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2020年02月17日

チェコ語の疑問詞2(二月十四日)



 次も格変化のあるモノにしようということで、「kolik」。この言葉、文法上は副詞扱いにされる。副詞が格変化をするのかという疑問に対しては、するものもあるというしかない。副詞とは言っても実際には数詞と、5以上の数詞と同じ使い方をするし、数を質問するための疑問詞なので数詞扱いしてもいいような気もする。格変化は同じ副詞で数詞的に使う「mnoho(たくさん)」と同様、1格と4格が同じで、変化する2格、3格、6格、7格も同じ形になる。

 この「kolik」はチェコ語の勉強を始めて最初に習う表現の一つ、「Kolik to stojí?」から、「いくら」という意味だと思われがちだが、本来の意味は「いくつ」で、「いくら」の意味になるのは、通貨であるコルナがいくつというところから来ている。5以上の数詞と同様、1格で使う場合には、後ろに来る名詞が複数2格になって、全体として中性単数扱いになるので、過去にすると「Kolik to stálo?」となる。いくつかの通貨が意識される場合には、通貨を省略せずに「kolik korun(何コルナ)」「kolik jenů(何円)」としなければならない。

 もう一つ例を挙げておけば、時間を尋ねる「Kolik je hodin?」も「Kolik」のせいで、時間が複数2格「hodin」になり、動詞は三人称単数「je」が使われている。これも過去にすると、「Kolik to bylo hodin?」と中性の語尾が出てくる。数詞と名詞は、しばしば泣き別れになって、離れたところに置かれることがあるので、ちょっと長い文になると名詞を複数2格にして、動詞を三人称単数にするのを忘れがちである。

 さらに厄介なことに、5以上の数詞のところでも説明をしたが、名詞が複数2格になるのは、1格、2格、4格の場合だけで、それ以外は、複数の該当する格を使用しなければならない。複数2格の意識が強すぎて、いつでもどこでも複数2格にしてしまうのが困りものである。間違いを避ける方法は、1格、2格、4格以外では使わないことぐらいしかない。チェコに住んでいるとそんなことも言っていられないので、頑張って使えるようにはしたけど、今でもたまに間違えている。

 では簡単な格変化を。

1 kolik
2 kolika
3 kolika
4 kolik
6 kolika
7 kolika


 この「kolik」と対応する言葉に「tolik」があって、意味が違うだけで、格変化も使い方も全く同じである。「そんなに」という意味なのだが、数えられるものが大抵は「そんなにたくさん」あるときに使う。物の値段を質問して、予想よりも高かったときに、驚きの気持ちを込めて「tolik」なんて言うこともできる。

 また例文を。

・Kolik k vám přišlo hostů? Žádný nepřišel.
(何人のお客さんが来ましたか?/一人も来ませんでした)

・Od kolika a do kolika hodin pracujete? Od jedné do dvou.
(何時から何時まで仕事するんですか?/1時から2時までです)

・Kolika lidem jste poslal pozvánku? Padesáti. Tolik?
(招待状を何人の人に送ったんですか?/50人です。/そんなに?)

・Za kolik let se vrátíte do Japonska? Nikdy se nebudu vracet.
(何年後に日本に帰ってきますか?/二度と戻らないつもりです)

・Po kolika dnech jste vyšel ven? Po dvou týdnech.
(何日ぶりに外に出ましたか?/二週間ぶりです)

・S kolika Čechy jste už mluvil česky? S mnoha.
(何人のチェコ人とチェコ語で話したことがありますか?/たくさんです)


 それから「kolik」と「tolik」を組み合わせると次のような文もできる。

・Dám ti tolik, kolik potřebuješ.
(お前が必要とする分だけ、くれてやろう)


 ところで、チェコ語には数えられない名詞と言うものがあって、たとえばビールや水などは、直接「ビールを二つ」なんて言い方はできず、入れ物である瓶やグラスを数える形で表現しなければいけないと、初学のころに、もしくはチェコ語の会話集なんかで勉強したはずだ。だから注文するときにも「dvě sklenice piva」とか「dvě láhvi piva」と言わなければいけない。コーヒーも「jeden šálek kávy」というのが正しいことになっている。ということは、いくつと質問するときも、「Kolik láhví piva(何本のビール)」、「Kolik šálků kávy(何杯のコーヒー)」になる。気をつけなければならないのは、ビールもコーヒーも単数2格で後ろからつけることである。
 それから、どんな名詞を使うかわからないときには、2以上の数詞に「krát」を付けることで、同じものがいくつなのかを表現できるというのも勉強したはずだ。この場合は名詞は2格にする必要ななく4格を使えばいい。こちらの方が使いやすいので、同じものをいくつか注文するときには、よく使うのだけど、こちらが、ビールを2杯たのむのに「Dvakrát pivo prosím」と言っても、お店の人から「Dvě piva」と返ってくることがあってびっくりする。本来複数はないはずなのに、「Kolik piv」なんて質問されることもあるし。

 それはともかく、数詞と同様「kolik」に「krát」をつけた「kolikrát」という疑問詞が存在する。「k」が一つになっているのに注意。これはビールなどを何杯というのにも使えるが、「krát」は回数を表す、チェコ語には珍しい助数詞なので、何回という意味で使うことが多い。「Kolikrát jste byl v Japonsku?(日本には何回行きましたか)」なんてね。
 このことからも「kolik」は数詞に近いといえるのである。数詞といえば形容詞型の順序数詞というのもあるのだけど、その疑問表現についてはまた次回。
2020年2月15日23時。










2020年02月16日

チェコ語の疑問詞1(二月十三日)



 誰、何、いつ、どこなどの疑問表現については、チェコ語の例文を挙げるときに、特に意識しないまま使ってきたが、格変化も含めて説明していないようなので、ここらで使い方も含めてまとめて説明をしておこうと思う。
 最初に取り上げるのは、名詞的、もしくは代名詞的な「kdo(誰)」と「co(何)」である。前者は人をさすので、男性名詞活動体的、後者は物なので、不活動体的な格変化となる。ただし、呼びかけの5格はないものと考える。

 まずは誰から。

1 kdo
2 koho
3 komu
4 koho
6 kom
7 kým

 1格と7格以外は、硬変化の形容詞が男性名詞活動体につくときの語尾の長母音「é」を「o」に置き換えたもので、7格は形容詞と同じになる。活動体なので、2格と4格が同じ形になるというのも忘れてはいけない。2格は、「誰の?」と所有を表わすためには使うことができず、「誰の」を意味する疑問詞は形容詞軟変化型の「čí」になる。
 この「čí」も後ろに来る名詞によって格変化が変わるのだが、実際には1格で使うことが圧倒的に多いので、「čí」以外の形を見かけることはほとんどない。あるとすれば7格で、例えば「Čím autem pojedeme?(誰の車で行きましょうか)」などと使うぐらいだろうか。理論上の2格である「čího」とか、間違いではないのだろうけど自分で使おうと考えると、違和感がありすぎて落ち着かない気分になる。

 この手の疑問詞は、文頭で使うのが一般的、というよりは正しいのだが、ときに先生が学生に質問するときや、親しい人相手に強調したいときなどに、あえて文末に持って行くこともある。正しくは「Kdo je ten pán?(あの人、誰?)」というところを、「Ten pán je kdo?」とかね。
 また接頭辞をつけた「někdo(誰か)」「nikdo(誰も)」も全く同じ格変化をする。「nikdo」を使った場合には、動詞も必ず否定形になることは忘れてはならない。それにそれぞれ所有を表す形容詞軟変化型の「něčí」と「ničí」も存在する。接尾辞を付けた「kdokoliv(誰でも)」も、前半部分だけを格変化させるから同じグループに入る。

 せっかくなので例文をいくつか。

・Nikdo není dokonalý.
(誰も完璧ではない=完璧な人はいない)

・Zeptám se na to někoho.
(それについては誰かに聞いてみます)

・Komu patří toto auto? Nikomu.
(この車誰の?/誰のでもない)

・Pro koho děláte tuto práci? Pro sebe.
(この仕事は誰のためにやっているんですか?/自分のためです)

・O kom mluvíte? Mluvíme o vás.
(誰について話しているの?/お前についてだよ)

・S kým jste přijel do Olomouce? Sám.
(誰と一緒にオロモウツに来たんですか?/一人できました)


 続いて何。

1 co
2 čeho
3 čemu
4 co
6 čem
7 čím

 格変化形では子音交代を起こして「c」が何子音の「č」に変わってしまう。変化形は7格を除けば、形容詞硬変化が男性名詞につくときの語尾の母音「é」が短母音「e」に変わっただけ。7格が「ým」にならないのは、軟子音「č」の後ろに「y」が来ないからである。このルールを覚えておくと、格変化を覚えるのもかなり楽になる。

 もう一つ重要なことは、この「co」は、「kdo」と違って、2格で所有を表わすのにも使えることである。これはものをさす指示代名詞の「ten」が、2格で名詞の後ろで使えるのと同じで、「výsledek toho(その結果)」に対して、「výsledek čeho(何の結果)」という形で質問に使える。「何の」の部分だけが理解できなかったり、知りたかったりしたときには、「čeho?」だけで質問してしまうこともある。
 こちらも、「něco(何か)」と「nic(何も)」、「cokoliv(何でも)」を忘れてはいけない。接頭辞「ni」を付けた場合に「nico」にならないのは、「co」の厄介なところである。前置詞でも「pro co」がくっついて「proč」、「za co」がくっついて「zač」になるというのは、別物として理解してもいいけど、覚えておいたほうがいい。

 こちらも例文をいくつか。

・Co je to za cirkus!
(このばか騒ぎは何だ?)

・Čeho se bojí? Bojí se tebe.
(あの人は何を怖がっているの?/あんただよ)

・K čemu je dobré pivo? K čemukoli.
(ビールは何にいいの?/何にでもいいよ)

・Za co jsem dostal takovou odměnu? Za věrnost.
(何によってこんな報酬をもらえたのですか?/忠誠によってです)

・V čem je problém? Problém je v tom, že …
(問題はどこにあるんですか?/問題は……ところにあります)

・Čím je zima větší, tím jsem línější.
(寒くなればなるほど、私は怠け者になる)


 例文の中にもあるけれども、「co」は疑問以外でも使うことが多い。最後の例文の「Čím」と「tím」に形容詞、副詞の比較級を組み合わせた用法は、うまく使えると素晴らしいと驚かれること請け合いなのだが、どっちが前かわからなくなったり、形容詞、副詞の位置がおかしかったりで、なかなかうまくいかない。この例文が正しいという保証もないし。多分大丈夫だとは思うけど。
 それから、覚えておいた方がいいのは、後ろに形容詞副詞の最上級を付けて、「できるだけ」という意味を表わす使い方だろうか。「co největší auto(できるだけ大きな車)」とか「co nejdříve(できるだけ早く)」というのを例に挙げておこう。

 また厄介なのは1格で使うときに、述語に名詞ではなく形容詞をつかうと、形容詞は2格にしなければならないことだ。古いチェコ語の文法では2格の用法が現在よりもずっと多かったらしいのだが、その生き残りの一つらしい。だから、久しぶりにあった人に「Co je nového?(何か新しい(私の知らない)ことあった?)」と聞かれるし、レストランでは「Co je dobrého?(何がおいしい?)」と質問される。「je」の代わりに「mít」の変化形を使うこともあるので、4格の場合にも2格になると言えるかもしれない。
2020年2月14日











2020年02月11日

所有代名詞2(二月八日)



 所有代名詞の二つ目のグループは、一人称複数の「náš」と二人称複数「váš」のである。あれこれ言っても仕方がないので、まずは「náš」を例に単数の格変化を挙げておく。

男性
1 náš
2 našeho
3 našemu
4 našeho(活) náš(不活)
5 náš
6 našem
7 naším

 形容詞の硬変化に似ているが、語尾の母音「e」が長母音ではなく短母音であるところが違う。また、7格は軟変化と同じ形となる。これは軟子音「š」の後には、いわゆる「硬いY」が使えないことによる。


女性
1 naše
2 naší
3 naší
4 naši
5 naše
6 naší
7 naší

1格と5格以外は、人称代名詞三人称単数の「ona」と同じ。4格だけ短母音「i」で、ほかはすべて長母音「í」になると覚えてもいい。


中性
1 naše
2 našeho
3 našemu
4 naše
5 naše
6 našem
7 naším

中性は、1格と、必ず1格と同じ形になる4格、5格以外は、男性名詞不活動体とまったく同じ。


 複数の格変化は、3性共通の形が多いのでまとめて示す。
1 naši(活)naše(不活・女・中)
2 našich
3 našim
4 naše
5 naši(活)naše(不活・女・中)
6 našich
7 našimi

 男性活動体の1格と5格が違うだけで、ほかはすべて3性共通。共通部分は、形容詞の軟変化の複数に似ているが、語尾の母音が長母音「í」ではなく、短母音「i」であるところが違う。繰り返しになるが、こういう微妙な違いというのが覚える側にとっては厄介極まりない。

 その点、三人称の所有代名詞は、変化自体は覚えやすい。単数の男性「on」、中性「ono」の所有形はどちらも「jeho」で、後に来る名詞の性、単複を問わず、すべて同じ形をとる。つまり格変化させても形はまったく変わらない。注意すべきこととしては、三人称の人称代名詞単数の男性、中性の格変化に登場する「jeho」と混同しやすいことだろうか。人称代名詞のほうは、前置詞とともに使うと「n」を前につけて、「u něho」などとする必要があるが、所有代名詞のほうは、「u jeho auta」のように、そのままである。

 女性の「ona」から作られる所有代名詞は「její」で、長母音「í」で終わることからもわかるように、形容詞軟変化と全く同じ格変化をする。形容詞の格変化についてはここここを参照。
 複数は三性共通で「jejich」となるが、これも不変化で後ろに来る名詞が、どんなもので、どんな格であっても形は変わらない。注意点は、「i」が短母音であること。ここを長母音にすると、「jejích」となり、これは「její」の複数2格の形である。変化したりしなかったり、これもチェコ語である。

 最後に例外を指摘しておくと、最初に人称代名詞の2格を名詞の後ろにおいて所有をあらわすことはできないと書いたが、一単語ではなく「my všichni(私たち全員)」「vy všichni(皆さん全員)」のような二つの言葉の組み合わせの場合には、使えなくもない。「doba nás všech(私たちみんなの時代)」「názor vás všech(皆さん全員の意見)」なんて、全員を強調する使い方がなくはない。ただ普通は「naše doba」「váš názor」とするのが普通である。しかも、これが「všichni」以外の言葉との組み合わせで使えるかどうかも不明なので、自分では使えないでいる。

 これで、代名詞関係の格変化はすべて説明したかなと思ったのだけど、疑問詞の「kdo」「co」について格変化表を示してないかもしれない。これ覚えとくと楽だと書いた記憶はあるのだが、格変化について説明したかどうか、自信がない。重なり覚悟で、次は疑問の代名詞について書くことにしよう。ただし、関係代名詞としての使い方については、別に記事を立てる。
2020年2月9日24時。











2020年02月10日

所有代名詞1(二月七日)



 この題名に使った言葉が正しいのかどうか確信はないが、「私の」「私たちの」などの、人称代名詞の所有を表す形である。以前、どなたかが、人称代名詞の格変化を覚えて、「私の」は、「já」を2格にして名詞の後に持っていけばいいと思ったら……なんてコメントを残されていたが、誰しも通る道である。
 名詞であれば、名詞だけでなくて名詞に形容詞が付いたものであっても、2格にして後に持っていくことで、所有を表すことができる。しかし、代名詞、代名詞の中でも人称代名詞に限っては、2格で所有を表すことはできないのである。その代わりに、人称代名詞の所有形とでも言うべきもの、所有代名詞を使う。

 日本語の「私の」などのように、名詞の前で使うので、後からかける2格よりもわかりやすいのだが、当然後に来る名詞の性や、単複、格によって形を変えるし、三人称の場合には、所有する人の性によって形や格変化が変わる。チェコ語なので厄介なのは当然と言えば当然なのである。覚えるのは簡単でも、実際に使うのは難しいのとかいくらでもあるしね。たいていはどちらも難しいから、どちらかだけでも簡単なのは喜ぶべきことである。

 さて、この所有代名詞は、3つのグループに分けて、格変化を覚える必要がある。一つ目は、一人称単数と二人称単数、それに再帰代名詞からつくる「můj」「tvůj」「svůj」である。これは男性名詞単数の1格につける形だが、一部の例外を除いて形容詞硬変化と同じ格変化をする。二つ目は。一人称複数、二人称複数の「náš」「váš」で、人称代名詞の2格「nás」「vás」と似ているので注意が必要。格変化は形容詞的だが、ちょっと違う。最後は三人称のもので、これはもう個別に見ていくしかない。無変化のものもあるし。

 一つ目のグループで気をつけないといけないのは、単複の1格と、1格と同じ形をとる格である。単数1格は男性「můj」「tvůj」「svůj」、女性「má/moje」「tvá/tvoje」「svá/svoje」、中性が「mé/moje」「tvé/tvoje」「své/svoje」となる。二つの形のある女性と中性は、「oje」で終わる後者を使うのが一般的だが、前者を使うと格変化が形容詞とまったく同じになるという利点がある。
 すべて並べても煩雑なので、「můj」を例にして単数の格変化を上げておく。

まずは男性から。
1 můj
2 mého
3 mému
4 mého(活)/můj(不活)
5 můj
6 mém
7 mým

 4格は、活動体は2格と同じで、不活動体は1格と同じという名詞、形容詞に共通するルールがここでも適用される。5格が1格と同じなのは、性も単複も問わない形容詞型の格変化をするものに共通の特徴である。

 女性は
1 má/moje
2 mé
3 mé
4 mou/moji
5 má/moje
6 mé
7 mou

 4格に二つの形があるのが例外的。これも、女性名詞の軟変化の「e」で終わるものを思い浮かべれば、4格が「i」で終わるのは覚えやすい。

 中性は、
1 mé/moje
2 mého
3 mému
4 mé/moje
5 mé/moje
6 mém
7 mým

 1格と同じ形になる4格、5格を除けば、完全に男性の格変化と同じ。


 複数も1格がやっかいで、男性は活動体「mí/mojí」「tví/tvojí」「sví/svojí」、不活動体「mé/moje」「tvé/tvoje」「své/svoje」、女性「mé/moje」「tvé/tvoje」「své/svoje」、中性「má/moje」「tvá/tvoje」「svá/svoje」となる。

 今度は二人称を例にしてみる。

男性
1 tví/tvojí(活)tvé/tvoje(不活)
2 tvých
3 tvým
4 tvé/tvoje
5 tví/tvojí(活)tvé/tvoje(不活)
6 tvých
7 tvými

女性
1 tvé/tvoje
2 tvých
3 tvým
4 tvé/tvoje
5 tvé/tvoje
6 tvých
7 tvými

中性
1 tvá/tvoje
2 tvých
3 tvým
4 tvá/tvoje
5 tvá/tvoje
6 tvých
7 tvými

 複数は、1格、4格、5格で長い形も使える以外は、形容詞の硬変化とまったく同じ。同じなら完全に同じだと楽なのだが、部分的に違うところがあるのが、外国人に対する嫌がらせに思えなくもない。自然とそうなったものなのだろうけど、文章語としてのチェコ語の正字法が決められたときに、覚えやすさに配慮なんてことはしなかったのかなあ。今後も、標準チェコ語と呼ばれるプラハ方言の要素が入ってきてますます規則性が乱れていくんだろうなあ、なんて悲観的なことを考えてしまう。
 長くなったので、手抜きっぽいけど今日はここでおしまい。
2020年2月8日24時。
 








2020年02月07日

再帰代名詞の使い方最終回(二月四日)



 延々と再帰代名詞の話を続けるわけにもいかないので、最後に、それぞれの格の使い方、特に全市とともに使うことが多いのだけど、その例を挙げながら説明しておく。


2格
 再帰代名詞の2格を単独で使う例は思いつかない。よく使う前置詞との組み合わせとしては、「u sebe」がある。「Jsem u sebe」「Budu u sebe」で「自分自身のところにいる」ということから、会社なんかだと自分の席、大学の先生だと自分の研究室にいることをあらわす。もちろん、質問するときには2人称にして、「Zítra budete u sebe?」と聞くことになる。

 それから、「od sebe」という表現も忘れてはいけない。ドアにこう書いてある場合には、自分のほうから離れる方向を表すので、「押す」を意味するというのはすでにどこかに書いた。最近は「od sebe」「k sobě」ではなく、「tam」「sem」で「押す」と「引く」を示すところも増えているけれども。また「お互いに離れる方向に」という意味で、二つの並んでいるもの、並んでいる人の間を広げるときにも使われる。「nohy od sebe」とかね。
 並び方も、横に並んでいるときには「vedle sebe」、前後は「před sebou」、上下は「nad sebou」という表現を使う。もちろん「sebou」は7格である。


3格
 3格は、単独の場合原則として短形「si」を使うので、これも前置詞と組み合わせた形を紹介する。一つ目は2格のところにも書いた「k sobě」だが、お互いにという意味で使うこともある。よく使うのは、「Patří k sobě」だろうか。「互いに相手に属し合う」ということで、言い組み合わせであること、お似合いであることを表現することができる。
 反対に「proti sobě」になると、「互いに反対し合う」なので、「kamarádi proti sobě」で、「友人同士の対決」という意味になる。ただし、単に場所的に「反対側」という意味でも使われるので、レストランや電車の座席なんかで、「proti sobě」だと向き合って座り、「vedle sebe」だと横に並んで座ることになる。


4格
 4格を取る前置詞は、場所と方向の両方を表し、方向の場合だけ4格を取るというものが多いので、めちゃくちゃ厄介である。4格を取るかどうかは、動詞によって決まるのだが、いつまでたっても区別できず、6格や7格を使って違うと言われてしまう。ただ、動詞なしで使う場合には4格は使わないことが多いので、その手の前置詞と再帰代名詞の組み合わせはほぼ無視していいと断言しておく。
 ということでいろいろな動詞と組み合わせることのできるのは「pro sebe」である。意味は「自分のために」なので、3格の「si」と似ているのだが、強調したいときには、こちらを使うし、外国人には「si」が使えるのかどうかわからない場合も多いので、そんな場合にも「pro sebe」なら安心して使える。


6格
 6格はそもそも前置詞なしでは使えない格である。その割には6格を取る前置詞の数は多くない。しかも「o sobě(自分について)」以外は使いにくいとくる。一応、「v sobě」「na sobě」なんてのもあるのだけど、「v」と「na」の使い分けからして難解で、しかも場所じゃなくて方向の可能性もあるし、ということで、適当に使うことはあるけど、正しく使えている自信は全くない。


7格
 7格の「sebou」は単独で使うことがある。「být sám sebou」で「自分自身である」ことを意味する。使う機会は限定されているので、自分では使ったことはないと思うが、インタビュー記事などではしばしば見かける表現である。モットーや成功の秘訣なんかを聞かれたときに、こんな答え方をするのは、ちょっと賢く見えるのかもしれない。
 前後に並ぶことを示す「před sebou」だが、自分の目の前にあることを表現するのにも使える。目の前なので、「před očima」と言いたくなるところだけど、「Mám ho před sebou」のほうがよく使われているような気がする。場所的な「目の前」だけでなく、時間的な「目前」にも使えるので、試験や何かのイベントが目前に迫っているような時にも使える。終わった後は、「自分の後ろ」になるので、「Mám ho za sebou」である。スポーツなんかだと残り時間を「před sebou」、経過した時間を「za sebou」で表すこともある。

 それから、もう一つ忘れてはいけないのが「s sebou」である。チェコ語の本来のルールにのっとれば「se sebou」となるはずなのだが、「s sebou」で発音も「sebou」と全く同じである。チェコ語を勉強して、最初に習うのは、動詞の「vzít」とともに、「vzít si s sebou」という形で使う例だろうか。例えば朝、「傘を持って行け」というような場合に、「Vezmi si s sebou deštník」なんて言い方をするわけである。
 もう少し慣れてくると、街中のファーストフードのお店なんかで、食べ物や飲み物を買ったときに、店内で食べるか、持ち帰りにするかを聞かれるのに使われるのに気づくだろう。中にはすでに聞かれる前に「s sebou」と言うことで、持ち帰り用の袋に入れてもらうなんて人もいるはずだ。さらにチェコになじむと、日本人同士のやり取りでも「セボウ」とか「セボウする」なんて言うようになる。「昨日の晩飯はあそこの中華屋でセボウしたんだよ」とかさ。
 ということで、チェコ語起源の外来語として「セボウする」を日本語に導入しよう。なんてことを機会あるごとにあちこちでわめいているのだけど、道はなお遠しである。
2020年2月5日24時。









2020年01月30日

再帰代名詞の使い方4格短形(正月廿七日)



 チェコ語の4格は、原則として日本語の助詞「を」に対応するので、3格に比べればはるかに使い方がわかりやすい。それは当然、この再帰代名詞にも当てはまることで、「se」を付けることで意味の変わる動詞の解釈はしやすいし、そこからある程度のルールめいたものを導き出すことも可能になる。あくまでめいたものであってチェコ語の勉強や使用には役に立たないのだけど。

 前回「si」が使われる場合を説明した動詞「umýt(洗う)」だが、「se」とも一緒に使われる。その場合、「自分を洗う」ということで、シャワーやお風呂に入って体全体を洗うことを意味する。覚えておいた方がいいのは、シャワーを浴びるという意味の「sprchovat」も、風呂に入るという意味の「koupat」も、自分の身体を洗う場合には「se」が必要になることである。「se」を使わない場合には洗う相手を4格で加えなければならない。
 また、これも初学のころに習う「mít se」も、「自分を持つ」と考えれば、質問の「jak」にしろ、答えの「dobře」にしろ、「自分をどのような状態で持っていますか」「いい状態で持っています」と解釈すれば、主に体の調子を表わす表現として使われることにも納得がいく。この伝で「zabít se」が「自分を殺す」で「自殺する」という意味になるのもわかりやすい。

 日本語使用者の観点から言うと、「戻す(vrátit)」と「戻る(vrátit se)」や、「見つける(najít)」と「見つかる(najít se)」などのように、「se」をつけることで、他動詞が自動詞化するというものもある。「閉める(zavřít)」と「閉まる(zavřít se)」、「開ける(otevřít)」と「開く(otevřít se)」もそうである。
 もちろん、日本語のすべての他動詞、自動詞の組み合わせがこれに対応するというわけではない。「končit」は、日本語の「終わる」が自動詞としても他動詞としても使えるようになっているのと同様「se」がなくても自動詞的に使えるし、対義語の「začít」は、主語によって「始まる」「始める」のどちらの意味にもなる。

 また、「驚かす(překvapit)」と「驚く(překvapit se)」や、「動かす(posunout)」と「動く(posunout se」」の組み合わせのように、他動詞といっても使役形から派生したものと自動詞の組み合わせになるものもある。だから、「引っ越しさせる(stěhovat)」に「se」を付けて「引っ越す(stěhovat se)」になるという、日本語では使役の助動詞を付けた形が、基本となるペアがあるのも仕方がないのかと思える。

 逆に、「se」を付けることで再帰受身とよばれる受身形を作れるし、「uvidět」という動詞の使い方を考えると「se」が古典文法で言うところの自発の意味を付け加える場合もあるような気がする。「uvidíme to」も、「to se uvidí」も現状では結論が出せず、「(結果がどうなるか)見ておこう」とか「(結果は)見てのお楽しみ」と言いたくなるような場面で使うのだが、「se」がついた方が、「なるようになる」という突き放したような印象を与える。そこに古文の自発の匂いを嗅いでしまうのが古文読みたるゆえんである。
 ちなみに、「uvidět」は、不完了態の動詞「vidět」の完了態で、「見える」とか、「見る」でも意識してみるのではなく、視界の中に入ってきたものを見るときに使う。だから、4格を取る他動詞ではあるのだけど、日本人には自動詞っぽく感じられる部分があって、それに「se」をつけると、さらに自動詞性が強くなって自発に感じられるのではないかと。まあ、言語学の徒であれば、こういうのをネタに、使役から受身、自発にかけて広がる動詞の意味の位相の分析なんてことも考えるのだろうけど、我が任にはあらずである。

 さて、「si」を使った場合と同様に、「se」でもお互いにという意味になるものがあり、その一つが「uvidět」である。「Uvidíme se」で「お互いに見合おう」ということから、「会おう」という意味で使われる。「domluvit」は「最後まで話す」という意味だが、「se」をつけると、「最後まで話し合う」ということで、「話し合って決める」という意味になる。
 例を挙げていけば際限がないのだが、一言確実に言えるのは、3格の「si」を使うものより、はるかに理解しやすいということだ。

 それで終わってはつまらないので、ちょっと理解しづらい「se」を使う動詞をあげておく。「dát」は「si」と共にも使えたが、「se」とも一緒に使う。大学書林の『チェコ語日本語辞典』には「dát se」で「着手する」という意味が上がっているが、そんな意味で使ったことはない。
 物、もしくは動作を主語にして「dá se」で、「できる」という意味になる。能力云々ではなく、状況的に可能かどうかをいうもので、「jde to」に近いので、「行ける」とか、「何とかなる」という意味に理解してもいいかもしれない。モラビアではワインを「dá se」「nedá se」「pro Pražáky」という三つのカテゴリーに分けるなんて冗談はどこかで紹介したかな。
2019年12月28日23時。










タグ:動詞 代名詞

2020年01月25日

再帰代名詞の使い方3格短形(正月廿二日)



 ちょっと遅れたけれども先週予告した再帰代名詞の使い方である。とはいえ、4格短形の「se」がないと使えないものに関しては、そんなものとして覚えるしかないのであれこれ喋々することはしない。それに「se」を使った「再帰受身」と呼ばれるものについても、かなり意味不明になったけれどもここに一度書いているので、関係することは書くかもしれないが、まとめて説明するようなことはしない。

 最初は、三格短形の「si」がつくことによって、意味が微妙に変わる動詞の使い方とその解釈である。自分が納得するためのこじつけのようなものなので、これを読んだからといってチェコ語の理解が進むとは思えないということは、事前に申し上げておく。
 最初に取り上げるのは、「půjčit」と「půjčit si」の組み合わせ。「si」が3格で動作の向かう方向を表わすことを考えると、「自分に貸す」ということから「借りる」という意味が導き出されたと理解できるのだが、自分のものを「自分に貸す」ことはできないわけで、所有者がわからないものや他人のものを勝手に「自分に貸」していたのかなんてことを想像してしまう。実際には「貸す」と関連する動作ということで「借りる」になるのだろうけど。

 日本語では、動詞だけで特に動作の対象となる人を求めない「取る」だが、チェコ語の場合には3格が必要になる。そして「自分のために取る」ときに「si」を使って、「vezmu si」としなければならない。この動詞、仕事を「取る」、つまり引き受けるときにも使うのだが、そのときは「si」は不要になる。普通は自分が欲しいから、何かを「取る」わけだけど、仕事はいやいや「取る」ものだから、「si」はいらないと考えておく。薬は、いやいやだけど、自分の健康のためだから「si」が必要でいいのかな。

 一般に3格というのは厄介なもので、この動詞と一緒に「si」以外の人の三人称を使うと、「その人のために」という「si」を使った場合と同じような意味になることもあれば、「その人の」といういわゆる関係の3格的な意味になることがある。例えば、「Vezmu ti tu knihu」と言うと、相手が欲しがっている本を見つけたときには前者の意味で、相手の持っている本を取り上げるときには後者の意味で使う。訳すとすれば、うちにいる相手に電話で「(欲しがってた)あの本持って帰るね」と言うのが前者で、「あの本もらうよ」と言うのが後者である。

 チェコ語の勉強を始めたばかりのころに、教えられる表現の一つに「dám si」というのがある。これはレストランなどで注文をするときによく使う表現なのだが、当時は特に深く考えることなく覚えて使うことで満足していた。「chtít」を覚えてからは、自分ではほとんど使わなくなっていて、たまにチェコ語を勉強している日本の人が使うのを聞いて、そう言えばそんな言い方もあったねえと懐かしく思うこともしばしばだった。
 これも、動詞「dát」の本来の意味から考えると、「自分に与える」ということになる。お店にある商品や、メニューに載っているものの中から、選んで「自分に与える」のである。この場合、お金を払うという行為は当然だとみなされるのか、お店で、日本語だと「これ買います」と言いたくなるような状況でも、動詞「koupit(買う)」を使わずに、「dám si」とか「vezmu si」と言うことが多い。特に「vezmu si」は、普通「取る」と訳すので、慣れるまでは、お金を払わないようなイメージもあってなかなか使えなかった。日本語で「これもらいます」というのと似ているのかな。ちなみに「買う」を使っても、「koupím si」と「si」が必要な点は同じである。

 関係の3格的な「si」としては、動詞「umýt(洗う)」と共に使うものがある。日本語だと「手を洗う」「頭を洗う」で特に自分という言葉がなくても問題はないのだが、チェコ語の場合には自分の体の一部を洗う場合には、「si」が必要になる。当然他人の手などを洗ってあげる場合には、その人を表す言葉を3格にして使う。皿などの物を洗う場合には、特別な場合を除いて3格は不要だと思うけれども、自信はない。やっぱ3格は厄介である。

 再帰代名詞のもう一つの重要な役割に「お互いに」という意味を付け加えるというものがある。この場合、主語、もしくは動詞の人称変化は複数形になる。日本では「この素晴らしき世界」と原題がどこかに行ってしまった映画はチェコ語では「Musíme si pomáchat」である。動詞「pomáchat」は「助ける」という意味で、助ける相手は3格で表す。単数で「pomáhám si」だったら、「自分で自分を助ける」になりそうだけど、複数形で「pomácháme si」となると、「私たちは助け合う」という意味になる。
 同じように、動詞「psát」は、普通は「書く」と訳されるが、手紙やメールを書いて送るときにも使えるので、「Budeme si psát」と言うと、「(手紙やメールを)書いて送り合います」、つまりはちょっと古いけど「文通する」という意味にもなるのである。もちろん単数なら、自分のために書くというところから、メモを取っておくような場合にも使える。

 最後にこじつけの理解もできない、形容詞に「si」が必要な例を挙げておく。形容詞「jistý」は、「確かな」という意味なのだが、「si」と共に述語で使うと、「確信している」という意味になる。ということで「Jsem si úplně jistý tím, že vám tento článek nepomohl k lepším pochopení češtiny(私は、この記事がみなさんのチェコ語理解の向上に寄与しなかったことを確信している)」ということにしておこう。
2019年1月22日22時。












タグ:代名詞 3格

2020年01月15日

再帰代名詞の格変化(正月十二日)



 年末以来、手抜きの一環で、これまで書いてきたチェコ語の文法の説明をテーマごとにまとめて、リンクを付けた記事を投稿しているのだが、その過程で、説明するべきなのに説明していない事項がまだいくつも残っていることに気づいた。そのうちの一つが、「se」「si」という短形で使うことが多い、いわゆる再帰代名詞である。
 これは、動詞の主語と代名詞の指すものが一致する場合に使うもので、必要なときには「自分」と訳すが、訳す必要のない場合も多いものである。動詞の中には、「zeptat se(質問する)」のように、この再帰代名詞の4格短形の「se」がないと使えないものもあるし、「překvapit(驚かす)」のように「se」を付けることで他動詞が自動詞化するものもある。3格短形の「si」を付けると意味が変わるものとしては、「půjčit(貸す)」が、「půjčit si(借りる)」になるというものがある。

 格変化は、二人称単数の人称代名詞「ty」とほぼ同じなので、覚えるのはさほど難しくない。

 1 ナシ
 2 sebe
 3 sobě / si
 4 sebe / se
 5 ナシ
 6 sobě
 7 sebou

 違うのは、1格と5格にあたる形がないことと、2格に短形が存在しないことだけである。

 難しいのは、実際に話したり書いたりするときに正しく使用することである。いや、使わなければならないことに気づくのも最初は結構大変である。例えば、主語が私である文中に、「私に」や「私を」が出てきた場合には、人称代名詞「já」の格変化形ではなく、再帰代名詞を使わなければならないのだが、これが問題なくできるようになるまでかなりの時間がかかった。できるようになってからも、特に文が長くなってくるとしばしば「já」の格変化形を使ってしまって間違いを指摘されることがある。

 間違いの例を挙げると、
  Mluvím o mně.
  Mluvíš o tobě.
というのは、どちらも間違いで、主語と後に出てくる人称代名詞が一致しているので、「o sobě(自分について)」という形を使わなければならない。
 三人称の場合は例外で、「Mluví o sobě」と「Mluví o něm」はどちらも使えるが、前者が「あの人は自分について話している」という意味になるのに対して、後者は「あの人は(別の)あの人について話している」という意味になって、意味が変わってしまうのである。

 この再帰代名詞を、普段から問題なく使えるようになると、チェコ語も一人前だと言いたくなるほど厄介で、わかっていても間違えることの多いものである。特に文が長くなってくると、動詞の主語が何だったか意識が薄れてついつい普通の人称代名詞を使ってしまう。一人称単数の「já」が主語のときはできるようになっても、二人称、三人称、それに複数はなかなかできるようにならない。

 日曜日の記事なので、短めで終わろう。次は再帰代名詞の覚えておいた方がいい具体的な使い方と、解釈の仕方をつらつら書いてみようか。来週末の記事になるかな。とりあえず、毎週一回チェコ語関係について書くというのを継続しようと思う。
2020年1月13日23時。










2019年10月27日

待望の辞書(十月廿五日)



 語学の学習において、辞書というものが果たす役割の大きさは言うまでもないだろう。初学のころは、教科書の後ろについている単語集みたいなものでごまかせても、学習が進むにつれて辞書の必要性は大きくなる。最初に買う辞書は単語数もそれほど多くない小さな辞書でいいだろうが、専門的に勉強したり、翻訳や通訳などを仕事にしようと思うと語彙数の多い大きな辞書がほしくなる。
 日本では英語の辞書なら、小さなものから大きなものまで、どこに需要があるのかといいたくなるぐらいたくさんの種類の辞書が、出版されている。ドイツ語やフランス語も以前ほどではないかもしれないが、それなりに充実しているはずである。かつては学ぶ人の多かったロシア語は、今はどうなっているのだろう。どうなっているにしても、チェコ語よりはましだというのは確実だけど。
 チェコ語の場合、これまで手に入る辞書はひとつしかなかった。それがこれ↓。

【送料無料】 現代チェコ語日本語辞典 / 小林正成 【辞書・辞典】




 もともとは1990年代の初めに京産大が出版したものが、長らく絶版になっていたのを、語学の教科書、辞書の出版社である大学書林が版権を買い取って再刊したものである。大学書林では、90年代の後半に独自のチェコ語日本語辞典を編集する計画があったらしい。それが頓挫した結果、京産大の辞書を再刊することになったのだろう。

 チェコに来てからは、カレル大学の日本語関係者から、チェコ側と日本側が共同でチェコ語日本語辞典、日本語チェコ語辞典を編集する計画があったという話を聞いた。それには、作業はかなり進んでいたのに、日本側でPC上においてあったデータが、何らかの事情で消えてしまったので、出版できなかったという落ちがつく。これが大学書林の計画と同じものを指しているのかどうかは不明だけど、これで新しくて大きなチェコ語日本語辞典は刊行されないだろうと諦めた。
 チェコ語と英語の辞典なら大きいものもあるのだけど、英語の説明を読んでも理解できない人間には使いようがない。それで、仕方なく意味を調べる必要があるときには、チェコ語のチェコ語辞典を使うようになった。辞書で調べるよりも、人に訊くことの方が多かったけど、チェコ語で言葉の意味を説明されたという点では、チェコ語の辞書を使うのと大差ない。

 それが、チェコスロバキア独立100周年の記念日をめどに大型のチェコ語日本語辞典を刊行する計画があると聞いたのは、いつのことだっただろうか。去年は刊行されたというニュースがなかったのでどうなったのかなと思っていたら、今年の10月になって、日本の知り合いから出たよという連絡があった。「honto」で確認したら、編者は、わがチェコ語の基礎を作った教科書の著者、石川達夫氏。詳しすぎるとまで言われた教科書と同様に辞書も詳しい記述がなされているに違いない。
 全三冊+別巻二冊という大部の辞書で、編集に携わった石川氏以下の方々には感謝の言葉しかない。さあ、買うぞと言いたいのだけど、現時点では、取り扱いができないことになっている。残念。

















 念のためにアマゾンで確認すると、別巻の二冊だけは買えるようである。全冊セットじゃなくて、一冊ずつの販売ということのようだ。別巻だけあってもなあ。必要なのはチェコ語日本語の部分であって、逆じゃない。


チェコ語日本語辞典: チェコ語の宝──コメンスキーの追憶に (別巻1 日本語チェコ語語彙集(あ~そ))





 実はこの辞書、電子版も存在するようで、辞書編集プロジェクトのHPが存在する。そして、電子版チェコ語日本語辞書はシェアウェアとして販売されていて、60日間の試用期間が設けられている。

 個人的には紙の本の方がいいんだけどなあ。日本にいれば出版社に直接注文できるはずだから、電子辞書よりも紙の辞書のほうがいいという方はこちらから是非。送料と税関で引っかかって取られる税金の問題さえなければ、親に買わせて送らせるのだけど……。親不孝は今に始まったことじゃないしさ。
2019年10月26日22時。











タグ:辞書

2019年10月08日

ラグビーでチェコ語を勉強する3(十月六日)



承前
 昨日の話が短くなってしまったのは、ラグビーに時間を取られているからだけど、今日も状況はそんなに変わらない。サッカーだとよほどのいい試合でない限り、見た試合の余韻に浸るなんてことはないが、ラグビーの場合にはほぼ全試合余韻に浸ってしまうので、試合と試合の間の時間が短すぎてもどかしくなることがある。余韻に浸っている間に、次の試合が始まってしまうのである。見なきゃいいとは言う勿れ。ラグビーとハンドボールは、放送されていて時間があれば見てしまうものだ。

 さて、チェコ語のラグビー用語の続きである。ラグビーのボールは、普通のスポーツと同じように「míč(ミーチ)」と言ってもいいようなのだが、この前、試合を見ていたら、解説者が、ミーチを使ったことを、ラグビー関係者に詫びていた。それはラグビー界ではミーチではなく、「šiška(シシュカ)」という表現を使っているかららしい。シシュカは本来は長めの松ぼっくりのことをさすのだが、そこから形の似たものをさすようになり、ラグビーのボールも楕円形で似ているから、種々化と呼ばれるようになったようだ。ボールをミーチと呼ばないのも、チェコのラグビー界の誇りなのかもしれない。ミーチじゃなくてバローンと呼ぶスポーツもあったような気がするし。

 ボールを蹴るフリーキックやペナルティーキックなどのキックは、「kop(コプ)」という。蹴るという意味の動詞「kopat」と関係があるのだが、フリーキックは「volný kop(ボルニー・コプ)」と直訳っぽくてつまらないのに対して、ペナルティは「trestný kop(トレストニー・コプ)」で罰という意味の名詞「trest」から作られた形容詞が使われている。サッカーのPKが「pokutový kop(ポクトビー・コプ)」というのと違うのが面白い。
 ボールを蹴る選手は「kopáč(コパーチ)」で、ラグビーやサッカーの選手たちが履いているスパイクは「kopačky」という。日本語では同じ言葉になる陸上用の、特に走るためのスパイクは、「tretry(トレトリ)」になるから注意が必要である。もう一つ「kop」に関連する言葉としては、「kopátko(コパートコ)」がある。今回聞いて最初は何のことかわからなかったのだが、ペナルティーキックの際に蹴りやすいようにボールの下に置く物のことだった。妙に音の響きがかわいくてラグビーにそぐわない気もするんだけど。

 ラグビーでペナルティがつく言葉には、「ペナルティー・トライ」があるが、チェコ語では、最近のルール改正で問題が生じている。以前どこかに書いたが、トライは5点獲得できることから、数字としての5を意味する「pětka(ピェトカ)」という。ペナルティーがつく場合も同様で「trestná pětka(トレストナー・ピェトカ)」である。問題は、7点もらえるようになったペナルティートライが5を表わす言葉で示されていいのだろうかということで、これをきっかけにトライの呼び方が変わることを期待している。
 ペナルティーキックやトライの後のコンバージョンで狙うもの(ゴールでいいんだっけ?)は、形から「háčko(ハーチコ)」、つまりアルファベットのHとよぶ。ゴールに成功するのを、蹴ったボールが二本の棒の間を通り抜けることから、「prokopat(プロコパット)」という。ラグビーは接頭辞の「pro」の勉強に向いていて、バックスの選手が相手のディフェンスラインの隙間を抜けて走るのを「proniknout(プロニクノウト)」、ディフェンスにぶつかりながら間を抜けて突進するのを「prorazit(プロラジット)」という。ハンドボールではプロラジットは反則なんだけどね。

 トライを決めるのは、「položit(ポロジット)」「pokládat(ポクラーダット)」という動詞を使うのだけど、これは本来置くという意味である。接頭辞を変えて「s」、つまり「skládat」にするとなぜかタックルするという意味になる。正確にはタックルして相手を倒すという方がいいかな。接頭辞の「s」には、いくつかのものを集めるという意味と、上から下へという意味の二つの意味があるのだけど、ここは立っているものを倒して下の地面に置くと考えておく。折り畳み傘にもこの動詞を使うから、おなかの当たりにタックルして相手を二つに折りたたむと解釈しても面白い。
 タックルそのものは、「skládka」となる。本来はいろいろな物を集めて置いておく倉庫とか、荷卸しを意味する言葉なのだけど、ラグビーではタックルである。反則のハイタックルが「vysoká skládka」になるのは、チェコ語を勉強している人ならすぐわかるはずである。

 よく出てくる接頭辞には「pře」もあって、ラックの中で相手側に倒れこんでボールを押さえるのを「přepadnout(プシェパドノウト)」、モールで相手を力で圧倒して押していくのを「přetlačit(プシェトラチット)」、バックスのパス回しで何人か飛ばすのを「přehodit(プシェホディット)」なんて言う。「pře」は何かを越えることを意味しているのである。

 ラグビーに限らずスポーツの中継を見るのは、外国語の勉強に、特に語彙を増やしたり、言葉に対する感覚を磨くのにものすごく役に立つ。それなのに、外国語の上達にテレビを役に立てようなんて言う人が紹介しているのを見たことがない。状況がわかっていないと意味不明になりがちなニュースやドラマを見るよりもはるかにいいと思うんだけどなあ。特に自分のよく知っているスポーツを見ながら日本語での表現と比較していくと得るものは大きい。
 我ながら無理やり感のある終わり方だけど、この件はこれでおしまい。そのうちハンドボール用語とかサッカー用語もやってみようかな。
2019年10月6日24時。











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