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2021年06月12日

裏庭の蛍

今年も蛍のシーズンがやってきた。
この辺りは、近くに蛍スポットが何カ所もある。

そのうちの一つが、私の隠れ家の裏手。
川から田んぼに引いた用水路にゲンジボタルが自生し、毎年蛍が暗闇の中に星と見間違うほどの光を放つ。

数日前に、見に行ったときは、夕暮れ直後で、まだ微かに薄明るかった時間帯でもあったが、何と一匹も飛んでおらず落胆したのだが、今日は違った。

自転車でものの数十秒。
このあたりは電灯は一カ所もなく、歩いて行くと足下すら見えない真っ暗闇である。
前から人が来ても分からないし、その輪郭すら見えない。

「おっ、飛んでるな…。」
一年ぶりの対面に、心の中で小躍りする。
このスポットは、川縁ではなく、かなり高い所に飛んでいる。
だから、一瞬、星と見間違うほどなのだ。

「これなら裏にも飛んでくるかな」、とふと自宅(隠れ家)の裏庭を見ると、一匹の蛍が飛んでいる。

家に戻り、真っ暗闇の裏庭に行くと、蛍が二匹飛んでいた。

「裏庭で蛍を愛でることができるなんて、なんて幸せな所に住んでいるのだろう…。」

ささやかな幸せを感じたひとときだ。

「丹澤先生、蛍って何のために生きているんでしょうか…。」

生徒にそんなことを聞かれたことがある。
虫そのもの人生に、どんな意味があり、価値があるのかについて、疑問に思った中学生からの質問だ。

「闇に光る神秘さと共に、その光を放つ期間の短さにより、人生のはかなさを象徴しているんじゃないかな…。その姿を見て、人間も何かしら振り返るべきところがあることを、教えているんじゃないかな…。」

これが私の答えだ。

ささやかな幸せは、人間の生き方をも教えてくれる…。
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