことになっている)のも納得である。大人の聴衆にとっては、そのごちゃ混ぜぶりも笑うべきところなのだろう。

 一番の見所は、呪いかなんかで男性に変えられてしまった女性が、王子さまが魔法のリングを使うことで女性にもどるシーンで、袖に隠れたり幕を下ろしたりしないまま、舞台の上で、観客が見ている前で、男性から女性に変身するのは世界的に見ても稀有なことらしい。とはいっても、付け髭を上から釣り糸で引っ張って剥ぎ取ったり、上から鬘を頭の上に落としたりするだけだから、他の劇場でやらないのも当然というかなんというか。付け髭とっても髭生やしてたし。こういうのを世界初とか言って誇るのもツィムルマン的な笑いなんだろうなあ。

 このシリーズも次で終わりかな。
2020年8月21日9時。










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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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