氷解解け ごう音響く 温暖化「最前線」グリーンランド北極点に近い
グリーンランド(*)で、地表の約8割を覆う氷床が急速に解けている。地球温暖化の影響と見られ、このまま溶解が進めば、海面上昇など世界的な異変につながるとの指摘もある。温まる地球の現実が見える「最前線」として、各国の指導者も続々と訪れている。
北極圏の町イルリサットから船で北上すること3時間。高さ100メートルを超える巨大な氷柱群が目前に迫る。圧倒させる景観だが、「ゴー、ゴー」と雷のような音が聞こえる。氷が割れる時に発するごう音だった。
山上の氷塊は次々に海面に落ちて行く。「解け方が普通じゃないよ」。船員歴45年のニール・マグヌセンさん(59)がつぶやく。氷柱群は解けて過去30年間で100メートル近くも後退した。地表の氷は、北極海に浮かぶ氷と異なり、解けると海面を押し上げる。氷に閉ざされていた地表が徐々に黒い山肌をさらしていく。
「様々なデータから、温暖化によると考えています」。中心都市ヌークで、グリーンランド自治政府の環境自然省の職員、アネット・ハンセンさん(気候変動担当)は、そう言い切る。
国連尾気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、5月に採択した第4次評価報告書で、北極圏の平均気温が過去100年間で、地球全体の平均気温の2倍の伸び率を示したと指摘する。世界の海面は、2003年までの11年間で約3センチも上昇した。報告書は、この背景に、グリーンランドと南極の地表の氷の溶解がある可能性にも触れた。
米露など8か気にの科学者らによるプロジェクト「北極圏気候影響評価(ACIA)」が、2004年の報告書で公表した内容も深刻だ。
グリーンランドで夏季に氷が解ける面積は、衛星による氷床の観測が始まった1979年に比べると、2002年時点ですでに、16%も増えた。この勢いでいくと、今世紀末までに海面はさらに最大90センチ上がり、洪水などの原因になるという。
さらに、すさまじい予測もある。英イーストアングリア大のティム・レントン博士は、グリーンランドなどの地表の氷がすべて解け出し、海面を7メートルも上昇させる事態を招くという“悪夢”のシナリオが、「早ければ300年以内に起きうる」と警告する。グリーンランドで溶解する氷の量が「過去10年間で倍増した結果、年間約100立方キロ・メートルになった」(コペンハーゲン大のドータ・ダルジェンセン教授)との研究結果もある。
海面の上昇は小さく、気候変動への影響は限定的だと主張する研究家もいる。しかし、アル・ゴア前米副大統領らのように、グリーンランドの巨大氷柱が解け出すと、欧州の気候に甚大な影響を与えると指摘する人々もいる。
(中略)
氷柱の溶解は、住民の暮らしにすでに影響を与えている。かつてイルリサットでは、冬にナルト海が凍り付き、イヌイット族は犬ぞりで沖合いに出掛け、氷に穴を開けてオオヒラメなどを釣っていた。しかし、過去10年間で海面が凍り付く範囲は激減、漁は難しくなった。このため、最近、副業として運転手の仕事も始めた漁師のコンラッドさん(46)は、「日本も暑くなっているのか」と記者に尋ねた後、「おかしいよね」と不安げに海を見つめていた。
(*)グリーンランド
世界最大の島で面積は焼く217平方キロ・メートル。約4500年前、カナダからイヌイット族が移住。18世紀以降、デンマーク人が入植し、20世紀に入ってデンマークが支配したが、イヌイット族の反発を受けて、1979年に自治政府が発足。人口は約5万6000人。漁業や水産加工業が主体。島の中央は氷床に覆われ、高さ3キロを超える氷床もある。
グリーンランドのような土地で、都会と呼ばれるところの繁華街とは無縁で暮らしている人たちにとっては、氷が解けてゆくことに異常を感じるだろうし、「おかしいよね」と不思議に思うのもよく分かる。
温室効果ガスを排出し、地球温暖化に影響を与えているのは、先進諸国(米国、ヨーロッパ、ロシア、日本、カナダ、オーストラリア)と一部の開発途上国(インド、中国、東南アジア、中南米、中東、アフリカ)だからだ。これら遠くの国で行なわれている活動が、グリーンランドに直撃しているとは夢にも思わないだろう。グリーンランドに暮らしていたら、そんなことはつゆ知らず、氷塊が解けてゆく光景を目の当たりにするのだ。
グリーンランドの氷床は、地表を覆っているわけだからして、これらが解け続ければ、南極の棚氷が解けるのと同じくらい大変なことになるだろう。恐らく海面を上昇させる現象は300年も待たずにやってくるのではないか?溶解量が過去10年間で倍増したならば、次の10年間で倍増の倍増になるのでは?解ければ解ける程、解ける速度が速くなる、というのが私の考えだ。研究者たちの出す数値は少し甘い気がする。私たちが出すごみの量、生活・生産する上で出る温室効果ガス、そして増え続ける人口、全てが地球温暖化を加速させる要因になっているのに、300年以内だとか、100年後だとかと言うのは、甘く見積もりすぎている。これだけの要因があるのに対策はほんの少ししか出ていないのだ。
自然界で起きていることに目と耳を向けて、本気で考えて取り組まないと、人間が棲むことができるたった一つの惑星を失うことになる。今が良ければそれで良いのか?地球がなくなれば、全ては終わりだ。