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2020年02月16日

チェコ語の疑問詞1(二月十三日)



 誰、何、いつ、どこなどの疑問表現については、チェコ語の例文を挙げるときに、特に意識しないまま使ってきたが、格変化も含めて説明していないようなので、ここらで使い方も含めてまとめて説明をしておこうと思う。
 最初に取り上げるのは、名詞的、もしくは代名詞的な「kdo(誰)」と「co(何)」である。前者は人をさすので、男性名詞活動体的、後者は物なので、不活動体的な格変化となる。ただし、呼びかけの5格はないものと考える。

 まずは誰から。

1 kdo
2 koho
3 komu
4 koho
6 kom
7 kým

 1格と7格以外は、硬変化の形容詞が男性名詞活動体につくときの語尾の長母音「é」を「o」に置き換えたもので、7格は形容詞と同じになる。活動体なので、2格と4格が同じ形になるというのも忘れてはいけない。2格は、「誰の?」と所有を表わすためには使うことができず、「誰の」を意味する疑問詞は形容詞軟変化型の「čí」になる。
 この「čí」も後ろに来る名詞によって格変化が変わるのだが、実際には1格で使うことが圧倒的に多いので、「čí」以外の形を見かけることはほとんどない。あるとすれば7格で、例えば「Čím autem pojedeme?(誰の車で行きましょうか)」などと使うぐらいだろうか。理論上の2格である「čího」とか、間違いではないのだろうけど自分で使おうと考えると、違和感がありすぎて落ち着かない気分になる。

 この手の疑問詞は、文頭で使うのが一般的、というよりは正しいのだが、ときに先生が学生に質問するときや、親しい人相手に強調したいときなどに、あえて文末に持って行くこともある。正しくは「Kdo je ten pán?(あの人、誰?)」というところを、「Ten pán je kdo?」とかね。
 また接頭辞をつけた「někdo(誰か)」「nikdo(誰も)」も全く同じ格変化をする。「nikdo」を使った場合には、動詞も必ず否定形になることは忘れてはならない。それにそれぞれ所有を表す形容詞軟変化型の「něčí」と「ničí」も存在する。接尾辞を付けた「kdokoliv(誰でも)」も、前半部分だけを格変化させるから同じグループに入る。

 せっかくなので例文をいくつか。

・Nikdo není dokonalý.
(誰も完璧ではない=完璧な人はいない)

・Zeptám se na to někoho.
(それについては誰かに聞いてみます)

・Komu patří toto auto? Nikomu.
(この車誰の?/誰のでもない)

・Pro koho děláte tuto práci? Pro sebe.
(この仕事は誰のためにやっているんですか?/自分のためです)

・O kom mluvíte? Mluvíme o vás.
(誰について話しているの?/お前についてだよ)

・S kým jste přijel do Olomouce? Sám.
(誰と一緒にオロモウツに来たんですか?/一人できました)


 続いて何。

1 co
2 čeho
3 čemu
4 co
6 čem
7 čím

 格変化形では子音交代を起こして「c」が何子音の「č」に変わってしまう。変化形は7格を除けば、形容詞硬変化が男性名詞につくときの語尾の母音「é」が短母音「e」に変わっただけ。7格が「ým」にならないのは、軟子音「č」の後ろに「y」が来ないからである。このルールを覚えておくと、格変化を覚えるのもかなり楽になる。

 もう一つ重要なことは、この「co」は、「kdo」と違って、2格で所有を表わすのにも使えることである。これはものをさす指示代名詞の「ten」が、2格で名詞の後ろで使えるのと同じで、「výsledek toho(その結果)」に対して、「výsledek čeho(何の結果)」という形で質問に使える。「何の」の部分だけが理解できなかったり、知りたかったりしたときには、「čeho?」だけで質問してしまうこともある。
 こちらも、「něco(何か)」と「nic(何も)」、「cokoliv(何でも)」を忘れてはいけない。接頭辞「ni」を付けた場合に「nico」にならないのは、「co」の厄介なところである。前置詞でも「pro co」がくっついて「proč」、「za co」がくっついて「zač」になるというのは、別物として理解してもいいけど、覚えておいたほうがいい。

 こちらも例文をいくつか。

・Co je to za cirkus!
(このばか騒ぎは何だ?)

・Čeho se bojí? Bojí se tebe.
(あの人は何を怖がっているの?/あんただよ)

・K čemu je dobré pivo? K čemukoli.
(ビールは何にいいの?/何にでもいいよ)

・Za co jsem dostal takovou odměnu? Za věrnost.
(何によってこんな報酬をもらえたのですか?/忠誠によってです)

・V čem je problém? Problém je v tom, že …
(問題はどこにあるんですか?/問題は……ところにあります)

・Čím je zima větší, tím jsem línější.
(寒くなればなるほど、私は怠け者になる)


 例文の中にもあるけれども、「co」は疑問以外でも使うことが多い。最後の例文の「Čím」と「tím」に形容詞、副詞の比較級を組み合わせた用法は、うまく使えると素晴らしいと驚かれること請け合いなのだが、どっちが前かわからなくなったり、形容詞、副詞の位置がおかしかったりで、なかなかうまくいかない。この例文が正しいという保証もないし。多分大丈夫だとは思うけど。
 それから、覚えておいた方がいいのは、後ろに形容詞副詞の最上級を付けて、「できるだけ」という意味を表わす使い方だろうか。「co největší auto(できるだけ大きな車)」とか「co nejdříve(できるだけ早く)」というのを例に挙げておこう。

 また厄介なのは1格で使うときに、述語に名詞ではなく形容詞をつかうと、形容詞は2格にしなければならないことだ。古いチェコ語の文法では2格の用法が現在よりもずっと多かったらしいのだが、その生き残りの一つらしい。だから、久しぶりにあった人に「Co je nového?(何か新しい(私の知らない)ことあった?)」と聞かれるし、レストランでは「Co je dobrého?(何がおいしい?)」と質問される。「je」の代わりに「mít」の変化形を使うこともあるので、4格の場合にも2格になると言えるかもしれない。
2020年2月14日











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