舞台は古い伝承が根強く残っている、小さな村
女装させた少年を夜、神様に捧げる風習がある
そんな美少年「東くん」と、彼に恋する「私」の物語
▼まずはビジュアルがよかったね。最初に目に飛び込んでくる要素だから、重要でしょ。
夏が舞台なのだが、空の青さやひまわり畑など、「AIR」のような、「これぞ夏」という雰囲気が全編に漂ってるんだよね。それも暑苦しい夏ではなく、どこか奇怪な空気の夏
画風がキャライラストとマッチしているので自作と思ったら、どうやら素材らしい。
よくこんな素材をきれいにまとめたな。動画処理も効果的にされている
▼サウンドもいいね。ヘッドフォンを推奨しているが、テキストではなくサウンドを使った表現が多いんだよね
たとえば主人公が勇気を出し東くんを下校に誘うんだけど、歩いてるあいだは、砂利を踏みしめる音が聞こえるんだよ。
しかし緊迫した場面になると、突如止む。
「ああ、二人は立ち止ったのだな」なんて容易に想像できるよね。
このような、読者の想像を掻き立てる演出が上手
とあるシーンでは主人公の目が見えなくなるのだが、画面に黒味がかかって、本当にテキストが見えづらくなる(「逆転裁判」がよくやる演出)
非常に単純な仕掛けなのだが、意外とフリゲでは見ないんじゃないか?うわぁこんな使い方あるんだぁって思った
バックログが原稿用紙風だったり、ディティール、作風の確立もうまい
▼…肝心のストーリーだが、切なさと痛さと気持ち悪さ(昔の邦楽タイトルっぽい)を兼ね揃えた、良質の怪奇恋愛ストーリーだった
一応乙女ゲーに分類されると思うが、なんてったって、
主人公のライバルである「存在」が、完全に人ならざるものだから
絵こそ無いが、触手が大量についていたり、まあクリーチャーに近い風貌をしていると思われる
そんな気持ち悪い奴の夜の相手をさせられているのは女装した東くんで、「嫁」なわけ
この事実に私は主人公と同じく、嫌悪感や奇妙な嫉妬を抱いたね
そんな畏怖の存在にも色々あるわけだが、エンディングは予想外の形で幕を降ろす。なるほどここでタイトル回収かと。
▼これについて思うところがあるんだが、説明文の「始まる前に終わった初恋の話だ。」は要らなかったんじゃないか?
主人公の東くんに対する感情が「初恋」かどうかってのは、作中だけで描写するか、読み手に委ねたほうがよかったよ、絶対
エンディングの解釈が全然違ってくる
私はこの「始まる前に終わった初恋の話だ。」という一文をクリア後に読んだのだが、正解だったよ
エンディングの解釈は自分でやりたいしね
評価B+
70点
田舎、夏、青春、微ホラー、怪奇、ジュブナイル……
これらのテーマが好きなら、とくにおすすめです。
他には「面接官 〜会社の経営を立て直せ!〜」「言葉の棺」「ドスケベサキュバスがヤってきた!」「なりたい」を攻略。どれも面白かった。
「MÖWIUS」もやっていきたいが……長そうだね。
最近のフリゲRPGは本当に長編が主流になった。
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