2017年03月06日
あなたは短時間睡眠でOK? 早起きできないのは遺伝子のせいかも
健康のため、「7時間睡眠」や「早起き」を心掛けようとも、なぜかなかなか続かない……。原因は怠惰な心ではなく、遺伝子が関係しているのかもしれない。
冬季うつ病や不眠症などの睡眠トラブルから、短時間睡眠や早起きなどの習慣まで、遺伝子は睡眠にさまざまな影響を与えているという。
□7時間以下でOKなのは特殊なケース
成人の場合、本来ならば1日7時間の睡眠が理想とされているが、毎日数時間の睡眠で健康を保つことができる人がいるという話を聞いたことがないだろうか?
2009年にカリフォルニア大学で行われた研究によると、4〜6時間といった通常よりも少ない睡眠時間で、普通の人が7時間寝たときと同じレベルでスッキリとした心身の状態を保てる人たちがいるという。そして、彼らにはある特殊な遺伝子が備わっているということが分かっている(※1)。ただし、この遺伝子を持つ人はまれであるため、両親にそういった人がいない限りは、7時間睡眠を心掛けるのが無難だろう。
□「早起き」には15の遺伝子が関係
成功者には早起きが多いとよく聞くが、人生の“成功”を手に入れるのと同じくらい、早起きの習慣を定着させるのは難しい。
しかし、実は早起きを好むという志向性にはDNA内の15もの異なる部位が関係しているという。つまり、早く起きられるか否かは、100%個人の「意志」の問題であるとは言い切れないということだ。
さらに、早起きする人の特徴には、不眠症やうつ病の可能性の低さや、BMI指数の低さも見られるという(。
□寝過ぎや不眠症も遺伝子のせい?
眠り過ぎる過眠症や眠れなくなる不眠症にも、ある遺伝子が関わっているという報告もある。
これらの症状は、睡眠サイクルに影響する甲状腺ホルモンの量が関係しており、このホルモンの分泌量が少ないと眠り過ぎの症状を起こしたり、逆に多すぎると極度に活動的になる。このホルモンの制御を助けるのが、「PAX8」という遺伝子だ。
2013年に実施された研究で、このPAX8遺伝子付近の部位が「適切な睡眠時間の維持」「血糖の効率的な代謝」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)リスクの低下」と関係することが分かった(※1)。その関係性についての具体的なメカニズムは不明だが、甲状腺ホルモンの分泌レベルが睡眠パターンに影響を与えている可能性があると研究者たちは言う。
また、ゼブラフィッシュの幼生を使用した研究によると、睡眠と起床のシステムに関わる「Nmu」と呼ばれる遺伝子が過度に発現すると、魚たちは極度に活動的になり、眠りが抑制された。この二つの研究から、新たに「PAX8」と「Nmu」という2つの遺伝子が不眠症に関わっている可能性が示された。
□早起きは遺伝…とすると打つ手無しなのか?
遺伝子が影響するとあっては、今さらどうすることもできないのか? 対策の余地はないのだろうか?
不眠には様々な要因が関わるが、今回の研究で示されたように遺伝性も一因となるのだ。生活に支障を及ぼすような不眠に悩まされているようであれば、一度遺伝性の有無について医師に相談してみることも一つかもしれない