2017年12月15日
熟練ヘビーゲーマーは悪夢を楽しみ夢をコントロールできる?
普通は見たいと思ってもなかなか見られない「明晰夢(めいせきむ)」。明晰夢とは自分が夢の中にいることを自覚しながらみる夢のことで、見たい夢を自由自在にみるための第一歩とも言われている。その明晰夢について今、ゲーマーが注目されているのをご存知だろうか。
なかでも、熟練のヘビーゲーマーほど明晰夢を見やすく、夢をコントロールする能力にも長けており、悪夢を見たとしてもそれを「楽しい」と感じるのだという。
□ゲーマーは明晰夢や第三者視点の夢を見やすい
カナダの心理学者、ジェーン・ガッケンバッハ博士はゲーマーであることが明晰夢を見る回数や夢をコントロールする力に関係するのかについて調査を行った。その結果、ゲームに費やす時間が多いゲーマーほど明晰夢や第三者視点からの夢を頻繁に見ており、夢をコントロールしやすいということが判明したのだ。
□悪夢もポジティブに感じるヘビーゲーマーたち
シューティングゲームなど暴力的なシーンや映像を含むゲームをよくプレイする人ほど悪夢に悩まされそうなイメージを持っていないだろうか。
だが実はその逆。ヘビーゲーマーほど悪夢を見やすいのはその通りだが、悪夢はただの悪い夢よりもネガティブな感情を抱きやすいにもかかわらず、ヘビーゲーマーに限っては、悪夢を見ても快楽や幸福感などのポジティブな感情を抱きやすいという。
□ヘビーゲーマーは銃撃戦やゾンビなど、怖い夢をも楽しめる?
さらに、2008年に98人の男女を対象にガッケンバッハ博士が行ったオンライン調査によると、ゲーマーには「脅威シミュレーション理論」と呼ばれる、恐ろしい状況を回避しようとする行動が起こりにくかった。
脅威シミュレーションとは、現実世界で自分の何かが脅かされそうな状況を安全な夢の中でシミュレーションすることで、実際にそういった状況が起こったときのための準備を事前にしておく現象だと言われている。夢の中であっても、脅威的な状況に置かれたとき多くの人は回避行動を取るものだが、ゲーマーはこの状況を「楽しい」と感じ、逃げずに戦う行動を取りやすいというのだ。
つまり、銃撃戦に巻き込まれたり、ゾンビに襲われたり、といった怖い夢をみた時、一般的には夢の中でもそこから逃げるような行動をとることが多いと言われるが、ヘビーゲーマーの場合、その状況をむしろ楽しんで、銃撃戦に参加したり、ゾンビと戦ったりする、というわけだ。
□明晰夢とゲームの共通点とは
なぜゲーマーが明晰夢をよく見るのか、夢をコントロールしやすいのかについて、明確な理由はまだ明らかにはなっていない。けれども、明晰夢とゲームには共通点がいつくか存在する。
・どちらも現実世界を模倣した空間であること
・明晰夢を見る人には高い空間認識能力を持つ人が多く、ゲームをすることはこの能力の向上と関係している
・瞑想(めいそう)とは客観的に自分の体に注意を向けるトレーニングで、瞑想の経験がある人ほど明晰夢を見やすいという。同様に第三者視点から深く集中するゲームは瞑想に入るのと似た状態ともいえ、どちらも明晰夢を促しやすいと考えられる
・ゲーマーは乗り物酔いになりにくい体質であるほうが有利であり、明晰夢を見る人は優れた「前庭器官(内耳にあり平衡感覚を司る)」を持っている。つまり、どちらも乗り物酔いになりにくい人が多い。
明晰夢がゲーム内と似通った環境であることから、ゲーマーにとって夢はゲームのように自由にできる場所だと思い込みやすく、コントロールもしやすい。このように、ゲームが明晰夢を見るための土台作りをしているという考え方もある。
夢の中で得たアイデアが現実の新発見に結びついた例はたくさんある。もしかすると、ヘビーゲーマーのみた明晰夢から、とんでもない大発明が生まれる日も近いかもしれない。