2019年03月18日
オロモウツの花冠(三月十六日)
花冠というけれども、実際にはそんなかわいらしいものの話ではなく、ちょっと物騒なものの話で、昨日の話しにもちょっと出てきた城塞都市オロモウツの周囲に配置された砦の配置が、オロモウツにかぶせられた花冠のようだというのである。その様子はこのページで確認できる。チェコ語では「fortový věnec」と呼ばれている。一つ一つの砦を「fort」と呼び、それの配置を「věnec」、つまり花冠と呼んでいるのである。昨日のラディーコフの砦は、オロモウツの東側の山の中に配置された4つのうちのひとつである。
スバティー・コペチェクを見学した後、夕食にはまだ早すぎる時間だったので、自分もまだ行ったことのないこの手の砦の一つに案内することにした。冠の内側にある二つの砦のうちの北側のほうである。南側のやつはトラムの停留所から急な坂を登る必要があるので、ちょっと避けたかったので、トラムの路線沿いにあるこちらを選んだ。
問題はどの停留所で降りるかだったのだが、見事に失敗した。一番近い停留所のプラシュスカーからは入っていく道がなく、一つ手前の停留所シベニークまで戻って、入っていいのかどうかもわからない空き地を抜けてフォルト・ガルゲンベルクに向かった。砦の一部なのか外側にあるのかよく分からない一番手前の建物だけは改修されて見られる姿になっていたが、それ以外の砦の本体というか、指揮所が置かれたと思しき建物も、それを守るように二重に囲んでいる建物もレンガが、むき出しになっていた。
一部は現在も使用されているようだったけど、一番外側と二番目の建物の間は、荒れるに任されていた。昔何かに使用されていたことを物語るように外付けのダクトがめぐらされている部分もあったが、ところどころでつながっておらず、長らく使用されていないのは明らかだった。オロモウツの花冠をテーマにしたサイトのこの砦のページには、わりときれいな写真が使われているけど、実際はさらに荒れ放題で、案内した知人は、日本だったら犯罪の温床になるとして破壊されている可能性が高いという感想を漏らしていた。
冠の内側にあるもう一つの砦は、パラツキー大学の医学部の大学病院ある丘の上にあって、大学病院の所有物になっているらしい。こちらは文書保管庫として利用されているというから、シベニークのものよりは整備されているのではないかと思うのだけど、大学病院でも最寄のトラムの停留所から昇っていく坂の急さにうんざりするのである。さらに上まで登っていく気には今のところなれていない。ちなみにこの砦の名前はフォルト・タフェルベルクである。人名に由来しているのだろうか。
本来は、もう一箇所、花冠の内側にこの手の砦が建設される予定だったが、計画だけで建設が始まる前に、オロモウツの要塞都市指定が解除されてしまったらしい。いやそれだけでなく花冠を構成する砦の一部も建設されなかったという。特に東南の部分が建設が間に合わなかったんだったかな。仮想敵国は北方のプロシアだったわけだから北側を先に整備するのは当然だったのだろう。
全部で20以上になる砦群の多くは、特に改修を受けることもなく放置されていて、何に利用されているのかもわからないのだが、オロモウツから北西にあるクシェロフにおかれた十七番砦は、改修を受けて博物館として一般公開されている。ラディーコフの砦と合わせて二つということになるのか。オロモウツ市内にあるのが改修公開されていないのは、他に文化財が多すぎてそこまで手が回らないということだろうか。こういうのが好きな人は、建物の中には入れなくても、外から建物を観察するだけでも喜んでくれそうだけど。ということでオロモウツ花冠ツアーというのを企画する旅行会社ないだろうか。
2019年3月17日23時55分。
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