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2017年08月09日
アフリカ豚コレラ続報(八月六日)
ズリーン地方のイノシシの間で猛威を振るっているアフリカ豚コレラは、終息の気配はまだ見えない。次々に死んだイノシシが発見され、病気に感染していることが確認されている。その数はすでに三桁に近づきつつある。人間には感染しないい言う話ではあるけれども、あまり気持ちのいいものではない。
ただ、ズリーン、スルショビツェを中心とした周囲40kmほどの地域に押さえ込むことには成功しているようである。最初は使い捨てのプラスチックのコップにイノシシが嫌う忌避物質を樹脂の泡に混ぜて封入したものを、地面に一定の間隔で置いていくことで、汚染地帯からのイノシシの移動を防ごうとしていた。保健所の命令でこの作業を暑い中させられていたのは、猟師の人たちだった。
チェコ全土で始まったイノシシの数を減らすための狩りは、ズリーンに隣接する地域で最も重点的に行なわれており、クロムニェジーシュ、ウヘルスケー・フラディシュテェ地区だけであわせて千頭ほどのイノシシが殺された。現時点では狩りで殺されたイノシシの中には病気の固体は発見されていないという。
病気でないことが確認されたイノシシは、その後どこかで食卓に上ったものと信じたい。チェコで野生の動物の肉が食卓に上るのは、普通は秋の狩猟が解禁される時期になってからである。チェコ料理のレストランの中には、毎年シーズン中に「ズビェジノベー・ホディ(野生動物の肉感謝祭)」と題して、普段はメニューに載らないイノシシやシカ、カモなどの肉を使った特別料理を提供するところもある。時期はレストランによって多少前後するが、期間は一週間だけというのが相場である。知らないと逃してしまうので、野生の動物の肉が好きな人は、10月、11月ぐらいになったら探してみるといいかもしれない。
それはともかく、今回の狩猟で得られたイノシシの肉が市場に流れるようだったら、季節はずれの「ズビェジノベー・ホディ」なんてことになるかもしれない。いや、この夏の暑さを考えると、保存して秋に放出ということになるかな。そもそも秋に狩猟が解禁される理由を考えると、今回のイノシシの肉がどれだけ美味しいのかという問題もある。敢えて食べたいものではないので、どうでもいいと言えばその通りなのだけど。
病気の発生した汚染地帯では、現時点では狩りは行なわれていない。それは重点的に狩を行なうことによって恐怖でパニックに陥ったイノシシが、忌避剤で作られた防疫ラインを超えて逃走する可能性があるからだという。それで、現在は電線を張ってイノシシの逃走を防ぐ40キロに及ぶ柵で汚染地帯を囲む作業が進んでいる。当初の予定では消防士がその任に当たる予定だったのだが、夏の真っ盛りで休暇をとってバカンスに出ている隊員が多く、業者を雇って設置することになったらしい。
この事態は汚染地帯に住む人々の生活にも大きな影響を与えている。一番割を食っているのは人間ではなくて犬かもしれない。散歩そのものは禁止されていないようだが、町と町をつなぐ道や、野原、林などに犬を連れて散歩することが禁止された。散歩中の犬とばったり出会ったイノシシが驚きのあまり汚染地帯の外に逃げ出すことを警戒しているのだという。禁止された当初は、どこにも禁止の看板が出ておらず、知らずに散歩させている人がいるというニュースもあったが、状況は改善されたようである。
それから、小麦などの畑は収穫することを禁じられている。こちらはイノシシの餌が不足しないようにだという。刈り入れが済んで近くの畑に食べ物がなくなると、餌を求めて閉鎖地区の外まで出て行きかねないという懸念があるらしい。農家としては大損であるけれども、ズリーン地方がお金を出して買い上げることになっているのだとか。
いずれにしても、この場合感染したイノシシを汚染区域の外に出さないことが一番大切である。そのためだったら、予算をつぎ込むことをためらわないというのが、ズリーン地方のチュネク知事のコメントだった。
少し前に、ズリーンからはまったく反対側のカルロビ・バリの近くでも、死んだイノシシが発見され、アフリカ豚これらに感染している恐れがあると報道されていたが、現時点では感染していたという証拠は発見されていないようだ。
8月6日23時。
逃亡防止用の電線が張られたのは、結局最も汚染されていると考えられる地域を囲む12kmほどの物になったようだ。森には人間も立ち入りが禁止されるようになり、イノシシを驚かすことなく捕獲するための罠の設置も進んでいるようである。8月8日追記。