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2016年11月09日

オロモウツ復活近し? 秋の暮れ(十一月六日)



 前回、シグマ・オロモウツが二部に降格したときは、主力選手のほとんどが残り、監督もズノイモから、かつての監督カルボダが戻ってきてくれ、圧倒的な成績で優勝し、一年での昇格を決めた。しかし、復帰した一部ではシーズン開幕当初から守備が安定せず、攻撃もちぐはぐでなかなか成績が上がらなかった。それでも秋はまだましだったのだ。年が明けてからはトンと勝てなくなり、あえなく一年で二部へと逆戻り、一緒に落ちたのが前回オロモウツと生き残りを争ったバニーク・オストラバだった。
 そして、ここ三年で二度目の二部でのシーズンが始まった今年の夏、オロモウツは勝てなかった。三試合連続で1対1の引き分け、この時点で監督を解任しようという声も上がっていたようで、監督自身もこの時期、いつ解任されてもおかしくないと考えてたらしい。

 現在の監督はバーツラフ・イーレクで、去年の秋に、カルボダが解任された後、監督に就任したが、二部への降格を防げなかった。以前はオロモウツで下の世代の監督を務めていたのだが、U19代表でフジェビークのアシスタントを務めた縁で、フジェビークがスパルタのジェネラルマネージャーになったときに、引き抜かれてラビチカ監督のアシスタントをしていた。そして、ラビチカ解任後にオロモウツに戻ってきて、しばらくしてAチームの監督になったわけだ。
 前回降格したシーズンは、シーズン中にも一度ならず監督を代えていたし、降格直後にも監督を代えた。それでも一部に復帰した後はうまく行かなかったので、今回は監督を変えないことを選んだようだ。前回と違って夏の移籍期間に選手の入れ替わりもあったし、降格で選手たちの意気も上がらないだろうしで、最初から圧倒的な成績を残すとは期待していなかったのだが、三試合連続引き分けというのは、試合内容の渋さもあいまって大きな期待はずれだった。現在二部で最下位を独走中のプロスチェヨフ相手にも引き分けてしまったからなあ。

 結局、代表の試合でリーグ戦が中断した時期に、解任するかどうかの話し合いが行われ、結論が出ずに、当時中東でバカンス中だったクラブの会長マーチャラに結論を一任したらしい。マーチャラは、チェコスロバキア代表の監督を務めた後、長らく中東諸国の代表監督を務めていたから、日本でもそこそこ名前は知られているだろう。いつの間にかオロモウツに戻ってきてシグマの会長になっていたのである。
 マーチャラが出した結論は、もうすこしチャンスを与えようというもので、そのチャンスをイーレクと選手たちは十分以上に生かした。第四節の試合で、内容はよくなかったらしいが何とか勝利を収めると、あとはつき物が取れたように、試合内容も結果も一気に向上し、怒涛の九連勝で、こちらは降格後シーズン当初から好調を続けているバニーク・オストラバを抜き去って、首位に浮上した。ただ、連勝中も一点差で勝つ試合が多かったから、オロモウツが圧倒的な存在になっているというわけではないようだ。

 第十四節でフリーデク・ミーステクに苦戦して、何とか同点に追いついて引き分けたときには、勢いもとまるのかなと思っていたら、次の試合でウースティー・ナッド・ラベムを5−0で粉砕してしまった。これで十五節まで終わって、11勝4分0敗である。このまま、無敗で二部を優勝して、一部昇格してと、来期の皮算用をしていたら、気になるニュースが新聞の地方欄に出ていた。
 その記事によると、オロモウツのクラブは存続の危機に瀕しているらしい。何でもここ数年赤字経営が続き、総額が七千万コルナ、日本円にして三億円前後に上っているというのだ。チャンピオンズリーグ出場を夢見て、毎年多額の投資をして補強を進めているスパルタが垂れ流す赤字に比べればかわいいものだが、オロモウツにはスパルタと違って、大きなスポンサーも、大金持ちのオーナーもいない。結構お金を出してくれるオーナーはいたのだが、これ以上は無理だといってクラブから離れたのが、前シーズンの終わりだったかな。

 かなり昔の話になるトマーシュ・カラスのチェルシー移籍はともかくとして、ホジャバ、ドレジャル、ポスピーシル、ナブラーティル、プシクリル、シェフチークなどなど育て上げた若手選手を、チェコのほかのチームに売却してきたから、それなりにお金は入ってきたと思うんだけどなあ。ホジャバとか、チェコの国内移籍では上限とも言える二千万コルナぐらいでは売れたはずだし……。去年の開幕当初の調子が上がらなかった時期に、あれこれ何人も無駄な中途半端なベテラン選手を補強していたからなあ。あの手の無駄遣いが積み重なっての結果ということなのだろう。
 ということは、イーレクを解任しなかったのも、財政的にしたくてもできなかったという面もあるのかもしれない。記事によれば、本来クラブのものだったスタジアムをオロモウツしに移管することで、一息ついたらしいが、それが資産の売却という意味なのか、市の物にして維持管理を担当することでお金がもらえるようになったのか、それとも別の方法なのかはよくわからない。

 せっかく選手たちががんばって、このまま行けば一部昇格を勝ち取れそうなのに、かつてのボヘミアンズ・プラハのようにクラブが消滅するという事態だけは避けてほしいところだ。必要なのは強力なスポンサー、もしくはオーナーだというから、ビロード革命後のどさくさにまぎれて大金持ちになった連中の中から誰か出てこないかねえ。オストラバの炭鉱会社の所有者で金がないから倒産させるとか言っている、自転車のクイックステップのオーナーのバカラあたりがトチ狂ってくれないかな。無理だろうなあ。
 ここはやはり市民民主党のラングルとか、社会民主党のロズボジルとかの不祥事起こして人気を落とした政治家の出番だな。自分で溜め込んだお金を出したら、あるいは便宜を図って金儲けさせてやったやつにお金を出させたら、人気回復で、次の選挙勝てるかもよ。
11月6日20時。



 タイトルに深い意味はない。またまた無駄な文学趣味の発露である。11月8日追記。

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