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2017年12月07日

探し屋トーコ レビュー感想 推理物ではなく「探偵物」の傑作(ネタバレ。犯人の言及もあり)












▼探し屋トーコクリアしました


もうずいぶん古いゲームだけど、例によって敬遠してました。


なぜならこれ、本当に長い。クリアまで10時間以上軽くかかったかな。


かかった期間もそれなりで、ちまちま進めてた


もともとT、U、Vとシリーズ化されていて、現在配信されているものはそれがセットになっている完全版らしい(途中までプレイしてた人は最初からやり直しなんだろうか?)






▼何せ、作中のネットネタが既に古い


使われているスラングが既に死語で

「ヒント:」
「〜〜なレベル」
「ktkr!」
「涙目」
「禿同」
「 も り あ が っ て ま い り  ま し た」


など、凄く時代を感じる


携帯電話が多機能すぎて最早電話ではなく携帯端末といったほうがいいなんて台詞もある。そしてこの数年後にその最たるものである、スマホが普及し、携帯電話はマイナーになる


レッテも当時売れてた空の軌跡のレンを、売春設定から黒いペットから何から何まで露骨にパクったパロディしたキャラクターだし、色々懐かしいね(しかしこいつもまるで探偵に向いてない見た目やな。1人だけ髪の毛もアニメカラーだし)


優しい世界_No-0015_mini.jpg

4.jpg







▼システムは昔ながらのコマンドADVだけど、クリックモードはありません。


これは作業になりがちでちょっと面倒だった。








▼だがやはり特筆すべきは、シナリオの面白さ



「小説の探偵」に憧れる少年坂崎が探偵を通して社会の壁にブチ当たるのがメインストーリーだが、この描き方がとても上手い。


探し屋というのは探偵のことなんだろう、あくまで調査が仕事というのに拘ってて、殺人事件なども起きない


基本的にご都合主義はなしで探偵のディティールに拘っている。同じタイプの作品では小説の「俺は絶対探偵に向いてない」シリーズ(これは本当に傑作だからおすすめ)があるが、あれに比べると社会派に寄っている









▼序盤こそいい話で終わるが、中盤からのストーリーはほとんど救いのない話ばかりで、それが最終章で「推理小説で探偵が我が物顔で解いた事件の後はどうなっている、被害者遺族の悲しみは」という疑問への伏線となっており、素晴らしくよく出来たストーリー(他にも、結果としては探偵が暴いた、警察の汚職事件なども伏線になっている)








▼ただこの坂崎が曲者で、プレイヤーに嫌われるタイプの主人公だと思った



特に最終話になって遂に殺人事件が発生。坂崎は調査に乗り出し、クビにされた事務所に依頼人として自分の調査のサポートを頼む




ここでやっと「現実の探偵は小説の探偵とは違うんだ!」と気づくんだけど、いやお前、もっと早く気づけよ





というか1話の時点でそのことをある程度悟っていたはずなので、2話でまたオツムがリセットされてて、かなり違和感があった。



そもそも、坂崎が現実の探偵は小説の探偵と違うと知るのは、1話で既に終わった話なんだよね。それを延々引っ張るので、作者はこの最終話のためだけに坂崎を阿呆の子にしたいんだなあーと見え透いてたので、萎えたかな



最後にしてやっと探偵に向いてないと気付く坂崎(おせーよ)。


俺は絶対探偵に向いてない

優しい世界_No-0000_mini.jpg









▼だがそんな坂崎が、そんな探偵がいないなら自分がなろうとするあたりは主人公らしくて格好よかった。このゲームは多数のキャラクターの視点で構成され、調査モードは桃子だけなんだけど、最終章にして坂崎での調査モードになるのも、なんか来るものがありましたね









▼黒幕が二ノ宮というのは、ちょっとベタ過ぎたかもしれない。このゲームのキャラクターは皆、家庭に不和を抱えているので、それが描かれない二ノ宮がもう明らかにクサイし

優しい世界_No-0011_mini.jpg






ただ動機に関しては意外でした。坂崎と同じく推理小説に没頭していたキャラなので、坂崎のように、探偵ではなく、犯罪者のほうに憧れていたという流れだと思ってた。ただのサイコパスかと思えば、根っこはこいつも被害者でした








▼エンディングも事件解決とはいかず、坂崎はクビにされたまま探偵事務所には戻れないし、桃子と、実父だった半田との仲も修復されず、誰かが救われるわけでもない結末なのがまたリアル。





二ノ宮も、唯一の心のよりどころだった父親に、まるで相手にされてないことを知ったばかりか、犯罪者は死刑にすべきとまで宣告される




桃子の家庭環境なんて、最後まで触れないまま終了




多少他人と歩み寄るようになっただけで、たった一人で孤独に生きてきた桃子が、仲間に囲まれてさぁ幸せ、なんてこともない(終盤で坂崎を相棒にしたがってたのは桃子の本心で、だからこそ坂崎のルール破りに激怒したんだろうけど、レッテがその代役になったんだろうか…)




坂崎とヒカルも恋人にはならない



レッテも親とは再会しない。(他のゲームの作風ならまず再会シナリオがあるだろう)




二ノ宮が逮捕されても主人公以外が誰も触れないところもリアル。




結局それが日常だからね(銀二くらいは何か台詞があってもよさそうなもんだが)



事件があった以上解決しても不幸になった人が当然いるわけで、ハッピーエンドとはいかないのがリアルだ






▼しかしこのゲーム、キャラデザに相当癖があるんですよ。なんかそのせいでプレイしてない人もかなり多いとか、絵が一番不評みたいで




まあ絵が上手い下手はさておき、折角探偵モノとしてのディティールに拘ってるのに、肝心のキャラデザが探偵モノではないのは確か





まず女主人公の桃子…



探偵は印象を残すことがタブーなのに、この超ロングヘアはないでしょ。



一度すれ違っただけの二ノ宮にさえ覚えられてるし、なんで切らないんだろ(笑)

優しい世界_No-0009_mini.jpg





クロス探偵物語の黒須剣も、「俺は探偵だから目立たない地味な格好をしている」と言ってたが、真っ赤な服に乳まで出して…




目立ちすぎぃいいいいいい!!


こんな奴が尾行してたら一瞬で気付くわ






他にもヒロインのはずのひかるが、どうにも猿っぽくって、可愛くない。



制服もなんかセパレートの水着にフリルがついてるみたいだし、線が歪んでる(笑)


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逆に一番可愛いのが、サブキャラのコノミ。こっちのほうがヒロインっぽいキャラデザ…



エロマンガでよく見る髪型ですね

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(なんであごひげ生えてんの?)





サブキャラは他にも登場するが絵のタッチがかなり違って、統一感がないのもおかしかった。



でも、そんな絵もすぐに慣れるんで、それだけでプレイしないのは、勿体ない名作







評価S+
90点




素晴らしい一作、今プレイしても余裕の面白さ



だがどうやらこの開発サークルは次回作を予告したまま、よくある失踪をしてしまったようで残念だ。






探し屋の出番なのかな





この記事へのコメント
>探し屋トーコについて調べてたらお見かけしたので失礼します。

コメントありがとうございます。昔のゲームでも書いた甲斐がありました。新しい記事なのでヒットしないと思ってたけど、検索したら先行サイトを差し置いて3番目に出てきました。

>この作品は本当に名作ですね。
>複数の視点で話を追っていると一つの事件に結びつくという構成で続きが気になってどんどんと読んでしまいました。

1つのシナリオを複数のキャラクターの視点で見るというシステムはシンプルながら非常に良かったです。
ザッピングのような高度さはないんですが、シナリオを読み解くというには一番ですし。
それまで完全にノベル担当だった主人公で操作できる最終章はゲーム的なインパクトがありました。

>事件という悲劇がなければ小説的な探偵は存在しない、探偵は事件を解決するけれどその後のことには関与できない等の探偵論や、
>事件というものは一体何をもってして解決したと言えるのかなどとあらゆる事を考えさせられる作品でした。
>本格ミステリー好きにも読んでみて欲しいですね。

事件は解決できても人の心は救えない…ってのが宿命的テーマで実に興味深かったです。
身近なタイトルでは名探偵コナンも昔はこのテーマを扱ってたんですが、
いつの間にか人がバッタバッタと死んでは誰も悲しまない、ヤバイ世界観になっていました(笑)
初期の、浅井成実や宮野明美を助けられず苦しんでいたコナンはどこへいってしまったのか…
推理小説を愛読しているんですが、本作は小説ジャンル的には、「ハードボイルド」「職業モノ」でしょうね。ミステリとは方向性が違うんですが、面白かったです。

>僕もこのゲームに初めて触れた時は絵も探偵パートのUIもあまり好きではなく、すぐにやめてしまったんですけど、
>しばらくして何となく進めてみたら面白くてどハマりして終わった時には「もう終わっちゃったのかぁ」という感情でいっぱいになったので、

ノーヒントなのも悪手だったと思います。私は序盤で偶然、探偵事務所に戻って何かすると進むことに
気付いたので割と簡単に進めましたが、結局総当たりになっちゃいますからねえ。

タイトルの「探し屋トーコ」はなかなかいいネーミングだと思いました。
特に探偵を推理する、事件を解決する、名探偵、という方向性の表現ではなく、
「探し屋」と表現したのが実にユニークです。
現実の探偵も主な業務は物や人探しですから、一番リアルな表現でした。
Posted by 管理人 at 2018年01月19日 17:41
探し屋トーコについて調べてたらお見かけしたので失礼します。

この作品は本当に名作ですね。
複数の視点で話を追っていると一つの事件に結びつくという構成で続きが気になってどんどんと読んでしまいました。

事件という悲劇がなければ小説的な探偵は存在しない、探偵は事件を解決するけれどその後のことには関与できない等の探偵論や、
事件というものは一体何をもってして解決したと言えるのかなどとあらゆる事を考えさせられる作品でした。
本格ミステリー好きにも読んでみて欲しいですね。

僕もこのゲームに初めて触れた時は絵も探偵パートのUIもあまり好きではなく、すぐにやめてしまったんですけど、
しばらくして何となく進めてみたら面白くてどハマりして終わった時には「もう終わっちゃったのかぁ」という感情でいっぱいになったので、
こういうゲーム好きそうな人は絶対いると思うんですが同じように敬遠されてしまうんですよね、タイトルもイマイチそそられない感じですし。
ゲームシステム的にスマホアプリでリメイクされてもいいのになと思います。

Posted by 通りすがり at 2018年01月19日 16:53
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