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2020年02月07日

再帰代名詞の使い方最終回(二月四日)



 延々と再帰代名詞の話を続けるわけにもいかないので、最後に、それぞれの格の使い方、特に全市とともに使うことが多いのだけど、その例を挙げながら説明しておく。


2格
 再帰代名詞の2格を単独で使う例は思いつかない。よく使う前置詞との組み合わせとしては、「u sebe」がある。「Jsem u sebe」「Budu u sebe」で「自分自身のところにいる」ということから、会社なんかだと自分の席、大学の先生だと自分の研究室にいることをあらわす。もちろん、質問するときには2人称にして、「Zítra budete u sebe?」と聞くことになる。

 それから、「od sebe」という表現も忘れてはいけない。ドアにこう書いてある場合には、自分のほうから離れる方向を表すので、「押す」を意味するというのはすでにどこかに書いた。最近は「od sebe」「k sobě」ではなく、「tam」「sem」で「押す」と「引く」を示すところも増えているけれども。また「お互いに離れる方向に」という意味で、二つの並んでいるもの、並んでいる人の間を広げるときにも使われる。「nohy od sebe」とかね。
 並び方も、横に並んでいるときには「vedle sebe」、前後は「před sebou」、上下は「nad sebou」という表現を使う。もちろん「sebou」は7格である。


3格
 3格は、単独の場合原則として短形「si」を使うので、これも前置詞と組み合わせた形を紹介する。一つ目は2格のところにも書いた「k sobě」だが、お互いにという意味で使うこともある。よく使うのは、「Patří k sobě」だろうか。「互いに相手に属し合う」ということで、言い組み合わせであること、お似合いであることを表現することができる。
 反対に「proti sobě」になると、「互いに反対し合う」なので、「kamarádi proti sobě」で、「友人同士の対決」という意味になる。ただし、単に場所的に「反対側」という意味でも使われるので、レストランや電車の座席なんかで、「proti sobě」だと向き合って座り、「vedle sebe」だと横に並んで座ることになる。


4格
 4格を取る前置詞は、場所と方向の両方を表し、方向の場合だけ4格を取るというものが多いので、めちゃくちゃ厄介である。4格を取るかどうかは、動詞によって決まるのだが、いつまでたっても区別できず、6格や7格を使って違うと言われてしまう。ただ、動詞なしで使う場合には4格は使わないことが多いので、その手の前置詞と再帰代名詞の組み合わせはほぼ無視していいと断言しておく。
 ということでいろいろな動詞と組み合わせることのできるのは「pro sebe」である。意味は「自分のために」なので、3格の「si」と似ているのだが、強調したいときには、こちらを使うし、外国人には「si」が使えるのかどうかわからない場合も多いので、そんな場合にも「pro sebe」なら安心して使える。


6格
 6格はそもそも前置詞なしでは使えない格である。その割には6格を取る前置詞の数は多くない。しかも「o sobě(自分について)」以外は使いにくいとくる。一応、「v sobě」「na sobě」なんてのもあるのだけど、「v」と「na」の使い分けからして難解で、しかも場所じゃなくて方向の可能性もあるし、ということで、適当に使うことはあるけど、正しく使えている自信は全くない。


7格
 7格の「sebou」は単独で使うことがある。「být sám sebou」で「自分自身である」ことを意味する。使う機会は限定されているので、自分では使ったことはないと思うが、インタビュー記事などではしばしば見かける表現である。モットーや成功の秘訣なんかを聞かれたときに、こんな答え方をするのは、ちょっと賢く見えるのかもしれない。
 前後に並ぶことを示す「před sebou」だが、自分の目の前にあることを表現するのにも使える。目の前なので、「před očima」と言いたくなるところだけど、「Mám ho před sebou」のほうがよく使われているような気がする。場所的な「目の前」だけでなく、時間的な「目前」にも使えるので、試験や何かのイベントが目前に迫っているような時にも使える。終わった後は、「自分の後ろ」になるので、「Mám ho za sebou」である。スポーツなんかだと残り時間を「před sebou」、経過した時間を「za sebou」で表すこともある。

 それから、もう一つ忘れてはいけないのが「s sebou」である。チェコ語の本来のルールにのっとれば「se sebou」となるはずなのだが、「s sebou」で発音も「sebou」と全く同じである。チェコ語を勉強して、最初に習うのは、動詞の「vzít」とともに、「vzít si s sebou」という形で使う例だろうか。例えば朝、「傘を持って行け」というような場合に、「Vezmi si s sebou deštník」なんて言い方をするわけである。
 もう少し慣れてくると、街中のファーストフードのお店なんかで、食べ物や飲み物を買ったときに、店内で食べるか、持ち帰りにするかを聞かれるのに使われるのに気づくだろう。中にはすでに聞かれる前に「s sebou」と言うことで、持ち帰り用の袋に入れてもらうなんて人もいるはずだ。さらにチェコになじむと、日本人同士のやり取りでも「セボウ」とか「セボウする」なんて言うようになる。「昨日の晩飯はあそこの中華屋でセボウしたんだよ」とかさ。
 ということで、チェコ語起源の外来語として「セボウする」を日本語に導入しよう。なんてことを機会あるごとにあちこちでわめいているのだけど、道はなお遠しである。
2020年2月5日24時。









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