人形の少女達と過ごす不思議で切ない一時の夏。
当時小学生だった僕は夏休みに祖母の家に里帰りすると、そこで麦わら帽子の女の子に出会い、僕は声を掛けた。
『あんた、こげな体の私に声を掛けるなんて随分物好きな男の子じゃねぇ』
そう言って振り返った女の子はなんと『人形』だったのだ。
こうして僕はこの不思議な人形の女の子と夏を遊び、後に将来に大きな影響を受ける僕の夏の思い出の物語だ。
▼うう〜〜〜む…
…
このゲームの評価を結論から言うと「実に惜しい」。この言葉に尽きる
作者が「こういうゲームを作りたい」「こんなシナリオを書きたい」という意思はビンビンに伝わってくるが、明らかにテクニックが追いついてない…
展開は強引だし、誤字脱字はありえないほどあり、文章に不自然なところも多い。「なろう」のような、逐一茶々を入れる文体も、作風にミスマッチな気がする
だがこのようなゲームは、まれにある。
レビューした中では、義理の妹と世界一ピュアなセックスをする「流れ星に願いを」や、力なき中高年が必死に巨悪に立ち向かう「ドリーミングナイト」がそれだ
この2作品も作者の熱意や発想は実に面白いが
あまりにも洗練されていない部分が多く、クリアすると同じ感覚になった
▼しかし感想というなら、「人形サマー」は実に面白かった
というかこのゲーム、「好き」だ
私は夏をテーマにしたボーイミーツガールを好むが、相手が人形というボーイミーツガールは聞いたことがないし、オリジナリティは高いよね
▼立ち絵や背景ばかりか、なんと音楽までオリジナルだ。聞き覚えのない音楽と思ったが、まさかオリジナルとは思わなかった。
牧歌的で夏を思い起こさせる、習慣性のある曲だ
人形が麦わら帽子をかぶったロゴも面白い
▼もっとも秀でたポイントとしては、ストーリー構成がいい
姉妹人形の「曼珠」と「菊華」のルート、そしてトゥルーエンドルートに分岐する
一見まるで関係が無い突飛な展開に思えるが、実はすべてが1本の線に繋がっている…
クリア後に読めるサイドストーリーでは伏線が回収されるが、
「はぁなるほど、ここで〇〇と〇〇がつながるわけね」と話作りの上手さを感じた
それだけに、なんとも読み辛い文章がもどかしかった
▼中盤までは1980年を舞台に、少年が人形の少女と過ごす不思議な夏物語がテーマとなっている
まだファミコンすら発売されていない時代…
さらには田舎なので、子ども特有の遊びをして彼女たちと過ごす
戦争の悲しいエピソードなども盛り込み恋愛要素もあるので、カテゴライズするとギャルゲー(!!)になると思う
ダブルヒロインは、菊華のほうが好きだ
気にいらないことがあるとすぐに「ブチ〇すけぇ」と凄んでくるヒロインは、そうはいないだろう(ちなみに曼珠もそんな感じだ)
▼ストーリーは唐突に終わりを迎えるが、より突飛なエピローグが始まる
もう「サマー」は全く関係ないが、人形がヒロインの物語としては、「王道」で完結させたかな
突然の別れをむかえた少年と、ふたりの人形少女の行く末…
ぜひ見てもらいたい
評価C+
65点
誤字脱字やテキストの修正だけでも、伸びしろがあります
一風変わったボーイミーツガールをやってみたい方は、プレイしてみては?
【フリーゲームレビュー小話】
私はレビューを書く際、ちょいちょい「フェイク」というか、「しかけ」を入れます
「レビューを読んだ後そのフリゲをプレイすれば発見があり、その逆でも面白さがある」という文章上のトリック、伏線です
たとえば本文中で触れた「ドリーミングナイト」でもそのような小賢しい真似をしています
ずばり指摘すると、私がフェイクを入れたのはこの一文
飯塚だけではなく、悪党にもちゃんと人生ドラマがあるのも良い
ここだけ見ると、読者は「ふーん”悪党”というのは女子小学生に手を出したロリコン変態教師なのだな」と解釈します
ところがいざゲームをプレイすると”悪党”はこの少女で、変態教師はむしろ哀れなピエロだった事実が判明します
…
ネタバレもないのに、このしかけ…
…どうです?面白いでしょ?
お察しの通り当時の私は…
「レビュー読んでプレイした奴、絶対ここでビビルやろなあ…(ニヤニヤ)」と…
ドヤ顔で書いていました
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