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2020年04月19日
自宅監禁日記(四月十六日)
いよいよ何も書くことがなくなってきた。何がつらいって、最近一日遅れで記事を書くことが多いのだが、一日前のことさえ何が起こったか覚えていない、いや正確に言えば、ここのニュースや出来事がいつ起こったものなのか、変わり映えのしない生活の中で判然としなくなっていることで、昨日の日付で今日のことを書いてしまわないように、神経を使うところである。
ということで、これまで書き落としてきたことを、時系列なんか無視して思いつくままに書きたてることにする。
非常事態宣言が出て、原則外出禁止が始まってすぐの子とだと記憶するのだが、ダナ・ザートプコヴァーが亡くなった。この名前を聞いて、あああの人がとわかる人は、よほどのチェコ通か、陸上競技の中でも槍投げの大ファンに違いあるまい。夫のエミル・ザートペクの陰に隠れて、外国ではそれほど有名ではないようだが、夫婦で金メダルを獲得したヘルシンキオリンピックはチェコでは今でも語り草である。近年は、最近亡くなったチャースラフスカーとともにチェコのオリンピック運動の象徴のような存在になっていた。
享年97歳。そんな高齢だとは思えない姿を見せていたと思うのだけど、また一人、共産主義の時代を生き抜いた伝説的存在が亡くなってしまった。残念なことである。残念と言えば、本来であればスポーツ界だけでなくチェコ社会を挙げて行われるはずだった葬儀が、関係者だけを集めて故郷のバツェノビツェで行われた。その様子をチェコテレビがスポーツチャンネルで中継したのだけが、救いと言えば救いである。非常事態宣言で結婚式は禁止されたけれども葬儀は禁止されなかったのもよかった。
スポーツ界では、サッカーのリベレツとヤブロネツが面白いプロジェクトを実施していた。アイスホッケーにしてもサッカーにしても突然のリーグの中断で、一部の試合はすでに前売り券が売れていて、チームは払い戻しの手続きをとると言っていたのだが、購入済みのファンたちの多くは、自分の応援するチームが経済的に苦しくなるのをわかっていて、払い戻しはしなくてもいいからチームのために使うように申し出ていた。
そのお金をコロナウイルス対策、とくに最前線で奮闘する医療機関に寄付したチームもあったと思うのだが、さらに一歩進めて自分たちでお金を集めて寄付するという流れを作ったのがこの二チームである。もともと隣接するリベレツとヤブロネツの試合は北ボヘミアダービーとして注目を集めているのだが、対戦予定だった日の試合のチケットをバーチャルチケットとして販売し、その売り上げをリベレツの病院に寄付したのである。実際にどれだけの人がチケットを購入したかは知らないが、万は越えなかったにしても千人単位の購入者はあったはずである。
その後、この同じようなプロジェクトを実施するクラブがいくつか出てきて、そのうちの一つがわれらがシグマ・オロモウツだった。シグマには、スパルタとスラビア、リベレツとヤブロネツのようなライバル関係にあるチームは存在しない。それで、シグマが選んだのが、1992年3月4日にオロモウツで行なわれたレアル・マドリッドとの試合だった。UAFAカップの四回戦でレアルと対戦したシグマは、敗退はしたもののホームでは1−1で引き分けるという大健闘を見せ、創立以来100年の歴史の中でも最高の一戦とみなされている。
シグマ・オロモウツではこの試合のチケットを当時と同じ1枚100コルナで販売し、売り上げをすべてオロモウツの大学病院に寄付する予定である。1人一回あたり8枚までという購入制限はついているが、購入は何回でもできるので、その気になれば何枚でも買うことができる。92年の試合には記録的な1万4千人以上の観客が集まったらしいが、寄付はそれを超えるだろうか。
最初にこのプロジェクトに気づいたときには、入場券を購入した人だけがこの試合をネット上で視聴できるようなサービスをしているのではないかと期待したのだが、そんなことはなかった。ただし特典がないわけではなく、現在公開準備中のシグマ創立百年を記念したドキュメンタリー映画の入場券を半額で購入できるようになるらしい。
このほかにも、医療機関への寄付活動をしているスポーツチームは多い。政府が頼りなくても自分たちで何とかしようとするのが、マスクの件もそうだし、チェコの民族性なのである。共産党政権下で鍛えられたと言うと怒られるかな。
2020年4月17日21時。
https://onemocneni-aktualne.mzcr.cz/covid-19
https://www.krajpomaha.cz/