2017年12月28日
ヨガブームの次は太極拳か。不眠や病気治癒に実践型解消法を
炎症は細菌などから体を守る大切な生体反応であるが、過度に起こるとアレルギーなど逆に私たちの体に有害な反応を引き起こす。
カリフォルニア大学の新しい研究によると、不眠患者の不安やストレスを取り除くことで睡眠改善に有効とされる認知行動療法が、炎症の軽減にも効果があったという。
さらには、同様の効果が太極拳にもあることが認められたというから驚きだ。太極拳は古くから健康に良いとされてきたが、ヨガのように近い将来、太極拳ブームが到来するかもしれない。
□老化やアルツハイマー病にも炎症か関係する!?
冒頭で述べた通り、炎症は、私たちの体を細菌やウイルスなどの微生物から守ったり、傷ついた体の組織を修復したりする正常な生体反応である。しかし、時にはこの炎症が体にとって有害なこともある。
例えば、炎症が過度に起こると花粉症、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患を引き起こす。
また、最近の研究では、これまで炎症との関連がないとされていた病気でも、実は炎症が関わっていることが分かってきて、がん、動脈硬化、肥満、アルツハイマー病などといったさまざまな病気や、さらには老化にも炎症が関わっているという証拠も見つかってきているのだ。
とにかく、炎症は体中のあらゆる組織に影響を与えるため、長引く炎症は体をむしばみ、あらゆる病気の原因となるということだ。
□炎症を改善する治療法に認知行動療法とは?
不眠症の患者には認知行動療法が有効となることがある。
認知行動療法とは心理療法の一つで、カウンセリングやグループワークなどを通して、不安やストレスなどの問題の捉え方を徐々に変えていき、それらの問題にうまく対処できるような心の状態をつくっていく方法である。メンタルトレーニングと言ってもいいだろう。
最近、この認知行動療法が不眠症と炎症を改善するという新たな報告があった。
カリフォルニア大学で行われた123名の不眠症患者を対象にした研究では、認知行動療法が不眠の症状を改善したうえに、血液中の炎症マーカーである「C-反応性タンパク質(CRP)」が減少し、体内における炎症のシグナルの伝わりを抑制したというのだ。認知行動療法が睡眠の改善のみならず炎症の軽減にも効果的だとは意外な結果であるが、睡眠と炎症との間には、何か密接な関係があるのかもしれない。
□不眠症の改善に太極拳も効果的!?
研究グループはさらに、不眠症の患者に太極拳を治療として取り入れた。すると、認知行動療法を施したときと同様に、太極拳も睡眠を改善し、炎症を抑制する結果が得られたのだ。
中国では古くから太極拳の習慣が日常生活に取り入れられており、その健康効果は経験的に実証されてきた。今、改めて、科学的な視点からもその効果が認められつつあるのだ。
□太極拳でなぜ不眠が改善するの?
ところで、太極拳でなぜ睡眠が改善するのか? そう疑問に思う方も多いだろうが、それにも根拠はある。ヨガ、ウォーキングやストレッチなど、適度な運動習慣は睡眠の質を改善させる。同様に、ゆったりした動きながら適度な運動量を持つ太極拳も、習慣的に行うことで、快眠を促す習慣となるだろう。
また、まだまだ科学的な解明はされていない部分もあるが、太極拳は中国医学でいう「気」の流れを良くする治療法でもある。中国医学では、気の流れが悪くなると身心のバランスが崩れて病気になると考えられている。この「気」の循環を高めて様々な病気の治癒を目指すのが太極拳のため、不眠や炎症にも効果があると考えられている。
□認知行動療法、太極拳など、実践することが不眠解消の第一歩
今回の研究では、認知行動療法や太極拳が睡眠を改善させ、炎症も抑えることが示された。
しかしその一方で、不眠症の患者が認知行動療法や太極拳をせずに、ただ睡眠のセミナーのみを受講した場合では、睡眠や炎症の改善は見られなかった。これは、どのような意味を持っているのだろうか?
睡眠を改善するには、ただ知識を増やすのではなく「実践が重要」ということかもしれない。この記事を読んでいる方も、よりよい睡眠に向けてぜひともアクションを起こしていただきたい。