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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2021年06月19日

SEK'K'EN=GO


安全地帯VIII 太陽』六曲目「SEK'K'EN=GO」です。

タイトルだけだと"LOVE セッカン DO IT"と同じくらい意味が分からないですね。「世間GO?」「席巻GO?」「石鹸GO?」歌詞カードをみるとすぐに「世間GO」だとわかるんですけども、「せけんごー」でなくて、「せっけんごー」って歌ってますよね。だから、タイトルはそれに近い表音にしたということなのでしょう。

ほとんど終始繰り返される全体のテーマともいえるギターの八分フレーズ(たぶん矢萩さん)、そして間奏での十六分の細かいシンセフレーズ、「WE ARE WE ARE」という祭礼での唱和のような暗いうなり、チャカポコチャカポコ鳴らされるなんらかの打楽器が、この曲全体のイメージを作っています。それに玉置さんの短いフレーズをどんどん重ねてゆくボーカル、武沢さんのサビでのカッティング、小節のシッポからアタマにかけて「ボキボキッ!……ボキボキッ!……」とアクセントを入れる六土さんのベース、響きの少ない乾いた音でそれらすべてを指揮者のように複雑にリードする田中さん(多分この人がいちばん苦労したと思います)が非常にロックっぽい幹を曲の真ん中に通している感じの、まさに意欲作というか、こんな曲世界中みてもなかったんじゃないのと思われる先進的な楽曲です。このアルバムにおけるもうひとつの「太陽」といってもいいでしょう。それくらい存在感のある曲です。

いきなり当時の所感ですが、お子ちゃまだったわたくし、そしてなにより80年代の耳と頭しかもっていないに等しかったわたくし、この曲の魅力はほんとにわかりませんでした。耳も頭もないんだからこの曲が響くわけがありません。アルバムをはじめて通して聴いているときなどは、もうこのへんで「またこういう曲か!そろそろ勘弁してくれ!どうしちゃったんだよ安全地帯!」と頭を抱えていたように思います。安全地帯の進化に追いつけなかったんです。子どもとはいえそれまでの音源はほぼ余さず聴いていたのですから、いっぱしの安全地帯マスターのような気分でいただけに挫折感は大きかったです。な、なんだこれついていけねえ……が正直な感想でした。年単位で聴き込むことで慣れて、そのうち快感に変わってくるという過程を経なければならなかったのです。もちろん今となっては「もう一つの太陽」と思うくらいですから、これでもこの曲の凄さと良さはわかっているつもりではあるのですが、まだまだこれからわかってくる過程にあるかもしれず、油断はできません。

さて、この曲は五分近い大曲ですし、歌詞の量も他曲の二倍くらいあります。どこからどう語るべきか、ちょっと悩みますね。さしあたり「TVショー」とか「慌ててひねる」ってちょっともう現代の感覚でないですから、その辺から搦め手で参りましょうか(笑)。

世界が「困ったモザイク」なのは現代でも同じなんですが、ようするに世界ではモザイク模様のようにあちこちでいろいろなことが、その熱量も濃淡さまざまに同時進行で起こっているわけです。「ひょうきん族」に勝って土曜八時戦争を制した「加トちゃんケンちゃん」もまた視聴率低下に苦しんでいたとかそういうどうでもいいことが日本のTVで起こっているかと思えば、北アフリカでは軍事政権のリーダーが威勢のいいことを言って大国を刺激しているとか、アラブではとある産油国が隣国に侵攻しているとか、ソビエト連邦でクーデターが起こったとかそれで日本に来たばっかりだったゴルバチョフが軟禁されたとか、そういうアチアチの事態も起こりました。そうかと思えば「ターミネーター2」が公開されて、劇場を出てくる人がみんな世界の平和を守るんだ的な顔をしていたりとかフレディー・マーキュリーが亡くなったと聞いて頭の中を「The Show must Go on」がグルグル流れたりとか、そういう文化的というか芸能ごとの世界でも、ちょっと一年で起こるには盛りだくさん過ぎるんじゃないのと思えるようなことが次々に起こりました。そうそう、長野五輪の開催が決定したのもこの年でしたね。ついつい、マジかよ?と思って夕刊を開いたり、まだボタン式でなく「つまみ」式の残っていたテレビのスイッチを入れたりして(つまみをひねって、そしてチャンネルを変えるためにもスイッチをひねり回して)情勢を確認したくなるようなことが起こったのです。いまだったらとりあえずGoogle Newsを開くような場面かもしれませんが当時はそんなものなかったので、ニュースが一番速いのはTVだったわけなのです。ニュースのロボットなのは当時も今もかもわかりませんが、そのニュースを速報でリリースするのが主にTVでした。

「世間」というものは実体がありませんので、その幻の像を作るのはマスコミとその視聴者という非常に単純な構図でした。TVが何かを流す、それを観ていた視聴者が周囲の人と共有する、その過程で印象や感想が多少の差こそあれなんとなく統一されてくる、みたいな感覚が当時あったのです。もちろん、これはインターネットを介してソースがいくつかに増えて構造が多少複雑になった現代でも、根本的な事情は変わりません。人間は影響され、そして幻の集団、「世間」をつくるのです。

世間はGOします。GOGOです。そして賛成も称賛もGOGO、非難もGOGOです(笑うところ)。そんなつまらないことに「GAMEの気分」ですし「朝から晩まで夢中」です。そして「どこからどこまでほんとかわからない」のも昔と変わりません。「トレンド」「ゴシップ」「コメント」という非常に自堕落で非生産的なものが、何かいいものであるかのように思われてくる情報社会なのです、いまも昔も。

ところで、これを覚えている人は間違いなく40代以上だと思いますが、湾岸戦争で多国籍軍に日本はもちろん参加せず(できず)、「お金を払えば済む」みたいな態度をとったと非難されたことがありました。バカ言ってんじゃないよ、おカネ稼ぐの大変なんだぞ、命を削って稼いでるんだぞ、その貴重な金を出したのに文句言われるってなんなんだよともちろん今なら思うんですけど、ギリギリバブル崩壊前だった日本は金持ち国だという認識が世界的にありましたから、金持ちが小金を出して日和ったみたいなイメージを持たれてしまったという報道がありました。その後バブルは崩壊しますし、ふんだりけったりです。

このように、松井さんのこの歌詞は、基本的な枠組みは現代でも通じるとは思うのですが、当時を知る人でなければ細部がよくわからないことになると思います。「真剣(勝負)をかわして」マジになるのカッコ悪いよねという態度をとることや、「学歴の差」?そんなの関係ねえーよ!という虚勢をはるのは現代でも似てますかね?当時の若者だったわたくし、たぶん現代の若者よりは学歴の差を気にする世代な気がしますし、現代の若者よりは真剣勝負を好む世代でもあると思いますから、「かわして」「めげない」が単なるポーズであるという本音がよりリアルに感じられるように思います。いまの若い人からみた私たちの世代(氷河期世代)って、その上下の世代に比べて学歴を気にしなかったり、真剣勝負にシラケているように見えますでしょうか?きっとたぶんそうじゃないですよね。当時は若かったですから、そういうポーズをとっていたにすぎないのになんとなく本気でそう思い込んでいたというだけのことです。ですから、松井さんに見透かされて、玉置さんのボーカルで喝破されてしまったというわけです。

曲はAメロBメロ、WE ARE WE ARE、またAメロBメロときて、サビに行きます。「破裂NIGHT」のところです。ここの、おそらく武沢さんのカッティング、猛烈にかっこいいですね。いや、もちろんロックでは標準的なカッティングなんですけども、武沢さんがやるとそのトーンとタイミングの切れについ耳がいくんです。玉置さんのボーカルが珍しく「NIGHT」「CRAZY DANCE」なんて英単語を使っていてもその従来との違和感などどうでもよくなるくらい武沢さんの音を追うのです。こうなるともう重度の武沢病といってもいいでしょう。

そしてシンセ16分フレーズの間奏が入ります。このとき、非常に地味なんですが、後半で武沢さんのカッティングワークが入ります。もっと音大きく入れればいいのに!そしてまたAメロBメロ、サビで、間奏に入ります。例の16分シンセフレーズがまた始まり、今度は音量充分で矢萩さんソロが、武沢さんカッティングとともに響きます。このふたつの間奏がけっこうなボリュームがあって、この後の落ちサビ、そしてWE ARE WE ARE〜DANCE DANCEで終わる曲と一体化してゆく様は見事な構成美を見せられた!と感動させられます。

これだけ皮肉の効いた歌詞に、この見事な演奏と曲の構成、これはまさに当時の安全地帯でなければ成し得ない曲であって、そして当時のモザイク世相があってはじめて曲全体のイメージが成立するという、いってみれば世界全体を舞台とした劇場……いや、当時の安全地帯が石原さんとの恋愛物語であって日本全国のうわさやゴシップまで含んだ壮大な劇場装置だという話はだいぶ前に書いた気がしますが、この時代の安全地帯は、恋愛に限らぬさまざまな人間模様を世界スケールで表現する劇場装置へと変わっていったとでもいうべきでしょうか、ともかく、恋愛劇場に取り残されていた当時のわたしには理解できるものではなかったように思われるのです。

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