目が覚めたら知らない場所で、目の前に大きな犬みたいな人がいて。
もしかしたら食べられちゃうのかもって。
でも、エイデンさんの目は周りの大人が私を見る時と同じだったから。
──人間と変わらないかもって、思えたんだ。
▼………
……なななななななっっ…!?
なんだぁあああああああああ!?!?!?
なんだあこのゲーム!?!??
随分と振り回してくれたな、すげえ怒涛の展開とシュールさを孕むゲームだ…
ルートやエンディングによって世界観がまるで違う…
ある種の傑作と評価されそうではあるが、余りにもハチャメチャではある…
先日レビューした「幸を運ぶ怪物」と同じ匂いがする…
▼「迷子と恋と獣人と」は公式的には異世界で獣人と恋をする「けも乙女ゲーム」なんですわ
説明文には…
異世界転移した少女と獣人が恋に葛藤し苦悩するのを楽しむ乙女ゲームです。
<ストーリー>
12歳の主人公アイシャ(名称変更不可)が目覚めるとそこは獣人の村でした。
初めは言葉もわからない状態ですが、彼女を保護してくれた
エイデンという獣人と交流を深めることで今いる世界を知っていきます。
帰還か残留かを迷う少女。
現実世界の家族や協力者達もそれぞれに事情を抱えています。
アイシャが最後に手にするのはどんな結末でしょうか。
…との記載がある。
…まあ基本この通りの内容。
12歳の少女が、イケケモに恋するお話。
▼まず面白いのは冒頭、異世界転生した主人公が出会うイケケモのエイデン(昔の家電屋ではない)が人の言葉を話せず、会話が出来ないことだね。
大半の異世界転生ものは何故か転生先の人間が日本語堪能なので、このディスコミュニケーションにはファンタジーでありながら、妙なリアリティを感じた(そしてこの引っかかりが、大きな予感だったと後々気づく…)。
エイデンは頭が良くたった数日で日本語を習得することも、異次元の頭脳にリアリティがあった(ファンタジーなのにね)。
▼主人公は現実世界で体験した悲しい出来事を異世界で払拭し、
女性としても、人間としても徐々に成長していく…
このあたりの展開なんだが、シンプルに異世界ものとしての出来栄えが良かった。
恵まれなかった主人公だが、別世界で人生を追体験することにより、幼いながらに新しい人生を歩んでいる感覚がプレイヤーにもあった。
綺麗な音楽や刺繍のような背景グラフィックなどで世界観を構築出来ているし、異世界の生活模様が丁寧に描かれているのも良かった。
▼…そして本作最大のキーポイントにして問題点が……「迷子と恋と獣人と」は異世界転生ものでありながら、現実世界が非常に重要ということ
異世界転生ものでは最終回で主人公が現実世界に戻るも、時間が全く経過していない…というパターンがありがちだが、本作では寧ろ現実世界の動向こそが重要なんだよね。
乙女ゲームとしてもやや珍しいかもしれない
▼中盤以降はエイデンに〇〇がいた事が判明し、大きな衝撃を受けた幼い少女の、切ない恋愛模様が描かれる…
あまりに悲しき葛藤だ…
…
うおお!
すげえ!
盛り上がってキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!とテンションは最高潮!
…しかし問題はここから…
…えっ?これって角川ラノベでしたっけ?
富士見ファンタジア文庫でしたっけ?
…という超展開が待ち受けていた(ルート分岐あり)。
…
正直私にとっては、蛇足だった。
異世界転生した12歳の少女と、重い過去を背負う獣人の心の交流と恋愛模様を見守りたかったので(最後は元の恋愛物に戻るとしても)、ずいぶんな回り道をしてしまったなと…
膨らんだ期待感とはかけ離れたストーリー展開には、ある意味ぶったまげた
…
ここが本作最大の評価の分かれ目だと思う。
だから駄作だなんて極端な評価をするプレイヤーはいないと思うが…
おそらくは作者がやりたい事を大量にぶちこんだ所為で支離滅裂であり、
それでいて、その詰まりに詰まったハチャメチャ感が抜きん出た個性にもなっている…
終わってみれば「迷子と恋と獣人と」は冒頭からエンディングまで緩急や突進力が物凄い、とんでもないゲームだった…
「迷子と恋と獣人」ではなく「迷子と恋と獣人と」という切りが悪くもあり意味深なタイトルは、様々な要素を含むという意味だったのかしらん…
▼評価B+
75点
途中までは「【愛】について考えるすげえゲームだ!!」……と思っていたら、ストーリーがかなり取っ散らかったというか……むしろ飛び散ったとでもいうのか…
かなり意外な方向に進みましたね…
タイトルに倣うなら、迷子になった
繊細な雰囲気に反して灰汁は相当に強いが、設定も斬新だし、乙女ゲームが好きな人は勿論、世界観が面白いので……そうじゃない人もやってみたらどうですかね。
タイトル回収ならぬタイトル画面回収も見事っすよ。
…終わってみれば奇ゲーな気がしますが、私は結構「迷子と恋と獣人と」のこと、気に入ってますよ。
寧ろあなたが「迷子と恋と獣人と」の作品性を受け入れた時、かつてない名作になるかもしれません。
そんな人が出てきてくれることを、私は期待しているんです。
…
まだ書き足りないので、エンドコンプまでの攻略日記を1.2本書くかも。
「その他のおすすめフリーゲームと小話と」
▼「モブLOVE! 〜モブのような女の子とLOVEしたい〜」を攻略。
70年代を舞台にした恋愛SLG!
それだけでかなり斬新!
Night Tempoみたいなキャラクターイラストがまさに70年代っぽいが(?)、背景素材が今風なので、画面の統一感がもっと欲しかった。
70年代の女性の体はもっと貧相じゃないのかな?
小中学生みたいな子でもおっぱいが大きすぎておっぱいが大きいこと自体は良いけれど、さすがにわざわざこのような時代設定にした以上は、あんまりおっぱいが大きいのも違和感。
まあ70年代でもおっぱいの大きな小中高生はいただろうけど。
当然だが産まれてないからわからんな。誰か参考資料頼むわ(学問的、歴史学的な興味ですよ)。
▼「ゲームに興味がない人にもフリーゲームを薦めている。そこがPCとネット環境さえあれば無料プレイできるフリーゲームの強み」……ってなことを数年前に書いたが、先日、知り合いの女性に「鼓草」を薦めた。
何気なくゲームの話になり、「私、乙女ゲームが好きなんですよ」とつながった。
「わかるよ、「うたの☆プリンスさまっ♪」(みたいなゲーム)でしょ」と返したら驚いた顔をしていたが、流れで「鼓草」を薦めるに至った。
彼女は主人公に近い年齢なので、案外リアルな感想が聞けるかもしれない。
現代の若い女性が昭和の若い女性(の物語)をどう見るか、楽しみだ。
「え?嘘…これボイスないんですか?(笑)」「ムービーが流れないんですけどバグですか?(笑)」とかいってきたら腹パンである。
因みにこの女性…全現行ハードを持っており、毎日ゲームを遊ぶほどのゲーム好きらしいが、それでも「フリーゲーム」「フリゲ」そのものを知らなかった…。
この世代だと「ゆめにっき」も知らないだろうし、代表的なフリーゲームが無い世代なのだろうか…
「素人がネットで無料公開してるゲーム」という時点でピンと来ていないようだ。
フリーゲームが衰退し下火になって久しいが、ゲーム好きに「存在そのものを知らない」と面と向かって言われたのは初めてかもしれない。
今の人からするとそのポジションはスマホゲームなんだろうね…インディーズもあるしね…
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「まよこい」は諸事情により自分の中では完結したので、追加、加筆修正後は敢えてプレイしない事になりました。このような雑多なB級ゲー(誉めてます)は大好物なので、Ver.1でも十分良作でした。
偶然他の方の記事から、あれ?うちのサムネがある!?と驚いて拝見させて
いただきました。
繊細な雰囲気に反して灰汁が強いと飛び散ったには私も大笑いです。
昼ドラはうちのお家芸みたいだとよく言われるので、初見のレビュアーさんに
気にかけていただいて嬉しい限りです。
10月17日にふりーむさんでイラストと演出を追加したアプデバージョンの
登録が完了しました。END4ならドンパチもなく二人の恋愛よりになっているのと
うわあ…現実…とげんなりするのもうけあいです!
もしよろしければ、再DLをよろしくお願いします。