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2018年09月13日

チェコ代表無惨(九月十一日)



 サッカーの日本代表は、ワールドカップ終了後最初の試合で快勝したらしい。ただ勝ったというだけでなく、親善試合ではある意味結果よりも大切な内容の面でも、大きな期待をもたらすものだったようだ。選出されたメンバーも新しい選手が増えて、ワールドカップ前のあの悲観的な状況は何だったんだと言いたくなるぐらい、マスコミの報道も好意的なものが多い。
 翻って、我がチェコ代表を見るに、ワールドカップのときも思ったけど、うらやましい限りである。こちらは過去のブリュックネル時代の栄光を心の支えに、無惨に落ちぶれてしまったチェコ代表の姿を眺めているしかないというのに。日本人なんだから素直に日本代表を応援しろよと言われても、大会前は期待するだけさせておいて結果は大惨敗というのを様々なスポーツで見続けてきた結果、日本代表を素直に応援できるスポーツがなくなってしまったのである。

 先週の木曜日だっただろうか、久しぶりにテレビでサッカーのチェコ代表の試合を見た。ワールドカップ直前の親善試合でオーストラリア代表に0−4で惨敗したのは知っているけど、中継はされていなかったのでどのぐらい酷い試合だったのかはしらない。ワールドカップ出場を逃してなお監督を交代せずヤロリームに任せることにしたのは、予選終盤若手の登用で多少チームが持ち直した印象があったから、そこから継続して強化が進むことが望まれたに違いない。
 前半は見られず後半だけ見たウへルスケー・フラディシュチェのスタジアムでのウクライナとの試合は、一言で言えば絶望的だった。さらに絶望的だったのは前半に比べればこれでもマシになったと解説者が語っていたことだった。前半は開始早々のドサクサまぎれに一点取った後は、一方的にやられる展開で、キーパーのバツリークの活躍でなんとか無失点に抑えていたけれども、最後の最後に失点して同点に追いつかれてしまったらしい。
 後半もマシになったらしいものの、ウクライナにいいようにされているのはあまり変わらす、チェコの選手たちはバラバラでチームになっていないような印象を受けた。これでは何のために監督を留任させたのかわからない。バツリークの活躍で失点は防いでいたけど、コリャ駄目だというシーンをいくつも作られていた。そしてまたまた最後の最後にバツリークとDFのブラベツの連携ミスから失点して敗戦。内容から考えたら1−2という結果で終わってよかったというところか。

 そして月曜日にはロシアで親善試合が行なわれた。こちらは相手がウクライナよりも上だったからか、さらに目も当てられない惨状だった。守備も攻撃もバラバラで、バツリークに代わって出場したキーパーのコウベクはかわいそうだとしか言いようがない。前半だけで3失点で0−3、これはチェコ代表になってからは初めてのことで、チェコスロバキア時代を入れても数十年ぶりのことなのだとか。後半ロシアが少しテンポを緩めたおかげで持ち直した時間帯もあったけど、一点返したら、ロシアがまたテンポを上げてきて連続して二失点。合計1−5の惨敗だった。もっと点差がついてもおかしくないような内容だったから、大惨敗だったといったほうがいいかもしれない。
 最悪だったのは監督も選手も何をやればいいのかわかっていないような状態に落ち込んでいることで、本来の能力を発揮できた選手がほとんどいなかったことである。二戦とも同じチームでプレーしている選手たちの連携を代表にも持ち込もうと期待したのか、現在チェコリーグ最強チームのスラビアの選手を大量に出場させていたけれども、何の効果もなかったし、これならスラビアをそのまま出した方がましじゃないかと思わせるぐらいだった。ブリュックネル後に監督になったラダの時代でもここまで絶望的な状況にはならなかったような気もするんだけどどうだったかなあ。オーストラリアに0−4で負けたのもチェコ史上初だったのだから、さらに4点差負けを積み重ねた以上は、チェコ代表史上最弱の代表チームということになりそうである。
 試合後監督のヤロリームは、自身の失敗を認めて、公開処刑に値するなんて自虐的なことを言っていたけれども、そのままロシアからの帰りの飛行機の中で解任というよりは、双方の合意で契約が解除されることになったらしい。ワールドカップ予選からの積み上げがないどころか、完全にチームが劣化していたし、当然の決定ではあったのだろう。ただ、ワールドカップ予選の敗退が決まったときに監督交代が行われていればという気はしなくもない。少なくとも4試合分、新監督がチーム作りに使えるはずだった試合と時間を失ったのだから。

 後任候補としては、2016/17年のシーズンにスラビアを久しぶりに優勝させたものの、去年のチャンピオンズリーグ予選でも、ヨーロッパリーグでも結果を出せずに昨年末に解任されたシルハビーが一番手として挙げられている。この人あちこちのチームで監督を務めリベレツも優勝させたことがあるから、有能な監督ではありそうだけど、去年のスラビアでは過剰なまでに獲得した新戦力の外国人選手をうまく優勝したチームに取り込むことに失敗して、それが成績が上がらない原因になっていたし、時間をかけてチームを育てていくタイプの監督だと思うんだよなあ。今のチェコ代表が時間を与えられるかどうかが問題かな。
 二番手はU21の監督を務めているラビチカ。この監督もスパルタ、リベレツで優勝経験があるし、オーストラリアのシドニーでも監督を務めて優勝させたことがあるんじゃなかったかな。ただA代表がロシアに惨敗したのと同じ日に、U21はギリシャに負けてヨーロッパ選手権の予選敗退が決定している。三人目がU19の監督で好成績を収めているカレル・クレイチー。プルゼニュでブルバ監督のアシスタントを務めていて、ブルバが代表に引き抜かれた後を受けて監督としてチームを優勝させたものの、シーズン終了後に辞任している。
 三人とも帯に短し襷に長しという感じで、個人的には、可能性は低そうだけど第四案、監督経験はなさそうだしライセンスを持っているかどうかも知らんけど、カレル・ポボルスキーにチームを任せるというのに期待している。ウクライナでもシェフチェンコが指揮を取っていたし、かつてチェコが最強だった時代の象徴の一人、ポボルスキーに代表の再建を託すのも一つの手である。名目上の監督にブリュックネルを据えて、相談役にするなんてことになったら、ブリュックネル信者としては最高だし、これで駄目ならしかたがないと諦めもつく。

 改めて日本代表がうらやましい。何の期待もできないチェコ代表を、これからしばらくは応援することになりそうである。
2018年9月13日11時30分。








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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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