<個人的な評価:10点中7.5点>
下記、個人的な感想。
ネタバレあり
下記、個人的な感想。
ネタバレあり
Stephen King の小説を、映画化した作品。
けっこう面白かった。
主人公の少年をみて、デスノートの夜神月を少し連想した。
金髪碧眼の白人の美少年、学校でも友達がいるし、モテるし、優秀な成績で、スポーツ万能、両親からも期待されていて、裕福な家庭。いっけん完璧にみえる主人公Todd Bowdenだが、実は内に、サディスティックな面を秘めていた。ただ、年齢的にも、中二病にもみえるが、頭がよすぎる彼は、もっとその斜め上をいった。
彼は歴史の授業で、真面目に、ホロコーストについて学び、そこから、興味をそそられて第二次世界大戦やナチスや強制収容所に関する本を読むようになった。
私も一時期、興味をもって、学校の図書館にあったヒトラーやナチス関連の本を、ほぼ全て読んだ過去がある。ヒトラーだけじゃなく、歴史上で、残酷とよばれる支配者たちについて興味をもった。人の残酷さはどこからくるのか。人はなぜ、ああも非道になれるのか。ヒトラーの原動力はどこからきたのか。ヒトラーについていく人達は、なぜついていったのか。彼はどのように民衆を誘導したのか。私も最初は、単なる純粋な興味ではあった。読んでて、当たり前のように気分を害する描写もいれば、なぜか、ストレスとかで疲れた時、破壊衝動にかられた時に、そういうのを読むと、なぜか自分の中の邪悪な部分が満たされるような気分になる場合もあった。思春期だった私にとっては、まさに禁書だったしれない。そして、あの頃の私の心には、闇があったのだろう。どんな人間も、心に闇は抱えていると思う。特に進学ストレス、受験ストレス、就職ストレスと重なっている時はね。裕福な家庭でも、友達がいても、恋人がいても、スクールカーストの上層部にいても、ストレスはある。嫉妬とまではいかないが、友人や恋人に対しても、気づかないうちに、競争心はあったので、先に大学が決まった恋人に対して複雑な気持ちを抱いてた事もあった。元々の落ちこぼれより、学校や家族や一族、世間から期待されている勝ち組側の方が、そういう闇を抱えていると思う。
現代、世間では、ポリコレだの、マイノリティーの権利だの、BLMだの、女は被害者だの、被害意識をもった連中が、色々と被害者ビジネス等をやってるが、はっきりいって、いっけん勝ち組やエリートと呼ばれる人達だって、内面に色々抱えているんだよ。世間では、あまりそういう人達が抱えるプレッシャーや心の闇には、フォーカスはされない。そもそも、そういう人達が、被害者ぶって表に出て文句をいう事はないし、競争社会の中でプレッシャーやストレスに慣れているので、自分の感情をコントロールする事にも慣れている。そして元々頭が良い人が多いから、なおさら、そういうのは得意。そして成功していく。でも完璧な人生なんかないんだよ。そういう人達の方が、一族や親や社会からのプレッシャーやストレスが半端ないから。私は、どっちかっていうと、そっち側の人間だろう。ただ、誰もが、心に折り合いをつけて、頑張ってやっていくしかないんだよ。完璧な人生なんかないし、世の中、平等じゃないのが当たり前だから、自分に与えられたものの中で、精一杯やっていくしかない。
だから、主人公のトッドの内面の闇、なんとなくわかるような気はしたんだが、やはり私はサイコパスではないので、彼の行動や理解できても、共感はできなかった。
彼は、頭がよすぎた上に、秘めたサイコパスだった。
そして、彼自身のサディスティックな衝動にかられて、彼は、深淵にまでたどり着いた。
ついに、みつけたのだ。強制収容所の司令官クルト・ドゥサンダーを!
"アーサー・デンカー"として、新しい人生を生きている老人。
トッドはその老人がある強制収容所の司令官クルト・ドゥサンダーであることに気がついたどころか、証拠まで、かき集めてた。
クラスではモテモテのトッドだが、友達や、頭が悪そうな女との遊びより、彼の興味はもっぱら、クルト・ドゥサンダー。どれだけ、彼がリアルの日常で満たされてなかったのかわかるし、彼自身のサディスティックな面がついに出てきた。
そして、なんとデンカーの家を訪れたトッドは、彼を脅迫し、昔話をさせた。
事実を公表しない代わりに、一見、トッドの言いなりになってしまったデンカー。
トッドの要求はエスカレートしていき、デンカーに、ナチス高官のコスプレまでさせた。
一見、穏やかな老人になったかのようなデンカーではあるが、思い出話で収容所時代を思い出し、昔のサディスティックな面も、また出始めてしまうのだ。ここらへんの、心理戦や、内面の変化などが面白く、上手く描写されていた。
しかし、ある日、デンカーの元に入り浸ったせいトッドは学校の成績が下がり、スクールカウンセラーのエドに呼ばれる。デンカーはトッドの祖父として、代わりに面接をする。トッドとデンカーの立場もちょっと逆転。そして二人は殺人まで共有する事になった。さすが、優秀なトッドは、成績がまたあがり、トッドとデンカーの奇妙な関係は続いた。トッドは学校を首席で卒業をする。(デスノートの夜神月のような奴だな。)サイコパスに、カリスマ性がある、モテモテで、優秀な人間が多いのに納得。見た目もいいだけに。
ある日、デンカーは病院に入院した。デンカーが死んだら困るトッド。
ただ、実際に、デンカーは、トッドを売るような事はしていなかった。病床で、トッドにそう伝えた。
なんだか、昔は悪魔だったデンカーだけど、トッドの事を、本当の孫のように思ってた部分もあったんじゃないのかな。トッドとの奇妙な関係の中で、お互いがお互いを脅迫して見張ったけど、デンカーは、別にトッドの人生を滅茶苦茶にはしてないし、全てはトッドの自業自得ともいえるし、トッドが首席で合格したのは、デンカーが、無理やり勉強させたってのもあるし。利用しあっている関係だが、デンカーは、トッドに対して、残酷といえるような事はしていない。
しかし、過去の闇は一生消えない。入院してた病院で、昔、収容所に居たユダヤ人がデンカーを見かけたのだ。この時の、ユダヤ人の恐怖が、リアルで、悲しくって、被害者の傷は未来永劫、決して消える事はないのだなと痛感。その腕に刻まれた番号のように一生消えない恐怖、痛み、苦しみ、悔しさ、悲しさ。
ああ、デンカー、否、ドゥサンダーは、やはり悪魔だったんだなと。しかるべき罰をうけるべき運命なのだなと。
その後、収容所所長ドゥサンダーである事がバレて、イスラエル諜報特務庁にも通報された。
だが、命の灯はもうほとんど残っていない。
トッドのもとにも警察が来たが、もちろん、トッドはシラを切る。
唯一、スクールカウンセラーのエドはトッドの嘘に気がつき直接家へ行き、トッドを追い詰めたが、人の弱みを利用するのが上手いトッドは、エドが離婚したことを逆手に取り、同性愛者だと言いふらすと脅した。
その時、病院ではデンカーの心臓が止まる。
この後、トッドは、そのまま、明るい未来を歩むのだろうか。
もしかして、政治家になったり、大統領になったりするかもしれないな...とも思った。
彼にはその器があるよ。自分の立場やカリスマを保持しつつ、人を操作するのが上手い。
しかも、首席で、見た目もいい、家柄も文句なし。これからエリート街道だろう。
だが、彼の内面の闇を知っている人は、彼自身と、既に死んだデンカーと、エドのみ。
こういうサイコパスな人が、企業のトップにいたり、政治にかかわったり、国のトップになったりってのは、けっこうある話だと思う。そして、表では、綺麗事ばっかりいっているからね。
善が勝つ!!とか、そんなファンタジーな事を私は信じない笑。
リアルでは、成功できる人ってのは、どれだけ上手く演技ができるかによる。内面を隠して、うまく演技したもんの勝ち。
ちなみに、原作小説では、トッドに明るい未来はない。
原作では、エドに逆上したトッドは、ついに内面のサディスティックな面が爆発して、街中で銃を乱射事件をおこして終わり。いっきに、どん底に落ちていったという結末だ。