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2020年02月23日

海上自衛隊の海賊対処派遣準備は大変だ!

『ソマリア沖海賊対処派遣部隊の準備は大変だ!』
(2018年投稿記事です。)
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平成21年から始まった、海賊対処において護衛艦や哨戒機がジプチに派遣されています。

海賊対処派遣開始当初は、準備がいろいろ大変でした。

海上保安庁と協同で行動する準備もいろいろな難題が続出!

ホントに海賊対処は大変だぜ!
(前回記事):『艦発隊の自隊警備訓練!空挺レンジャーってSUGEEEE!!!
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(1)LRADって武器じゃないんかい!


海賊対処派遣部隊が編成されることになり、護衛艦が派遣されることになりました。

併せて、海上保安庁ソマリア周辺海域派遣捜査隊が同乗することになりました。

このため、派遣に併せて護衛艦に装備の増強工事が行われることになりました。

増強工事の主要なものとして、
・小火器用銃架の増設
・通信能力の向上
・海保用の設備等の増設(通信機器等)

などが行われました。

1.1 LRADを装備せよ!

海幕から指示のあった装備工事の中に、LRADの設置という項目がありました。

図1 LRADの装備状況(左側に増設した銃架)
LRAD.jpg
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/formal/operation/img/pirates/suijyo07.jpg

※LRADについて
音波を投射することにより、人の行動能力・判断能力を奪うことや聴覚器官や脳にダメージを与えたり、物体を破壊することを目的とする兵器である。
ただし、出力を調整すると兵器としてだけでなく音響装置(スピーカー)としても利用可能な物もあり、どこまでが音響兵器に当たるか若干曖昧な場合がある。
(引用:wikiより)


音響兵器として海外で使用されているから、武器の扱いになるだろうと話していました。

造修補給所での所掌は、通信電子科になるとの話をしていました。

1.2 武器の扱いにせず、需品科の所掌?!

しかし、LRADが届いて工事をするときに、
『LRADは武器に該当しないので、需品科で工事をする』
という、寝耳に水の話となりました。

これは、護衛艦が装備する前に、水産庁の調査捕鯨船に装備された為でした。
図2 水産庁調査船
水産庁.jpg
引用URL:http://www.jfa.maff.go.jp/j/senpaku/ships/kaiyo_maru.files/kaiyo_030801.jpg

水産庁が調査捕鯨船を守るためLRADを設置するときに、警察庁に照会した結果、
 『LRADは武器に該当しない』
という結論になったためです。

防衛省もお役所ですから前例踏襲主義により、LRADは武器に該当しないということになりました。
(お役所仕事・・・)

そんなこんなで、摩訶不思議な装備品となっています。
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(2)海保:設備や通信費も全部海自で持ってくれ〜(泣)

海賊対処では、海上保安庁の職員が同行して海賊対処法に基づく司法活動を行います。

ソマリア周辺海域派遣捜査隊の8名が、実際の司法権行使を行います。

海賊対処では、海自は海賊対処行動部隊(DSPA)を編成しています。

護衛艦の部隊は、派遣海賊対処水上部隊(DSPE)となります。

この時海上保安官は、自衛隊と協同関係の行動になります。

※協同関係についての解説
・共同関係は、統一指揮下での行動になります。
・協同関係だと、別々の指揮権の元で協力して行動することになります。

(海上保安庁法第25条を遵守するため)

しかしまあ、出航までの準備でいろいろドタバタが・・・

2.1 留置施設ってどうやって作るの?

海賊対処派遣が決まったとき、海上保安庁との打ち合わせで留置施設を作ってほしいとの要望が出ました。

図3 巡視船にある留置施設
留置施設.JPG
引用URL:http://fieetno26.web.fc2.com/jcg1977.JPG

巡視船には常設されている被疑者を船内で留置する場合の施設ですが、海上自衛隊では作ったことのない施設でした。

結局海上保安庁の装備技術部から、留置施設の設計図を提供してもらいました。

改装工事は、海保巡視船の建造経験のある造船所が詳細設計と工事をすることになりました。
(結構改装費用が高くつく羽目に・・・)

2.2 通信機器を増設したけど・・・費用は海自持ち(涙)

改装工事は多岐にわたり艦橋の防弾装備追加や、海上保安庁用の衛星通信装備などを増設します。

図4 増設した装備や衛星通信アンテナ
衛星通信アンテナ.jpg
引用URL:http://www.mod.go.jp/js/Activity/Gallery/images/Anti-piracy/pb_29/201803/20180323_06.jpg

しかし、ここにきて海上保安庁から『泣きのお願い』が入ります。
『衛星通信機器整備費用や通信費も海自で持ってくれ〜(泣)』
まさかのお願いが出現します。

通信機器は、派遣終了後に別の艦に移設するので海自側が費用を負担しています。

しかし、通信費まで海自持ちなのは・・・
インド洋派遣の経験則から、1年間で約数億円の衛星通信費用が掛かるはずです。

さすがに、海幕と海保本庁で話し合いが持たれました。

海保側もホントに予算がない状況でしたので、結局海自が通信費も負担することに・・・

インド洋や海賊派遣での衛星通信の問題があり、防衛省独自の通信衛星保有になったきっかけでもありました。
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(3)海上保安庁との信頼関係構築となっている海賊対処

海賊対処では、最初の出航までいろんなドタバタがありました。

しかし、海上保安庁と信頼関係を構築する良い機会となっています。

図5 海自司令および海保隊長(27次隊)
協同関係.jpg
引用URL:http://www.mod.go.jp/js/Activity/Gallery/images/Anti-piracy/pb_27/201705/20170512_01.jpg

本当に、ひと昔前までは海保との協同行動なんて夢物語といわれていました。

海上保安庁とは、海上自衛隊の発足当時の経緯から遺恨が長くありました。
「海自(海保)とは、絶対協同行動なんてしない!」
そんなことが公然と語られる時代があったのも事実です。

しかし海賊対処という共通の任務を共に遂行する中で、信頼関係ができてきました。

これから海保との協同行動が、当たり前になった世代が組織の中核となってきます。

かつての恩讐を乗り越えて、海自と海保は任務にあたるでしょう!
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2020年02月22日

艦発隊の自隊警備訓練!空挺レンジャーってSUGEEEE!!!

『自隊警備訓練にて空挺レンジャーの恐ろしさを知った!』
(2018年投稿記事です。)
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海上自衛隊演習の時期になると、陸上部隊でも自隊警備訓練が行われます。

艦艇開発隊に勤務していた時には、船越地区の警備訓練に参加しました。

そこで味わったのは、迫りくる陸自空挺レンジャーの恐怖!!!

陸自第1空挺団の本気を見せつけられる恐怖の時間でした。
(危うく空挺団長を誤射するところだった・・・)
(前回記事):『揚陸艦導入!陸自の要求を満たせる「みうら型」輸送艦!
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(1)船越地区警備隊にて、自隊警備訓練実施!

艦艇開発隊のある船越地区は、自衛艦隊司令部などが存在する重要拠点です。

そのため自隊警備訓練の時には、各部隊から人員を招集して船越地区警備隊が編成されます。

ふだん船越地区営門の警衛をしている陸警隊は、重要拠点警備のため他の地区に向かう状態でした。
(現在では、解消していればいいなあ・・・)

船越地区の陸上部隊では、艦艇開発隊が曹士および幹部の数が多いため、抽出する人員が多くなります。

私も船越地区警備隊に派出されて、自隊警備訓練を行うことになりました。

1.1 特殊事態を想定した訓練なので若手中心で!

昔の海上自衛隊の自隊警備訓練の時は、ある程度予定調和のところがありました。

しかし9・11以降の自隊警備訓練は、非常に実践的になりました。
『今回の訓練は、ゲリ・コマ対処が中核となるので若手を中心に編成する』
図1 基地警備訓練中の陸警隊
基地警備.jpg
引用URL:https://i.ytimg.com/vi/kuV9xIbHxMI/maxresdefault.jpg
訓練の内容が大幅に変更され、ゲリ・コマ対処が中心となります。

そのため、体力のある若手を中心に部隊編成が行われる事になりました。

1.2 作戦会議!こりゃあえらいことになるぞ!

船越地区警備隊の編成が行われ、指揮官を務める船越基地業務分遣隊長の下で作戦会議が行われました。

ここで、船越地区を警備することの難しさを痛感します。

図2 海上自衛隊横須賀基地の風景
横須賀基地空撮.jpg
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/yokosuka/about/img/enkaku2.jpg

横須賀基地全体が広い上に、いくつもの区画に分かれています。

さらに海からの侵入をも考慮する必要があり、かなり難度の高い作戦になることが予想されました。

とどめに、ゲリ・コマ対処を演練するための仮想敵役部隊についての情報が!

1.3 仮想敵役は、陸自第1空挺団!

隊長から訓練命令指達の後に仮想敵役が、陸自第1空挺団であることが示されました。
ぎょえええ〜!なんじゃそりゃ!!
陸自との共同訓練ということもあり、陸自部隊の一部が仮想敵役であることは聞いていたのですが、まさか第1空挺団かい!

しかも空挺レンジャーのみで編成した、仮想敵役が来るとのこと!


陸自側も、めったにできない重要施設襲撃訓練ができると張り切っているとの話です。

これはえらいことになった・・・
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(2)自隊警備で戦闘続発!思わぬ事態も発生!

自隊警備訓練がスタートして、次々と訓練演目が発生します。


連続した基地侵入やら戦闘が続く中で、思わぬ失敗も発生!

2.1 夜間に基地侵入!どこから浸透された?!

警備訓練が始まり、最初の夜に戦闘が突然開始されます。

(味方OP:監視拠点)
『本部!本部!侵入者あり!攻撃を受けている!』


夜間に突然、味方OPから攻撃を受けているとの連絡があり、部隊を展開・何とか(想定)侵入者を捕縛しました。

図3 侵入者を捕縛する状況(イメージ)
侵入者捕縛.JPG
引用URL:http://www.city.misawa.lg.jp/images/content/27764/IMG_8949.JPG

捕縛を完了して本部に連行したところで、訓練の審判を行う統裁官付(陸自)から状況終了を告げられます。
(海部隊)
『どっから侵入されたんだ?外柵の部分は監視していたはずなのに?』

(陸審判)
『すべての訓練終了後に、侵入要領を展示するよ。』

とにかく態勢を立て直して、訓練が続行されます。

2.2 危うく空挺団長戦死?公用車による営門突破想定!

他の警備区でも、次々と訓練想定が起きているのが無線から流れて来ました。

別地区では公用車に偽装した仮想敵役に営門を突破され、大損害が出ているとの情報が流れます。

指揮官の公用車については、訓練項目でも車両検査を行ってから通過させることになっていました。

車両の動向を監視する味方OPに、指揮官車両についても乗っ取りによる突破があるため確認をするよう指示を出します。

その後、総監部地区から船越に戻る指揮官車の情報が伝えられます。
(味方OP)
『本部!帰投する指揮官車に異変あり!ゲリ・コマが乗っている!』

ついにきたか・・・!

(当直士官)
『隊長!射撃準備態勢をとります!突破される前に抑えます!』
(警備隊長)
『了解。所定の措置を行え!』

図4 警備訓練の状況
警備.jpg
引用URL:http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/4d/katudou/h29/18-2.jpg

警備隊が応戦の態勢を整えて、当該車両が営門に入ってくるのを待ちます。

車止めの位置まで進ませて、対応しようとしたときに!
(陸審判)
『状況中止!状況中止〜!!統裁部への誤射だ〜(怒)!!』

陸自の審判団(統裁官付)が、慌てて状況中止の号令をかけて来ました。

何事か?と訝しがる海自側に対して、陸自審判団から怒号が飛びます。

(陸審判)
『馬鹿野郎!空挺団長を誤射するところだったぞ!』


車両から降りて来たのはなんと第1空挺団長!
(訓練統裁官:識別マークも装着済)

(総員)
『やっべ!やらかした〜!!』


・・・その後、船越基地業務分遣隊長が平謝りの状態となりました。

第1空挺団長からは、『厳正な警備実施をしている事が分かったので、以後識別を確実にするように』とのお言葉がありました。

海上自衛隊に入隊して、やらかしたことがまた増えてしまいました・・・

2.3 空挺団激怒!怒りの猛攻撃!ペンギンも想定戦死!

空挺団長の1件は、敵味方識別不十分による課題事項との統裁部からの指導が入りました。

その後このことを知った空挺団の仮想的役部隊が激怒して、船越地区への猛攻撃が始まりました。

次々と、攻撃を受けて損害が増大します。

ペンギンも、不意を突かれてナイフによる想定戦死判定になりました。

図5 ナイフによる襲撃(イメージ)
襲撃.jpg
引用URL:https://i.ytimg.com/vi/FdCvrDjJoqo/maxresdefault.jpg

結果として、船越地区警備隊は大損害の判定となりました・・・
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(3)やっぱり空挺レンジャーってすげええ!

自隊警備訓練終了後、陸自側からの訓練講評ではいろんな指摘が出されました。
・『歩哨による周辺監視が不十分』
・『指揮官の、迅速な命令ができていない』
・『動哨の動きが、時間でパターン化されて察知しやすくなっている』
・『幹部の肩章により、夜間でも容易に察知されている』

など、多くの教訓が示されました。

3.1 外柵の乗り越え方の展示

また、外柵を乗り越えて容易に侵入する事例について、動作付きで展示されました。
図6 空挺レンジャー
空挺レンジャー.jpg

さすが空挺レンジャーだけあって、乗り越えできないと思っていた外柵をあっさり侵入されました。
『空挺レンジャーってやっぱりすげえ・・・』
感嘆の言葉しか出ない状況でした。

3.2 指揮官は最初に狙う目標

陸自空挺レンジャーからの指摘で、海自側の問題点が判明した部分もありました。
『幹部(士官)は指揮系統寸断の為に最初に狙う。海自側は認識が甘い』
まさに言葉が出ない正論でした。

海自の気質として、幹部も前に出てしまうところがあります。

基地警備訓練で海自幹部自衛官の損害が多発する要因である、と指摘されました。

やはり陸自の中で最強といわれる、第1空挺団の指摘は適格で実践的でした。

その後基地警備器材や服装などが見直されるきっかけにもなりました。

やはり、第1空挺団は最強だぜ!
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2020年02月21日

艦発隊には当直士官も入れない秘密の部屋がある!

『当直士官でも入室できない秘密の部屋がある!』
(2018年投稿記事です。)
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艦艇開発隊に配属されると、当直士官として勤務することがあります。

艦発隊司令の命を受けて、部隊業務の円滑な遂行に努めます。

そんな中には、艦発隊の当直士官でも入れない秘密の部屋の存在が!

いったいあの部屋には何があったんだ?!
(前回記事):『韓国も弾道ミサイルを破棄してみては?
\こちらもご参考にPR!/
(1)陸上部隊の当直士官でも結構忙しい!

艦艇に比べて、陸上部隊の当直士官なんて暇なんだろうと思う方もいるかもしれません。

しかし艦艇開発隊の当直士官だと、結構忙しいところがあります。

通常の陸上部隊だと課業時間外の指揮監督責任者なのですが、艦艇開発隊では船と同じ勤務体制になってました。

艦艇職域の幹部が多いため、艦艇と同じ当直体制です。

そのため結構忙しい状態になります。

1.1 応接・礼式・取次と結構忙しいよ!

意外と忙しいのが、来客者の応接や指揮官(隊司令等)への礼式です。
・『この方は、指揮通信開発隊への来客者』
・『こちらは、開発隊群司令への来訪者』
・『この方が、艦艇開発隊への訪問者』
など、いろいろな方が来訪されます。

当直士官として、その方々(指揮官)への応接・礼式を行うなど忙しいところがあります。

図1 礼式の一幕
reisiki.jpg
引用URL:https://japansdf.com/wp-content/uploads/2017/09/170923bmm02.jpg


センスが要求されるため、失敗するとあいつは使えん!とチェックされたりします。

1.2 とっさの事態に対処するのが当直士官

当直士官はとっさの事態に対処する能力も要求されます。

私の時にも大慌ての事態がありました。

ある日、船越地区の営門警衛員から『群司令への来客者です。』との電話が来ました。

営門から来訪者を告げる電話連絡がある場合は、将補以上か内局指定職のキャリアの人です。
『はて?(開発隊)群司令の来客はこの時間になかったはずだけど・・・』

もしかすると、急遽近くに来たので来訪することになったかな?と思い、出迎えの準備をします。

現れた方は、内局のお偉い方のようでしたが、驚愕の話を聞かされます。
『技術研究本部副本部長の○●です。海上訓練指導隊群司令(FTC)への挨拶に参ったのですが・・・』
・・・どえええ!!ちょっと待って!群司令違いじゃ〜!

どうも、、昔の開発指導隊群(FTDC)の記憶のままに、開発隊群司令部がある船越地区に来てしまったようでした。

海上指導隊群司令部は新井地区で、湾内の反対側!副本部長を送った公用車は帰っている!

※ここでのポイント
船越地区の開発隊群庁舎ができるまでは、開発隊群司令部も新井地区にあったため、場所の思い違いがあったようです。

急遽艦発隊司令室で休憩してもらい、当該部隊に連絡・艦発隊司令の公用車で海上訓練指導隊群司令部にお送りするということがありました。

意外と、こういうことがあったりするんですよ・・・

こんなとっさの事態をどのようにうまく処理できるか、当直士官の腕の見せ所です。
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(2)当直士官も入れない秘密の部屋!

艦発隊の当直士官になる時、必ず言い渡されることがありました。

『この部屋だけは、当直時に緊急事態があっても絶対に入室するな』
『火災など緊急事態の場合、担当幹部を緊急招集して対処させること』


そのように言い渡される秘密の部屋がありました。
図3 秘密の部屋(イメージです)
秘密の部屋.jpg
引用URL:http://blog-imgs-82.fc2.com/w/o/n/wonasu/IMG_0192.jpg

何があるのかという説明は一切ありません。
『存在しないことになっているものがある』
という、謎めいた発言だけがヒントでした。

艦発隊発足前の前身部隊から勤務しているベテラン海曹でも、何があるか知らないという謎の部屋がありました。

2.1 特別警備隊(SBU)関係の保管庫というわけではない・・・

艦艇開発隊にある秘密の部屋となると、特別警備隊関係のものがあると思う方があるかもしれません。
図4 特別警備隊関係の資料
MSG90.jpggyouseibunnsyofile.jpg


実をいうとネットで噂されているような、艦艇開発隊が特別警備隊の装備を保管しているわけではありません。
(試験や報告の為持ち込んだことはあるけれども、装備の保管はしていない)

艦発隊で保管しているのは、報告書・試験計画書等の書類のみです。

2.2 機密レベルの物がある?

艦発隊に配属される人員は、秘密適格資格で高いレベルを要求されます。
(秘密適格資格審査中の隊員は、当直要員から除外されるほど)

そういうレベルの隊員でさえ入れない、秘密の部屋には何があったんだろう?
(・・・SOSUSも含めた管制システム関係っていう噂が・・・)
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(3)艦発隊の当直士官は大変だよ!

艦艇開発隊の当直士官を経験すると、結構大変です。

その後に転勤した、陸上部隊での当直士官勤務が楽に思えるほどでした。

しかし部隊業務の円滑な遂行という、大切なスキルをこれでもかと養うことができました。

艦発隊の当直士官の経験は、その後の勤務にも十分生かされました。

艦発隊勤務も、なかなか面白いですよ!
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特別機動船(SB)をめぐるエトセトラ(特別警備隊関係)

『特別機動船の導入と運用修理でドタバタ!』
(2018年投稿記事です。)
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艦艇開発隊においては、特別機動船(SB)の導入および運用試験などがありました。

最近では、総監部警備隊に配属されるようになった特別機動船です。

最初の導入時は、いろいろなトラブルや輸入ゆえの悩みに振り回されることになります。

そんな、特別機動船(SB)に関する苦労話をご紹介!
(前回記事):『艦発隊での最初の仕事は魚雷拾い?!
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(1)特別警備隊用に特別機動船を導入したけれども・・・

特別警備隊の編成に合わせて、行動手段としてRHIB(複合艇)の導入が行われました。

高速にて対象船への乗込む手段として、最適な高速RHIBの導入が決まりました。

元々海上自衛隊には、6.3m型複合作業艇などでゾディアック社の製品が導入されていました。

そのため、特別警備隊用としての特別機動船導入についても、ゾディアック社製品導入が進みました。

しかしながら初期に導入された頃は、とてつもなく悩まされる代物となります。
図1 初期に導入された特別機動船(同タイプの民生用)
syokitaipu.jpg
引用URL:https://boats-from-usa.com/sites/default/files/styles/large/public/boats/2017-10/13/149803/zodiac-hurricane-h733-1722389.jpg?itok=gVbN9bb5
1.1 故障しやすい!部品がない!修理ノウハウがない!

初期に導入されたタイプは、7.3m型のタイプになります。

11mRHIBを特別警備隊は使っている!といわれますが、11mRHIBの導入は最近のことです。

輸入代理店を通じて調達したのですが、これがまた故障しやすい!

特別警備隊の過酷な訓練のため、酷使されるのは当然のことです。

そのため、エンジン故障や船体損傷などが当然発生してきます。

修理の為に陸揚げしても、修理部品が不足しているうえに高額となります。

輸入代理店が故障部品の手配をするのですが、これがまた高い!

欧州製の器材は、総じて修理用部品が高い傾向になります。

また、FRP+硬質ゴム製の船体の修理ノウハウが、今までとは違う物が必要になってきました。

初期のころは、ゾディアック社から技術者の派遣を受けて修理せざるを得ませんでした。

そのため、ランニングコストが馬鹿にならない代物となりました。

1.2 第5種支援船とした弊害が出る!

また特別機動船(SB)を第5種支援船としたことが、後々の問題として出てきました。

艦艇の搭載艇となる複合作業艇は、艦艇の修理の中で修理が行えます。

しかし第5種支援船となった特別機動船は、修理などがややこしくなりました。

年次検査や定期検査といった、船舶としての修理を行う必要が出ました
しかも導入から何年かは、一般競争入札での修理を引き受ける会社が無い状態でした。

(輸入代理店は修理工場を持っていないため!)

そのため、造修補給省工作部での検査修理が続くことになります。

特別機動船の増加に伴う、修理工事や部品供給などが課題となってきました。

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(2)国産RHIB導入という変化へ・・・

輸入品のRHIBにて、導入後いろいろと問題点が発見され、不具合解消が急務となりました。

特別機動船について、各地方総監部警備隊(水中処分隊)に配備が拡大されることになります。

ここで、国内のメーカーから特別機動船(SB)製造に名乗りを上げた会社が出てきました。

その会社(N社)は海上保安庁へのRHIB製造・納入に実績がある会社で、海上自衛隊へも納入実績のある会社です。

内火艇をFRPで製造するときも、最初に挑戦してくれた会社です。

図2 海上保安庁のRHIB(搭載状態)
海上保安庁RHIB.jpg
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/Ddsj5ZqV4AE3HTG.jpg

2.1 性能は同等!導入価格は半額になったよ!

実際に特別機動船の競争入札となったとき、従来の半額で1.9t型特別機動船が落札されました。

これだけ価格が下がっても、大丈夫なのかという疑問が各所から寄せられました。

しかしN社はFRP製の複合艇事業で、国内で唯一自社建造が可能な会社です。

海上保安庁に納入していた、「複合艇(FRP+硬質ゴム)」のノウハウもありました。

その結果、特別機動船17号以降の船は、国産となりました。

図3 国産の特別機動船
SB17号型.jpg
2.2 整備等のランニングコストも下がったよ!

国産の特別機動船導入の結果は、すぐに結果として現れました。

高速航行などの安定性が、ゾディアック社製よりも優れていることが判明いたしました。

また、修理・部品交換などの期間が短縮できるなど、ランニングコストに優れた結果が出ました。

海賊対処派遣部隊での使用でも、故障が少ないタイプとなりました。
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(3)ゾディアック社も11mRHIBで巻き返し!

しかし最初に特別機動船を納入したゾディアック社も、手をこまねいているわけではありません。

本格的な11m級RHIBの導入(5.9t型)で巻き返しを図ってきました。

国内での修理サポート態勢を導入して、海上自衛隊や民間に納入を始めました。

図4 新型の特別機動船(5.9t型)(SB25号)
640px-JMSDF_SB-25_left_rear_view_at_Maizuru_Naval_Base_July_27,_2014.jpg
引用URL:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:JMSDF_SB-25_left_rear_view_at_Maizuru_Naval_Base_July_27,_2014.jpg

海賊対処派遣部隊では、各国海軍がゾディアック社製RHIBを使っていることもあり、共用性の観点から導入されることになりました。

ただ11mRHIBを搭載できる内火艇揚収容装置を持つ護衛艦DDは、あきづき型以降になっています。

図5 きり型での特別機動船収容状態
きり型特別機動船.jpg
引用URL:http://msdfmso.info/wp-content/uploads/2016/04/24hasui3kai2-480x318.jpg
そのため海賊対処派遣部隊で特別機動船を使用する場合は、従来の1.9t型(7.9m)との併用になるでしょう。

特別機動船の導入と、その後の運用でいろんなことが起きました。

今後も、変化が起きていくものと思われます。
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艦発隊での最初の仕事は魚雷拾い?!

『艦艇開発隊での最初の大仕事は、魚雷拾い!?』
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艦艇開発隊に配属され、いろいろな業務に慣れて来たペンギンです。

仕事に慣れ始めると、いよいよ装備実験部の仕事を少しづつ任されるようになります。

将来的に海上試験の担当を任される前に、他の海上試験にて試験のやり方を学びます。

そんなペンギンに命じられた、最初の大仕事は魚雷拾い!
(前回記事):『AK-47自動小銃を入手せよ!(特別警備隊装備研究)
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(1)魚雷発射試験に行くぞ!

艦艇開発隊装備実験部では、各科にて並行していくつかの試験が計画・実施されています。

それぞれの試験は、主担当者がおります。

試験主担当者が試験全般の、
・計画立案
・試験実施要領作成
・試験役務契約要求
・試験参加部隊調整
・試験実施統制
・試験結果解析
・試験報告書作成・報告

を実施します。

海上試験を実施するときには、護衛隊付のような仕事も行います。

海上試験は単艦で行える試験は少なく、たいてい複数艦が試験に参加します。

1.1 試験参加艦には必ず1名以上艦発隊装備実験部幹部が乗艦する。

海上試験実施時には試験参加艦艇に、必ず装備実験部の幹部1名以上を乗せて試験を行います。

理由として、艦艇の運航は試験実施要領によりある程度コントロールできます。

しかし技術的な問題などが発生した場合などに、判断を行うために装備実験部所属幹部が乗艦します。

最終的に、試験に関しての責任を艦発隊側が持つためです。

そのため、乗艦する艦発隊幹部には大きな責任を負います。

1.2 海上試験を行うので乗艦する人間を割り当てる。

艦艇開発隊装備実験部は、実は意外と在籍している人数が少ないという実情があります。

各科に幹部自衛官、海曹がいますが、そのほかに技官、研究職技官がいます。

中でも、海上自衛隊の部隊の中でも珍しいOR研究職技官もいます。

そのため、実際に艦艇乗艦経験のある幹部自衛官を、各艦に配置しようとすると人数が足りません。
『今回の海上試験ペンギン2尉は魚雷揚収の任務で多用途支援艦に乗ってくれ』
装備実験部全員が参加する、海上試験の実施研究で指名されます。

海上試験の場合、たいてい他の科の幹部自衛官も動員されます。

私の場合は、海上試験に慣れさせるために参加させてもらえたところがありました。

しかし魚雷か〜、ちゃんと勉強しましょうか!

今回の試験は、80式魚雷と89式魚雷を潜水艦から発射する試験です。

魚雷は、意外と細部が違うのでよ〜く理解しておく必要があります。

図1 80式魚雷
gyorai.jpg
引用URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/80式魚雷#/media/File:JMSDF_Type_80_torpedo_in_JMSDF_Kure_Museum_20140915.JPG

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(2)魚雷発射試験も大変だ〜!

魚雷発射海上試験の参加で、久しぶりに海に出ることになりました

護衛艦船務士として勤務して以来の、洋上生活です。

今回の試験は
・魚雷発射を行う潜水艦、
・魚雷の模擬標的となる護衛艦(試験統制艦兼任)
・魚雷揚収の多用途支援艦

の3艦で実施することになります。

試験統制艦の護衛艦には、試験主担当者と科長が乗艦します。

魚雷を発射する潜水艦には、試験記録担当幹部・魚雷発射作業担当幹部および魚雷員3名が乗艦します。

魚雷揚収の多用途支援艦には、試験担当幹部(ペンギン)と魚雷員1名、揚収作業支援EOD3名(水中処分隊から派遣)が乗艦します。

海上試験は、意外といろんなところの支援により大所帯になります。

2.1 多用途支援艦での魚雷揚収作業

魚雷発射試験での魚雷揚収作業は、開発隊群所属の試験艦「くりはま」が行うことが多くありました。

ただこの時は「くりはま」が年次検査に入ってしまっていたため、多用途支援艦で行うことになりました。

潜水艦隊の魚雷訓練発射における、魚雷揚収作業を多用途支援艦が行うためです。

多用途支援艦に搭載されている、デッキクレーンにて魚雷を揚収します。
図2 多用途支援艦デッキクレーン
多用途支援艦デッキクレーン.jpg
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/C54GNNhU8AErjmw.jpg
参考記事:多用途支援艦の魅力を知ってくれ〜!

2.2 絶対に見つけろよ!発見できなかったら大変なことになるぞ!!
海上試験に向かうときに、試験主担当者から、
「魚雷は絶対見つけろよ!発見できなかったら大変案ことになるぞ!!」
との脅し文句が入ります。

何しろ魚雷は高額であり、訓練魚雷でも●億円もする代物です。

予定の距離を航走した訓練魚雷は、水面浮上して信号を発信します。

しかし何もない洋上で、信号を頼りに探すのは非常に困難です。

さらに80式魚雷と89式魚雷は、水面浮上時の姿勢が違うため、捜索は総員で行う必要があります。

2.3 海上試験の期間は1週間・・・

今回の洋上試験の予定は、1週間の予定となりました。

海上発射試験の海域で、
・天候・波の穏やかな日
・近くに船がいない時間
を狙って行うため、2発の試験の為に1週間分の予定で実施される事に・・・

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(3)試験中断を進言します!装備幹部の自覚

洋上試験期間が始まり、試験発射のタイミングを見計らっていました。
図3 波の合間を見計らって!
KAZ_86nijimuumibe_TP_V.jpg
引用URL:https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/KAZ_86nijimuumibe_TP_V.jpg

何とか行けそうな気配となったので、魚雷揚収可能・試験実施可能との信号を送りました。

第1回の試験発射が実施され、予定通りの魚雷航走が出来ました。

訓練魚雷の信号を追跡して、浮上した訓練魚雷の回収作業を実施いたしました。

しかし、魚雷回収中に、どんどんと波の状況が悪くなる状態1発目の魚雷回収が終了しました。

洋上での回収作業を行ったEODを見て、私は決断しました。

3.1 艦長!試験中断を進言します!

EODの疲労具合を見て、艦長に試験中断の進言をしました。

海上試験の時最終判断は艦長が行うが、試験全般については試験担当幹部の判断が優先されるという約束事になっておりました。
『少しでも試験続行に不安を感じたときは、躊躇せず試験中断を進言せよ』
艦艇開発隊装備実験部で、繰り返し教えられていた言葉です。

艦長から『了解』の合図があった後、試験統制艦に試験中断要請の連絡を入れてその日の試験は中断となりました。

3.2 (艦長)よく判断した!

試験用魚雷1発目の揚収作業を完了させ、EODの健康チェックやその他試験記録が終わりその日の作業は終了しました。

夕食の時間になり、船の士官室に行く時はかなり重い気分でした。

何しろ、試験期間を1日延期させる判断をしたのです。

艦長からのお叱りを受ける覚悟で士官室に向かいます。

これが海上試験での試験担当者の一番重い任務で、『艦側のお叱りを全て受ける』ことです。

士官室では、艦長以下幹部が揃っていました。

そこで艦長から、
『よく判断した!俺の判断で試験中断をする予定だったが、よく進言してくれた!』
と、思ってもみなかった言葉を掛けられます。

多用途支援艦の艦長は、私ペンギンが幹部候補生だった時の幹部候補生学校教官でした。

判断ができるかどうか見守っていたところで、ちゃんと幹部として判断したことを喜んでくれていました。
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(4)装備幹部としての本格的な自覚と覚悟を持つ!

第1回発射試験での、こんな一幕があり翌日の試験に繋がりました。

艦側の乗員やEODの方にも話が広がっており、翌日の試験はスムーズに終了しました。

最初の大仕事となった魚雷揚収の仕事を通して、装備幹部としての責任と自覚に目覚めたペンギンであります。

これからも、いろんな試験を頑張るぞ!
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AK-47自動小銃を入手せよ!(特別警備隊装備研究)

『自動小銃AK-47入手のためにいろんな調査研究!』
(2018年投稿記事です。)
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艦艇開発隊在籍時代に印象に残る仕事は、AK-47自動小銃入手のために動いたことです。

特別警備隊の装備品開発研究のためには、本物のAK-47が必要でした。

しかしいろんなところで困難にぶつかることになりました。

そんな、苦労話についてご紹介!
(前回記事):『過去に撮影した自衛隊イベント写真を公開!
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(1)純正AK-47の入手が一番必要だ!

特別警備隊の装備品について研究開発を進めていくと、どうしても壁にぶち当たります。
『純正のAK-47での耐弾性試験の必要性がある』

特別警備隊任務の特性上、どうしても東側の兵器に対する耐弾性の試験が必要になってきます。

ある程度の耐弾性の試験については、自衛隊で使用している装備で実施できます。

しかし、本物で実験することでしか分からない部分も出てきます。

そのため、どうしてもAK-47の入手が必要になってきました。

1.1 なぜAK-47に拘るのか?

記事を見ている人の中には、なぜAK-47にこだわるのか?という疑問を持つ方もいると思います。

図1 AK-47自動小銃
AK-47.jpg
引用URL:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/97/Rifle_AK_MON.jpg

AK-47は、世界中に拡散された自動小銃として有名です。

そのため防弾装備の研究の場合、AK-47の弾丸に耐えることができるかというのが基準となってきています。

コピー品は世界中にあふれていますが、ロシア製の純正が一番威力が高いものになります。

そのため、どうしてもロシア製の純正AK-47の入手が必要になります。

併せて、7.62×39mm弾も入手する必要があります。
図2 7.62×39mm弾
7.62x39.jpg
引用URL:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b0/7.62x39_-_FMJ_-_4.jpg/800px-7.62x39_-_FMJ_-_4.jpg
1.2 コピー品ではだめなのか?

各国にあるコピー品などは、たくさんありますが出所不明の物が多くあります。

さらに、威力について純正と同等のものが出る可能性は、ほとんどありません。

また入手するときに粗悪品などを納入される恐れがあるため、コピー品ではだめでした。
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(2)AK-47を求めて四苦八苦!

日本国内で、AK-47の保有を公表している公的機関はありません。

そのため非常に苦労して、交渉・調整を行うことになりました。

2.1 警察・海保からは拒否される!

最初にAK-47についての情報を求めたのは、警察と海上保安庁でした。

押収した証拠品の中にAK-47があり、一部を研究用として保有しているという情報が入ってました。

その情報を元に協力を要請してみましたが結果としては、拒否ということになりました。

さすがに警察・海保は情報秘匿が厳重であり、存在するかどうか?という情報も含めて完全協力拒否という状態でした。

2.2 合法的に保有している某所に協力を依頼して試験実施!

結果的に、研究用として合法的に保有する某所の協力を得て試験を実施しました。

試験に必要な、弾薬費用も含めて結構な額の試験役務となりました。

この時の教訓から、
『防衛省独自でAK-47など東側兵器を、研究用に独自保有すべき』
との結論に達することになりました。

2.3 陸自等の所要も含めて、まとめて輸入することに!

結果として艦発隊を離任した後に、防衛省独自でAK-47やRPG-7等の武器を輸入が行われました。

独自で試験用の武器および弾薬を保有しておくことで、いろいろな手間が省けます。

どこかの学識者がAK-47は数万円で買える!なんて言ってましたが、実際に輸入すると大変な額になります。
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(3)武器の輸入は非常にお金がかかる!

武器等の輸入には、非常に多額のお金がかかります。

個人輸入などの一般物品などとは、比べ物にならないくらいの額が必要となります。

これは武器という特性上、輸送費用や保険料などが非常に高くなるためです。

輸入品の売買価格にかかる費用の図がありましたので、ご覧ください。
図3 輸入に関する諸費用
輸入.jpg
引用URL:http://livedoor.blogimg.jp/exportnegotiator/imgs/f/3/f3396e79.jpg

商品の価格のほかに、FOB(本船渡)、CIF(運賃保険料込み)などがかかってきます。

そのほか輸送量の人件費などで武器の場合は、多額のお金がかかります。

実際にAK-47等の輸入を経験した結果、ロシア軍に納入される価格よりもかなり跳ね上がります。

正確な金額は申し上げることができませんが、89式小銃を調達する価格よりも高くなりました。
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(4)手探り状態の中で続いたSBUの研究開発

SBUに関する研究開発は、海上自衛隊の中でも手探り状態で研究が進むことになりました。

何しろ、海上自衛隊では、あまり個人装備の研究は後回しになっていました。

さらに特殊戦という、未知の分野での研究となりました。

比較的に研究開発の道筋が付いたのは、米海軍からの非公式な協力です。

NAVSEA(米海軍海洋システムコマンド )からの、特殊戦資料によって研究開発が進みました。

今後とも、特別警備隊の装備研究開発は継続して行われることでしょう。
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艦発隊での特別警備隊(SBU)に関係する研究について

『艦発隊装備実験部で特別警備隊関係の研究開発!』
(2018年投稿記事です。)
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艦艇開発隊装備実験部に配属された、ペンギンです。

艦発隊装備実験部に関わると、特別警備隊(SBU)関係に関与することになります。

以前は記事にしにくかったのは、特別警備隊の装備品全般の開発を担当していたためです。

今回は、話せるレベルで書いてみようと思います。
(前回記事):『装備課程修了!艦艇開発隊勤務を命ずる!
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(1)艦艇開発隊と特別警備隊の関係性について

艦艇開発隊と特別警備隊、一見関係が無いように思える2つの部隊ですが実は関係しています。

特別警備隊装備品全般の研究開発や、性能調査試験を艦艇開発隊が実施しています。

艦艇開発隊は研究開発専任部隊として、航空機を除く艦艇全般にかかる研究開発を行います。
(海自航空機関係の研究開発は、第51航空隊で実施)

1.1 研究開発体制の集約から艦発隊で試験実施が決定

特別警備隊の創設当初は、特殊性を考慮して研究開発も特警隊で実施することも検討されました。

しかし研究開発体制の集約から、実用試験の実績のある艦発隊で実施されることになりました。

特警隊の創設当初は、部隊規模が小さく、研究開発まで手が回らないことも考慮されています。

1.2 艦発隊装備実験部全体にて特警隊装備研究を実施

特別警備隊の装備品は、多岐にわたる装備品を研究する必要がありました。

そのため艦艇関係全てを網羅できる艦発隊装備実験部で、実施することになった経緯があります。

また艦発隊は試験関係の予算配分や関係各社との連携体制の構築という点で、利点がありました。

1.3 艦艇開発隊というゲートにより情報秘匿を実施

当初から、特別警備隊への情報秘匿に留意する必要がありました。

特に装備品等では、直接特別警備隊に納入してしまうと、情報漏洩の問題が付きまといます。

そのため艦艇開発隊での試験で、物品補給のルート作りが行われています。

海上自衛隊の物品管理では、秘匿性の高い物品の納入・部隊への輸送に関して横須賀に独自のルートがあります。

このルートを通すことにより、物品納入先から特別警備隊の情報を隠すことができる利点があります。
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(2)自動小銃をどうするべきか?長く続いた議論

特別警備隊の自動小銃については、発足当初からの議論が続いていました。
図1 89式自動小銃
640px-89R(初期生産).jpg
引用URL:wiki

当初から89式のみでは任務遂行に支障があると判断されており、特警隊側からも自動小銃の要求が続いていました。

2.1 HK416は当初から検討はされていた。

ネット上の世界では、HK416がSBUに配備された!という話題が上っております。

真偽については論評を避けますが、当初からHK416が候補に挙がっていたのは事実です。

私がいた当時にも艦発隊装備実験部検討会議資料の中に、HK416がありました。

ただ検討されていた時に、米軍内でのゴタゴタ(HK416の導入中止)などがあり、すんなり導入できるか不明だった点があります。

自動小銃の導入について、当初はFMSでの購入が検討されていました。

その中で候補のHK416が米軍装備品リストから外されることがあり、バタバタしていました。
図2 HK416
640px-HK416.jpg
引用URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/H%26K_HK416#/media/File:HK416.jpg

2.2 7.62mmか?5.56mmか?

装備品検討の時に大きく問題になったのが、どちらの口径を使うか?という問題です。

目的任務を達成するために、必要な自動小銃の口径についての議論は紛糾しました。

これは、単に自動小銃を装備するだけでなく、その他の装備選定に影響を与えるためです。

・防弾衣はどこまでのレベルにするのか?
・隊員落水時の浮力確保への重量配分の検討が不十分
・SB(特別機動船)の馬力と隊員輸送への影響があるか?
・船内戦闘における威力、取り回しの問題をどうするのか?
・弾薬供給について、国産弾をそのまま使用できるか?輸入するのか?
・導入する狙撃銃との弾薬の共用性を持たせるべきか?

かなりの論議となりました。

2.3 装備品の秘匿という問題

論議の中で大きな条件とされていたことは、装備品情報の秘匿です。

当初からの方針として、特別警備隊の装備品情報については全て秘匿するという方針がありました。

その為、FMSでの導入についても秘匿性の問題があります。

米国側では、FMS契約情報は原則公開というルールがあります。


FMS契約では、装備品が入手しやすいものの、公開情報として判明しやすいという問題もあります。

そのため、導入方法についても慎重に検討されました。

陸自のS(特殊作戦群)は、FMSでの導入で行うとの方針が最初からありました。

海自の場合、FMSのデメリットを熟知していたため、FMS購入に慎重でした。
『存在しないことになっている装備品』
いろいろな検討を重ねた結果、装備品の情報については、『存在しないことになっている装備品』という方式で行くことになりました。

そのため今後もこれが配備されているのか?という情報照会には、『存在しない』という回答が出ることになるでしょう。
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(3)契約情報に関する話

艦艇開発隊において特別警備隊関係の調達・試験等を実施していますが、契約情報から漏れることはないのか?という疑問があるかもしれません。

実は契約情報と秘密保全の観点から、横須賀地方隊契約でカラクリが存在します。

3.1 契約と要求部隊のカラクリ

横須賀地方総監部は、契約のみを担当しています。

実際の契約要求や試験役務契約要求は、艦艇開発隊で実施しています。

艦艇開発隊は、横須賀地方隊の隷下部隊ではありません。

しかし横須賀地区での地方契約は、横須賀地方総監部経理部長のみが実施できます。

そのため契約情報で、横須賀地方総監部の契約で「警備器材等」といった不思議な契約品が登場します。

3.2 契約情報公開と秘密保全の兼ね合い

艦艇開発隊の試験役務などは、情報保全との兼ね合いが非常に難しいところでした。

契約情報については、原則全ての情報を公表となっています。

秘密保全が優先される契約であっても、契約件名などについては公表しなければなりません。

そのため横須賀地方総監部経理部契約課とは、かなり特別警備隊に関する契約で折衝を重ねました。

契約金額や個数などに関しては、非公表とすることは了解が取れました。

しかし契約件名・契約相手に関しては、かなり揉める事態となりました。

秘密保全優先か?契約規則優先か?という葛藤がありました。

最終的には、契約件名の工夫という形で決着しました。

契約件名は試験などの件名を記入するが、具体的情報は件名に入れないという方式になりました。

そのため契約情報から、試験内容・具体的な調達物品を推測できない形になりました。

契約情報で、ときたま『よくわからない件名』があるのはそのためです。

契約課職員や、原価計算課の職員でも、具体的な物品名は伏せられたままになってます。

そのため、いろいろと苦労をおかけした点があります。
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(4)話せるギリギリの所まで・・・

特別警備隊関係の情報に関しては、かなり話せる範囲が限られています。

そのため、どうしても歯に物が詰まったような言い方になります。

それでも、ちゃんとした一定の情報を話すことで、間違った情報が悪用されることのないようにしていきたいと思います。
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装備課程修了!艦艇開発隊勤務を命ずる!

『艦艇開発隊という謎だらけの実験部隊に配属!』
(2018年投稿記事です。)
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ついに幹部専門艦船装備課程を修了して、装備幹部の道を歩み始めたペンギンです。

装備幹部となって初めて配属される部隊は、艦艇開発隊!

ネット上に、内部のことが一切出てこない極秘部隊です。

このブログが初めて内部を明かすことになると思います。
(前回記事):『装備課程の企業見学や造補所実習・配属決定に向けて!
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(1)課程修了!配属が決定したよ!マークが付くよ!

幹部専門艦船装備課程の20週間に渡る教育がようやく修了いたしました。

最後の週に修了試験を迎えて、ようやく配属部隊と専門分野の決定が言い渡されます。

ついに艦艇幹部から、装備幹部に職種転換することになります。

この職種転換は、ただの職種転換というわけではありません。

1.1 海上自衛隊の職種(マーク)について

海上自衛隊には、いろんな職種(通称:マーク)があります。

艦艇幹部という職種の時は、実はまだマークがありません。

艦艇幹部の職種に進んだ者は幹部中級課程修了後に、専門の職種(マーク)が付与されます。

装備幹部の場合は、幹部専門課程を修了したときにマークが付きます。

このため、装備幹部になった時点でマーク持ちとなります。

1.2 配属と専門分野発表!

課程修了の少し前に、各員の配属部隊と専門分野が発表されます。

練習艦隊のような緊張感はなく、リラックスした形で全員分が技術科長から読み上げられます。

装備幹部となって全国に散らばりますが、同じ課程で学んだことで人脈の広がりができます。
『彼は確かここにいたよな・・・?』

などで、後々の業務に役立つため、あえて全員一緒に発表されます。

いよいよ技術科長から、私の分が読み上げられます。
『ペンギン2尉!艦艇開発隊!職種●●●!』
図1 艦艇開発隊
ssc.png
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/frdc/images/ssc.png

へ?艦艇開発隊?どこの部隊だっけ!あっ横須賀の部隊だった!

私ともう一人一期上の先輩が、艦艇開発隊に配属になりました。
『艦艇開発隊って、装備実験部に配属ですか?』
『(科長)そうだよ〜』

ちょっと想定外の部隊に配属になりました。

海幕補任班人事担当者からは、「横須賀造修補給所になると思う」といわれていたからです。

配置希望の中に、一応艦艇開発隊の希望を入れていました。

しかし、造補所配置が順当だろうと第一希望にしていませんでした。
『ひえええ!何やるんだろう〜?』

完全に造修補給所での仕事を行うつもりでしたので、全く予想外の配属です。

1.3 何をやるんですか?全くわからん!部隊で聞いてこい!

艦艇開発隊装備実験部に配属されるのですが、何をやるのかわかりません。

教官に聞いても、
『何をやるか全くわからん!2名配属要望があって、仕事内容まで通知がない』

という具合です。

担任教官が、艦艇開発隊に在籍経験があり聞いてみると、
『装備実験部は秘密が徹底されているため、赴任して初めて自分の担当業務が知らされる』

とのこと。

とにかく、修了前に艦艇開発隊に行って聞いて来るようにとの指示がありました。
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(2)艦艇開発隊の狂と猛

艦艇開発隊は平成14年(2002年)に新編された部隊です。

以前までの、プログラム業務隊(PGC)・装備実験隊(WEG)・運用開発隊などの部隊を再編して編成されました。

一部が、指揮通信開発隊に分離しています。

上級部隊に、開発隊群(FRDC)が存在します。

艦艇等の研究開発専任部隊として任務を遂行しています。

図2 開発隊群
開発隊群.jpg
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/frdc/images/gunchoshan.jpg

開発隊群のHPがあるものの、情報はほとんど表に出ない部隊です。

開発隊群の庁舎もセキュリティが非常に厳しく、所属隊員以外は受付までしか入れないほどです。

OBでプログラム業務隊や艦艇開発隊所属だった方が、何人かブログで書いている方がいます。

その方は、開発部の艦艇出身の方がほとんどです。

2.1 艦艇開発隊の組織編制

艦艇開発隊は、大きく分けて
・総務科
・企画科
・開発部
・装備実験部
の4つに分かれています。

プログラム業務隊と運用開発隊の業務が開発部に、装備実験隊の業務が装備実験部になったと考えていただけばわかりやすいと思います。


私ペンギンは、装備実験部に配属することになりました。

2.2 厳重な秘密保全が行われるので注意するように!

配属前に申し継ぎということで、艦艇開発隊に連絡を取って庁舎に入る手続きをしてもらいました。

庁舎に入って艦艇開発隊副長兼装備実験部長から配属にあたっての留意事項と、配属科の通知がありました。
『配属科について、基本的に部外者に口外しないこと』
『厳重な秘密保全が必要な部隊なので、特に留意すること』

との、指導と配属科の科長からの業務説明を受けることになりました。

このため、本ブログでも艦艇開発隊での所属科は伏せて書くことになります。
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(3)自己紹介で伏せていた艦艇開発隊について

艦艇開発隊は、制式化前の装備品等について実用試験を行ったり、艦艇システムのプログラムを開発など秘匿性の高い部隊でした。

そのため自己紹介の時に、「ある部隊」と書いておりました。

(参考記事):『なぜ私はサイトで匿名の元自衛官としているのか?再検討してみる!』

ネットで調べると、いろんなニュースが出てくるため艦艇開発隊について記述するかどうか迷っておりました。

3.1 なぜ書くことにしたのか?

なぜ今になって書くことにしたのか・という疑問が出てくるかと思います。

最初は、部隊名を伏せて書くことも考えましたが、情報としてどうしても不正確になりがちです。

さらに自分が艦艇開発隊にいたことを、嘘として書きたくなかったということもあります。
3.2 秘密保全がわかりやすくなったため

艦艇開発隊のことを書きやすくなったのは、秘密保全の区分がわかりやすくなったためです。

在籍当時は、とりあえず全部秘密!という空気が部隊内にありました。

秘密保全の境界線が、曖昧だったところがあります。

最近になって秘密保全がわかりやすくなったため、書いても大丈夫だろうと判断いたしました。

3.3 情報公開などで艦艇開発隊の情報が出始めたため

最近の情報公開で、行政文書などで艦艇開発隊の名前が出始めました。

内情などをきちんと公開することで、情報を好き勝手に変な方向に捻じ曲げられないようにしたいという思いがあります。

ただし本当に秘密としておくべき情報は、今後も書く事はありません。

世の中に知られていない、本当の艦艇開発隊に関する情報をお伝えできれば幸いと考えております。
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2020年02月20日

装備課程の企業見学や造補所実習・配属決定に向けて!

『まもなく艦艇装備幹部としての道を歩みだす!』

(2018年投稿記事です。)
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艦艇装備幹部となるためにいろいろな場所で学んできたペンギンも、そろそろ装備幹部となるための準備が始まります。

実際に装備品を製造する企業での研修や、造修補給所での実務実習が始まります。

そして装備幹部としてどの分野に進むのか、進路希望と面談が繰り返されます。
(前回記事):『北朝鮮監視のため国連軍の軍事作戦が進行中!
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(1)製造企業、造船所での企業研修!

装備幹部での教育は座学も重視されますが、企業での研修も重視されます。

『装備幹部は、実物を知らなければ何も始まらない!』
とにかく、艦艇関係の装備に関するあらゆる企業での研修が重視されます。

幹部専門艦艇装備課程のある2術校が、横須賀に設置されたのも各企業への研修に行きやすいという都合もあります。

造船所での、建造工程からの研修ではあらゆるところを見て回ります。

装備品製造企業では、組立途中の機器など普段見ることのできない部分まで細部にわたって勉強します。
図1 艦艇エンジンLM2500
LM2500.png
引用URL:http://www.fi-powerweb.com/NQT/Power/DIDUKNOW/GE-LM2500.png

1.1 安全への教育を実践で叩き込まれる!

企業研修のもう一つの目的として、安全への教育を実践で教え込むという目的があります。

装備幹部が実際の現場で実務を行うとき、安全に無関心・予兆を感じ取れないのは致命的といえます。

そんな人間を、現場に出すわけには行きません。
図2 造船所での安全確認風景
zousennsyo.jpg
引用URL:http://www.intio.or.jp/ihos0120/topics/img/28_1.jpg


企業研修の場は装備幹部として安全に活動できるか判定する場所でもあり、今後の配属を決定する重要なポイントです。

1.2 現場経験のない若手幹部に現場というものを体感させる。

企業研修を多く行うのは、現場経験のない若手幹部に経験を積ませる意味合いもあります。

公募技術幹部のように、社会経験・現場経験のある人間は現場を理解しています。

しかし大学からそのまま自衛隊に入隊した、若手幹部には経験がありません。

実務に付くまでに、少しでも経験を積んで現場の空気などを体感させる目的で行われます。
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(2)艦艇装備幹部といってもいろいろある職種

幹部専門艦艇装備課程に入校後から、数回の進路希望調査が行われます。

これは艦艇装備幹部という職種の中でも、さらに細かい専門職種に分かれるためです。

艦船装備幹部が付く専門職種は、以下のような分野があります。

・船体
・機関
・電気
・誘導武器
・水中武器
・通信電子


という、大まかに分けて6種類の専門分野に分かれてきます。

この中でもさらに細かい分野に分かれていき、多くの分野があります。


また、勤務する部隊によっても分野が分かれます。

・造修補給所という、艦艇の整備に関する部隊
・弾薬整備補給所という、弾薬・魚雷・ミサイル・機雷などを担当する部隊

といった、細かい専門分野に分かれていきます。

2.1 潜水艦・LCACは専門の科で対応する場合も!

艦艇の中でも潜水艦については、特に潜水艦科という専門部署が存在します。

横須賀と呉の潜水艦部隊が存在する造修補給所に、潜水艦科は存在します。

またLCACの整備については、呉造修補給所に専門の整備科が置かれています。
図3 LCAC
lcac.jpg
http://www.mod.go.jp/msdf/formal/gallery/ships/airc/lcac/img/lcac_06l.jpg

2.2 海幕補任班人事担当者の面接を経て専門職種を絞り込む!

幹部専門装備課程の教育期間も終盤に差し掛かると、海幕人事教育部補任課の人事担当者が来訪します。

最終的にどの専門分野でどの部隊に配属するか調整と、本人との面談が待っています。

海幕人事担当も、この時ばかりは慎重かつじっくりと面談を行います。
図4 面談
YUSEI_9V9A5412_TP_V.jpg
引用URL:https://www.pakutaso.com/20170459116post-11288.html

ここまで教育を行って、いざ部隊に赴任するとダメでした!は重大な結果になるためです。

特に装備を扱う装備幹部の場合、
・本人の希望
・本人が歩んできた経歴(大学時代の専攻分野を含めて)
・部隊からの補任要望

・秘密適正・潜水艦適正・航空適正など身体的適正
などなど、いろんな事項を考慮して検討されます。

特に装備品は秘密事項となる事が多いため、慎重に面談がされます。
また6つの専門分野の中には、高い基礎的知識を既に熟知していることが求められる場合もあります。

この面談で、自分の進む専門分野への候補が示されます。

あくまで、この専門分野への補任を検討している!という内示となります。

正式に決まるのは、卒業前の配属発表にて決まります。
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(3)横須賀造補所実習配属にて自分の専門分野がだいたい決まる。

艦船装備課程では、卒業の3週間前ほどに造補所実習があります。

横須賀造修補給所の各科に1週間ほど、現場実習として各科に配属され勤務しながら学びます。

図5 横須賀造修補給所
横須賀造修補給所.jpg
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/yrsf/image/yrsf.jpg
艦船装備課程の学生は、各科に配属され実務をこなしながら装備幹部の仕事を体験します。

どの科に配属されるかは、2術校技術教官室と横造補所の調整で決まります。

ここで「自分はこの専門分野に進むんだ・・・」と初めて知らされます。

かつての遠洋航海での職種決定と違う緊張感で配属されます。

横造補所での実習が終わると、ついに幹部専門装備課程の修了と部隊配属発表となります!
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2020年02月19日

装備課程で敵は財務省にあり!と感じた舞鶴実習!

『我々の最大の敵は財務省である!』

(2018年投稿記事です。)
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いきなりぶっ飛んだ発言で申し訳ありません。

舞鶴の第4術科学校にて経理補給の教育を受けると、敵が財務省に感じてしまいます。

艦艇装備幹部に必須の、経理補給の知識を学びに、舞鶴での実習です。

濃密な4週間の時間を過ごすことになりました。
(前回記事):『中国海軍052D型駆逐艦の厨房から見える技術思想!
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(1)海上自衛隊第4術科学校について!

海上自衛隊の術科学校は、4つの術科学校が存在します。

その中で、第4術科学校については、実は創設されたのが1975年と結構最近のことです。

図1 海上自衛隊第4術科学校
4mss.jpg
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/fourmss/7enkaku/4mss.jpg

それまでは、第1〜第3術科学校で分散して行われていた教育を集合する形で新編された比較的新しい学校です。
1・1 海上自衛隊第四術科学校の教育内容

海上自衛隊第4術科学校の任務は、
・経理
・補給
・給養(調理、栄養管理等)
・監理

など海軍では主計科と呼ばれた知識技能を習得させるための、教育訓練と研究を行っています。

旧海軍でいうと、海軍経理学校のような役割をもっています。

1・2 主計に関する海上保安庁との面白バトル!

海上自衛隊では海軍時代に使用していた、経理補給給養をまとめた主計という言葉を使用しなくなりました。

しかし、海上保安庁は現在でも主計という言葉を使用しています。

海上保安庁の主計コース教育が、舞鶴の海上保安学校で行っています。

図2 海上保安庁舞鶴『海上保安学校』主計コースの風景
syukei_1.jpg
引用URL:http://www.kaiho.mlit.go.jp/school/elements/main_edu/p_curriculum/syukei_1.jpg

そのため海上保安庁こそ海軍の正当な後継者じゃ〜!と言いながら、料理バトルが勃発することも?!

1.3 幹部学生で舞鶴に行くとちょっとラッキーなことも!

第4術科学校は、他の学校とは違い、幹部自衛官の数が少ない所があります。

そのため幹部学生は、他の課程の曹士学生の教育実習での助手として駆り出されることもあります。

舞鶴での幹部学生一番のメリットは、給養課程での来客役に駆り出されます。

調理実習の成果とテーブルマナー・配膳などの教育で、実際に調理した料理を喫食できるメリットがあります。

図3 テーブルマナー・配膳実習
manar01.jpg
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/fourmss/8index3/ninmu/kyuuyou/manar01.jpg

意外と役得なメリットになります。

通常は学生同士で行いますが、外部からの士官の来客という設定で幹部学生が動員されます。

私たちのように舞鶴に実習に来た別課程の幹部学生は、絶好の機会として使われます。

舞鶴に幹部学生としていくと、そんなメリットがありますよ。
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(2)経理・補給業務を習得するほどキツイ!

装備幹部が、経理補給をどうして習うのか?なんて思う方もいるかもしれません。

しかし装備幹部にとって、経理・補給は業務に密接に関係します。

装備の整備・修理・調達などを行うときは、必ず契約・経理・補給が関わります。

物品を請求すると補給、整備・修理の時は工事や売買の価格の計算などで契約・経理の知識が必要になってきます。
『なぜ、この装備がこの価格になるのか?』

このような説明をしっかりできないと、装備幹部とは言えません。

舞鶴での経理補給業務実習は、装備幹部としての必須事項なのです。

2.1 金が無ぇ!と叫びたくなる実情

近年、防衛費が5兆円台に到達しており、防衛省は金が余ってんだろう?なんて声も聞こえそうです。

しかし、現場での実態は金が無い!という状態がほとんどです。

図4 歳出化経費と後年度負担の関係
歳出化経費.png
引用URL:http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2010/2010/image/m2205040.png

実態として国債の存在があります。

※国庫債務負担行為(通称:国債)
通常、予算は「単年度主義」という原則があります。契約した年に、支払いを終了させます。
しかし、事業や物品の調達において年月を要する場合、契約の翌年以降に支払いを行える制度


国債があるため、実際に単年度で自由にできるお金があまりありません。


さらに継続費と呼ばれる、現時点では防衛省のみが使う制度も予算を圧迫します。

2.2 補給は闘いだ!

物品の補給業務は、簡単に見えて複雑怪奇な物です。

防衛省では物品補給に関する規則があり、簡単に動かせるものではありません。

図5 すべては補給で物が動く!
buppin.jpg
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/oominato/img_flash/03.jpg
・『この物品の移動は、〇〇の許可が必要』
・『これは、うちの権限で渡してよい』

とにかく補給は、闘いの日々といえます!

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(3)舞鶴でも装備に関する研修は続く・・・

舞鶴の第4術科学校には経理補給の実習で出張しましたが、装備関係の研修もあります。

舞鶴地区はちょうど横須賀と同じように、いろんな部隊等が近い場所にあります。

その中で舞鶴弾薬整備補給所の研修も、忙しい日程の合間を縫って行われました。

図6 舞鶴弾薬整備補給所
MAMF.jpg
引用URL:https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/spot/000/000/686/504/686504/686504.jpg?ct=7ed65c470de1


横須賀にも弾薬整備補給所はありますが、ちょっとここは特殊な場所なのです。
(SM-3ミサイル整備ラインやら機雷関連とか・・・)

詳細を書くことはできませんが、装備幹部として必ず研修を受けるべき場所となっています。
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(4)ようやく横須賀へ帰投できるぞ〜!

江田島・舞鶴と長期の実習を行ってきましたが、ようやく横須賀の2術校に帰れる日が来ました!

実習のため長期出張という、当時の専門幹部装備課程はかなり有益な時間でした。

最近では、課程期間が8週間に短縮されて、私たちのようなじっくり教育を受けることがなくなったそうですが、舞鶴の実習だけは続けてほしいものです。

まあ、江田島・舞鶴共に、外に遊びに行く時間がほとんどありませんでしたが・・・

ようやく、横須賀に戻れるぞ〜!
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