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2023年04月13日

血怨 -完全版- レビュー感想 何たって、私の娘なんだもの

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▼「血怨 -完全版-」を体験中、ずっと夢中だった。それも悪夢の中で。



だがその闇は最後の最後、究極の形で切り裂かれた。





結論ありきで言ってしまうと「血怨 -完全版-」をクリアし、私は巨大な感動に包まれ、そしてかつてない危機感をいだいた。
「死月妖花」を攻略した時と同様「血怨 -完全版-」がこれまでプレイした名作たちを、凌駕してしまったからだ。




フリーホラーアクションADVの理想はここにあった。




黎明期から時は流れ2023年という段になり、ストーリー、ホラー、演出、グラフィックなど、数々の要素が融合したこのゲームが生まれ、遂に1つのジャンルが完成されたと思っている。


ホラー演出は「哥欲祟-ウタホノタタリ-」が昇華され、ストーリーや世界観構築、設定、演出の巧みさは「死月妖花」にも通ずる素晴らしさだった(私はフリゲレビューで他のフリゲタイトルを出すことを好まないが、読者への伝わる力が強いのでここでは敢えて出す)





▼「血怨」は確かに最初から凄いゲームだった。

少なくとも「血怨」以降、「血怨」より怖くて悲しいホラーゲームは無かった。そのくらいの完成度だった。

だが伏線を回収しながらも新たなる真の恐怖を見せるだけでなく
随所にプレイヤーを楽しませるアイディアが盛り込まれた三章からは、
二章までとまるで別次元のゲーム体験が出来た。



ストーリーと融合したギミックによる恐怖感と、数々のトラップ…
1秒も油断できない豊富なホラー演出やスチル…
あれだけ憤ったはずの両親の惨殺事件が思わぬどんでん返しをされたり、エンディングまで息つく暇もなかった。


これまで信じていた父親の人物像が覆った衝撃は、それほどまでに大きい。
この父は「マッドファーザー」どころではなかった。

あれだけ両親を愛した亜子だが、私としては両親を殺された遺恨は吹っ飛んでしまった



作者が旧ツイッターにアップしていた14歳の母親が登場したシーンでは、開発中止を乗り越えて遂にここまできたと、プレイヤー側としても妙な達成感と感動があった。
教養のある両親が娘に「亜子」とは名付けないとは思っていたが、それすらも意味があった







▼親子愛・家族愛をテーマにした良作は多く存在するが、プレイヤーに与える痛烈なインパクトと悲壮感は桁違いだった。
”血怨”に込められた真の意味を理解した時の衝撃は、とてつもなく大きい。

この10年のフリーゲームでも、五指に入るストーリーだ。
これほどのストーリーまで作れるとは、作者のセンスには脱帽するしかない。

特に終盤からエンディングまでの流れは、大きな感動が心を包んだ






▼繰り返すが、二章までは本当に序章も序章、伏線を張るだけにすぎなかった。
確かに面白かったし私自身が「この数年で一番怖く、一番悲しかったホラゲ」と言ってきたが、
それすらも序章にすぎない真の恐怖が、三章以降に潜んでいた。

序盤から因縁のラスボスと思われたキャラクターが実は真なる魔の手ごまの1つでしかなかったことの衝撃や(伏線はあるが)、若き日の両親が登場し、現代編との因縁が重なる「幕間」(過去編)の面白さは途轍もない。
点と点が繋がるストーリーを読み解くのは、余りにも脳が気持ちよかった








▼グラフィックもただ恐怖を煽るだけに留まらず、拘りが尽くされている。
オブジェクトのどこを調べても反応があり、ゲーム世界への没入感は圧倒的だ。

同じものを調べても進捗により細かく変化するし、攻略に関係ない部分にも、ほぼすべてテキストがある……手抜きは一切見られない。

私はこのように細部に魂が宿るゲームを非常に好ましく思っている。




……

……





▼言葉をいくら尽したところで、語り切れぬ名作だ。





どれだけ作品を完成させようとも作者の想像力の中には懸念や改善点があるかもしれないが、
私の考えられる範疇では、ホラーアクションADVの完成系が理想化されてしまった。
あるいは、それ以上のものかもしれない。

ボリュームも並外れている。

今後はプレイヤーの中でも、ホラーゲーム史の中でも、非常に大きな価値と存在感を持つゲームとなるだろう(フリーという枠を外しても私の…そして多くの人々のベストに入るであろう名作だし、商業化もあるとみている。いくら名作とはいえ素材リンクばかりのクレジットは、やはりフリーゲーム)。




▼全てゲーム内情報だけで解けるとありながら知識を必要とする謎解きがあったり(作者としては「常識」なのかも)、やや不親切な仕様があるものの、余りの完成度に圧倒されたのかそれすらも作品性の一部と認めてしまった。



「血怨」には人を飲み込む、異次元のパワーがある。




……

………


以前紹介したようにスコアは項目ごとに採点し
ただ1作の例外を除き100点を最上点としているが、
評価点の上限を超える作品が、4年ぶりに出た。





「血怨 -完全版-」という名作が。










評価SS++
200点




「死月妖花」以来4年ぶり、実に2作目の100点オーバー作品です。
全ての完成度が桁違いに高く
抜きん出た名作を集めた中でも更に抜きん出た、恐るべき会心の名作…


4年経っても「死月妖花」を超えるノベルが出ないのと同じく(レビューには10年は無理だと書いた)、
「血怨 -完全版-」を超えるホラーアクションADVも、今は想像できません。
私も同人ゲーム制作者の端くれですが、何をすれば「血怨」を超えられるのか……想像もつかない。


これより面白いものは、もう無理かもしれない……



それこそが、「血怨」最大の恐怖かもしれません







▼レビュー感想は一先ず締め括りますが、
私はまだこのゲームの謎を完全に解き明かしていません。

エンディングを全て見ていないし、クリアデータの使い道も知らない。
……そして何より…クリアしても尚、多くの謎が残った。


感想というか…「血怨」の雑談や攻略日記、考察などは今後も書くかもしれませんね。
まだまだ、この世界観に浸っていたい。

…こんな気持ちにさせられたのも、本当に久々

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