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2018年04月14日

久しぶりにプシェロフへ(四月十一日)



 特に書かなかったけど新しいパスポートは、申請から二週間後に無事に受け取ることができた。本当は一週間後に取りに行くつもりだったのだけど、電車の運賃を確認したらイースター前だったせいか、レギオジェットの運賃が、レオエクスプレス並みに高くなっていて(レオはもっと高くなっていただろうけど)、ここまで出してプラハに行きたくねえと、一週間延期したのである。
 問題はと言えば、パスポート発行の手数料をきっちり準備するのに集中したせいで、それ以外のお金をあまり持たずに出かけたことで、昼食を知人と一緒にとる約束をしていたので、途中でトラムの中から見つけた銀行の支店でいくらか下すはめになってしまった。
 パスポートの受け取りの際に大使館の窓口の人に、チェコ側にもパスポートが新しくなったことを報告してくださいねと言われたので、言われなくてもそうするけど、プシェロフの内務省の事務所に出かけなければならない。月曜日と水曜日は午後もやっているはずなので、時間がかかることを想定して、水曜日に出かけた。本当は午前中から出かけるつもりだったのだが、ちょっと眠くて、午後一番を狙って一時ぐらいに到着できるようにオロモウツを出た。

 久しぶりの内務省の事務所は、新たに順番待ち用の番号札を発行するシステムが導入されていた。以前は数が少なかったからいいけど、自分たちで順番を自分はこの人の次とか考えていなければならなかったから楽になった。電話やネット上で予約もできるようになったみたいなことが書かれているけれども、パスポートが変わったということを報告するだけだから、時間がかかるとも思えないし、以前よりも窓口が増えていて入れ替わりも早く、待っている人が結構いた割にはすぐに順番が回ってきた。
 変更の手続き自体もすぐに終わった。これなら二時にはオロモウツに向えると思っていたら、担当の女性が、長期滞在許可がパスポートに貼るタイプの物を使っているから、新しいカードタイプの物の手続きをしましょうとか言いだして、パスポートを返してくれなかった。隣の窓口で写真を撮ったり指紋をとったりするから、またもう少し待っていてくださいねと言われたときには、せいぜい30分も待てば順番が回ってくると思ったのだ。
 結局、二時間以上待たされて四時ぐらいになってやっと順番が回ってきた。待っている人たちの中に子供を連れた家族が多く時間がかかったのと、事前に予約してあった人たちが優先的に呼ばれたのがここまで待たされた理由である。こちらはこういう事態になるとは思ってもいなかったから、予約のしようもなかったんだけどね。正直営業時間が終わる五時までに順番が回ってこないんじゃないかと思ってしまうほどだった。PCも持参していたけれども、なかなか使い始められなくて、えいやで使い始めたらすぐに順番が回ってきた。間の悪いことである。

 ビオメトリカとチェコ語で呼ばれる生体認証用のデータ取りも、あの待ち時間は何だったんだと言いたくなるぐらいすぐに終わり、写真を撮られてこれでいいかと聞かれても、ナルシストならざる身には、これ以上よくならないからそれでいいですと答えるしかない。指紋は左右の人差し指だけを取られたが、確認のためにそれぞれ二回ずつ装置の上に載せることになった。昔、日本の無犯罪証明を申請したときのつらさを思うとあっさりしたものである。
 今は知らないけれども、日本で申請したときには朱肉ではなく黒い粉末を付けて、紙に側面から押し付けて指を回転させるような形で指紋を取られた。なかなかうまくいかなくて担当の人に指を持たれて動かされたのは結構痛かった。プラハの日本大使館で申請したときは朱肉になっていたと思うけれども、厄介だったったことは変わりない。

 そして、新しいカードタイプの滞在許可証は、当然その場で発行されるわけがなく、五月の半ばにまた取りに来ることになってしまった。日時は手続きの順番で決めているらしく、こちらから要望を出すことはできなかった。これだけたくさんの申請者がいれば、機械的に処理するしかないのはよくわかるので、文句はないし、指定された日時も問題のないものだったからいいのだけど、一言この日でいいかなと聞いてくれると嬉しかったかな。まあオロモウツ地方の役所なので、都合が悪いことを説明すれば日時は変えてくれると思うけどさ。

 当初の予定では、二時前にはプシェロフの街中に出られるはずなので、そこで遅めの昼食をと考えていたのだが、結局空腹を抱えて駅に戻り売店でサンドイッチを買って、ちょうど到着した電車に飛び乗ることになった。ここだけは最高と言いたいぐらいタイミングがよかったのだけど、全体的には待ち時間の長い一日だった。昔通訳の仕事をしていたときにも思ったのだが、待つというのはものすごく疲れるのである。それで、予定よりも早く寝てしまって、この駄文を書く時間がなくなったのは仕方がないことなのである。

 おお、なんか日記っぽい。
2018年4月12日




 どうしてここにこの写真を載せたかわかる人は、モラビアに詳しい人であろう。チェコビールに詳しいでもいいかもしれない。

TST safari (サファリ) バイソン 野牛 ウシ フィギュア おもちゃ 290829





posted by olomoučan at 06:54| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ

2018年03月28日

国民芸術家続(三月廿五日) 



 ふどばさんのコメントで存在を思い出した「národní umělec」と「zasloužilý umělec」について記事を書いたら、知り合いにこの称号を持つ方がいるというななしさんからコメントを頂いた。結構ネガティブなイメージを持っていたのだけれども、実際に受賞された方々の中にはそれを誇りに思っている方もいるという話を読んで、チェコスロバキアの共産党政権というものの評価の難しさを改めて思い知らされた。

 一般には共産党=悪で、共産党員だった人や、秘密警察の協力者だった人も批判の対象になることが多く、今でも信仰を捨てず共産党員だという人以外は過去を隠していることが多い。熱心に活動していた人でも、共産党員だったことがわかると、あれはキャリアのために仕方がなかったんだという言い訳をする。たしかに、昔師匠から、英語を大学で勉強したかったけど、母親が農場の国有化の際にあれこれもめたせいで認められず、共産党に入党すればと言われて心が動いたと言っていたことがあるし、そういう面もあったのだろう。
 しかし、それとは別に、自分の意思で、共産党政権の内部に入って守るべきものを守ろうとした人たちもいるらしいのだ。以前もちょっとふれたけれども、共産党時代のコメンスキー研究者の代表的な存在と見られている学者は、その学説があまりにも共産党よりで現在では強く批判され評価も低くなってしまっているのだが、このブログの主役の一人H先生の評価は全く違っている。

 あの時代、共産党に支配された学界の内部でああいう学説になるのは仕方がなかったのだという。そして何よりも大切なのは、その学者が存在してチェコのコメンスキー学界の頂点に君臨してある程度共産党に都合のいい説を発表することで、チェコスロバキアのコメンスキー研究を守ったことだという。H先生は、仮にあの人が共産党の内部でああいう活動をしていなかったら、チェコスロバキアのコメンスキー研究は壊滅していた可能性もあるのだと仰っていた。
 H先生自身は、共産党政権に対しては反対の立場を崩さず、研究を続け論文を発表するのにも、本を出版するのにも苦労し、博士の学位はブラチスラバの大学の先生の好意で半ば秘密に取らなければならなかったというけれども、先生が秘密でとはいえ研究を続けられたのも、共産党政権の内部で信を枉げてまで活動していた学者達のおかげなのだろう。H先生に博士号をとるチャンスを与えた教授もその一人で、H先生の学位の件で処罰を受けかねなかったのだという。

 こんなことを考えると、「národní umělec」と「zasloužilý umělec」なんかを管轄していた共産党政権の文化行政の担当者の中にも、そういう内部から文化を守ろうとした人がいたのだろうと思われてくる。だから、共産党を嫌いつつ称号を誇りに思っている老芸術家達は、共産党政権に叙勲されたことではなく、政権内部で文化を守るために奮闘していた担当者に、共産党政権にふさわしい芸術家ではなく、チェコスロバキアを代表する芸術家として認められたことを誇りに思っているのだと考えておきたい。
 もちろん、ここに書いたことは単なる憶測に過ぎないのだけど、共産党政権の時代のことはあしざまに振り返るのに、当時の文化、映画やテレビドラマなどについては、多少の共産党臭があるものも含めて愛してやまないチェコ人たちを見ていると、あながち間違ってはいないような気がする。

 ついでに秘密警察への協力者についても一言しておけば、協力者として登録され監視された人物の情報を秘密警察に提供していた人たちの中にも、積極的にすべての情報を上げてくる協力者と、当たり障りのない情報しかあげてこないやる気のない協力者がいたらしい。この件に関しては、一番重要な協力者の名簿は革命直後に処分されたという話もあるし、名簿に載っているのは本名ではなくコードネームらしいし、チェコ史の闇の一つになってしまっている。
 全貌が明かされることはないだろうけれども、秘密警察と非積極的協力者の間の虚虚実実の駆け引きがあったとすれば、小説とか映画なんかの面白い題材になりそうである。誰か書いてくれんかなあ。できれば日本語読みたいものである。
2018年3月25日24時。





 検索したらこんなのが出てきた。3月27日追記。

チェコスロバキア社会主義共和国 『社会主義労働勲章』






posted by olomoučan at 05:51| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ

2018年03月24日

国民芸術家?(三月廿一日)

 

 先日形容詞「národní」につける男性名詞活動体が思いつかないというようなことを書いたら、ふどばさんからコメントをいただいた。「národní umělec/umělkyně」はどうだというのである。そういえば、いたねえ、そんなのが。最近古い映画を見てもタイトルロールまで熱心に見なくなっていたから、すっかり忘れていた。「umělkyně」は女性形だから違うけれども、「národní umělec」のほうはふどばさんがおっしゃるように、男性名詞の活動体に「národní」がつけられたものである。

 では、これが何を指すかというと、ふどばさんは人間国宝みたいなものかと想像されているが、現在では廃止されているし、そこまで大層なものではないと思う。日本の制度で考えるなら、芸術家に与えられる文化勲章みたいなものだと考えるのがいいかもしれない。いや、政治的に利用されていたことを考えると国民栄誉賞のほうが近いだろうか。授与者の数を考えると二つの中間ぐらいかな。
 この「národní umělec」が最初に贈られたのは戦後すぐのことだと言うから最初は違ったようだが、共産党が政権を握って以降は、共産党の人気取りに使われたものなのである。共産党政権に都合のいい活躍をした芸術家に授与されたと言う話もあるけれども、国民的に人気のある俳優や歌手なんかにも授与して、共産党政権のプロパガンダに使ったのだとか何とか。そうなると、あの神のカーヤことカレル・ゴットも授与されたのだろうか。トーク番組でそんなことを言っていたような気もするけれども正確には覚えていない。

 われわれ日本人がこの「národní umělec」を目にするとすれば、上にも書いたけれども共産党の時代の映画のタイトルロールぐらいだろう。俳優や監督などの名前の前にこの称号がついていることがある。件の「トルハーク」でもキャスティングの部分で登場する名優ルドルフ・フルシンスキーの名前の前にこれが付いていたはずである。
 いや、もう一つの奴だったかもしれない。「národní umělec」と似たような称号に「zasloužilý umělec」というのがあるのである。形容詞の「zasloužilý」は、「zasloužit」という動詞の過去形から派生したもので、「業績を上げた」とか「功績のある」というような意味の言葉である。文化功労賞なんて言葉が頭に浮かんだけれども、日本語のそれがいちいち映画やテレビ番組などの出演者名の前に記されることがないのと違って、チェコの場合には、正確にはかつてのチェコの場合には、まるで肩書きのように記されていた。

 もちろん、「národní umělec」「zasloužilý umělec」という称号を得たからといって、その人が共産党の支持者であったというわけでは、必ずしもない。一部には今でも共産党に忠誠を誓うというか何というか、共産党の集まりがあると出席して歌を披露するかつての人気歌手もいるようだけれども、この人が称号を持っているかどうかは知らない。ほとんどの人は、現在ではこの手の称号を使用することはないし、「憲章77」に対して、共産党政権が準備し多くの俳優などの芸術家に署名させた「アンチ憲章」と同様になかったことにされているというのが実態に近い。
 トーク番組なんかで司会者とゲストの仲が特によかったりすると、冗談として使われることもあるけれども、ふれられたくない過去という場合が多いようである。キャリアのために共産党に入党したなんていう言い訳をする政治家が多いのと同じで、俳優としてのキャリアのため、いや俳優を続けるためには、共産党政権が与えるという称号を拒否することはできなかったのだろう。
 この辺の事情も、もちろん秘密警察への協力者の問題も含めて、チェコでは、冷戦後の時代、ビロード革命後の時代が終わっていないのだという印象をぬぐえない理由である。第二次世界大戦後の時代を終わらせられない日本の人間があれこれ言えることではないけどさ。

 それから、もう一つ映画で見かけるものに「nositel řádu práce」というのがあった。これは直訳すれば「労働勲章受賞者」となる奴で、いかにも共産党政権の与えそうな名称の勲章である。個人ではなく、オーケストラなどの団体の名称の前につけられていることが多いから、団体に与えられたものだったのかもしれない。
 それはともかく、「národní umělec」と「zasloužilý umělec」、それに「nositel řádu práce」の中で、どれが一番上で、どれが一番下なのかは知らない。以前調べた気もするのだけど、すでに廃止されたものであまり重要ではないので、覚えられなかったのである。
2018年3月21日22時。







posted by olomoučan at 08:27| Comment(1) | TrackBack(0) | チェコ

2017年10月21日

日本で手に入るチェコの絵本の話(十月十八日)



 絵本がたくさん置かれているらしい「だあしゑんか」に実際に行かれているというhudbahudbaさんのコメントに、チェコ語の絵本もあるようなことが書かれているので、チェコの絵本について少々薀蓄をばたれてみよう。




 まずは、ベチェルニーチェクでアニメにもなっているクルテク、もしくは指小形でクルテチェクである。この『もぐらとずぼん』が確か第一作で、その次が『もぐらとじどうしゃ』だったかな。
 ズデニェク・ミレル原作のこの絵本、と言うか、絵本から誕生したキャラクターは、日本も含めて世界中で人気を博しているわけだけれども、数年前に亡くなったミレルの遺産をめぐる遺族の争いが起こっていて、結構厄介なことになっている。昨日も、ミレルが亡くなる直前にクルテクの使用権を譲り受けたと主張して、さまざまな会社に使用の許可を出していた孫娘が、遺産の管財人によって訴えられた裁判で負けたというニュースが流れた。
 この手の著作権ビジネス、版権ビジネスというのは、大金がかかっているだけに遺族の間でも一度こじれるとなかなか解決できない問題になってしまうようだ。他にも子供向けの人形劇のフルビーネク(あんまり好きじゃないけど、これも絵本になっていたかな)でも、権利をめぐって争いが起こっているようだし、せめて子供向けの絵本、キャラクターについてはこの手の醜い争いが起こらないようにできないものかと思う。
 とまれ、この判決について、孫娘側の弁護士は、キャラクターグッズを作成する許可を出す権利は否定されたけれども、クルテクを使った新しいストーリーを作ることが禁止されたわけではないと語っていた。つまり、クルテクとその仲間たちを登場人物にしながら原作者の全く関わらない物語が生産されるということである。嫌だなあと思った人はもう遅い。こちらをごらんあれ。
https://kultura.zpravy.idnes.cz/krtek-a-panda-v-tv-0zi-/filmvideo.aspx?c=A160329_224424_filmvideo_spm
 中国に売りにだされたクルテクは、あろうことか3Dアニメーションとなり、パンダと共演しているのだ。しかも、普通にしゃべるのである。クルテクのよさの一つはほとんどしゃべらないところにあるのに、饒舌なクルテクなんてクルテクじゃないと思うのは、ファンなら当然であろう。特にファンではないけれども、チェコに住むものとしても当然なのである。中国と組んで、「マフとシェベストバー」の実写版も作られていたなあ。あれもクルテクほどではなかったけど、やめてくれだった。


 もう一つ、恐らく日本でも有名なのが、ペトル・シースがガリレオを描いた『星の使者』であろう。この作品は、もともとアメリカで発表されたためチェコの絵本だとは思っていない人もいるかもしれない。チェコの絵本というのは間違っているのかな。正しくはチェコ人が描いた絵本というべきだろうか。


 シースは、もともとはチェコで映画関係の仕事をしていたらしいのだが、後にアメリカに亡命している。以前出演していたトーク番組では、確かこの絵本『星の使者』が、たまたま時の大統領夫人の目に留まったことで全米的に有名になり、それが世界に広がったとか言っていたような記憶がある。
 ってチェコ語のウィキペディアで確認したら、アメリカに渡ったのは1984年のロサンゼルスオリンピックの放送ための、ボート競技をテーマにしたアニメーションのオープニングを作成するためだったらしい。チェコスロバキアは東側の一員としてボイコットすることになったので、帰国命令が出たのを無視してアメリカに残ったという経緯だったようだ。
 それにしても、この日本版の『星の使者』、出版社が徳間書店になっている。徳間と絵本、うーん、似合わん。徳間にしてもカッパノベルズの光文社にしても、意外なところで意外なジャンルの意外といい本を出していたりするから侮れないんだよなあ。そうなると、お高く留まっている岩波なんかよりずっといい仕事をするんだよ。


 もう一冊、絵本じゃないけど子供向けの本としてお勧めなのが、インテリアとして販売されているズデニェク・スビェラークの本。この中の一冊目が、ズビェラークの本で地の分は、きれいなチェコ語で書かれているはずなので、チェコ語の勉強にもいいはず。話し言葉の部分はプラハ方言も出ていたかもしれない。これの一冊目がそれ。

チェコ製 絵本 原本(5種) 小説 えほん チェコ語 インテリア



 寝る前の子供に聞かせるお話が尽きてしまったお父さんが、その場ででっちあげるというお話で、でっちあげたお話が中心になるのだが、題名はお父さんのでっちあげたお話を聞いて、お母さんが思わず「うまい」と漏らしてしまう言葉である。個人的には、チェコのノバー・ブルナの作品を、一緒くたに高く評価するのはどうなのかねという気持ちがあって、あの辺を見るぐらいだったら、スビェラーク、スモリャクのツィムルマンコンビが出てくる作品を見たほうが、よっぽど当時のチェコのことが、チェコの映画のことがわかるんじゃないかと思うということで、この続きは映画である。
2017年10月18日23時。





posted by olomoučan at 05:37| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ

2017年10月13日

ハブルマン氏の製粉所(十月十日)



 日本にいたら体育の日で仕事が休みだったのにと思ったのだけど、よく考えたら東京オリンピックを記念して制定された体育の日も、ハッピー・マンデーと言う名称からして正気を疑うレベルの愚行のせいで移動休日になっていて、昨日が休日だったのだ。
 とまれ、hudbahudbaさんから、以前簡単に紹介したチェコ映画「ハブルマン氏の製粉所(Habermannův mlýn)」について、ユライ・ヘルツの映画じゃないかという質問を頂いた。この映画ニュースで内容を確認して実際に映画館に見に行った人に話を聞いただけで、自分では見ていないので監督の名前までは覚えていないのである。覚えているのは、主演がカレル・ロデンだということだけ。

 ということで、ちょっと調べてみることにした。こういうときには、ネット上の映画のデータベースFDb.czが便利である。ハブルマン氏の映画のページはここ。
 https://www.fdb.cz/film/habermannuv-mlyn/56717
映画の公開は2010年、原作はヨゼフ・ウルバンという作家が2001年に発表した同名の作品で、チェコだけでなく、ドイツ、オーストリアとの共同制作になっている。

 監督は確かにユライ・ヘルツである。驚いたのが、主演のロデンが演じたのがハブルマン氏ではないことである。殺すチェコ人の役なのかな。ドイツ人ということになっているバブルマン氏とその妻を演じているのはドイツ人の俳優のようである。
 ただし、この映画とその原作に対しては、史実に基づいているとはいえない部分があるという批判も存在するようである。ハブルマン氏は、ズデーテンドイツ人ではなくチェコ化したドイツ人で、殺されたのも個人的な復習の結果なのだという説もある。ことの正否を判断するほどこの事件について詳しいわけではないけれども、戦争の終末期、権力の空白期には集団的な怨念だけでなく、個人的な怨念も爆発しやすいということなのだろうか。

 テレビで放送されたこともないわけではないと思うのだが、なぜか見ていない。よくわからない理由で見る気になれなかったのだけど、ちょっと考えてみて思いついたのが、この映画がチェコ映画にしては珍しくシリアスに撤しているように見える点である。
 チェコの映画というのは、どんな悲劇であってもコメディの要素が強く入っている。チェコ人にしか笑えないものもあるけれども、どんな苦難の中でも笑いを救いにしていたのがチェコ人の歴史なんだと言わんばかりである。さすがに、ドイツ人の悲劇を描いた映画で同じのりはやれないだろうというのもあって、救いのない悲劇になっているような気がして二の足を踏んでしまうのである。

 監督のユライ・ヘルツも、名前は有名だし、顔も見ればわかるけれども、この人が監督した映画をまともに見た記憶がない。その点では、同じユライでチェコスロバキア時代のスロバキア出身のユライ・ヤクビスコも同じだなあ。あの人の世界的大作?「バートリ」も、チェコの怪優ポリーフカが出演していたけど、見る気になれなかったし。チェコの映画で史実に即しているというのをうたい文句にしたのってあんまり魅力がないんだよなあ。
 とまれ、ヘルツ監督の映画で見たことがありそうなのって、子供向けの童話映画の「蛙の王子様」ぐらいのものである。これも見たと言っても、テレビをつけっぱなしにして他のことをしながら要所要所で画面に視線を投げるような見方しかしていないので、ストーリーも配役も何も覚えていないのだけど。

 ヘルツの映画で見てみたいと思うのは、ラディスラフ・フクスの原作を映画化した「火葬人」(原作の日本語訳を使用する)である。チェコ語の題名の「Spalovač mrtvol」は直訳すると「死体を焼く者」となって、なんとも言いがたい忌まわしさを感じさせるのだけど、1969年に公開された映画では、チェコで史上最高の名優と評されることもあるルドルフ・フルシーンスキーが主役を演じている。
 古い映画で滅多にテレビで放送されないのでまだ見たことはないのだが、知り合いの中に、若い人の中にも、この映画が一番好きだと言う人がいて、一度目を通してきたいと考えているところである。ただ、日本語訳の表紙にもこの映画の一場面が使われているのだけど、フルシーンスキーの表情に不気味なものを感じてしまって、DVDを買ったりネット上で探したりしてまで見ようという気にはなれないでいる。
 実は原作にも手を出そうとしたことがある。何が原因だったかは覚えていないけど、最初の数ページで挫折してしまった。やはり小説は速読で、とにかく先に進みたい活字中毒者にとって、熟読するしかない外国語での読書は苦行に等しいのである。勉強の一環として読むのであれば問題にならなかったのかもしれないが、本も映画も存在を知ったときには、チェコ語の勉強をやめて久しくなっていたし。

 とりあえず、ハブルマン氏の映画は、ユーチューブの以下のチャンネルから見られる。一応「ただで合法的に」と書かれているので、アドレスを挙げておく。ただし、字幕はついていないようである。
https://www.youtube.com/channel/UCg5m6u890_WGiqOsbJ3Mr4w
映画のビデオに直接リンクするのはちょっとはばかられるので、チャンネルにしておく。

 字幕は、チェコテレビのドキュメンタリー番組のチェコ語字幕制作に協力したことはあるけど、映画の字幕は作ったことないなあ。あんまりやりたいとも思えないけど。
2017年10月11日14時。



火葬人 (東欧の想像力)







posted by olomoučan at 06:55| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ

2017年10月09日

レシート宝くじ3(十月六日)



 参加者としての登録が終わったら次は、レシートの登録である。そのページ行く前に、もう一度ルールの書かれたページに戻ろう。
 https://www.uctenkovka.cz/jakhrat#pravidla
上から三番目の項目としてレシートに印刷された登録に必要な情報の説明がなされている。ダミーのレシートで黄色で強調されている部分が必要になるようだ。

 一番上の「DIČ」は、税金IDナンバーとでもいうべきもので、納税の義務を有する法人、個人事業主などが税務署に納税者として登録されたときに与えられる識別のための番号である。この番号は、消費税関係の処理にも使われるのだが、レシート、領収書などの書類には必ず記入されることになっている。チェコ国外のEU内でも使用できるように番号はアルファベット「CZ」で始まることになっているようである。
 ちなみに、「DIČ」の前にある「IČ」は「IČO」と書かれることもあるのだが、法人や個人事業主、それに非営利団体などに振り分けられているIDナンバーである。だから、納税の対象となっている場合には、番号が二つあるということになる。レシートも含めて、請求書や領収書なんかの書類には、必ずこの番号が記されることになる。

 次に黄色くなっているのは、日付と時間である。ということは、レシートを登録してくじに参加するためには、日付だけでなくて時間も入れなければならないのか。面倒くさいことである。いや、ここで面倒だと考えるような人は、こんなくじには見向きもしないのだろう。
 ついでに、その下の品目とその値段が書いてある一番後ろについているABCは、消費税のカテゴリーを示している。チェコではその下のDPHとかかれたところを見ればわかるように、10%、15%、21%の三つのカテゴリーに分かれているが、基本的な税率はCの21%である。日本が消費税10%にするしないで、もめているのを見ると税率低くていいねえと思ってしまう。チェコも昔は食品などが例外的に5%だったんだけどねえ。

 さて、次に必要になるのは、買い物の総額である。スーパーなどでは、個々の品物の値段にすでに使わなくなったハレーシュが使われていることが多い。そのため、総額もコルナで終わらす、ハレーシュまで表記されるのだが、実際に支払うときには端数は切捨てか繰上げかで請求されることになる。レシートに表記されるのは、ハレーシュまでの総計なのか、繰上げ処置の済んだ数値なのかわからない。とにかく、レシートの「Celková částka」と書かれているところの数字を書いておけばいい。
 その下の黄色い部分は、消費税の処理の仕方の種別を示しているのだろう。普通のもとと簡易化されたものに別れる。それぞれの単語の意味はわからなくても、登録の際には、記入するのではなくどちらかを選ぶことになるだろうから、ここに書かれているものを選べばいい。

 次のFIKは、レジのオンライン接続によって財務省のサーバーに送られたレシートのデータに自動で与えられて返送されてくるコード番号らしい。レシート一枚ごとに違うため、この番号があればどのレシートかが判別できるようになっている。その下のBPKも、PKPも同じようにして作成されるコードのようだが、二つも三つも必要な理由はわからない。
 ニュースでは、必要なコードは一つだと言っていてから、黄色くなっているFIKとBPKのどちらかを入力すればいいのだろう。それにしても全部ではないとは言っても最初の15の文字と数字を入力しなければならないのは面倒である。携帯のアプリを使えば、いちいち入力しなくてもカメラで読み込ませることができるらしいのだけど、OCRが数字と文字を誤認する可能性もあるのだという。それはそれで面倒である。

 賞金額が示された表の下にはビデオも置かれているから、それを見るという手もあるのだが、ここは言葉での説明にこだわらせてもらう。レシートを登録するのに、個人情報を登録せずに、メールアドレスか、電話番号だけを記入するだけで済ませる方法もあるようだ。ただどこかに賞金をもらうためには参加者としての登録が必要だとも書いてあったので、当選した場合には追加で個人情報の登録が求められるのだろう。

 とまれ、レシートを登録するページはここ。
 https://www.uctenkovka.cz/novauctenka
参加者としての登録を済ませている場合には、ログインしてからになるだろうから、一番上のメールアドレスか、電話番号を記入する欄はなくなるはずである。次は、FIKかBPKのどちらかを入力するのだが、片方に入力を始めたらもう一つの入力欄は消えるようになっている。いくつかの部分に分かれているコードの最初の三つ、もしくは二つの部分を入力することが求められている。全部記入するだけのスペースも用意されているから、全部書き写してもかまわないようである。
 その下がレシートに記されたDIČと買い物の総額を入れるところで、もう一つ下は日付と時間である。欄の右端にカレンダーと時計が書かれているから、どちらにどちらの情報を記入するのかは明白である。日付のほうは入力するんじゃなくて出てきたカレンダーから日付を選ぶようになっていた。最後がレシートに書かれている消費税の処理の情報だけど、最初の設定では一般になっているので、レシート上の言葉がBで始まっていたらそのまま、Zで始まっていたら二つ目の丸をチェックすればいい。
 最後に一番下の青いボタンを押せば登録終了である。FIKなどの情報に間違いがあったり、記入漏れがあったりすると登録できないこともあるみたいだけれども、それは実際にやってみてくださいとしか言えない。

 https://www.uctenkovka.cz/ouctenkovce#prochrat
にあるFAQみたいなところを見ると外国人でも問題ないようである。笑えるのが、質問はチェコ語で書かれているのに、答えの最初の部分だけが、「Yes, You Can」と英語になっていることである。中途半端なことをって、このくじ自体がどうにもこうにも中途半端な気がしていけない。
 それから、一人で何枚でもレシートを登録できることが書かれている。ただし、同じ店のレシートは一日に一枚しか登録できないとも書かれているが、この一日は買い物をした日のようである。この制限は登録するレシートを増やすために、一度で済む買い物を何回にも分けて、レジに負担をかけたり他の人を待たせたりすることがないようにという配慮? らしい。

 ということで、誰か実際にやってみてその結果を報告してくれないものだろうか。自分でやれと言われれば、その通りなんだけど。
2017年10月7日23時。






posted by olomoučan at 07:16| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ

2017年10月08日

レシート宝くじ2(十月五日)



 この宝くじは、一ヵ月に一回抽選が行われて当選者には賞金、商品(二等の自動車だけ)が贈られるわけだが、一人一枚のレシートしか登録できないというわけではない。いや、何枚でも登録できるらしい。ただし、同じお店でもらったレシートは一日一枚に限られているようだ。未確認なのが、この一日が、一日に一枚登録できるのか、同じ日付のものは一枚に限るということなのかである。本稿のために、確認していけばいずれわかるかもしれない。

 関心のある人は、まずこちらのページを開く必要がある。
https://www.uctenkovka.cz/
財務省ではこのくじのために特別のウェブサイトを開設したらしい。ホームページの左上にある「účtenkovka」というのは、正式名称「účtenková loterie」から作られた略語、恐らく今回新たに作られた言葉である。スロバキアで使っているものをパクッた可能性はあるけれども。
 ぱっと見ただけでわかるのは、このくじの登録が10月1日に始まったことと、11月15日に最初の抽選が行なわれることである。それから、一等の賞金が百万コルナで、自動車を筆頭に他にもいろいろな賞がありそうだということである。

 どんな賞があるのか確認してみよう。ページの上のほうに「JAK HRÁT」と書かれているところがあって、そこにカーソルを合わせると、三つの選択肢が出るが、そのうちの一番上の選択肢を選ぶと、
https://www.uctenkovka.cz/jakhrat#pravidla
というページが開く。上のほうにあるルールは後回しにして賞金額を確認するためには、ページの下のほうまで行かなければならない。見ればわかるように一等が100万コルナ、二等が自動車、以下賞金が並んで、一番下の八等は100コルナで、2万人が獲得できるようである。
 賞金総額は、500万コルナということになる。それに自動車を50万コルナぐらいと見積もれば、一年間の経費は、賞金賞品だけでも6千6百万コルナぐらいだということになる。日本円にして3億円から4億円、ここまで経費をかける必要があるのか疑問である。こういうただでお金がもらえる可能性のあるものが好きなチェコ人は、多いから一度始めて定着してしまえば、政権交代しても簡単には廃止できないと言う計算も働いているのかもしれない。くじが残る以上、レジのオンライン接続も廃止することはできないのだから。

 ページの上のほうに戻って、ルールを読んでみようか。まず参加者の制限として18歳以上であることが記されている。チェコでは酒も煙草も選挙権もすべて18歳からというのが、ルールになっているが賭け事も同様なのである。日本も選挙権と自動車免許だけ18歳などという中途半端なことはしないで、全部18にして成人年齢も18にしてしまえばいいのに。
 次の項目は、参加者としての登録である。登録することで「口座」(アカウントとは言いたくない)を開設することができる。毎月15日の抽選のあとに、当たった場合にはどのレシートが何等に当たったのかが確認でき、賞金の受け取りの方法を選ぶことができる。ただし、10万円以上の賞金は、銀行振り込みとなるので、その場合には銀行口座の情報も記入する必要がある。

 登録はこのページから
 https://www.uctenkovka.cz/registrace
一番上の「?」のついている項目は、ユーザーネームで、このくじに関しては本名ではなく、メールアドレスか、メールアドレスを登録しない場合には電話番号をユーザーネームとして使うことになるようである。アステリスクのついている項目は入力必須なのかとも思えるが、この説明を見るとメールアドレスは入れなくてもよさそうである。
 その下は、まず名前、その右側は名字を記入するところである。その下のメールアドレスと電話番号はわかるだろう。その次は、生年月日であるが、まず日を数字で記入し、真ん中の月は選択制になっている。数字ではなく言葉で月が書かれているので、わからない場合には一番上の「leden」が一月だから、あとは二月、三月と順番に数えていくだけである。ここまでが個人の情報。

 次の項目では、賞金の受け取りかたを選ぶ。最初は銀行振り込みが選択された状態になっているので、そのままにする場合には、銀行口座の番号を記入する必要がある。もう一つの選択肢を選んで登録した場合でも、賞金が10万円以上だった場合には、改めて銀行の口座番号を記入することを求められるのだろう。
 もし口座番号を書きたくない場合には、二つ目の丸にチェックを移す。こちらは、チェコでスポルトカというナンバーズみたいな宝くじを運営しているサスカのくじを販売しているところでの受け取りかな。つまり街中のキオスクみたいな売店で受け取れるということである。こちらを選択した場合には、受け取りの際に提示する身分証明書の種類を選択して、その番号を書かなければならない。身分証明書の種類は上から、チェコ人が持つ市民権証カード、パスポート、運転免許証である。このうち日本人が使えるのは、パスポートだけである。番号の形式がチェコと日本では違っていたりすると日本のパスポートでは登録できない可能性もあるかもしれない。

 その下はパスワードを設定する項目で、左側にも右側にも同じものを記入しなければならない。右側は確認のための入力になる。その下の二つある四角いチェックボックスは、上は必ずチェックしなければならない。レシート宝くじに必要な限りにおいて記入した個人情報を利用することを認めると言う内容なので、これにチェックしなかったら登録さえできないみたいである。下は、一等が当たった場合に、財務省が連絡を取れるように当選者の個人情報を財務省に提供する許可を求める項目なので、それが嫌な場合にはチェックしないほうがいい。一等なんて滅多に当たるもんじゃないから、チェックしても実害はないだろうけどね。

 キリがいいので、今日はこの辺にして、実際のレシートの登録についてはまた明日。
2017年10月6日22時。






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2017年10月07日

レシート宝くじ1(十月四日)



 バビシュ財務大臣が、脱税を防ぐ、もしくは脱税額を小さくするための切り札として導入したのが、あらゆる店のレジをオンラインで財務省のデータベースと接続し、すべての売買の記録、具体的には領収書、いやレシートをデータベースに送って登録できるようにしなければならないというシステムだった。これによって、すべての小売業の売り上げを国家で把握できるようにし、消費税のとりっぱぐれがないようにしようというのである。国民を信用せずに、すべてを国家で管理しようという姿勢には、賛成したいとも思えないが、消費者の立場から言えば、導入当初に混乱があった以外は実害はない。自分の買い物の内容が国に把握されるわけでもないし。
 このレジのオンライン接続、バビシュ氏側が言うほど消費税の増収に貢献しているとは思えないが、逆にカロウセク氏が言うほどに無意味でもなさそうである。問題はオンライン接続のシステムを店側の負担で導入させたことである。
 チェコで政権交代がしばしば発生すること自体には問題はないのだろうが、問題はその結果として前の政府が導入したものは、効果のあるなしを無視して廃止してしまうところにある。これまでも、健康保険に入っていても、30コルナの診察料が必要になるというのは、いろいろな面で効果のあった制度変更だったのだが、社会民主党が政権をとったとたんに廃止されてしまった。効果があったのか不明なものとしては、年金受け取りの時期に備えて、第二の年金として自分で積み立てることを選んだ人に対する国からの補助も廃止されたのかな。

 そう考えると、今度の選挙でANOが与党から転落した場合、このレジのオンライン接続も、すぐに廃止されることもありえる。そうなると、導入から、導入が何度も延期になったせいもあって、導入から実質一年ほどでまた廃止と言うことになりかねない。段階的に導入されているところなので、システムを導入したと思ったら不要になったということも起こりそうである。だからと言って国が小売業者に保証をするなんてことはチェコではありえない話で、このシステムを導入する負担に耐えられずに廃業した飲食店などの経営者の怒りはさぞかしであろう。
 現実問題としては、ANOが選挙で負けること、つまり第一党の座を獲得できないということはなさそうだが、それがそのままANOが連立与党の中心になることは意味しないのである。現在のチェコでは、ある政党が選挙に圧勝し単独で政権を担当するというのは考えづらい。だから、ANOとは犬猿の仲のTOP09当たりが政権与党になる可能性もあるわけだ。それ以外の党はしばらく様子見をするだろうけど、TOP09のカロウセク氏が財務大臣になったら、即座に廃止ということにもなりかねない。

 もともと、この制度はスロバキアで何年か前に導入し成果を上げているものをチェコでも機能するだろうということで導入したのだった。そしてスロバキアのシステムには、単にオンラインで接続してデータを収集するだけでなく、もう一つの柱が存在する。それが、店で買い物をしたときに渡されるレシートに記されたコード番号を使っての宝くじである。
 レシートを受け取った消費者は、そのレシートに与えられたコード番号と、支払った金額などの必要なデータをオンラインで登録するだけで、くじに参加できるらしい。つまり客に渡されたレシートに表示された金額と、データとして財務省に送られたレシートの金額に差があれば、その分脱税することができるのだから、二つのレシートに同じ金額が記されていることを確認する必要があるということなのだろう。
 そのために消費者が自主的にデータを国に提供するように、宝くじとして射幸心をあおるというわけか。いやあ、国民を全く信じていない国である。わざわざシステムの中のソフトを、実際の売り上げ額よりも小さい額のデータが財務省に行くように改造ことまでして脱税するなんてことをする人間がいるのだろうか。そのソフトの改竄のほうが、脱税できる額よりもお金がかかりそうな気がする。

 とまれ、スロバキアでは、このレシート宝くじが導入されて何年か経つのだが、知り合いのスロバキア人に聞いても、返ってくる答えは、一律、存在は知っているけれども、自分はやったことはないしどうやってやるかも、どのぐらいの人が参加しているかも知らないというものだった。最近のニュースによれば、当初は珍しいもの見たさで登録する人が多く、毎月一回の抽選に対して、100万件ぐらいのレシートの登録があったらしいが、現在では300万30万ぐらいに落ち着いているという。毎月発行されるレシートの数パーセントだというこの数字が多いのか少ないのか判断はできないが、個人的には意外と多いと思った。

 このレシート宝くじがチェコでも導入されて、レシートの登録が可能になったのが最近、確か10月に入ってからである。PCでオンラインで登録することもできるし、携帯で専用のアプリを使って登録することもできるらしい。そこまで金をかけて元は取れるのかねという心配は、どうせ税金でやっているのだから無用である。
 この件に関して反対派の消費者は、ニュースのインタビューで、こんな制度を支援する気はないから宝くじには絶対に参加しないと言っていた。しかし、この制度をつぶしたいのであれば、処理ができないぐらいのレシートを登録して、システムをパンクさせた方がいいんじゃないか。特に立ち上がりで大失敗すれば、信用を回復するまでに時間がかかり、もしくは回復できないままになし崩し的に廃止になってしまう可能性もなくはない。2010年ごろだっただろうか、自動車の登録システムを刷新して、新しいシステムに切り替えたときにも、システムダウンが繰り返されて、今でも信用を回復しきれていないところがあるし。

 このくじに外国人が参加してはいけないなんてことは聞いていないので、次回は、登録のしかたを説明して、チェコ在住の日本の人に登録しないか呼びかけてみよう。自分では、うーん、多分やらない。
2017年10月6日17時。







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2017年10月05日

タクシータクシー(十月二日)



 プラハのタクシーは最悪らしい。自分では街中は基本的に歩くし、空港までは中央駅からバスを使うので、プラハでタクシーを使ったことはない。使ったことはないが、あれこれ漏れ聞くところによると使わないほうが賢明のようである。
 以前知人が、プラハでタクシーに乗ったら、外国人だから道を知らないだろうと、滅茶苦茶遠回りをされたと怒っていたことがある。道を知らずに迷ったという可能性もなくはないけれども、ナビゲーションシステムの発達した現代、道を知らなければ遠回りする方が難しくなっているような気もする。
 他にも、メーターを倒さずに走って正規の運賃かどうかもわからない額を請求されたとか、領収書を求めたら拒否されたとか、罵られたとかよからぬ話は枚挙に暇がない。特にチェコ語もプラハの地理もわからない外国人に対して、世界に轟くプラハの悪評の一部を構成しているのがタクシーのマナーの悪さであることは否定のしようがない。

 そんな悪名高いプラハのタクシーの悪癖のひとつがささいなことで抗議のデモンストレーションをやるというところで、これまでにも何度もプラハ市の主要部の交通を阻害するような抗議活動を繰り返してきた。
 プラハの空港の客待ちのタクシーが多すぎるのを規制しようとしたのに反対したり、タクシードライバーとして仕事をするための資格試験を厳格化しようとしたのに反対したり、とにかくプラハ市側がプラハのタクシーの悪名の高さを何とかしようとして改革案を出すたびにタクシー運転手側が反対の声を上げて、骨抜きにしているという印象である。

 かつてプラハ市長を務めていた市民民主党のベーム氏が、この手の業界からの圧力やロビイストと呼ばれる連中からの要求に弱く、タクシードライバーたちの要求にも譲歩することが多かったのが今でも後を引いている。タクシー側は、タクシーが存在しなかったら空港から市内への交通の便が格段に悪くなるという事情を盾に、強気の姿勢を崩さないのだ。
 実際、プラハの市内から空港までの公共交通によるアクセスは、近年エアポートエクスプレスが運行を始めた結果、中央駅からのものは格段によくなった。しかし、それ以外は地下鉄でデイビツカーなどまで移動して、市バスに乗り換える必要があるという不便極まりないもので、お金に余裕があって時間に余裕がない人がタクシーを使うのもよくわかる。正直な話、中央駅から空港までの直通バスが数年前まで存在しなかったのも、プラハ市の政治家とタクシー業界の癒着の結果だったのではないかと疑っているぐらいである。

 そんなタクシードライバーたちが、今回またまたプラハ空港までの道路を渋滞させるという抗議行動にでた。一日中というわけではなかったようが、空港へ向かう途中のガソリンスタンドに集結したタクシーが、二車線ふさぐ形で空港まで徐行運転を行ったことで、市内からの所要時間が大幅に伸びることになった。
 その後空港から市内までも同様の行為を繰り返したため、飛行機に乗るために空港に向かった人も、空港に到着して市内に向かった人も多大なる迷惑をこうむることになった。プラハの空港には鉄道は乗り入れていないため、公共交通機関のバスを使っても渋滞を免れることはできない。そして抗議運動に参加していたタクシーは市内までの客を取らなかったはずだから、普段タクシーを使っているような人たちもバスに乗るしかなかったのである。

 今回の抗議は、これまでとは違って、規制に反対するものではなかった。逆に規制を求めるものだった。それが自分たちタクシー業界ではなく、ウーバーとかいう会社の運営する「白タク」に対する規制であるところが、さすがと言いたくなる。
 世界的に評判の悪いプラハのタクシーが、ウーバーが提供する白タクによてって客を奪われているという現実があるらしい。それに対してプラハのタクシー業者が、規制の強化を求めて抗議行動に出たというわけである。タクシー業者は車両や料金などに関してさまざまな規制を受けているのに対して、ウーバーの白タクは野放し状態であるのが気に入らないらしい。
 これが、仮にプラハのタクシーが親切で評判がいいというのであれば、タクシー業界側を応援する気にもなるのだけど、これまで好き勝手やってきて、ライバルとなりうる業者が出てきたらつぶしにかかるというのは、あまり応援したくない。ブルノのように裁判を起こして業務の差し止めを求めるのだったらまだわかるけれども、これまでにも、プラハのタクシー運転手たちはウーバーの白タクに対して身分を偽って利用して脅迫するなど実力行使的なこともしているのである。
 ウーバーで白タクをやっている人のような空き時間と空いている自家用車を使って小遣い稼ぎというのは、ある意味で庶民が何とかしてお金を稼ごうとする知恵みたいなものだから、そんなに目くじらを立てる気にはならないのだが、やるなら個人でやれよとは思う。そして、そんな人たちを集めて、法律の穴を突くような形で事業化して、上前を撥ねるってのには嫌悪感を感じる。

 だから、結論としてはどっちもどっちで、どちらも使うのやめようよではなく、プラハの空港までの鉄道、もしくは地下鉄の路線を建設しないプラハ市と国が責められるべきなのだ。空港へ鉄道で行けるようになれば、タクシーの需要は減るけれども、同時に白タクの需要も減る。その上で、エコロジーの観点から、空港への車での乗り入れを原則として禁止してしまえばいい。外国人が一番よく利用する空港から市内へのタクシーがなくなれば、プラハのサービスへの評判も多少は回復するというものである。

 ちなみにオロモウツのタクシーは、プラハのとは違って全く問題ない。何度か使ったことがあるけれども不快を感じたことはないし、普通の車両は進入禁止の旧市街も走れるから、共和国広場から聖ミハル教会の前を通ってドルニー広場を抜けるという貴重な体験をさせてもらったこともある。やっぱ、プラハにゃあ住めねえし、あんまり行きたくもねえや。
10月4日17時。


ジャパンナレッジのお友達紹介とかいうののリンクを張っておく。
http://japanknowledge.com/camp/mgm/?km=1104867




posted by olomoučan at 06:56| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ

2017年09月28日

ヤン・トシースカ死す(九月廿五日)



 チェコの俳優ヤン・トシースカが死んだ。享年80歳。土曜日にプラハのカレル橋からブルタバ川に転落し救急隊員によって救出され軍の病院に搬送されたものの、転落した際の怪我がもとで日曜日の深夜に亡くなったということらしい。80歳を超えていたとはいえ、毎日ジョギングするなど健康には問題なさそうだっただけに、その死は驚きを以て迎え入れられた。
 トシースカという名前を聞いて、すぐにあの俳優だとわかる人は、チェコ映画のファンか、チェコ語を勉強する目的でチェコの映画をあれこれ見てきた人ぐらいだろう。アメリカに渡ってからのミロシュ・フォルマン監督の映画のファンにも知られているかもしれないが、その場合にはヤン・トシースカではなく、ジャン・トリスカにされているかもしれない。

 トシースカの出演した日本でも知られていそうな映画としては、スビェラーク親子の最高傑作である「オベツナー・シュコラ(小学校)」(1991年)、アメリカに亡命する前のこれはスビェラーク父とスモリャクが脚本を担当した「ナ・サモテ・ウ・レサ(森のそばの一軒家で)」(1976年)があるぐらいだろうか。
 「オベツナー・シュコラ」では、担任の女性の先生を心がやむまでに追いつめた崩壊しきった学級を立て直すために送り込まれてきた先生の役を演じている。初めて登場するところで黒板に、自分の名前を書いて、「イメヌイ・セ・イゴル・フニーズド(私の名前はイゴル・フニーズドだ)」と言ってバンと黒板に腕をたたきつけるシーンは、数多のチェコ映画の中でも一二を争う名場面である。

 映画は第二次世界大戦直後の共産主義体制が確立しつつある時代を背景にしている。だからスビェラーク父演じる主人公の父親は、「チェコスロバキアは地理的にも東西の懸け橋になれる」なんてことを言うのだが、トシースカ演じるこのフニーズド先生は、戦争中のパルチザン上がりで軍隊的なスパルタ方式を持ち込み学級を掌握することに成功する。言うことを聞かないクソガキどもをどうにかするには、多少の体罰も必要だというのは世の東西を問わないのだ。
 ただこのフニーズド先生、厳しいだけではなく、授業中にバイオリンを弾いたり戦時中の武勇談を語ったりして子供たちの心を掴んでいく。その武勇談がちょっとすごすぎてパルチザン上がりと言うのは経歴査証じゃないかなんて疑惑も浮かび上がるし、とんでもない女好きで女性関係で問題を越して一度は解任されてしまうのである。子供たちの要望で復職するのだけど、遠足に出た先で不発弾に怯えて何もできないと言う醜態をさらしてしまう。
 ヤン・トシースカはこんな複雑な人物を見事に演じ挙げ、登場人物たちの中でも圧倒的な印象を残す。チェコテレビのニュースによれば、小さな役でも主役を越えるような存在感を発揮するのがトシースカの演技だったのだという。

 もう一つの代表作「ナ・サモテ・ウ・レサ」では、主役のスビェラーク父の友人を演じる。念願の田舎の一軒家を手に入れられそうなのに、妻の反対にあって悩んでいるスビェラーク演じるプラハ人が、トシースカ演じる友人と二人で田舎の一軒家に泊まって、平然と飲みのたかるベッドに横になる友人に思わず、「何でお前が俺の嫁じゃないのかなあ」なんて言ってしまうのが一番の見せ場と言うことになる。

 この映画が撮影された後、ハベル大統領とも友人だったトシースカは、1977年にアメリカに亡命してしまう。ハベル大統領の二人目の夫人が偉そうにトシースカについてコメントしていたけれども、共産主義政権に異を唱えた「ハルタ77」に対抗して、共産党が準備した「アンチ・ハルタ」に署名したと言われるこの女性が、「ハルタ77」の時代にハベル大統領と親交のあった人物に対して賢しらにコメントするのをチェコの人はどう思っているのだろうか。
 亡命したトシースカは、アメリカでも俳優の仕事をすることになるのだが、しばらく時間がかかったようである。1980年代に入ってから同じく亡命者のミロシュ・フォルマンの映画に登場するようになったらしい。その後、ビロード革命後にチェコに帰国したわけだが、原則としてアメリカに住んで俳優の仕事をし、チェコには仕事があるときだけ戻ってくるという生活を送っていた。チェコでは劇場俳優として活躍し、特にシェークスピア劇のリア王と言えばトシースカというぐらいになっていた。

 これから新しい映画の撮影に入るところだったというのに亡くなってしまったのは残念なことである。転落する前には、カレル橋の欄干に腰掛けていたというトシースカは、ブルタバ川の川面に何を見ていたのだろうか。
2017年9月27日23時。
 


 これにも出演しているらしい。殺し屋の役だったかな。9月27日追記。

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posted by olomoučan at 07:09| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ
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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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