<個人的な評価:10点中7.5点>
下記、個人的な感想。
ネタバレあり
下記、個人的な感想。
ネタバレあり
19世紀イギリスが舞台。
ダークな時代で、民主は、血や残虐性を喜劇風にしたような娯楽に刺激を見出していて求めていた時代。
それにしてもロンドンは昔から残忍なサイコパス系サスペンスの宝庫だ。
今回は切り裂きジャックではなく切り裂きゴーレム!
真犯人はすぐにわかった。
でも、どんでん返しが売りの映画だろうけどこの手の作品は、真犯人はリジーってのが十八番でしょ。
最初からすぐにわかったよ。推理もクソもない。リジーが犯人だと全部しっくりくるし。
それに名簿にリジーの名前載ってたのも気づいたし。伏線はけっこう貼ってあったよ。
それに普通に容疑者4人の男の誰かが犯人だったら超つまらないし、典型的に少女漫画のようなドジな守られヒロインがハッピーエンド迎えるようなダサい作風でもないし。それに、リジーはドジではなく、男顔負けに優秀で、男に媚びを売るようなタイプでも恋愛脳でもないから。生い立ちは不幸だけど、それから這い上がってきた女性で、実力もあり性格もよく完璧だからこそ、この手の推理ものでは彼女こそが「真犯人」。
夫とメイドは不倫ではなく、むしろ、リジー自身から、夫に愛人をあたえてたし。
ああいう場合って不倫って言わないでしょ。自分が夜の営みをしたくないから、夫に妾を与える女性は、昔の時代はいた(今もいるかもしれないけ)。
イギリスは一夫一妻だけど、他の国では、第二夫人とか第三夫人とかいたし、あえて正妻の方から、側室を探してた一族もいたようだ。私の大叔母(母方の祖父の末の妹)は、大富豪の第二夫人だった。しかも、年老いた正妻の方から、わざわざ遠縁の娘である大叔母に、夫に第二夫人として嫁いでくれと頼まれたので結婚したのだ。もちろん、不倫ではないから何も悪いことはしてないし、誰も傷つけてないし、むしろ雇い主は正妻なので、後ろめたさもなく堂々としてた。
そういう事からみても、リジーは、男に依存するような女性ではなく、かといって、変に女性の権利アピールするような人でもなく、しかたがなく、男に頼っても、それでも依存せず、その時代で、なんとか、自分らしく生きようと頑張ってた女性だった。
表向きはね。内面は、サイコパスで、かなりの闇を抱えてた。
むしろ、外向きが、デキる女だから。仕事もできる有能で、家庭でも、責任感ある妻を演じてた。
そういう、いわば完璧にみえる人だからこそ、この手のストーリーでは真犯人。
この手の描き方の推理ものは真犯人はヒロインって流れが本当に多い。
そうじゃないとつまらないから。
私は、最初から彼女が真犯人と、その路線で観賞した。
いつ、あのボケ爺さん刑事が気付くのかなぁー、何をキッカケに気づくのかなぁってワクワクしながら観て、筆跡の「M」が出てきた時、これがキッカケだなとすぐにわかった。で、やっぱりそうだった。読める展開だ。
まあ、ジョン爺さんもっと早く気づけよって思ったけど。無駄にリジーに感情移入してるジョンを見て、だからこそ私の中のリジー真犯人説は濃厚になったけどね。
サイコパスはあんな感じで味方を得るんだよ。
推理ものばかり見てるとすぐにドンピシャで犯人わかる時があるが、別にそれで作品の面白味は減ってない。わかるからこそ犯人目線や別目線で観れる。まあ、犯人がわからない方が面白いのは確かだけど!
ヒロインのリジーはやっぱりサイコパス殺人鬼。
こういう系のストーリーを見て時代のせいにして、犯罪者が女だからって被害者扱いする現代クソフェミがいるけど、サイコ気質の人はいつの時代でもサイコだよ。
自分を虐げた人だけを殺害するならまだしもリジーの場合は、完全に、快楽殺人鬼だからね。しかも自分だけの脚本を作るが為に。
彼女が犯した実際の殺人も、全て彼女の喜劇の舞台なのだ。彼女が思い通りに演じられる最高の舞台。
サイコパスと環境。因果関係はあるが、別に環境が元凶ではない。元凶は、リジー自身だ。
そのサイコの芽が芽のままでいるか、悪環境によって成長して膨らみ、サイコの花が咲くかの違いなだけ。
制圧された時代と不幸な環境、女優になる夢、”私は自分の力で大物になる!“という出世意欲。
だからこそ、リジ₋の中に眠っていたサイコパスの芽は、花が咲いてしまった。
リジーは、なかなか良いキャラをしてた。
処女性と娼婦性の二面性を持ってる女は小悪魔系と言われフィクションでもリアルでもモテるけど、リジーの場合は、淑女性と残虐性の二面性を持ってたようだ!
良いキャラしてるけど一番怖いタイプ。
フィクションではこういう犯人は好きだけど。だって、ジャイアンが犯人より、しずかちゃんが犯人の方が絶対面白いじゃん。少なくとも私はそっちのが好き。
真相を知ったジョンは、あえて世間にリジーの真の顔を晒さず、リジーを「夫を毒殺した妻」として死刑にさせた。
これは、ジョンのリジーに対する「戒め」だろう!
「夫殺しなんて小物がすることだ。
私はもっともっと凄いんだぞ!!!」ってのがサイコパスリジーの本音だからね。
「みんな私を見て!もっと見て!」
・・・
「Sehen Sie mich! Sehen Sie mich! Das Monstrum in meinem Selbst ist So gross geworden!」
(「僕を見て! 僕を見て! 僕の中のモンスターはこんなに大きくなったよ」)
浦沢直樹さんの漫画「MONSTER」に出てくる “monster”の本音だ。
あの作品に出てくるのは双子だけど、2人とも辛い幼少期だったにも関わらず
1人は真っ当で、もう1人はサイコパス。
そう、さっきも言ったけど環境はサイコの芽を咲かせる肥料にはなるだけであり、環境がサイコを生むのではない。
最近の時代でも、親のせいだの環境のせいだのにする人がいるけど、それは確かに原動力にななるが、元凶は、本人なんだよ。本人自身だ。だって、極端に例えれば、貧しい環境が犯罪者を生み出すというなら、全ての貧しい人が犯罪者になるだろう。いっつも人のせい、環境のせいにする人は、それまでの人間だって事。
回りや環境のせいにするなら、あの時代の女性や、辛い経験をした老若男女、みんなサイコパスになって、私らの先祖もサイコパス殺人鬼で、私らは生まれなかったわ。
だから、サイコ気質を持って生まれた人なんか本当に稀だと思う。
そう言う意味でも、リジーは「特別」な人間だ。悪い意味で。
フィクションでは、こういうキャラ、ゾワゾワするので好きだけどね。
映画の演出、なんだかホラーっぽくて好き。
リジーは死んだけど、彼女の魂はまだあの劇場で生きてるのだ。
サイコパスが幽霊になったら、これ以上に恐ろしいものはないね。
あくまでもこの作品は、ミステリーであって、ホラーではないけど。
総合的に見てなかなか面白かったので、7.5点!
感情移入できるキャラなどはいなかったし、既に初めから犯人わかちゃったから臨場感も感じれなかったのが少し残念だけど。そう、かなり読める展開のストーリーだった。
でも面白かった。