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2018年09月05日
サマースクール落穂拾い作文A〈LŠSS2018〉(九月四日)
二つ目は、くじ引きで当たったコウモリをテーマにして書いた作文で、似非昔ばなしである。ちょっと長くて指摘された間違いも多いので、分割しながら間違いの解説をする。あれこれ説明していたら、例によって長くなったので二つに分けて投稿する。
Malá netopýří pohádka
Kdysi dávno za desatero horami a devatero řekami byl jeden osamocený netopýr, který žil v hluboké jeskyni. Neměl rodiče ani➀ sourozence ani manželku, prostě neměl nikoho jiného než sebe. Jednoho dne se rozhodl, že se vydá do světa, protože chtěl alespoň jednoho kamaráda mítA.
最初の間違いは、「ani」の使い過ぎ。これは否定形と共に使う言葉で、「〜も(ない)」という意味で使われるのだが、肯定の場合に使う「a」や「i」と同じで二つの名詞の間で使い、名詞が三つ以上羅列される場合には、最後の二つの名詞の間にだけ入れて、その前の名詞と名詞の間は「,」で区切るのが正しい。そんなことわかっちゃいるんだけど、日本語では「も」を繰り返すので、ついついそれにひきずられてしまうのである。
二つ目は語順。チェコ語は日本語と同様に比較的語順が自由なので、あれこれ順番を入れ替えて遊ぶというか、試すことが多いのだが、ここもその一つで失敗したところ。チェコ語の語順はよくテーマとレーマなんて言葉で説明されるのだけど、難しいことは考えないで、その文の中で一番重要だと思う情報を最後に持って来れば大体問題ない。個人的には、日本語風に動詞を最後に持ってくるのが好きなので、あれこれ試すのだけど、なかなかうまくいかない。
今読み返すと、自分でも何で「protože chtěl alespoň jednoho kamaráda mít」なんて語順にしたんだろと不思議である。動詞を最後に持って行くなら、「mít」ではなく「chtěl」であるべきなのだけど、さすがに「protože alespoň jednoho kamaráda mít chtěl」という語順には抵抗を感じたのかなあ。先生が修正してくれた語順は「protože chtěl mít alespoň jednoho kamaráda」。実験しようなんて色気を出さなければ自分でもこの語順にしただろうとは思う。
Když vyšel ven z jeskyně, slunce mu do očí svítilo až moc silně a skoro ho oslepilo. Chvíli lítal zmateně sem a tam, nakonec se narazil do stromu a spadl na zem. Ležel tam tak dlouho, až přišlo další ráno a jeden unavený pes, který utekl z císařského paláce v nedalekém městě. Pes netopýra očuchalaB tak dlouho, dokud neprobudil netopýraC.
三つ目の間違いは、完了態と不完了態の問題。ここは、日本語だと変な文になるけど、「犬はコウモリを目覚めさせるまで臭いをかいだ」という意味になるから、一度嗅いでお仕舞ではなく、こうもりが目覚めるまでの間は嗅ぎ続けるわけだから、不完了態の「očuchával」を使わなければいけなかったのに、不完了態の「očuchala」を使ってしまったのである。しかも主語が犬で男性名詞活動体なのに過去分詞の女性形を使っているし……。ちなみにこの動詞、特に犬が臭いをクンクン嗅ぐようすを表す言葉である。
四つ目は、名詞を使うか、代名詞を使うかという問題。チェコ語では日本語と比べると遥かに代名詞を使うことが多いのだけど、犬とコウモリという二匹の男性名詞で表される動物が登場しているので、代名詞ではわかりにくいかと、名詞を使って「dokud neprobudil netopýra」にした。しかしよく考えてみれば、動詞の主語が犬であるのは明白だから、そこに代名詞の男性単数4格があれば、犬ではなくコウモリを指すのも明らかである。ということで、ここは「netopýra」の代わりに「ho」を使うのが正しい。ただし、「ho」は小さな弱い言葉なので、文中の二番目の位置に来やすいという傾向がある。修正後は、「dokud ho neprobudil」となるのである。
„Hele, co jsi zač? Co děláš na ležatoD na zemi, vidíš něco zajímavého?“, ptal se pes.
次の間違いは、「na ležato」を二語に分けたこと。「naležato」と修正された。「ležato」は動詞「ležet(横になる)」からできた形容詞の中性単語尾形で、「naležato」で「横になって/寝転がって」という意味になる。問題は、この手の形容詞の中性単語尾形に前置詞、もしくは接頭辞がついた場合に、二語のままなのか、一語化するのかである。チェコ人でも人によって言うことが違ったり、どちらでもいいと言われたり、ややこしいことこの上ない。
例えば、「左」だが、場所を表す場合には「v」を使って「vlevo」、方向を表す場合には「do」を使って「doleva」となる。これなんか語尾が活用されているから、二語でもいいような気がするけれども、一語化して使われることが多い。耳で聞いても区別はできないし、シモナがもらっていたチェコ語の正字法の本はこんなところを確認するのに使うのである。
„No...člověče, ani nevím, kdo jsem, ani co jsem chtěl dělat. Ty asi nevíš, že.E No…možná jsem něco hledal, ale co?“,F odpověděl netopýr poněkud smutně.
六つ目の間違いは、「〜だよね」と強く確認するための疑問文で文末に疑問符を忘れたことと、動詞の「nevíš」を受ける「to」を忘れたこと。修正後は「Ty to asi nevíš, že?」となる。「to」については、授業中に先生から、チェコ語では、特に話し言葉では頻繁に使うから、入れるかどうか悩んだときには、とりあえず入れておけという説明を受けたのだった。これ書いたときには、悩みもしなかったからなあ。
七つ目は、会話文を直接話法で示して、その後に直接文を続けるときの処理のしかたの問題。会話文だけでなく引用の場合もそうなのだが、後へのどう接続させるのか、ルールがいまいちよくわからない。会話文の場合には、日本語のように会話文だけで独立させて改行を入れてしまうのが一番簡単で確実な方法である。宿題でそれをやっても面白くない。ということで日本語の「「〜。〜? 〜?」と言った」的な文になるようにしてみたのだが失敗。「ale co?“, odpověděl」ではなく、「?“」の部分で文が終わったと判断して、「ale co?“ Odpověděl」と「odpověděl」は大文字で始めるのが正しいようである。
2018年9月4日17時35分。