当然イベントは撮影録画録音禁止なので記憶を頼りに私が見聞きした内容を記録しておく。記憶をもとに書き起こしているので間違いがあったらその時は勘弁して頂きたい。(敬称略)
3/21(土) 13:00〜13:45 Program3『山賊の娘ローニャ』と3D CG TVアニメーションシリーズの可能性
出演者はMCアニメ特撮研究家:氷川竜介、監督:宮崎吾朗、ポリゴン・ピクチュアズ取締役:守屋秀樹の3名。昨日3/20(金)に最終回26話を納品して一息ついているところと前置きがあり、『山賊の娘ローニャ』のオープニングと25話、26話の予告が上映され話が始まった。
1.ローニャのアニメ化企画について
・吾朗監督が3D CGアニメに取り組むことになったのは、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーから現在ベテランアニメーターの高齢化が進んでいるのに若手が育っていない現状を打破するために3D CGを学ぶよう進言されたため。
・宮崎駿監督がアニメ化を企画した『長くつ下のピッピ』の著者アストリッド・リンドグレーンの原作で、ピッピを検討して時に著作代理店が来社していたこともあり『山賊の娘ローニャ』はテレビアニメの企画が通し易かった。
・ピッピはアストリッドが若い頃、子供達に話聞かせたほら話だが、ローニャは70歳台の人生観を反映した話になっており、お父さん達への応援歌にもなっている。家族全員で楽しめる内容でNHKを説得し易い原作だ。制作まで時間が無く企画をねじ込むには最適だった。(笑)
・ポリゴン・ピクチュアズは2013年にローニャのパイロットフィルムを制作したが、当時『シドニアの騎士』(2014年4月放送)の制作中だった。受注したらスタッグ達が不幸になると考えていたが最終的にはスタジオジブリのノウハウを学ぶため受けることにした。
・CGアニメは設計が重要で、手書きとは異なり途中での変更は出来ない。監督には3Dの空間把握とスケジュール管理能力が必要だ。吾朗監督は前職が建築家なので3D CGに慣れていることが強みだ。
・宮崎駿監督は絵コンテを完璧に書き上げ、出来るだけ情報を織り込むようにしている。吾朗監督もそれを見習っている。
・NHKでローニャのメイキング特番が放送されたことにより吾朗監督は近所の小母さん方から毎日「遅れているの?大変ねえ」と声を掛けられるようになり「頑張ります」と答える羽目になったと裏話を披露した。(笑)
2.ローニャ制作について
・ローニャ本編では動物と水の表現が良かったがどの様な苦労があったのか、との問いに吾朗監督は、CGでどこまで表現出来るか分からなかったので最初は動きの指示はしなかったが、出来を見て色々と動きを増やしていった。守屋取締役からはアニメーターが水の表現力を向上させる為随時プラグインを変えていったと答えた。担当者は「一緒に仕事が出来て面白かった」と言っていたとのこと。
・第20話「野馬たちと」では馬が出ずっぱりだったが、との問いに守屋取締役はアニメーターの勉強の賜物と答えていた。第25話「ひとつの強い山賊団」の殴り合いのシーンでは怪我したモデルを2つ作りアセットも用意した。キャラクターが動き続ける大変な回だった。
・CGで食事のシーンを描くのは食べ物の変形をアニメーション化する必要があり難しい。今回はカット切り替えなどで食事の雰囲気を伝える演出を行ったが、結果を見て食事シーンを増やしていった。
・3D CGアニメは後半になるほどアニメーターも慣れてきてクオリティが上がる。手書きでは逆に息切れを起こし絵が劣化することがある。CGではキャラクターの絵を合わせる手間が掛からない利点もある。それでも手書きは止め絵でも生命力があり魅せることが出来る。3D CGは動かさないと死んでしまう人形劇みたいなものだ。だからCGアニメーターは動かし続けようとする。
・ローニャでは背景の自然描写を重視して手書きの2Dにした。背景の森を『メリダとおそろしの森』みたく3Dにするのは時間的にも予算的にも無理だった。
3.3D CGアニメの今後
・守屋取締役:表現力は2Dアニメの方が上なので、最終工程で3D に2Dの書き込みが出来るツールを開発中だ。
・吾朗監督:絵コンテでイメージした芝居を上回るものが出来上がることが楽しみだった。レンダリングした結果が印象と異なることがあるのでこの差を無くすことで作業効率が上がる筈だ。
・キャラクターデザインの近藤勝也氏はCGの経験がありモデリングを作り易いキャラクターを描いてくれた。逆に手書きアニメーターには似せ難いキャラの様だ。
・3D CGアニメの演出家は実写畑から連れてきた方が良いだろう。
・現在日本のCGアニメはセルルックな作品ばかりだ。3D CGルックにすると金が掛かるのでロボットといったメカの動きか、女の子のダンスシーンにしか使われていない。サンライズの某大監督がロボットは手書きが良いと言っていた。(笑)
・日本の3D CGの進化を見守って欲しい。鈴木敏夫プロデューサーに唆され宮崎駿監督が3D CGの勉強を始めるかもしれないので楽しみだ。
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