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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2023年01月21日

スイスイ


玉置浩二『JUNK LAND』七曲目、「スイスイ」です。

前曲「ラストショー」が終わり、静粛なアフターショー、突如明るいハーモニカの音が響き渡ります。「Yeah」とルーズに玉置さんが言ったかと思うと、突如曲は始まります。パーカッションとアコギのストロークで軽快です。Bメロからはエレキギターのカッティングとホンキートンクなピアノがはいり、さらに軽快、そしてサビでドラムが入り、大合唱の「スイー」で合いの手が入ります。曲はこれを二回繰り返し、アウトロだけなんだかチューニングが合ってないんじゃないのってギターが響いたかと思うと、突如これまでとコードを変えて「暇がない」と連呼し、ふたたびハモニカが響き終わっていくのです。なんという聴きやすいシンプルでノリノリの曲だ!もっと凝るだろ!凝ってドンドン軽快さをダメにしちゃうだろ!なんでこんなに絶妙なんだよ!いま思えば『CAFE JAPAN』の曲たちはここの段階からさらに練り上げて迫力や完成度は上がっているものの、そのぶん軽快さを犠牲にしてしまったんじゃないかと思われる曲が含まれていました。『JUNK LAND』は「デモテープのまま」という玉置さんですが(『幸せになるために生まれてきたんだから』より)、デモテープのままにしたからこそこの曲はこんなにもさわやかなんじゃないかと思えてきます。

さて実はこの曲、わたくし玉置ソロでトップ3に入る好きな曲なのです。上述のように軽快さが一番搾りのまま楽しめる曲であることに加え、青年期から壮年期にいたるわたくしの人生を描いてくれたんじゃないかってくらいシンクロ率が高く、そしてそれがおそらく玉置さんの人生と重なっているんじゃないかなどと、玉置さんからすればキモいことこの上ないことを感じさせてくれる曲なのです。玉置ファンでよかった……と、何十年も思わせてくれる曲なんですよ、そんな曲作ってくれるミュージシャンほかにいませんよ、少なくとも知りませんよ……きっと「田園」や「メロディー」、そして「MR.LONELY」「しあわせのランプ」でそのようにお感じになった方も多いかと推察されるのですが、わたくしにとってはこの「スイスイ」こそがそんなズバリ曲なのです。

アズテック・カメラがヴァンヘイレンの「JUMP」をアコギ弾き語りでカバーするという大事件が1984年にあったのですが、1997年当時のわたくし、まさにそんな気分、〇室プロデュースとか渋〇系とかナメてんのか!と相変わらずオリコンチャートとカラオケと有線に底知れぬ怒りを燃やしておりました。やれやれこんな曲がヒットするなんて世も末だぜとヤサグレていたのです。聴きたくなくても聴こえてくるんですよ当時の曲ってのは……暴力的に聴かせてきますので、うかつに店でウドンも食ってられないのです。ちなみにわたくしヴァン・ヘイレンけっこう好きなんでその所業に怒ってもいいんですが(笑)、アズテック・カメラさんの怒りというかメジャーチャートに対するシラケぶりもよくわかるのです。

さて一番は、多忙な男の独白です。多忙なのは仕事だったりプライベートだったりで用事がギチギチに詰まっているからなのです。「びっしりぎっしりつまって」「いっさいはがされたって言って」と「っ」を活かしたリズムで一気に歌い切ります。このリズム感!言葉のセンス!活舌!ホレボレしますね。わたくしたくさん練習しましたけども、なかなか同じノリは出ません。アコギで弾き語りしようとするとなおさらです。大好きな曲なのに人前で披露するに値する腕前にならないのです。それ以前にわたくし歌わないほうが人類のため(*)なんですが。

(*注)いかりや長介『だめだこりゃ』で、2022年10月にお亡くなりになられた仲本工事さんのことを、歌わないほうが人類のためだといかりやさんが書いていたのですが、それはもちろんいかりやさん一流のジョークで、ドリフターズのリードボーカルを一人選べといわれたら仲本さんだったのは、いかりやさんも認めるところだと思います。仲本さん、どうか安らかにお休みください。

そんなわけでして、「お人好し」と二番に書かれているこの人物、いろんな人から寄りかかられてアップアップしています。仕方ありません、世の中仕事はできる人やれる人に回ってくるものなのです。ろくに仕事をしないくせに自分は潤滑油だとか縁の下の力持ちだとか寝言を言っている人は一定数いるのですが、たのむから潤滑油も縁の下の力持ちも片手間でやってくれ、それで仕事をしている顔をしないでくれと言いたくなります。玉置さんはそんなイヤな感情をあまり持たない人らしく、それでも「大丈夫だよ」って笑ってるタイプの人であるようです。これは自称潤滑油や縁の下の力持ちに骨までしゃぶられること必至です。

いるだろう?そんなやつ?と問いかけ最後にそれは自分だといい、さらに意外なフリをするという、言いかたによっては回りくどい嫌味か!と思わなくもないんですが、玉置さんだと悪気が全然ないことが明らかなので許せちゃう、むしろいつもありがとうと感謝したくなるという清々しさがにじみ出ています。「いるだろう」に続けて「そんなやつ」「友達かい」「ひとりぐらい」「俺かい」と、畳みかけるこの歌、一発で精神の内奥にまで突き刺さり、ずっとずっと頭の中で反芻されます。そしてその一生懸命さと邪気のなさ、公共の福祉を絵にかいたような存在である玉置さんの奮闘ぶりがジワジワと全身に浸透してくるのです。気がつけばこの歌にゾッコン、「おれだーよ!」と口ずさむようになります。みんなを支えているのが自分なんだと叫ぶ快感も相まって、もうこの歌を聴かずには眠れなくなってゆきます(笑)。

そしてブレイクが入りあの娘のために裸になります。「スイー(スイー!)スイー(スイー!)およーいでいって〜」と「ええじゃないか」踊りの時代から日本人の心身に染みついたようなリズム、呼吸で掛け合いが起こります。そして人波に流され溺れそうになっているあの娘を助けるというヒロイックな行為をしている気分を盛り上げてくれます。そうだおれはあの娘のために裸一貫で、どんなに大波だろうが大風だろうが構わず飛び込んで、一目散に助けに行くんだ……実際には部署の残り全員を食わせているだけなんですが(笑)、そんな悲哀が吹き飛ぶほどのヒーローぶりです。

二番も「正真正銘ニッポン人」と天才的なリズムとワードセンス、活舌です。たぐいまれな「き」てんけいて「き」なんてシビれるほどにハマっています。ここにきて、玉置さんの歌詞はわたくしの中で完全に松井さん須藤さんと対等に並び立つ地位を占めました。これまでは松井さん須藤さんの世界に完全に酔いしれ、玉置さんの世界にはハマり切れない感覚があったのですが、この曲あたりをターニングポイントとして、玉置さんの世界に浸りたい!という感情が抑えきれなくなっていきます。いったんこの境地に達してはじめて、それまでなんとなく稚拙に思われていた玉置さん作詞の過去作にもその凄みを見いだすことができるようになったのです。覚えたいですもん!歌詞!この「スイスイ」は、「」「終わらない夏」のときのように歌詞をノートに何回も書いて覚えたい!そんな気持ちにさせてくれた最初の玉置さん作詞の曲なのです。

ところで、わたくしまごうことなき正真正銘ニッポン人なんですが(大和時代とかになるとわかりませんが)、北海道人ですのでちょっとドライなところがあるのかもしれません。北海道はアメリカみたいなもので、みんな先祖代々住んでいませんし、いろんな文化が混ざり合って暮らしていますから、ちょっと道外の人とは感覚が異なるところがあるのかもしれません。ですが、日本の義務教育を修了していますし、テレビも雑誌もみんな日本のもので育ってきていますから、根のマインドは完全に日本人です。それは玉置さんも同様でして、本州に来てからはちょっとずつの違和感を抱えながら暮らし続けることになるのです。あ、そうそう「平和な田舎者」ですよわたくし!(笑)風来坊ではないと思いますが、北海道人ですからここに骨を埋めるとかそういうウェットな気持ちはあんまり持っていませんので、どこか風まかせなところもあるでしょう。

さて今度は「誰かのため」に裸になります。誰なのかわからなくてもいいんです。世知辛い世の中でつらい気持ちになっている人を元気づけるためなら一肌脱いで、輪になって、パアーッとやりますよ!誰がつらくて誰が元気づけられているのかわかりませんけども、そしてカラ騒ぎにウンザリしている人がいるのかもわかりませんが、いいよいいよ、後から悪くなかったなあくらいに思ってくれれば!と鷹揚な気持ちで音頭をとるのです。

「かっこつけてた頃のあの頃のオレ」は、完全に自分のことをミュージシャンとしか思っていなかった痛い中高生時代のわたくしとかでなく(笑)、みんなが一番喜んでくれていたころの自分なのです。玉置さんですとそれこそワインレッド時代かもしれません。わたくしにも音楽関係ではありませんがそんな気分になる時代がそこそこありました。わたくしの場合、こんなこと続けていたら早死にするとわかりましたのでだいぶ前に思い切って転身したのですが、いまでもその頃の自分を取り戻すことで喜んでくれる人たちがいるのです。だから、いまだけは、ちょっとだけはあの頃のオレでいこう……と気分はやや重くなりつつも、それでも全盛期であったのは間違いないのですからちょっとだけうれしい(笑)気分で、自分を奮い立たせてあの頃の足取りで仕事場に向かうのです。玉置さんも「ワインレッドの心」とか「悲しみにさよなら」とかを歌うと喜んでくれるファンたちの前で、ちょっとだけ80年代の玉置さんに戻ってくれるのでしょう。

コードを変えて暇がない……暇がない……暇がない……とアウトロに入ります。そりゃ暇なんかありませんよ、あの頃のオレはいまの自分じゃないのに演じてるんですもん、人のために。そりゃ時間も労力も食われるってもんです。そんなことしないで傍観してりゃいいのに、助けちゃうんですね。お人好しのニッポン人、田舎者ですから。自分が食われていることも半ばわかっています。でも、ちょっと思い切ればできることをしないせいで人が苦しむのはイヤなんです。自分がちょっとムリをして苦しんだほうがマシなんです……。そんな心情を、玉置さんが似たような心境でこの曲を作り、歌っているんだと勝手に想像して重ねて、感動するのです。

人は大人になる際に、自分だけを中心としてみるような生き方をどこかで転換します。子どもが死ぬくらいなら自分が死んだほうがいいくらいに思えて初めて親として一人前であるのに似て、自分が一番活躍できることを喜んでいた時代を過ぎていつか、あの娘のため、誰かのためになるのなら敢えて痛いころの自分さえ取り戻してもいいと思えて初めて人は一人前なのかもしれません。自分だけのことを考えれば、利確して消耗を防げばいいんです。ですが、それなら始めから何もしなければいいと気がついてしまうんですね……それでは何のために生きているのかよくわからないです。人間は、生まれた原因はハッキリしていますが、生まれる理由や目的はありません。そして生きていく目的や理由は自分で見つけるものです。被害に遭わないこと、生命を維持することのために生きているのか?違うだろう?ならば、どんなに損な気がしたってそれ以外のことを全力でやるしかないだろう?そしてあの娘や誰かが助かるんなら、喜ぶんなら、おれの人生それで上等じゃないか!こうして自分をミュージシャンだとしか思っていなかった北海道生まれの少年は大人になります。書くとあっというまですが、実際にはこう思い切るまでに10年単位で時間をかけているのです。「スイスイ」はその過程に寄り添ってくれた名曲ですし、それを作ってくれた玉置さんは人生の師といってもいいのです。

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posted by toba2016 at 12:12| Comment(0) | TrackBack(0) | JUNK LAND