2018年10月02日
うつの兆候、悪夢を撃退 手ぶらでできる簡単な方法とは
忘れられないような悪夢を見たことはあるだろうか? 夢は起きると忘れてしまうことが多いが、何度も同じ悪夢に悩まされたり、忘れられないほど怖い悪夢を見て寝るのが怖くなったりすることもある。
悪夢はうつや自殺と密接な関係にあるとされており、「単なる夢だ」と言って見過ごせない部分もある。そんな忌まわしい悪夢を撃退して睡眠を守るための、とっても簡単な方法がある。最近欧米で悪夢を撃退するために使われるようになったイメージ・リハーサル療法だ。
これは、見てしまった悪夢の結末とは全く違う楽しい結末を考えて悪夢のイメージを変えてしまうという治療法で、研究により効果が実証されているという。
□悪夢の結末を自分で決めてしまおう!
悪夢は科学的に研究されている。しかし夢が脳のどこからどのように発生するのかなどの夢のメカニズムは、まだ解明されていない。
しかし、悪夢の撃退法は見つかったのかもしれない。
悪夢の結末を書き替えるイメージ・リハーサル療法についての調査では、PTSDや不眠症の患者を含む70%以上の人が、イメージ・リハーサル療法に効果があったと報告したのだ。
イメージ・リハーサル療法とは、以前に見た怖い悪夢の結末を、起きている間に怖くないような悪夢結末に自分で変えてしまおうという治療法だ。悪夢のイメージを怖くないものに変えてしまうことにより、悪夢への恐怖を取り除くことができる。
□悪夢を怖くないものにすれば、恐れずにすむ
また、悪夢の内容を細かく書きとどめたり、悪夢のイメージを絵に描いたりすることでも、悪夢を和らげる効果があるようだ。
悪夢の中の登場人物に、空想で話しかけるようなことも奨励されている。そして、悪夢のストーリーの結末を、自分にとって快適で怖くないものに想像し直してしまえばいいのだ。悪夢で終わる結末ではなく、ハッピーエンドで終わるストーリーに変えてしまうことで、悪夢に対する恐怖は消えていく(※1)。
□良いイメージを作り上げるイメージ・リハーサル
このような不安なイメージを抱いてしまう場面を良いイメージに置き換える心理療法は、認知療法の一つだ。これによく似たイメージ・リハーサルは、スポーツメンタルトレーニングや不安防止などにも使われている。
スポーツの試合や大勢の前での発表の前には、こんなことで失敗したらどうしよう、上がってしまい何もできなかったらどうしようという不安にさいなまれるものだ。不安や上がり症を克服するために特定の場面やそこでの行動を、詳細にイメージして頭の中で再現することで、事前にシミュレーションしてうまくいくイメージを作り上げる。
悪夢の結末を考えるのと同じで、未来の出来事の結末をイメージするのだ。
□夢でしょ、と侮ることなかれ 悪夢は現実のリハーサル?
悪夢までいかなくても、夢の75%はネガティブな感情を引き起こす負のコンテンツだといわれている。では、どうして夢には悪い内容が多いのだろうか。夢学の研究者のほとんどは、夢には目的がないと考えている。
しかし進化心理学の中には、夢は脅威へのシミュレーションだと考える説もある。脅威や困難な夢を見ることで、現実に起こるときの準備や経験をさせているというのだ。
□「悪夢は自分でコントロールできない」…が人を不安や恐怖に陥れる
悪夢が何のためにあるかはまだ分からないが、悪夢への不安や恐怖は自分でコントロールできないという気持ちが不安につながっている。悪夢へも未来へも、イメージの力を使い、一つ一つの場面をシミュレーションして万全の準備をすれば、不安は薄れる。
悪夢も未来も、その場面での対応法に対する周到な準備をしていけば、怖いものではなくなる可能性が高いのだ。
そして悪夢の場面がもし現実になったとしても、悪夢の結末へのイメージ・リハーサルが現実への対処にも役立ってくれるに違いない。