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2016年09月20日
違法? 合法? ダウンロード(九月十七日)
青空文庫で興味の持てそうな作家の作品を探すのに疲れたころ、ネット上に大量の書籍やマンガのデータが存在することを知った。それは、ソニーのリーダーや、シャープのガラパゴスが発売されて電子書籍の夜明けなどというトチ狂ったマスコミの命名した時代の、影の部分として報道されたいわゆる自炊と呼ばれる行為が行き着く先の著作権侵害として、報道されることが多かったように記憶する。実際には、それ以前から行なわれていたが、一部を除いて大きな問題としては捉えられていなかったようだ。
この事実を知ったとき、ものすごく悩んだ。読みたくても読めない本が、ネット上に存在していて無料でダウンロードできるというのは、本が、新しい本が読みたくてたまらない人間にとっては、非常に魅力的で抵抗するのが難しかった。しかし、アルバイトとは言え出版社で仕事をしていたこともある人間としては、著作権の意味は重々わかっているし、無制限に好きなものをダウンロードするというのには抵抗があった。
それで、最初は日本からチェコに持ってきた本やマンガを、リーダーでも読めるようにするために活用することにした。自分でスキャンする代わりに、スキャン済みのものを入手するという言い訳である。最初に探したのは、同じものを何冊も購入した森雅裕の作品なのだけど、需要がないのか発見できなかった。マンガではコミックス版と文庫版を両方購入した『夢見る惑星』と『ワン・ゼロ』、『動物のお医者さん』、小説では『百億の昼と千億の夜』あたりをどこかで見つけてダウンロードし、フリーソフトを使って、PDF化し、SDディスクに放り込んで、リーダーで読めるようにした。本当は本体に淹れたかったのだけど、画像起源のPDFはファイルのサイズが大きくなるため、2ギガしかない本体のディスクに入れると、他の本が入らなくなるのだった。
こちらに持ってきた本だけで飽き足らなくなるのは当然のことで、日本にいるときに購入したけれどもこちらには持ってこなかったものに対象が広がり、『マスター・キートン』や『パイナップル・アーミー』、田中芳樹のSF作品なんかに手を出してしまった。そして、絶版になっていて入手不能な作品なら、著作権者の害にはならないだろうと、古い昔借りて読んだ記憶のある作品、読みたいと思いながら入手できなかった作品にも手を出すようになった。
自分で設けた規制はあるものの、次第に緩和してしまって、有名無実になりそうな状態に、危機感とそこはかとない罪悪感を感じていたころ、大量のテキストファイルを集めたものを発見してしまい、発作的にダウンロードしてしまった。解凍してその数の多さに、唖然とし、このままではいけないとこの手のファイルのダウンロードは、きっぱりやめることにした。テキストファイルをすべて読むだけでも何年もかかりそうだったし。
もちろん、ダウンロードしたテキストファイルは、まったく興味も持てない読もうとも思わない作品が多かったけれども、昔読んで存在すら忘れていた、おそらく絶版になって久しく古本屋でも入手が難しそうななつかしい作品もあり、そんな作品からPDF化して読み始めた。最初は面白そうなものは全部読もうと考えていたのだが、途中で飽きてしまって、大半はPDF化もせずに放置してしまっている。
こういうダウンロードが違法だとか、違法なのはダウンロードではなくてアップロードだとか、あれこれ議論が行なわれていたが、こちらで入手可能で、お金を払ってでも読みたかった本については、電子書籍を購入して読んでいたし、ダウンロードしたのは日本にいたら電子書籍は買わなかっただろうから古本屋でしか入手できなかったに違いない古い作品がほとんどなので、出版社にも著作権者にも損害は発生していないと思う。
出版社が売るのを諦めて絶版にしてしまった作品については、せめて古本屋価格で海外でも電子書籍が手に入るようにしてほしかった。そうすれば出所の怪しい、安全面でも不安のあるファイルを探してダウンロードするなんて必要はなかったのだから。マンガの違法ファイルのネット上での流通を阻止しようと立ち上げられたJコミの理念には、もろ手を挙げて賛成する。当初の公式のPDFフィルを無料で配布するという方針が変更になったのと、ダウンロードできたPDFファイルが高精度でサイズが大き過ぎてリーダでは読みづらいという難点はあるけれども、どこかの会社が同じようなことを小説でもやってくれないかと切実に願ってしまう。
考えてみると、リーダーストアなどの電子書籍販売サイトは、青空文庫のテキストファイルを無料で配布するなどという姑息な手を使わず、出版社が文庫版でも絶版にしてしまったような作品を、無料、もしくは一冊50円とか、100円などの廉価で提供できるように出版社、著作権者と交渉するべきだったのだ。出版社にしてみれば既に元を取った作品から、在庫の心配もなくある程度の収入が発生するのだから、交渉の仕方次第では、何とかなったのではないかと思う。それがうまくやれていれば、古い世代の読書家を電子書籍にひきつけることもできたはずだし、新しい世代の読書家が存在すれば、古い作品に惹きつけることができたはずである。
9月18日23時。
2016年09月19日
青空文庫(九月十六日)
ソニーのリーダーを購入して、以前購入してPCで読んでいた電子書籍をリーダーで読む読みやすさには十分以上に満足したのだが、せいぜい数十冊しか所有しておらず、また購入のためのウェブマネーも無尽蔵にあるわけではない。ということで、リーダーで読めるもの、リーダーで読みたいものを、探し始めた。
最初に思いついたのが、以前から存在は知っていたが、PC上で読む気にはなれなかった青空文庫である。このプロジェクトには賞賛の言葉しかないのだが、けちをつけるとすれば、ソニーのリーダーストアなどの電子書籍販売店で、書籍数を水増しするのに使われていたことだろうか。無料の書籍があるというので、特別フェアで無料で提供しているのかと見に行ったら、青空文庫に収録されたものをPDF化したものしかなかったのは、詐欺としか言いようがない。もちろん、これは青空文庫の罪ではなくて、販売店側の問題なのだけど、パピレスなどの既存の販売店ではそんな詐欺まがいの事はしていなかったのだ。やはりソニーは本を売るべき会社ではなかった。他のハードの販売促進のために立ち上げられたとしか思えない電子書籍の販売店も似たようなものだったけど。
青空文庫に収録された作品をリーダーで読むのなら、何もリーダーストアで手に入れる必要などどこにもないのだ。膨大な作品群の中から気に入ったもの、気に入りそうなものをダウンロードして、テキストファイルからPDFファイルを作成してくれるフリーソフトを使えばいい。中でもChainLPというソフトは、優れもので、ページサイズをソニーのリーダーの画面の大きさに適正化することもできる。
いわゆる文学作品を読む気にはなれなかったので、娯楽小説を探していたら、古い江戸時代を舞台にした「捕物帳」系統の作品が結構あったので、これから始めることにした。最初に手を付けたのは岡本綺堂の『半七捕物帳』。問題はテキストファイルが、本単位でははく、一話ごとになっていたことで、短編一つ読むたびに、本を閉じて開いてというのはしたくなかったので、いくつかの話をまとめて一つのファイルにする必要があった。当時はまだ、テキスト結合ソフトなんてものは知らなかったので、ワードで開いてコピーすることで何とかしていたけど、時間がかかって大変だった。
当時は、各短編ごとに改ページを入れるなんて青空文庫のコードを知らなかったので、改行を増やすことで対応していたし、PDFに表示される文字の大きさも、無駄に大きいものを使っていたから、今読み直したら、PDFを作り直したくなるだろう。そもそも文字が大きすぎる文庫本というのは、ページ数を増やして定価を上げようという出版社の思惑が見えて嫌いなのだ。それが自作するPDFにも反映されてしまうわけだ。
今、青空文庫のページをのぞいて、誰のどの作品をPDF化したか、一つ一つ思い出そうとしたのだけど、ぜんぜん駄目だった。冒険小説とか探偵小説なんかの戦前の薫り高いものを探した記憶はあるのだが。PDF化したものは古いPCのハードディスクの中だから、確認も再読も簡単にはできない。この辺の整理のできなさが、我ながらいやになる。本来なら作成したPDFは、どこかにまとめて保存して重複などが起きないようにするべきなのだろうけど、どこに保存したかも覚えていないものも多いからなあ。
考えてみれば、日本で紙の書籍を読んでいたころも似たようなものだったのだ。持っていたような気がしても、どこに置いたかわからなくなってしまった本を、二冊、三冊購入してしまったという経験は一度や二度ではない。特に本棚に入りきらず段ボール箱に詰めて押入れに放り込んでしまった本やマンガの数々は、古本屋に売り払ったのだろうと誤解して、読みたくなったときに再度購入してしまうことが多かった。
青空文庫の活動について言えば、近年の目に余る過剰なまでの著作権ビジネスに対抗する意味でも、活動を拡大し、著作権の延長を、少なくとも日本国内では認めさせないようにがんばってほしいと思う。著作から、本人が収入を得るのは当然で、その著作活動の被害を受けた家族、子孫が恩恵を被るのもある程度までは当然のことであろう。ただ、その著作権を売買して、著作者本人とは何の関係もないような企業が保有している著作権に関して、これ以上延長するというのは納得がいかない。著作権の延長を主張するのであれば、同時に著作権の売買を禁止するぐらいのことはしないと、バランスが取れない。
今回の確認で、野村胡堂の銭形平次を発見したから、数年ぶりに青空文庫の作品を読んでみようか。時代劇としての銭形平次は、好みに合わなかったのかあんまり見た記憶はないけれども、小説で読むとなれば話は別である。国枝史郎とか久生十蘭、林不忘なんかの名前だけは知っていて読んだことのない戦前の作家のSFにつながる作品群にもやはり気を惹かれる。以前はどれを読むか悩んでいる間に読むのを忘れてしまったので、今回は適当に選ぶことにする。
9月18日14時。
以前、電子辞書にまで青空文庫の作品が収録されていたのには驚かされた。青空文庫がオープンな誰がどのように使用してもかまわないことを謳っていることは知っているけれども、濫用も甚だしいのではないか。これも企業の側の問題なのだろうけど。9月18日追記。
2016年09月18日
チェコサッカーの憂鬱(九月十五日)
憂鬱なのはチェコサッカーではなく自分自身なのかもしれないけれども、今週大きなものから小さなものまで憂鬱になりたくなる事態が発生したので、まとめて書いておく。
発端は火曜日だった。チェコテレビがチャンピオンズリーグの試合を放送するのが火曜日だけになり、チェコのチームも出場しておらずで、チャンピオンズリーグへの興味は薄れがちなのだが、この日はアーセナルの試合だというので、テレビの前に座った。そうしたら、試合自体は決してつまらないものではなかったのだろうけど、チェフが出場していなかったのである。
チェコサッカーのファンとしては、チェコ人選手が在籍するチームの試合でチェコ人が出場していないと、見たいという意欲は半減する。これなら、同グループのもう一試合バツリークとスヒーのいるバーゼルの試合を放送してくれたほうがよかったのにとチェコテレビに恨み言の一つも言いたくなる。ロシツキー在籍時も、ロシツキー出せと思いながら見ていることが多かったから、アーセナルの試合はあんまり見る甲斐はなかったんだよなあ。
水曜日のチャンピオンズリーグの放映権を失ったチェコテレビでは、今年から新たにチェコの二部の試合を水曜に開催させて放送するようになった。リーグの名称はナーロドニー・リーガだから、民族リーグとか国民リーグとか訳せるけど、どう訳しても二部リーグである。各節一試合だけ水曜日の開催にして、チェコテレビが中継することで、注目を集めようということなのだろうか。
今週の水曜日は、わざわざそんなことをしなくても注目を集めたであろうシレジアダービーが開催された。かつてのシレジア地方の中心都市オパバのチームと、シレジアとモラビアの境界上に存在するオストラバのバニークの試合である。バニークは本来オストラバのシレジア側のチームで本拠地のスタジアムもシレジア側にあったのだが、現在ではさまざまな事情でモラビア側にあるビートコビツェのスタジアムを本拠地としている。ちなみにビートコビツェにあったチームは数年前に倒産して解散してしまった。
バニーク・オストラバのファンは、チェコ最悪のファンである。ただでさえ悪質なファンが、ライバル関係にあるオパバとの試合で暴れないということはありえなかったのだ。ここ数年はバニークが一部、オパバが二部で公式戦が行われなかったために、問題が起こらなかっただけなのだ。今年、数年ぶりの公式戦が、二部を舞台に行われ、一部の試合ほど厳重な警備が敷けなかったのだろうか。大きな問題が起こってしまった。だたし暴れたのはバニークのファンだけではない。
試合はオストラバのビートコビツェのスタジアムで行われたのだが、最寄りの鉄道の駅からオパバのファンがスタジアムに向かう途中で、最初の暴力事件が発生した。警察に囲まれてオストラバのファンからは隔離されていたはずの、オパバのファンが一人、覆面をかぶって正体を隠したうえで、オストラバのファンに襲い掛かって殴る蹴るの暴行を加えたらしい。この覆面をかぶってというのが、スタジアム内でも、外でもたちが悪い。
そして試合が始まると百人ほどのバニークファンが、客席から乱入し試合が中断してしまう。オパバの選手を襲うためという話もあったけれども、どちらかというとグランド上を走り回って目立って憂さ晴らしという感じが多いように見えた。皆同じような白いティーシャツを着ていたし。
この時点で、次やったら没収試合にしてオパバの勝利にするという警告が出されたらしいが、前半の終了間際に、バニークが得点を挙げると、またファンが、今度は喜ぶために乱入して試合中断。もううんざり、いい加減にしてくれである。本来ならここで没収試合のはずなんだけどね。チェコテレビの中継が一部の中継と比べて雑だったのもあって、前半で見るのをやめてしまったので、結果がどうなったのかは知らない。というかどうでもいい。これだけ問題を繰り返し起こして反省もしないファンに取り付かれたバニークは、一度落ちるところまで落ちたほうがいいのかもしれない。
ということを書いて念のために確認したら、ビートコビツェのチームはいつの間にか復活していて、現在は二部リーグに参戦中である。ということはオストラバダービーが行なわれるのか、シレジアダービーよりひどいことになりそうだ。
木曜日はヨーロッパリーグのグループステージの初戦。プルゼニュのスタジアムは、一部客席が閉鎖された状態で試合が行なわれた。チャンピオンズリーグの予選で、人種差別的な野次を飛ばしたことに対する処罰らしい。これからしばらくは執行猶予期間で、同じことを繰り返すファンが出た場合には、ヨーロッパのカップ戦は無観客試合で行われることになるというから、こちらもチームに損害を与えるファンである。以前はこんなひどいファンはいなかったのだけど、チームが強くなるにつれて傲慢なファンが増えたということなのかな。
試合のほうは、ASローマ相手に開始早々PKから得点を許したものの、バコシュのゴールですぐに同点に追いつき、前半後半を通じて互角以上の試合を展開したらしい。バコシュも、試合展開から言うと勝ち点一を取ったというより、勝ち点二を失ったという感じだと言っていたから、勝てた試合だったのだろう。残念。でも強いプルゼニュは復活に向かっているようで、今後に期待が持てそうである。
リベレツは、代表にも呼ばれたキャプテンのポコルニーが怪我で欠場し、大ベテランのバロシュをキャプテンとして、アゼルバイジャンでプルゼニュを苦しめたカラバフとの試合に臨んだ。そのバロシュのアシストでシーコラが試合開始直後に決めたゴールは、開始九秒ということで、ヨーロッパリーグ史上最速ゴールを更新したらしい。その後同点に追いつかれたものの、バロシュのゴールで勝ち越し。後半は防戦一方に追い込まれたようだが、何とか跳ね返し勝利目前の後半の90+4分に同点に追いつかれてしまった。この詰めの甘さがリベレツなんだよなあ。でもこのチーム何だかんだで勝ちぬけて春まで生き残りそうな気がする。バロシュの調子も上がっているみたいだし。
最後にスパルタだけど、今年は駄目そう。ロシツキーも欠場したし、まったくいいところがないまま三点取られて完封負け。カドレツが二人戻ってきたけど、ディフェンスもオフェンスも去年のほうがましのような気がする。このままではロシツキーの勇姿はしばらく見られそうもない。
9月16日23時。
2016年09月17日
忍者に挑戦(九月十四日)
忍者に挑戦と言っても、忍者の真似をしてみたとか、忍術の修行の体験コースに参加したとかいうことではない。チェコに来てすぐのころ、片言の日本語を話すチェコ人に、いやチェコ人ではなかったのかな、いきなり「○○先生を知っていますか」と聞かれて困惑したことがある。詳しく聞いてみたら、自分が子供の頃から通って修行をしている忍術の道場の属する宗派の一番上に存在する人物だという。そんなの知るわけねえだろうがとは言えなかったけど、あれ以来、忍者とか忍術とかいうものを持ち出すチェコ人を敬遠するようになった。だから、ブログを始めることを考えたときに、候補の一つだった忍者ブログを選ばなかったのは、この一件のせいだったのかもしれない。
さて、以前から気になっていたのが、ファンブログの管理ページで表示されるPVの数と、ブログ上に設置したカウンターに表示される数が、一致しないことだ。以前は総数がそれをほど多くなかったから、差もそれほど大きくなく、誤差と言えば言えなくもないような差だったのだけど、数が増えてきた最近は、カウンターは一ケタなのに、管理ページでは50を超えるなんて日もあって、その差が出る理由が、仕事が忙しい時期になると、知りたくてたまらなくなった。暇なときはどうでもいいと思っていたのだけど。
それで、ファンブログには、グーグルアナライズとかいうもののコードを張り付けると、そのまま使えるという機能がついているので、まずグーグルアナライズとかいうものがどんなものなのか確認してみたら、どうも事前に登録の必要があるらしい。正直、グーグルにはいいイメージを持っていないので、アマゾンもだけど、日本の出版書店業界には、軟弱に迎合しないで、断固戦ってほしいものである。ソニーのリーダーも……。ということで、グーグルには絶対に登録したくない。
そんなときに思い出したのが、忍者ブログの周辺に忍者ツールズといういろいろな機能が使えるサービスがあることだった。忍者とグーグルに対する忌避感を比べれば、当然忍者を選ぶことになる。早速登録して、忍者アナライズというものを使ってみた。ファンブログの管理ページで、PC版のブログだけでなく、スマホ版、携帯版のデザインページにもコードを貼ってみた。アナライズでは携帯からのアクセスは解析できないと書いてあったけど、物は試しということでね。
しかし、そこに現れる数値とブログ管理ページで把握できる数字に大きな違いがあるという点では、それまで使っていたカウンターと変化がなかった。では、ということで、カウンターを忍者カウンターに変更。こっちもあんまり大差はなかったが、不思議なのはカウンターとアナライズでも数字が違うことがあることだった。
うーん、これはアナライズでは対応していない携帯からのアクセスがあるのかと、今度は携帯もチェックできるという忍者解析を使ってみる。設置してから半月近く、データなしの状態が続いている。まあ、こんな文字だらけで、一文が長く、一段落も長い文章を携帯の画面で読むのは苦痛以外の何物でもないだろうから、携帯からアクセスする人がいるというのは、そもそも信じがたいことではあったのだけど。
スマホからのアクセスだけがわからないかと、忍者アドマックスとかいうので、スマホ用の広告を作ってみた。これも数字は出るけど、カウンターの数字と、管理ページの数字の差を埋めるようなものではなかったし、いろいろ試していたらアナライズで、OSがアンドロイドなんてのが表示されていたから、スマホからのアクセスも把握できているようだ。
じゃあ、あの差は何なんだろうか。管理ページのアクセスのOSやブラウザの情報で不明となっている分が、差なのではないだろうかと思いついたのは、つい先日のことだ。そして同僚が、シークレットモードというやつでブラウザを起動していたのを思い出したとき、答えが見えたような気がした。
自宅のPCからの閲覧は管理者IP除外の対象になるので、職場のPCからシークレットモードでアクセスして、ブログ上で検索をかけるなどの特徴のある行動をして自宅のPCから確認したところ、シークレットモードでの閲覧は、ブログの管理ページには反映されていたが、忍者関係のデータには全く反映されていなかった。後で気づいたのだが、シークレットモードで閲覧した場合、そもそもカウンターが表示されていなかった。
つまり、カウンターと管理ページの閲覧者の数の差は、シークレットモードで閲覧した人の数であるということがわかったのである。ということは、忍者ツールズであれこれ挑戦してみたことは、ほとんど無駄だったということになってしまう。多少、インターネットというものの理解が進んだと思えば、いいのかな。
このブログ、読んでいることが人に知られたら困るような記事は書いたつもりはなく、どうしてシークレットモードでと疑問だったのだが、忍者アナライズで、閲覧者が何回目の訪問なのかとか、日本の何県からのアクセスなのかとか、個々のページをどのぐらい開いていたのかとか、思いがけないほどの情報が手に入るのを見て、活用しようともできるとも思わないけど、こういうデータを残したくない人はいるだろうと思った。自分ではどの記事を読んだかわからなくなるので、特に使用する気にはなれないけれども。
結局、大山鳴動して鼠一匹にもならないような結末になってしまった。忍者関係はとりあえず現状で放置して、また忙しくなっていろいろやりたくなったら、次を試してみることにする。
9月15日18時。
2016年09月16日
チェコ郵便事情(九月十三日)
数年前だっただろうか、チェコの郵便局では、低迷する郵便局への信頼を回復するために、「今日出したら、明日届けます」なんてスローガンを掲げてキャンペーンをやっていた。確かにあの頃は、オロモウツからブルノに送って、届くのに一週間以上かかるなんてことはざらだったし、郵便物が配達されない郵便事故もたびたび起こっていたようだ。
その実態を知っているチェコ人たちにとっては、「今日出したら、明日届けます」というスローガンはお笑い種で、とても信じられるものではなかったようだが、問題を認識して改善する方向に向かい、目標を設定したのがよかったのだろう。最近は国内の郵便に関して郵便局に対する悪口を聞く機会が減った気がする。メールなんかに押されて郵便を使う機会自体が減っていると言えば、それまでだし、「今日出したら、明日届けます」のスローガンも実現不可能であることが判明して、撤回したのだけど。
外国に、特に日本に郵便物を送る場合、チェコの郵便局は素晴らしい。手紙のほうはよくわからないが、小包を送る場合には、航空便で送らなくても、航空便並みの時間で到着するのだ。書物だけを送る場合には、日本にも存在する特別郵袋というものを使えば、さらに廉価で送れる。
以前は郵便局の人も事情が分かっていなかったが、チェコで日本に船便で送るための船を探し確保する手間と経費を考えたら、積み荷に余裕のある飛行機に載せてしまったほうが安上がりになるらしい。それで、船便で、船便と直接言わなくてもエコノミーでなんて言い方で、荷物を送ると、優先的に送られるEMSほどの速さはなくても、一週間から十日ぐらいで日本についてしまうのである。
伝票を確認してみると、飛行機で成田に着いた荷物を、川崎に移動させて、川崎で通関の手続きをしているようである。一応船便で送られたという体裁を合わせる必要があるのだろうか。その分、航空便で送ったときよりも時間がかかるのだが、せいぜい一日二日だから誤差の範囲である。以前、一度だけ、航空便で荷物を送ったことがあるが、そのときには何と一か月以上時間がかかった。それ以来航空便で荷物を送ったことはない。
日本でも同じようにしてもらえないかと思うのだが、周囲を海に囲まれた日本で、船便の郵便物を載せるための船を見つけるのはたいして困難なことではないのだろう。だから日本から船便で送ると、本当に船に載せられて、二か月ぐらいかかることになる。
チェコに送る場合に、気を付けなければならないのが、クリスマス前後で、この時期は郵便物の量が激増するため、配達までにかかる時間も伸びる傾向にある。さらに税関で引っかかって消費税を取られるなんてことになると、そのやり取りも長引くので、航空便で送っても受け取りまでに一か月かかることもある。
一体に税関とのやり取りで時間を取られることを考えると、日本から小包をEMSで送る意味はない。SAL便で十分というか、SAL便で送っても問題ないぐらいの時間的な余裕をもって送らないとEMSだからすぐにつくと油断していると、足元をすくわれることになる。ちなみにEMSをチェコから送る場合には、最低の送料が1000コルナになることは、覚えておいたほうがいい。書類一枚でもEMSで送ると1000コルナなのである。
日本からチェコに荷物を送る場合に、なぜか内容物が書籍の場合には、手紙などを同封してはいけないことになっているらしい。それに中古の衣料品を送るのも禁止だというから普段着ているものを送るのも難しそうだ。この中古の衣料品を郵送できないのは、かつてドイツの廃棄物業者が古着と称して、ごみにしかならないものを大量に輸出し、国境地帯にごみの山をいくつも作りだしてくれたことへの、それを防げなかったことへの反省から生まれたものではないかと推察しているので、仕方がないのかなとは思う。
ただ国際郵便の場合に、商品、または商用の郵便物なのか、個人的な贈り物、場合によっては個人の所有物なのかを、きっちり分けた制度にしてほしい。未だに友人が日本の本屋で購入して、日本政府に消費税を納めた書籍に関して、改めてチェコ政府から税金を請求されるのは納得がいかない。友人から買い取るわけではないのだし。プレゼント送ったと、欲しくもないものを送りつけられた上に、税金まで払わされるという事態も起こりかねないのだから。
9月14日20時。
2016年09月15日
チェコの選挙――大統領選挙(九月十二日)
当初の予定に反して、チェコの選挙制度適当解説シリーズになっているので、毒を食らわば皿までで、大統領の選挙についても概説しておく。
もともと大統領は、国会議員による選挙で選出されていたのだが、ハベル以後の大統領選挙が二回とも、一度で終わらず二回、三回と選挙をやり直さなければならなかったこともあって、国民による直接選挙を求める声が高まった。以前から検討されていたのだろうが、議論が本格化したのは、クラウス大統領の任期が二期目に入った2008年以後のことだったと記憶する。当時盛んに議論されたのは、選挙を一回の投票で済ますのか、二回目の決選投票を行うのかということと、決選投票を行う場合に、誰が決選投票に進むのかということだった。
議論の詳細は覚えていないが、いろいろな政党がそれぞれ念頭にあった候補者に有利になるような主張をしていたのは確かである。結局、上院の選挙とほぼ同じ制度という無難なものに落ち着いた。つまり、決選投票に進むのは上位二名だけ、ただし、一回目で過半数を取る候補者がいた場合には、二回目は行われないというものである。上院議員の選挙との違いは、一回目と二回目の投票の間が一週間ではなく、二週間あるという点である。
立候補するための方法は二つあって、一つはこれまでの選挙と同じで、政党、もしくは国会議員のグループによって推薦されること。これに必要な議員数は、上院議員の場合には十名以上、下院議員の場合には二十名以上である。もう一つは、一般の有権者による推薦で、こちらは署名を五万人分以上集める必要がある。
2013年の第一回の直接選挙による大統領選挙では、有権者推薦で八人、国会議員の推薦で三人の合わせて十一人が立候補した。しかし、有権者推薦で集めた署名にかなりの割合で、無効なものが発見され、三人の候補者の立候補が無効とされた。署名が無効になったのは、実在しない人物だったり、同一人物が複数回にわたって署名したりしていたのだろうか。ここで立候補を無効にされたうちの一人が自称日系人政治家のオカムラ氏である。
三人のうち、ボボシーコバーというテレビ関係者から政治の世界に足を踏み入れた女性だけが、憲法裁判所に申し立てた異議が認められ、立候補も有効とされた。ただ、このボボシーコバー氏もよくわからない人物である。一時はEU議会の議員になっていたこともあるようだが、2008年の大統領選挙に、共産党の推薦で立候補しておきながら、直前になって辞退した。その後、自らを党首とした政党を設立し、大統領退任後市民民主党との関係が悪化しているクラウス前大統領にすり寄って市民民主党から離れた支持者を取り込もうとしていたが、共産党に推薦された過去は何だったのだろう。最近はさまざまな選挙に立候補しては落選しているようだから、資金源が気になる。
無効になる署名が予想以上に多かったことを受けて、現在法律の改正が進められている。いろいろ案は出たようだが、結局必要な署名数は五万で変わらないが、署名の際に身分証明書を提示させての本人確認と、出生番号の記入を求める方向で話がまとまりそうである。これで無効になる署名が減るかどうかは、再来年のお楽しみということにしておこう。
2013年の選挙では、事前の調査で一番有力だとされていたのは、チェコがEU議長国を務めていたときに内閣が倒れた後、暫定内閣を組織してその期間を乗り切ったヤン・フィシェル氏だった。大半の世論調査では、ゼマン氏やシュバルツェンベルク氏を押さえて、一番高い支持率を誇っていたのだが、ふたを開けてみたら、社会民主党から離れたとはいえ党内に支持者も多いゼマン氏と、TOP09の党首シュバルツェンベルク氏が、上位二位に入り、決選投票に進出した。フィシェル氏は三位に終わったのだったのかな。
二週間後に行われた決選投票では、僅差でゼマン氏が勝利し大統領に就任した。就任直後は高い支持率を誇っていたのだが、それ以後は本人や側近の失言続きで、支持率は下降中である。最近は国民の投票で選ばれた大統領は、国会議員の投票で選ばれたこれまでの大統領よりも大きな権限を持つべきだとか主張しているが、議会制民主主義の考え方としては正しいのかね。
今日は今日でオーストリアの極右の大統領候補をプラハ城に招待して物議を醸していた。二人とも怪我の後遺症で杖を手放せないという共通点以上に、難民問題で意見が合う国の元首、元首候補が他にいないということなのかもしれないけど。スロバキアの大統領は比較的穏健な思想の持ち主だというし。
二年後に予定される次の大統領選挙でゼマン氏が再選を目指すのかどうかはわからないが、現在のチェコの政界には、誰もが、支持者じゃなくても、この人なら仕方がないと言えるような大物候補がいない。そうなるとまた消去法でゼマン氏になるのかなあ。反対陣営の人たちでも、ある意味でチェコ人の典型で、ある意味でチェコ人にふさわしい大統領であるという点は否定しきれないようだし。それが将来につながるかと言われると否と言うしかないのだけど。
9月13日16時。
2016年09月14日
チェコの選挙――地方議会選挙(九月十一日)
日本の地方議会、都道府県議会や市町村議会に当たるものを指す言葉は、チェコ語では議会そのものとは異なっているのだが、他に適当な言葉もないので、議会という言葉を使うことにする。
議員の定員は、もちろんそれぞれの地方、市町村で違うが、選挙制度としては、下院の選挙に似ている。大選挙区制で、政党単位での立候補で、各政党は候補者の名簿を作らなければならず、印をつけて支持する候補者を上位に押し上げることもできる。
違うのは選挙の後である。日本では、首長は住民による直接選挙で選出されるため、地方議会の選挙と、首長の選挙は別々のものとして扱われ、議会の選挙があったからといって首長が交替するわけではない。それに対して、チェコの地方公共団体の首長は直接選挙ではなく、総理大臣や、かつての大統領と同じように、間接選挙、つまり議員たちの選挙、いや選挙の前の交渉で選ばれるのである。だから、地方議会の選挙があるたびに首長は交替するし、過半数を獲得した政党がない限り、いくつかの政党で連立を組むことになるので、首長の決定には時間がかかることが多い。また連立与党の中で対立が起きた場合にも、首長の交代劇が起こることがある。
地方自治は民主主義の学校とかいうのは、中学の公民の授業で出てきた言葉である。国の首長である総理大臣を直接選挙で選ばない日本で、地方自治体、今は地方公共団体かなの首長を直接選挙で選ぶのと、同様に総理大臣を直接選挙で選ばないチェコで、地方自治体の首長も直接選挙で選ばないのと、どちらがいいのだろうか。チェコに来たばかりの頃は、地方自治体の首長は直接選挙で選ぶものだと思い込んでいたので、直接選挙ではないという話を聞いたときには、大きな違和感を感じたのだが、国の首長である総理大臣を決めるのと同じになっているのだと言われて、それはそれで正しい考え方なのかもしれないという気もしてきた。
ただし、チェコの地方自治体の首長の選び方は、一点だけ総理大臣の選び方と異なっている。総理大臣の場合には、まず大統領が、原則として下院で一番勢力の大きな政党の党首を指名して、組閣を指示するのである。組閣に失敗したり、成功しても議会で信任を得られなかった場合には、別な人物が指名されたり、下院が解散されて総選挙が行われたりする。
あくまでも原則としてなので、大統領の恣意で下院の第一党の党首以外の人物が指名されることもなくはない。近年だとネチャス内閣が総辞職をした際に、当時の下院の第一党だった市民民主党の新しく選ばれた女性党首ではなく、ゼマン大統領に近いと目されていた人物が国会議員でもないのに、暫定内閣を組織するように指名されたことがある。このときは、組閣後の議会での承認を得ることができずに、正式な内閣として発足する前に、内閣が倒れてしまった。その結果、議会解散で総選挙になったのかな。
それに対して、地方議会の場合には、大統領に当たる役職がないため、首長の選出はあくまで政党間の交渉による。もちろん第一党になった政党が交渉で有利なのは当然だが、政策などで合意に達せず、第二党、第三党が手を結んで首長の座を押さえてしまうこともあるようだ。その後、連立与党内部で対立が生じて、連立解消で、首長の選びなおしなんてこともあるようだし、小さな村なんかだと、議員のなり手、首長のなり手がおらず、選挙をしても立候補する人が出ないために、暫定的に国の管理下に置かれているところもある。
そんな、地方自治体の中には、辞職や首長が選出できないなどのせいで、年に何度も選挙が行われるところ、何度選挙が公布されても立候補者が出ないところがあって、住民たちもうんざりして政治に対する興味を失ってしまっているようだから、いや、でも、これも学校と言えば学校なのか。
秋には行政区分としての地方議会の選挙が行われ新しいオロモウツ地方知事が誕生することになる。市町村の議会は今回はないんじゃなかったかな。オロモウツ地方の知事は、今年の春に、警察の捜査に圧力をかけただったか、賄賂を贈ろうとしたかだったかで摘発されたのだが、無罪を主張して職に居座っている。この件も、今年の夏に政権を揺るがした警察内の組織の再編と関っているらしいのだが、この件についてはいずれ書く機会もあるだろう。
そういえば、数年前にオロモウツ市で行われた日系企業の工場の開所式で通訳をしたときは、市長は上院議員を兼ねていたためプラハで仕事があって欠席、副市長が挨拶をしたんだったか。その副市長がその後、市長になっていたのは、上院議員になった市長が辞職したからだったか、その後の議会の選挙の結果を受けてのことだったか。この二人所属政党が違うから後者かな。
実は、チェコではこの議員の兼職というのが結構多いのだ。国会議員が同時に地元の町の町長だというのは、人口十万を超えるチェコレベルでの大都市では珍しいが、中小都市ではそれほど珍しくもないし、禁止する予定もないようである。一時は、両方の職の給料をもらえるのはおかしいから、片方は返上させようなんて案もあったようだけど、どうなったのかな。公務員が選挙に立候補して、当選したら議員になって、落選の場合は元の仕事を続けるなんて話もあって、日本の潔癖ともいえる選挙制度からすると、それいいのか、と叫びだしたくなることは多かった。最近は、慣れてしまいすぎて特に問題だとも感じられなくなっているのが、ブログのネタ的には問題なのである。オロモウツの市長が上院議員と兼職してたなんて、すっかり忘れていたし。
9月12日17時30分。
2016年09月13日
チェコの選挙――上院議員選挙(九月十日)
上院議員の定数は81、任期は六年で、解散はなし。選挙は二年に一度で、定数の三分の一ずつ改選されるという話を聞いたときに、日本の参議院と同じような選挙制度なのだろうと考えてしまった。つまり、全国区の有無はともかくとして、各選挙区に三つの議席が設定されており、二年に一度一議席ずつ改選されるのだろうと。
チェコに来て、二年目ぐらいだっただろうか、友人の一人が上院の選挙があるから週末は実家に帰ると言っていたので、全国で選挙が行われるのだと思っていた。金曜日の夜にたまたま会った別の、オロモウツ出身ではない知人に、選挙に行かなくていいのかと聞いたら、うちの辺りでは選挙ないもんという答えが返ってきた。へっである。
最初は一人目の友人の実家のある地方だけで行われた補欠選挙だったのかなと納得しかけたのだが、よくよく調べてみたら、チェコの上院の選挙は、二年に一回、チェコ国内の三分の一の地域で行われるものだった。これではわかりにくいか。
上院議員の選挙は、チェコ国内を81の選挙区に分けて行われる。この81の選挙区が、それぞれ27選挙区からなる三つのグループに分けられており、それぞれのグループの任期が二年ずつずれた形で設定されているのだ。だから、チェコでは二年に一度、全国の三分の一、27の選挙区で上院議員の選挙が行われる。同じプラハ市内でも、選挙があるところとないところがあるので、全国で展開される下院の選挙運動ほどの盛り上がりはない。
不思議に思ったのは、上院が誕生した最初の選挙はどうしたのだろうかということだ。二年おきに三分の一ずつ、任期六年で選挙をしていったのかとも考えたが、現実は違った。それに、今後2016年、2018年、2020年に改選を迎えるグループ分けをどうしたのかという点も疑問である。一回目はどうしたかはともかく、決める際に隣接する選挙区が同じ時に改選を迎えないように配慮をするなんてことがあったのだろうか。
あれこれ調べてわかったのは(間違っているかもしれないけど)、初めて上院の選挙が行われたときに、任期が二年、四年、六年に分けられていたらしい。そして、どの選挙区の任期が何年になるかは、抽選で決められたという話を聞いた。抽選とはいっても、それぞれのグループの選挙区の所在に大きなばらつきがないことを考えると、まずチェコ全国を、隣接する三つの選挙区ごとに分割して、その三つの中で、どの任期になるかの抽選をしたのかもしれない。
選挙そのものは、小選挙区制、つまり一つの選挙区から選出される議員は一人だけである。下院の選挙が政党、政治団体単位の立候補であるため個人が無所属で立候補することは難しいが、上院のほうは、候補者個人が立候補するので、所属政党はなくてもいいし、政党の推薦を受けるだけにしてもかまわない。現実には政党所属者が多いわけだが。
そして、一回目の選挙で過半数を得た候補者が出ない限り、一週間後に改めて決選投票が行われる。一回目の選挙で一位と二位になった候補者だけが、第二回投票に進めるのである。間の一週間を使って、一回目で落選が決まった候補の支持を取り付けるなんてこともできるので、理論上は一回目で勝った候補者が必ず決選投票で勝つというわけでもないのだが、結果がひっくり返ることはほとんどないような気がする。一回目の投票は、他の選挙と一緒にやることもあるので行くが、上院だけで行われる二回目の投票は面倒くさいから行かないという有権者も多いようである。
そんなこんなで投票率も低いため、上院は、革命後の設置の当初から、不要論がなくならない。この辺も日本の参議院と同じである。ただ、かつては設立当初の上院の議長を務めたピットハルト氏のような上院ならではの、政党に所属していても政党色の薄い議員たちのおかげで、一定以上の存在感を発揮してきた。それが近年は、下院議員になる前の腰掛として上院に立候補するような政党所属の議員が増えて、上院の独自性が薄れているような印象を受ける。90年代、もしくは2000年年代初頭から誇りをもって上院議員であり続けている人たちの口から、上院議員の質の低下を嘆く声が聞こえてくるのは、何とも言い難いものがある。
さて、今年は十月だったか十一月だったかに上院の選挙が行われるため、各地で選挙運動が始ろうとしている。でも、オロモウツではあまり活発な活動をしていないようだから、今年は改選されないのかな。いや、まだ本格化していないので目に入ってこないだけという可能性もあるか。選挙権はなくても、結果は気になるのである。
9月12日16時。
2016年09月12日
チェコの選挙――下院議員選挙(九月九日)
チェコの国会は日本と同じで二院制を取っており、衆議院にあたる下院と、参議院にあたる上院からなっている。
下院は定員二百名で、議院の任期は四年、任期中の解散はあると思うのだけれども、よくわからない。というのは、二千年代に入って、一度は、内閣不信任案の可決か、信任案の否決かを受けて、時の首相が下院を解散して総選挙が行なわれた。しかし、二度目に同じ状況になったときには、解散総選挙が決定されたにもかかわらず、失職したくないと考えたのか、何人かの議員が憲法裁判所に、違憲ではないかと訴えた。その結果、どういう根拠なのかは覚えていないが、上院の解散は憲法上認められないという判決が下り、準備の進んでいた総選挙は中止になってしまった。現在は法律の改正で、解散権が明記された形になっているとは思うが、チェコのことだから、その法律は無効だとかいうことになりかねない。だから、解散できるのかどうかは和からないということにしておく。
選挙は大選挙区制で行なわれる。行政区分としての地方が選挙区となっており、首都であるプラハも合わせて全部で十四選挙区に分かれる。人口に応じて議席が配分されており、比例代表方式で当選者が決定される。ただし、投票の仕方は、政党名を記入するのでも、事前に決定される政党の番号を記入するのでもなく、選挙前に有権者に配られる各政党の候補者名簿の印刷された紙の中から、自分が選ぶ政党のものを選んで、封筒に入れて、それを投票箱に入れるというものである。その結果、投票に向かう有権者でも、活用するのは大量に送りつけられた紙のうちの一枚だけで、残りすべて廃棄されるという紙の大きな無駄遣いをしているのである。寡聞にしてこの投票システムに、環境保護を声高に叫ぶ連中が反対の声を上げたという話は聞かない。
ただ、いい点も一つあって、投票の際に、候補者の名簿の中で特に支持する人に印をつけることで、その人の名簿順位を向上させることができる。もちろん、一人の付けた印だけでは無理な話だが、ある程度の数が集まれば、名簿上は下位でも順位を上げて当選することも可能になる。逆に×をつけて順位を下げることもできるんだったかな(ちょっと怪しい)。とまれ市民民主党のオロモウツ地方の有力者であったラングル氏が、名簿上は上位であったにもかかわらず、前回の選挙で落選してしまったのは、この制度のおかげであった。
個人的には、有権者が政党の名前を書けなくても投票できるように、番号を割り振るというだけでも、有権者をバカにしているようで嫌な感じがするのだが、チェコの上院の選挙では、番号は割り当てておきながら、それすら書く必要のないのである。日本の選挙の場合には、ポスターを所定の場所に貼り付けるために、候補者に投票には使わない番号をつける必要もあるのかもしれないが、チェコではポスターは、張り紙が許可されているところならどこに貼ってもいいし、金にあかせて高速道路脇などの広告用のスペースに巨大な選挙ポスターを貼りだす政党もある。
下院の選挙には限らないが、有権者を集めての演説会も、演説会というよりは何かのフェスティバルのようになることも多く、その政党を支持しているのか、金で雇われたのかはわからないけれども歌手のコンサートが付いていることもある。コンサート目当てで来た人に演説を聞いてもらおうというのかもしれないけれども。それから選挙の集会というと、なぜかブラーシュの配布がつき物だというイメージがある。これもグラーシュ目当てに来た人に演説を聞いてもらおうということなのだろうか。こんな有権者に直接物を配るようなことをしていいのかね、と初めて見たときには思ったが、友人の話では食べちまえば証拠は残らないからいいんじゃないかとこのこと。冗談であろう。
議席を得るためには、全国で五パーセント以上の得票が必要となるため、地域政党や、極右政党、ポッと出の泡沫政党などは議席を取りにくい制度になっている。以前は、そのため、いくつかの政党が連合を組んで、四党連合とかいう形で候補者の名簿を作成して、選挙に臨むことが多かった。ただ、選挙のための連合なので、そのあとの議会運営で問題が起こることも多く、最近は各地の市長達が作った政党が、どこかの党と選挙協力をするぐらいである。
ただし、ポッと出の政党が議席を取りにくかったのは、昔の話と言ってもいいのかもしれない。緑の党に始まり、VV(公共の福祉党)、黎明党、ANOなどなど、最近の総選挙では、それまで名前を聞いたこともなかった政党や、聞いたことはあっても議席を持っていなかった政党が、一気に多くの議席を獲得して、政局を混乱に陥れている。五パーセントの壁は、越えるまでが大変だが、越えてしまうと一気に多くの議席が獲得できてしまうのだ。
有権者の間に既存の政党に対する失望感があるという点では、チェコも周辺の国々と大差はないのだろう。今後も現在の情勢が続くと、EU離脱を求める政党や、外国人排斥を訴える極右政党が下院に議席を獲得する日も遠くないような気がする。EUの改革とどちらが早いか競争だな。
9月11日23時。
近づいてきた上院と地方議会の制度についてかくための枕として下院の話を書いていたら長くなったので独立させることにした。9月12日追記。
2016年09月11日
レジのオンライン接続(九月八日)
チェコの飲食店、それからホテル、ペンションなんかを悩ませている問題は、禁煙だけではない。財務大臣のアンドレイ・バビシュが、脱税対策、もしくは税収増大対策の切り札として、導入を推進しているレストランやホテルなどのレジをオンラインで財務省のデータベースにつないでしまえというのも、大きな問題になっている。これによって、各店舗の売上高を直接財務省だか税務署だかで把握できるようにして、消費税の脱税を防ぐのが目的なのだろうか。飲食店だけでなく、普通の小さな小売りのお店なんかも対象になっているので、禁煙問題よりも大きいと言ってもいいかもしれない。
問題はいくつかあって、その一つは、対象の範囲がよくわからないこと。個人事業主のような人たちも対象にしたいようなのだが、壁塗り職人とか、煙突掃除を生業としている人たちは、そもそもレジなんて使っていないだろうし、週末の青空マーケットで野菜なんかを販売している人たちの中には、専業の農家ではない人たちもいる。こんな人たちの扱いをどうするかで、綱引きが続いていて、一応、段階的に導入することと、お客のもとに出向いて仕事をするような業種には適用しないぐらいのことは合意が済んでいるのかな。
もう一つの問題は、いつ実際に法律が適用されるのかわからないことで、当初の予定では、今年の一月から、最初のグループ、飲食店とホテルに義務として課されることになっていたのだが、どういう事情かはよく分からないのだが、延期、延期で、九月現在まだ始まっていないはずである。一応国会では、法律として成立したんじゃないかと思うのだけど、違ったかなあ。現在は十二月からと言っているようだが、また延期されて来年からということになりそうな気もする。
いったん決まった期日が延期されたせいで、昨年のうちにレジに新しいシステムを導入するために投資をした人たちは、馬鹿を見たということになる。このオンラインで財務省とつなぐためのシステムを、レストランなどの業者が自己負担しなければならないというのも、大きな不満のタネになっている。税制上の控除の対象にはなるのだろうけれども、投資額がすべて戻ってくるわけではないし、この投資が売り上げの増加につながるわけでもない。
そういう不満をなだめるためにか、秋に行われる上院と地方議会の選挙に向けた人気取りなのか、バビシュは、飲食店で出される生ビールの消費税率を、現在の21パーセントから、法律で決められた特別な物にだけ適用される10パーセントに下げようと言い出した。これには、連立与党からも大反対が巻き起こって、今は中間の15パーセントとか言っているのかな。消費税に税率が三つあるというのも、日本に住んでいた人間には、不思議な話だけど、スーパーで買う瓶のビールは21パーセントで、飲み屋で飲むジョッキのビールは15パーセントというのは、なんか不思議な気がする。そして、飲み屋で飲み瓶のビールはどっちになるのだろうかと不安になってしまう。
それから、バビシュは、レジのオンライン接続と同時に、レシートを使った宝くじの導入を計画している。いまいちやり方が想像できないのだけど、レシートに印刷された番号であたりを決めるというものらしい。これはスロバキアで、消費税の脱税対策として導入されて効果を上げているといので、スロバキアの知り合いに会ったときに話を聞いてみよう。どうも、ろくでもないもののような気がしてならないのだけど。
たまたまこう書いた後に、スロバキアの人に会う機会があったので、質問してみたら、存在は知っているけれども、どのようにして行なわれているかは知らないといっていた。おそらくお店でもらってきたレシートを、何らかの形で登録すると、登録されたものの中から、当たり番号を選んで、賞金を出すということだと思うけれども、どうやって、どこに登録するかもわからないし、どのぐらい賞金がもらえるのかもわからない。そして、自分も、自分の周りにも実際にこの宝くじに登録した人はいないそうだ。
むしろ、その人が不思議がっていたのは、スロバキアではあまり話題になっていないにもかかわらず、チェコで大々的に取り上げられていることのようだった。レシートを受け取った人が登録したものをチェックすることで、一見レジは通しているけれども、実際には売り上げのデータに登録されないというような事例を防ごうという意図があるらしいが、肝心のスロバキア人の間でもあまり知られていないものが、どうしてチェコで脱税防止の切り札として取り上げられているのか理解に苦しむと頭をひねっていた。
実際の導入時期がどうなるのかが確定しているのかどうかさえわからないのだけど、飲食店などの当事者たちにとっては、導入に反対している人たちでさえ、決めてくれ、そして決めたら変えないでくれというのが正直なところだろう。半年なり一年なりの移行期間を設けて、その間に導入すればペナルティーはなしという形にすれば、それほど大きくは変わらないと思うのだが、チェコはあんまり移行期間を設けるのが好きじゃないみたいなのが不安。ビザの延長で、例年通りの書類を集めて手続きに行ったら、ごめんね制度が変わったのよと何度言われたことか。思い出したら腹が立ってきたのでこの辺でお仕舞い。
9月10日11時。