▼かたわ少女、笑美シナリオクリアしました。
いやあ、正直さほど期待してなかったし、キャラデザ的にも、どうせいかにもギャルゲエロゲのロリ系、妹系のシナリオだろ?わざとらしくツインテだしな。全部の話が暗いのもアレだから、これは箸休め的シナリオなんだろ?程度に思ってたんだが、とんでもなかったな。
いい意味で裏切ってくれた。
これはもう、本当に素晴らしい。
ゲームの中で茨崎笑美という、1人の人間とその人生を作ったのではというくらい凄い
まず最初に言っておくとこの笑美シナリオ、かたわ少女の何番目にプレーするかでかなり先入観と評価が変わるんじゃないか
キャラ紹介にはこうある
膝から下を切断するという障害を負ってなお、笑美は学校どころか世界でもっとも陽気で楽天的な少女の一人かも知れない。足を失う原因となった事故の後も決して絶望することなく、むしろ自分の障害を天の恵みと考え、その義足は永遠の重荷となるどころか、陸上部員としての彼女の能力を最大限に引き出している。
私は4週目なのでこのイメージが頭にあるし、これまでクリアしてきた華子、リリー、静音シナリオに断片的に登場する笑美はまさにその通りのキャラクターで、障害に負けない強い少女なんだなあと思ってた
まあフェイクだったわ
▼で、いざやってみると、笑美が設定やこれまでのシナリオ通りの性格ではないことにすぐに気付く。
まあハッキリいうと、かなり畜生度が高い。
ラノベまたはギャルゲー的な見た目通り、シナリオもギャルゲー的に展開されるので、障害の扱いが非常に軽い
笑美は完全に自分の障害を乗り越えてるし、他の障害者に対してもそういう、あっけらかんとした扱いをする(とその時点では思っていた。他の所感も同義)
他のシナリオでは、久夫の不整脈はヒロインにとても心配されるが、笑美にとっては非常に扱いが雑で、「私のせいで死んだら寝覚めが悪い」、とまで言われてしまう(ひでぇ)
他にも非常に強引かつハデな性格で、練習後「エッチみたいに気持ちいい」というこれまでのシナリオとは違うキャラクター性のセリフに驚く。
え?お前したことあんのか?1人エッチか?お?イキってんのか?と
この時点で、あ、この人の本来の性格はこうなんだな。仲良くなるとこうなんだな、と気付く
▼ストーリーは本当にトラッドなギャルゲータイプで、久夫は笑美が陸上部の部長と付き合ってるのではないかとやきもきしながらも、笑美と徐々に親密になっていく
そしてかなり急激な展開で付き合う2人。
「キスするならチャイムが鳴るまでにしたほうがいいよ」
唇を重ねるふたり。「いちごの香りと味がする…」
オオッ!青春だあ!ギャルゲーだあ!
甘酸っぱいなあ、オイ!
▼その後の交際してるんだかしてないんだか分からない、もどかしい距離感がいい。実にフワっとしており、親友の琳にも交際したことを言わないし、主人公ですら、笑美が彼女なのか微妙ということを口にする
このあたりがACT1〜2のピークで、付き合う前後が一番面白かった。
付き合ってからは立ち絵が変わったり(これにはかなり驚き)、久夫と呼び捨てになり、特別感もかなりある
▼交際後、初めてデートをする2人。友達から恋人になったが、これまでとやってることが何も変わらないのでは?でも、友達同士はキスはしないでしょ?といういかにも青春モードで悩む
部屋で枕投げをして遊ぶシーンは子供っぽさも相俟ってとても微笑ましい(セックスしそうな流れだけど)
寝転がる笑美……可愛すぎィイイイイイ!
笑美の部屋で初めてセックスをする二人。驚いた事にアホなシーンで掛かるファニーな音楽が流れている(笑)
あ、やっぱりこのシナリオはこういう流れなんだな
と思うのも束の間…
▼だがこの後が名作シナリオの汚点過ぎる。
幾らなんでもこれ、付き合ってから中盤のターニングポイントまでの展開、雑すぎでしょ。
スポーツ少女ということで爽やかな恋愛を期待したのに、セックスしてセックスして…
アレッ!?他になんかやってたっけ???
特に練習しようと思ったのに倉庫でアナルファックしたのは呆れてしまった
しかもこのシーン、最早ギャグだろってくらいに絵がヘタクソ。アメリカのアニメの作画崩壊レベルで酷い。寝転がるシーンとは別人過ぎる
これまで、あれだけ走る事に熱心で、走れ走れと言ってたのに…
ゲイだとかアナルとか、ローションとか、ネタも汚い。
何かもう本当に単なるエロゲーにかたわ少女は成り下がってしまった。障害という大きなテーマはどこにいったのだ
ハッキリいって、あまりの劣化に失望し、このあたりで既に他のゲームをやろうとすら思ったのだが、続けていくうちにストーリーに暗雲たち込める。
▼笑美は何か大きな隠し事をしており、苦悩を抱えている。そして主人公の事を信頼していないのか、何も話してくれない。頼ってもくれない。恋人なのに
ずっとこのシナリオを箸休めだと思っていたから、おっ?と思うわけだ
ここからの急展開により強烈なギャップを生んだのは本当に見事で、一瞬の雰囲気の変化が凄い。
ここでイッキに引き込まれた(だからといってここまでの展開をこれほど下品にする必要性もないが)
ラブラブでセックスまでして、彼女と仲良くなって、素顔を知ったように見えても、それは意図的に笑美が引いた一線によるもの。その裏に隠された本当の素顔は見せていない。
まあ普通に考えて脚を切断されて平気なわけないよな(正論)
▼これまで見せたこともない笑美の潜んでいた邪悪さや、拭い去れない苦悩、悪夢との戦い。久夫をあっという間に切り捨てて別れようとしたり、女って怖いなと思わせる。ライターは女性だろうか。これまでの好き合った流れがウソのように「合わないから」とあっさりと別れを切り出され、その後話す事すらなかったというバッドエンドは本当に鬱だ。
致命的に関係が決裂しそうになる2人
周りのアドバイスもあり(実は最後のミーシャ以外のアドバイスは、受けなくてもハッピーエンドは見れる、この分岐も上手かった)、彼女とその悪夢に立ち向う久夫…
頑固だった笑美もそんな久夫に心を打たれ、更に隠された、弱い少女である本当の素顔を見せる…という一連のシナリオが本当に見事で引き込まれた
ド畜生だけど、後述のラストシーンなどでも反省してしっかり謝ってくるのも好印象
▼笑美はこのシナリオもそうだが、かたわ少女という1本の作品の中で何度も(表面に出ている)性格が変わる。その分、顔グラも多いんだが、本当に別の人間のようだ。だがそのどれもが笑美なのだろう
笑美がセックスやキスに慣れすぎているので処女ではない(かたわ少女は殆どヒロインからセックスしてくるけど)、彼氏がいたというのは間違いないと察していたが(「キスをして笑われたのなんて初めて」というセリフが最初の確信)、案の定長く付き合っていた彼氏がいたが笑美の引いた一線のせいで別れた事や、
実は事故のため留年していたため年上だったり、
周りの勝手なイメージではピンクが好きだと思われているが、本当は青色が好きだったりという一見どうでもいいことまでを告白されるパパのお墓参りをするシーンは、ショッキングながらもプレイヤー=久夫に笑美に対する強い思いを抱かせる名シーン。
その後のセックスやラストシーンに至るまでもとても綺麗な流れで、髪を下ろした笑美はここで初めて年上の女性に見えた
紆余曲折ありながらも、「今日はどうしよっか?」という本物の日常に戻るセリフで締めたのも、素晴らしい演出だ
笑美シナリオは、要約すると、主人公が必死になって日常に帰ろうとするストーリー。それがたった1つの短いセリフでこれほど表現出来るとは、本当にたまげた
▼笑美シナリオは他のルートに比べ、主人公が周りの人間に助けられているシーンがとても多い。なんと他のシナリオでは主人公の大きな悩みの種であった、あの岩魚子の手紙さえポジティブに変えてしまう(逆に、ルートによって岩魚子の手紙が登場しない唯一のシナリオでもある)
ナースはほぼ全面的に心強い味方だし、何よりリリー、華子ルートでは殆ど敵だった静音とミーシャが、主人公の友達ポジションなのが良い。
これは笑美シナリオに入るまでの生徒会に勧誘される共通ルートがよく反映されてて面白いなあと思った(ただここを通らなくても同じ展開にはなるだろう)。
先に静音を攻略していないと、ただのお節介に見えてしまうが、実際は久夫のことを本当に心配してくれての行動なので、まさか生徒会に入らなくてもこんなに助けてくれるとは…
と、この2人のイイヤツぶりが際立つ(しかも、笑美と静音自体は仲が良くないのに)。
ミーシャに至っては、いなかったら間違いなく笑美と別れてるレベルの活躍
笑美も同じく、主人公を励ます為に走ろうと提案してきたわけだが、他のシナリオで恋のアドバイザーにはならない。そこが違った
▼恐らくプレーした人間の大半が気付くが、笑美シナリオでは実は笑美に対する選択肢は殆どない。
その大部分が、他の人間に対する選択肢だ。
これはまず間違いなく、教師のいう他の角度からの観察という、化学理論に基づいてゲーム性も作ったんじゃない。
ただの紙芝居ゲームなのに実に上手いと感心した
▼評価 95点。中盤の下品な描き方以外は完璧なお話。恐らくギャップを持たせる為にハイテンションなシナリオにしたのだろうが、別に汚い描き方をする必要はなかった
▼-5点したが他にも気になる点はあって、ざっくり箇条書き
・他のヒロインが活躍するシナリオなのに、何故か華子だけ登場しない。前の記事にも書いたが華子の人生が、主人公が介入しない場合どうなるか?というのはとても気になるので、出して欲しかった。リリーの話によるとやはりダメなままのようだし…
・こそ泥の話はストーリーに必要が無い。テンポを悪くするだけだった
・久夫に愛してるとか、好きといわれてから笑美の氷が溶けるまで、幾らなんでも一瞬過ぎないか。まるでこの言葉自体が引き金になったようだが、イマイチ入り込めなかった。というか余りのスピード感に、笑ってしまった。「ごめん!」の連呼とかこの勢いは、リリーの告白シーンと被る
・ラストシーンのタイトルが靴下バンザイなのは意味が分からなかった。ドラッグ、セックス、ロックンロールはないというテキストも意味が分からない。何かのパロディ?まあミスマッチでしょ。きれいな歯もちょっとよくわからない
とにかく密度の濃い5時間でした。
▼残すところ、遂にヒロインは琳1人だけ。達成率79%なんで、長さに差があるように見えて、どのヒロインも実は同じ分量なんだろうか。
このシナリオをプレーして、今更かたわ少女が主人公&ヒロイン2人のスリーマンセルものだと気付いたが、笑美が琳シナリオではどのような役割を持つのか?どのようなキャラクター性なのか?というのが今ではとても気になる
キャラデザが好みじゃないので一番後回しになったが、この独自の価値観を持つキャラの恋愛観には期待
バッドエンドの健二は本当に最後の最後にやるけど
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