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2021年09月04日

「権力に酔って、権力に負けた」悲しき菅首相の最後



 菅義偉(すがよしひで)とは何者だったのか? 望月衣塑子記者が語る

「権力に酔って、権力に負けた」悲しき首相の最後



 AERA.com 9/4(土) 8:00配信


      9-4-20.jpg

           東京新聞の望月衣塑子記者(写真 本人提供) 9-4-20


 将(まさ)に、逃げる様な退任劇だった。菅義偉首相の自民党総裁選不出馬が報じられた3日、13時からの囲み取材では「総裁選よりもコロナ対策に専念する」とだけ語り、記者の相次ぐ質問を振り切った。この1年の菅政権とは一体何だったのか。
 ホボ何も説明もせず、首相の座を放り出した菅氏とは、結局、どの様な人物だったのか。官房長官時代から〔天敵〕として菅氏を鋭く追求して来た東京新聞の望月衣塑子記者に聞いた。

                  *  *  *


 ・・・急転直下の辞任劇でした。内閣支持率が危険水域に入り〔菅下ろし〕の声も大きく為っては居ましたが、総裁選直前にこの様な形で辞任するとは想定外でした。どう受け止めましたか?  

 望月衣塑子記者(以降略) 世論の逆風が吹く中で総裁選モードに突入しましたが、途中迄は実に菅さんらしい遣り方だったと思って居ました。8月30日に下村博文政調会長に対して「(総裁選に)立候補するなら政調会長を辞任しろ」と迫り出馬を断念させました。
 更に岸田文雄前政調会長が出馬を正式表明し「党役員を刷新する」と明言した途端に力技で〔二階俊博幹事長を交代させる方針〕を打ち出し、総裁選の〔争点隠し〕を図りました。そして総裁選前に党役員人事を行って解散総選挙に打って出ると云う〔禁じ手〕の様な事迄模索して居た。  

 どんな状況でも人事権を行使して、形振り構わずに自分の権力を最大限に見せる様執着して居る姿は、如何にも菅さんらしいと感じて居ました。只、リークも含めて解散総選挙の腹案がマスコミに漏れ、自民党内部から想像以上の反発が上がった辺りから、今迄とは様相が違って来ました。
 直ぐに菅さんは「今は解散出来る状況では無い」と火消しに走り、小泉進次郎環境相と5日連続で会談して意見を仰ぐ等、迷走の度合いを深めて居る様に見えました。この状況下で、小泉さんしか進言して呉れる人が居ないのかと不思議に思いましたし、そうだとしたら相当な〔菅離れ〕が進んで居ると感じました。
 しかし表面上は強気の姿勢を貫いて居たので、総裁選から降りると云う選択をしたのは驚きました。余程、助け舟が無かったか、安倍晋三前首相や麻生太郎財務相等の〔菅下ろし〕の圧力が凄まじかったのだろうと察します。


 ・・・菅首相と云えば〔勝負師〕〔ケンカ師〕等とも呼ばれ、負け戦でも勝負に出る性格で在ると言われて居ます。過去の政局でも〔賭け〕に出た事も在りますし、東京五輪開催の判断に付いて「俺は勝負したんだ」と発言したとの報道も在りました。今回は何故勝負に出無かったと思いますか?  

 選挙を戦う自民党議員に取っては、此処迄世論の支持を失って居る菅さんは〔選挙の顔には為ら無い〕と云うのが一致した見解だったのではないかと思います。その一方で、殆ど脅しに近い形で下村さんの立候補を取り辞めさせた辺りから、菅さんの圧力の掛け方は常軌を逸して行きました。  
 これ迄霞ケ関の官僚達は、人事権を握られ言う事を聞かざるを得無かったのでしょうが、自民党議員に同じ事をしても理解は得られません。周囲に圧力を掛け過ぎた結「好い加減にしろ!」と与党内での反発が広がり、菅さんを引き摺り降ろそうとする圧力が想像以上に働きました。  

 辞任を受けて、涙して居た小泉さんも「解散をしたら自民党が終わる」と菅さんに迫って居た訳で、或る意味、慕って居る側近達からも権力維持に固執し解散の可能性を探る菅さんに「NO」が出されて居た訳です。  
 結果、自らの策に溺れた感が在りました。外堀を埋められて自分で遣れる事が殆ど無く為ってしまった。解散権が封じられてしまい、頼みの党役員人事も受け手が見付からずに相当難航して居た様です。人事権を行使しようとしても状況を変えられ無い、人を従わせられ無いと云う状況は菅さんに取って相当辛かったと思います。それコソが、菅さんの権力の源泉だった訳ですから。  

 更に、自身の選挙区で在る神奈川2区でも野党候補優勢と云う情報が永田町で出回って居る中で、このママ解散総選挙に突っ走り政権交代でも起こったら、政治家生命が絶たれ兼ね無いと云う恐怖も在ったかも知れません。
 そんな事に為る位なら、選挙の〔顔〕からは降りて総裁選を盛り上げれば、少なくとも与党には恨まれず野党にはダメージを与えられる。自民党を政権与党として存続させる為に〔身を引いた〕政治家として評価される可能性が在ると思ったのかも知れません。
 何れにせよ、人事権を行使しても状況を変えられ無いと悟った以上、もう自分を強くは見せられ無いと判断したのだと思います。


 ・・・結局、菅義偉と云う政治家はどの様な人だったと思いますか?

 菅さんは、権力を維持する為に人事を操り頂点迄上り詰めた人です。でも、その権力が無力化すると予想以上に弱かった。権力に酔って居た政治家が最後は権力に負けたと云う事だと思います。裏で参謀として権力を振るう事には長けて居ても、日本をどうしたいのかと云う国家観を語れず、コロナ禍で浮き彫りに為ったのは、ワクチン一本打法で市民の命を犠牲にし、五輪利権に血眼に為って居る菅さんの姿でした。  
 記者会見では、相変わらず噛み合わ無い質疑が続きました。ソコから市民の命と健康を預かって居ると云う覚悟は感じられませんでした。菅さんの語る言葉には、市民を思う魂が込められて居らず、これ程言葉に重みが無い政治家は居なかったと思います。
 
 今、国民の為に遣るべき事は、臨時国会を開いてコロナ対策の議論をする事です。それしか在りません。外交的には、総裁選の最中、アフガンでの救出作戦も体制を立て直さ無ければいけ無い。当初退避予定者は、JICAや大使館の関係者含めて総勢500人と言われて居ましたが、日本が救出出来たのは僅か1人です。
 総裁選に明け暮れて居る裏で、多くのアフガニスタン人の命が現在も尚危険に晒され続けて居るのです。国会でもこの問題は何よりも先ず議論され無ければ為ら無い筈ですが、菅さんは〔野党から追及されるのは選挙で不利に為る〕からと国会を開く気配さえ無い。

 アフガンに関しても興味を示さず、五輪開催の時と同じで将に人命軽視の政治が繰り広げられました。こうした姿を見せられ続けた結果、菅さんが遣って居る政治は単なる政権維持の手段で在って、市民の為の政治では無かったのだとハッキリ判ってしまった。
 裏方の官房長官時代には、判り辛かった菅さんの政治家としての本質的な姿勢が、首相として表に出て来てから、より鮮明にハッキリと浮かび上がってしまいました。 
 
 そして最後は、菅さんの周りからは人が次々と居なくなり、市民の心も離れて行った。結局は、市民の為に尽くす思いが無い人が政治家、増してや首相等遣ってはいけ無かったと云う事に尽きると思います。 これから次の総裁選に向けての新たなレースが展開されます。
 忘れては為ら無いのは、首相を目指す人は、権力のトップに立つ事を目的とせず、日本や世界に住む人々の命を預かる仕事をするのだ、と云う当たり前の覚悟を誰よりも深めるべきだと思います。



 構成 AERA dot.編集部・作田裕史



 〜管理人のひとこと〜

 れいわ小父さん・・・とマスコミから持ち上げられ、全く人気も無いのに兎に角首相だと取り上げられた人で、私は今でも満足に名前も読めない体たらく。すがよしひで・・・と辞める時に為ってヤッと覚えた。実に情けない話である。
 最悪な安倍晋三の後を受けて出て来た人なのだから・・・これ以上の〔悪〕は無いだろうと期待して居たのも在る。が、科学者の任命のゴタゴタで躓いてしまった。この人事は安倍氏の意を受けたものだろうが、こんな事で我を通しても無駄だと理解出来ない〔風を読め無い鈍感さ〕は酷かった。意味も無く多くの人達を敵に回してしまった。国民・市民・有権者達の・・・先ずは人の心を憶測する能力・優しさに欠け思いやりも見受けられない誠に残念な人だった、アーメン。
















【独自解説】菅首相が自民党総裁選に出馬せず 



 【独自解説】菅首相が自民党総裁選に出馬せず 

  突然の決断の理由は? 専門家が独自解説




 9-4-1.png9/3(金) 19:48配信 9-4-1



 菅首相が自民党総裁選に出馬せず



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                 菅義偉首相 3日 9-4-2

 (菅首相の会見)「新型コロナに専念したい。総裁選に出馬しない。総理に為って1年。コロナ対策中心に様々な国が抱える問題に全力で取り組んで来ました。そして今月から自民総裁選が始まる事に為って居る。私自身、出馬予定する中でコロナ対策と選挙活動。莫大なエネルギーが必要で在りました。矢張り両立出来ない。ドチラかに選択するべき。国民にお約束した新型コロナ感染拡大を防止する事に専念したい。国民と命と暮らしを守る内閣。来週にでも改めて記者会見したい」

 菅首相が今月末に行われる自民党の総裁選に出馬し無い意向を明らかにし、その理由に付いて「コロナ対応に専念したい」と語りました。一体何が在ったのでしょうか?
読売新聞特別編集委員の橋本五郎さんと政治アナリストの伊藤惇夫さんが独自解説します。


 突然の菅首相の不出馬表明に専門家は


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              政治アナリスト・伊藤惇夫さん 9-4-3


 「数日前から、自民党の中からも菅さんが総裁選出馬辞退するのでは無いのかと云う声が複数出て居た事は事実なんです。但し、もっとギリギリ迄粘るんじゃないか・・・詰まり人事を遣った上で、それの評価を見て腹を括るんじゃないかと云うのが大体の見方だったんで、一寸意外に早かったなって印象あります」


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             読売新聞特別編集委員・橋本五郎さん 9-4-4


 「ビックリしましたよ。一時期、非常に弱気に為って居た。処がその後の展開を見ると、形振り構わず再選戦略遣った、色んな形で。例えば総裁選を先送りする・解散する・自分が総裁に再選されて居ないのに人事を遣るとかね。今迄無い様な奇策を随分遣った。これはヤッパリ一種の執念だった」


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              総裁選不出馬までの動き 9-4-5


 (橋本五郎さん) 「絶対、再選され様と云う執念だけど万策尽きたって云うとこじゃないですか。無投票再選遣りたかったけどもそれが出来なかった。一番の背後には自民党内の空気、これだけ低い支持率と云う事を考えた時に、総裁選でコレは再選出来ないかも知れないって事が在ったから色々な奇策を弄した。しかし全部裏目に出てダメだった、と云う事で諦めたと云う事じゃないでしょうか」

 首相の決断の理由は?


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              菅内閣 支持率の推移 9-4-6


 Q.菅さんが、自分が勝て無いと思った原因・切っ掛けは何か?

 (橋本五郎さん) 「本当は、菅さん自身は結構遣る事は遣ったと思って居ると思いますよ。だけどそれはソンな評価されて居ない。それからもっと大きいのは自民党の中で『この人の下では選挙を戦えない』と云う空気が、日毎に強く為って行って、それはヒシヒシと感じたでしょう」

 Q.『菅さんの下では選挙を戦え無い』と云う空気は、何時頃から出来て来たのか?


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               人事刷新に党内反発 9-4-7


 (伊藤惇夫さん) 「可成り早い段階から。例えば世論調査はNNNでは(首相支持率)35%出て居ますけれど、他の調査なんかでは危険水域と言われる約30%切って居る様な調査が一杯出て来て居る。
 今、自民党の中では、所謂安倍チルドレンと云う当選3回以下の議員が4割以上居るのです。この人達は風で通った、或いは安倍さんの顔で通った人達が結構この中に沢山含まれて居る。こう云う人達の不安感は、可成り早い段階から在って、この内閣支持率を背景にして、彼等からは早い段階から、菅さんは選挙の顔に為ら無いと。
 例えば所謂〔2連ポスター〕と云うのが在るんですが、全国で張り始めて居ますけど、自分の顔とそれから党の有力者の顔を2枚合わせたポスターですが、全国で見て回っても菅さんとの〔2連ポスター〕は殆ど見掛け無いです。それだけ党内での人気が可成り低下して居た。

 もう1つ大きな要素は、派閥が明確な支持を打ち出さ無かった。菅さんからして観ると、前回並みに細田派・麻生派辺りが支持をして呉れるのではないかと思って居たでしょうが、実は派閥もそう云う裏の事情を抱えて居て、若手の人達が、例えば菅さん支持だよと上が言っても、若手の人が嫌だよって云う可能性が出て来る訳です。
 所謂派閥の荷崩れと言うのですが、こう為るとと派閥のトップ、幹部の皆さんはメンツ丸瞑れに為る訳です。 今回は派閥として、菅さん支持は、石原派からは一寸打ち出して居ていますけど、他の大派閥は一斉打ち出して無いですよね。ここも菅さんに取っては、アレ?と云う風に思った1つの点だと思います」



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               電撃不出馬の背景に・・・9-4-8


 (伊藤惇夫さん) 「総裁選前の解散話が流れて、翌日に為って慌てて菅さんが火消しに回った。後で色々漏れて来る話に依ると、菅総理自身もそれを選択肢の1つとして頭の中に入れて居たのはどうも間違い無いらしいと言われて居まして、それに対して自民党の中で猛烈な反発が起きたって云うのも1つ切っ掛けだった様な気がします。
 菅さんとして当初プランA、プランB位迄は考えて居たのでしょうが、その先のプランが無かったので、場当たり的にアノ奇襲奇策を打ち続けて、自爆したと云う感じはします」


 五輪と首相のジンクスとは?

 (伊藤惇夫さん) 「五輪のジンクスは、本当に生きて居るナッて改めて感じます。これで日本でオリンピック4回目ですけれども、総理も4回ともこの年に替わって居ます。1964年の東京オリンピックの時は池田勇人さんがお辞めに為った。72年には佐藤栄作さんが退陣して、98年長野は橋本龍太郎さんが退陣しました。で、今回ですから4分の4です」

 菅内閣が短命に終わった理由は?

 (橋本五郎さん) 「この内閣は何故短命に終わったかと云う理由を考えた時、最初のスタートは高い支持率だったんです。と云うのは携帯電話の料金の引き下げとか、非常に具体的なコレは国民目線の各論だったんです。
 処が大きなこのコロナ対策と云う或る種の非常事態で上手く対応出来無かった。何故対応出来無かったのか。これは次の政権にも関わる事ですが1つはヤッパリズッと菅個人商店だったんです、チームとして戦略的に遣ったって云うよりは。そうすると行き当たりバッタリに為っちゃう訳です」


 Q.コロナ対策の緊急事態宣言を延長する場合は、菅首相が宣言するのですか?

 (伊藤惇夫さん) 「当然そうです。総理を下りるのは、次に新しい総裁が決まって、その総裁が菅総理の下で臨時国会を召集して、ソコで首相指名をされる迄は菅さんが総理大臣ですから。(緊急事態宣言の期限の9月)12日は当然未だ菅政権で菅さんが総理大臣在任中ですから、当然そう為ります」

 野党の思いは?

 (伊藤惇夫さん) 「2001年の森政権から小泉政権の移行が在った。森さんは、当時の総理として可成り支持率を低下させて居た時期で、私は民主党の事務局長遣って居たので、何とか森政権の下で2001年夏の参議院選挙を戦って行きたいなとズッと思って居たのですが、自民党は4月に総裁選挙を半年間前倒しして小泉純一郎総理が誕生したのです。
そこで野党がもうボロボロに負けちゃったと云うケースが在りますから、今回も野党は出来れば菅政権の下で解散総選挙打ちたかったんじゃないかなと思います」


 総裁選での派閥の動きは?


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                 総裁選を巡る構図 9-4-9


 Q.今回の総裁選での派閥の動きは?

 (伊藤惇夫さん) 「河野さんは麻生派ですけれども、麻生さんが河野さんを喜んで総裁選に送り出すかと云うと、ナカナカ微妙な関係では或るのです。石破さんの場合は、自分の派閥だけで17人しか居ませんけれども、国民的人気の高さと云う意味で云うと、若手から推薦人を集める事は十分可能だと思いますから、私は出馬する可能性は在るとは思って居ます。
 結果的にどうもこのママの状況で行くと、岸田さんが埋没してしまうかなと云う印象が或るのです。ヤッパリ地味な方ですから。今迄は菅さん対岸田さんと云う一騎打ちの構図に為れば、岸田さんが有利だって言われたんですが、実は菅さん対岸田さんの一騎打ちと云うよりは、菅さん対管さん以外の戦いと云う意味で、菅さん以外なら岸田さんだな、ジャア岸田さんに票を入れようかなって云う流れが岸田さん有利と言われて居た。
 これから恐らく何人か立候補されますから、そうすると岸田さんと云うのは強烈な個性を持っている方では無いし、国民的人気もそう高く無いので、岸田さんとしては状況としては、菅総理が総裁選出馬辞退したと云うのは、アンマリ有難い状況では無いんだろうなと思います」


 (橋本五郎さん) 「大事な事は、派閥は塊ですから派閥が誰かを支持すると大きな力に為るかも知れ無いけども、こう云う状況の中で菅さんが辞めると為ると、次に手を挙げる人は、自分だったらこれ迄のコロナ対策が何処が好く無かったか、その為に自分は何をするかと云う事を明確にしないと、只人気が在るだけじゃダメです。政策論争が総裁選の意味なんです。これ遣って貰わなきゃ、困るんです」

 総裁選の候補者に問われる事は?


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                 総裁選 立候補者は? 9-4-10


 (伊藤惇夫さん) 「大事な事は、これ迄のコロナ対策の何処が好くて何処が悪かったのか。何が問題だったのか。何故国民との間で、コロナ対策に関して政府と国民との間で信頼関係が築け無かったのか。
 これ迄の問題点を先ず徹底的に洗い出す。その上でだからその反省に立ってこれを遣ると云う風な議論の積み上げの中で、例えば1つ焦点に為るのは、強制力を持った法改正をするかし無いか。明確に議論に為るテーマが幾つか在る訳ですから。
 もう1つ言うと、コロナの感染が拡大し始めてもう1年半以上経ちますけれども、その間、一体その新たな方策と云うのは何を打って来たのか、お願いだけで遣って来たんじゃないのかなって云う処が非常に気に為るんです。

 イギリスの〔鉄の女〕って言われたマーガレット・サッチャーが昔『政治では予測不能な事が起きる事を、予測し無ければいけ無い』と云う言い方をして居ましたが、何か先手先手を打って、このコロナ対策を遣って来たのか、反省点みたいなものを洗い直し、その上で何を変えて行くか。変え方には幾つかその候補者に依って違いが と思いますから、それを党員、党友あるいは国会議員の皆さんが選択するという形を取ることが一番分かりやすいと思います」


 (橋本五郎さん) 「(総裁選の候補者は)大きな国家観とその戦略性が必要ですよ。一番大切なのはやっぱり、確信をもって政治をやるってこと。私はこう思うと。なんかみんなオドオドしている感じでやっているんです。
 それはみんな分からないんですよ、この難しい状況の中で。しかし限られた中で、私は断固としてこれをやるんだという姿勢を示してくれれば、もう少し信頼される。それが足りないと思う」


  急転直下、どう動いて行くか・・・「ポスト菅」が誰に為るのか注目です。

 情報ライブミヤネ屋 9月3日放送





 〜管理人のひとこと〜

 安倍晋三が投げ出し、カスを掴んだ菅も最後には投げ出す事に・・・政治の劣化・政治家の劣化なのだろうか、辺りを見回しても一国の指導者・責任者としての見識や風格を備えた人間は誰一人として存在しない。何時の間にか我が国にはこの様な情け無い国へと落ちぶれてしまった。
 国民の怒りに耐え切れず安倍晋三は病気を理由に政治を投げ出したが、菅が居なく為ると安倍を援護する協力者が不在と為り、国民・国家権力(警察・検察・裁判所)から身柄を拘束されるのでは無かろうか。今まで国家権力を力で牛耳って来たが、今度は彼等の逆襲をモロに受けそうな気配がする。安倍晋三の悪行をジックリと捜査して来た各種機関は、国民の応援を得てヤッと彼への訴追を開始するだろう。撤退作戦は予想以上の犠牲を損なう覚悟が必要だ。自公・安倍以来の政治の後始末は自公か野党か・・・一体どの様な形で出来得るのだろうか・・・












 

2021年09月02日

大阪IR誘致 政府の「ソロバン勘定」は正しいか?



 大阪IR誘致 政府の「ソロバン勘定」は正しいか?


 9-2-5.png 9/2(木) 7:01配信 9-2-5



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  2018年4月 IR事業者等と話す大阪府の松井一郎知事(当時・右から2人目)等(写真 時事)9-2-6



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 柴田 直治(しばた・なおじ)近畿大学教授 ジャーナリスト・マニラ新聞編集顧問・元朝日新聞記者(論説副主幹・アジア総局長・マニラ支局長・大阪・東京社会部デスク等を歴任) 著書に「バンコク燃ゆ タックシンと『タイ式』民主主義」9-2-7


 横浜市長選で現職が落選した。菅政権のコロナ対応への不満が野党推薦候補を当選に押し上げた面は在るが、最大の争点は現職の進めたIR(カジノを含む統合型リゾート)誘致の是非で在り、横浜市民が明確にノーを突き付けた形だ。  
 内閣府副大臣(当時)だった秋元司衆院議員が収賄罪に問われたIR汚職事件やインバウンド客の激減等、カジノを取り巻く環境は厳しい。IRを進める菅義偉首相が推した小此木八郎・元国家公安委員長でさえ、誘致撤回を掲げざるを得無かった。

 処が、大阪では逆風も何のその、IR計画は着々と進められて居る。大阪府と大阪市、夫々の議会を牛耳る大阪維新の会が迷い無く推進して居るからだ。業者の公募を早々と実施し、これに唯一応じたアメリカのカジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの共同チームが7月20日、投資総額1兆円、2028年の開業を目指すと云う提案書を府と市に提出した。

 ■ 根強いIRへの反対論  

 政府は2022年4月迄に全国で整備計画を募り、3カ所を上限に立地を認める方針だ。和歌山、長崎両県が名乗りを上げ、東京都の参入も噂されて居るものの、準備万端の大阪は当選確実と観られて居る。
 IRへの反対論は根強く世論調査でも懸念する声が賛成を上回って居る。朝日新聞社がIR汚職発覚後の2020年1月に実施した全国世論調査では〔政府は整備の手続きを凍結する方が好いが64%〕に上り〔このママ進める方が好いの20%〕を圧倒した。他地域に比べ反対が少無いと観られる大阪でさえ〔推進派は30%〕に過ぎ無かった。  

 汚職は論外として、カジノに付いて世間が抱く最大の懸念は、ギャンブル依存症の拡大で在ろう。新聞各社の社説も先ず依存症を取り上げる。しかし、IR誘致を巡る最大の問題点はソコに在るとは思わ無い。日本では競馬・競輪・競艇と云った公営ギャンブルへのアクセスが極めて容易な上、全国津々浦々に事実上の賭場で在るパチンコ店が存在する。ソコに3か所のカジノが加わった処で依存症が劇的に増えるとは想像し難い。
 確かにカジノならではのカードゲームやルーレットにハマる人は居るだろう。しかしそれとてオンラインゲームが溢れる現状では抜け道は幾らでも在る。日本ではこれ迄公的なギャンブル依存症対策が殆ど無かった。それが必要ならIR設置の是非以前に、先ず公営ギャンブルやパチンコを対象に取り組みを始めるべきだろう。

 ■政府から納得の行く説明は無い  

 私はカジノやギャンブルを毛嫌いして居る訳では無い。ノメリ込む程では無いが、競馬・麻雀・パチンコと一通りは手を付けて来た。アメリカ・ラスベガスやマカオ・シンガポール・フィリピン・タイ・カンボジア国境、ベトナム等でもカジノに足を運び、少額にしろ賭けても来た。  
 そんな私が腑に落ち無いのは、政府や推進派が言う様にIR設置が果たして経済成長や地域の活性化に結び付くのか。ソロバン勘定は本当に合うのかと云う点だ。この点に付いて、政府から納得の行く説明や情報開示はこれ迄為されて居ない。

 カジノそのものはどの施設でも大きな違いは無い。スロットマシーンとルーレット台、バカラ等カードのテーブルが在る。何れも窓の無い広いフロアに台やマシーンが並ぶだけで場内の差別化は難しい。IRが街や地域を活性化させるかどうかは賭場以外の魅力や条件に左右される。
 過つてマフィアの縄張りとして名を馳せて居たラスベガスは、ネバダ州がゲーミング・コミッションやゲーミング・コントロール・ボードと云った公的機関を設立し、時間を掛けて反社会的勢力を排除したとされる。

 シルク・ドゥ・ソレイユを初めとする大規模且つ豪華なショーの数々がホテルで催され、暴力とイカサマが蔓延(はびこ)る賭事の街から総合エンターテインメントの首都へと脱皮した。セリーヌ・ディオンやレディー・ガガ、ブルーノ・マーズ等トップアーティストが連日公演し、ボクシングの世界タイトル戦が繰り広げられる。老若男女誰もがエンタメを楽しめるIR都市は世界でもラスベガスだけだ。
 
 売り上げでラスベガスを大きく上回る世界一の賭博の街、マカオのカジノは〔ジャンケット〕の存在抜きには語れ無い。ジャンケットとは、主に中国人の金持ちを連れて来て特別な待遇で遊ばせる接待役だ。客が賭場で使った金の一部をコミッションとして受け取る。客が負ければ一時貸し付け、資金回収等一筋縄では行か無い裏方業務を担う。  
 上客を呼び込み、資金を移動させる彼等のノウハウと人脈がマカオを支えて居る。マカオのカジノの収入の半分近くはVIPルームで多額の金を賭ける「ハイローラー」に依存し、その多くはジャンケットを介して居るとされる。

 ■日本がモデルにしたシンガポールのIR  

 マカオのカジノ周辺には多くの美女が集まる。国籍や人種も様々。カジノで勝った客を相手に営業を掛けるのだろう。彼女達が客を吸引する力にも為って居る。日本はマリーナベイ・サンズ等シンガポールのIRを事業モデルとし、安倍晋三首相や橋本徹大阪府知事(何れも当時)も視察した。この都市国家にはラスベガスやマカオの様にカジノが集積して居る訳では無い。
 だが、東京23区並みの広さの国土に、観光客向けのアトラクションを含めた都市機能が凝縮されて居る。10年前に開業した2つのIRはランドマークと為り、国家ぐるみで誘致するコンベンション等が集中的に催される利点は他都市に無いものだ。

 そこで私の疑問である・・・ラスベガスもシンガポールも、魅力的な出し物が多数用意され一般客をも引き込む吸引力が街全体に在る。一方、大阪では中心部から離れた埋め立て地にIRがポツンと立つ。開業は2025年の万博が終わった後だ。
 単発のショーは在っても集積の魅力は簡単には高まら無いだろう。更に依存症対策として日本人には数千円のカジノ入場料を課すと云う。何処迄リピーターを獲得出来るのか。それでは大口顧客を呼び込むマカオのジャンケットの様な存在を認めるのか。

 シンガポールは当初、ジャンケットの参入を認め無かったが、客への貸し倒れが半端で無い額に膨らんだ事も在り、貸し付けや回収のノウハウを持つ彼等を受け入れる事にした。カジノの稼ぎの多くは、一晩で最低でも100万円単位で賭けるハイローラーの金遣いに支えられて居る。
 数年前、日本の製紙会社創業家の御曹司社長がシンガポールやマカオのカジノに100億円以上を継ぎ込んで逮捕され有罪と為った。ハイローラーの典型で在る。そうした人々を呼び込むのがジャンケットの役割である。

 ■カジノ抜きにIRは成り立た無い  

 日本政府は誘致の前提として、反社会的勢力の排除とマネーロンダリングの阻止を掲げて居る。処がカジノにはソモソモ、持ち込んだ金をチップに替えれば出所は不明と為るマネロン機能が備わって居る。表に出無い資金の移動にも絡むジャンケットの様な存在を、日本の警察や治安当局が認めるとは思え無い。
 飛田新地の様な例外を大阪府警が認める決断をすれば話は別だが、営業目的の女性等が屯(たむろ)するマカオ的状況を日本の警察が許す事も無いだろう。

 エンタメや都市機能の集積無し、ジャンケット無しでどう遣って継続的に多くの客を呼び、収益を挙げるのか。そこが私には見え無い。 IRはカジノだけでは無い、MICE(大規模国際会議や見本市等を開く施設)で構成されると云う。それでも儲けの大処はカジノの収益で在る。それ無くしては他の施設も成り立た無い。
 それではカジノの客は何処から来るのか。政府は中国を初めとする外国人客に期待して居るのだろう。しかし、コロナ禍はインバウンドビジネスのリスクを浮き彫りにした。  

 世界トップ級のカジノ業者であるMGMが大阪に1兆円規模の投資をしようとして居るのだから目算は在ろうとの推測は成り立つ。それでも大阪では手を挙げた他の業者は全て手を引いた。横浜ではMGMと並ぶアメリカ大手のラスベガス・サンズの他、ウィン・リゾーツ(アメリカ)、ギャラクシー・エンターテインメント(香港)が市長選前に相次いで撤退して居た。儲から無いと思えば当然ながら業者は引く。

 2015年、中国政府が汚職撲滅キャンペーンを始めた途端、マカオやシンガポールのカジノの売り上げは一気に3割も減った。アジアのカジノビジネスの生殺与奪は中国共産党に握られて居る。反日運動が再燃すれば、中国人客は来無く為る。それでも遣って行けるのだろうか。  
 一方でカジノ客の多くは日本人が占めると云う予測が在る。大阪府の試算では7割、立候補を検討して居た北海道の試算は8割を日本人客と見込んで居た。だととすれば、国民がギャンブルに投じた金の上がり、詰まり日本人が博打で負けた金の多くを外国企業が持って行く事に為る。

 業者の利益と地域、延いては国や国民全体の利益は必ずしも一致する訳では無いのだ。 更に国全体の収支で忘れて為ら無いのは、カジノ誘致の為に新たな政府組織を立ち上げた事だ。内閣府の外局として設置した〔カジノ管理委員会〕である。
 免許の審査や付与・依存症対策にも当たるらしい。5人の委員にスタッフは約100人。今後増える事も在ると云う。予想通り、検察・警察・国税等の天下りを抱える組織だ。一度出来た官僚組織が無く為る事は先ず無い。パーキンソンの法則である。

 ■ディーラー3000人をどう集めるか

 カジノに関する知見が必要だとして、IR誘致を支援する監査法人からの出向者も管理委員会の事務局に入った。キチンとした規制が出来るのかも疑問だ。もう1つ気掛かりな点を挙げて置こう。世界的な規模のカジノを設営するなら約3,000人のディーラーが必要に為ると云う。人手不足の日本でどう遣って確保するのか。
 外国人客を相手にするなら中国語や英語の心得も必要と為る。外国人労働者を受け入れる在留資格〔特定技能〕の業種にカジノを新たに加えるのだろうか。

 カジノを設ければ、依存症や風紀の乱れ、反社会的勢力の関与の恐れと云ったリスクを抱える事に為る。それ等を明らかに上回るメリットが在るなら、プロジェクト推進に個人的には異議は無い。  
 しかし今判って居る事と言えば、外国企業が主体と為る連合体が建設・運営し、維持・管理する為に新たな天下り組織を作る事位だ。カジノが一体幾らの税収をもたらし、国として帳尻が合うのか。国民にメリットが在るのか。サッパリ判ら無い。

 大和総研や経団連はIR誘致に依って、兆円単位の経済波及効果を唄う予測を発表して居る。だが政府は経済効果や税収の見込みを示して居ない。様々な条件が決まら無いから予測は出来無いと云う。
為らば誘致は文字通りギャンブルではないか。そんな賭けをする余裕が今の日本に在るとは私にはとても思え無い。



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             柴田 直治 近畿大学教授 9-2-8

 自己紹介 国際学部が開学した2016年4月から大学勤務を始めました。教員経験・留学歴・博士号・TOEIC/TOEFLの受験歴等、無い無い尽くしの新人です。多少トウは経って居ますが。2015末迄の36年余り新聞社に勤めて居まトウは
 記者生活の前半は大阪や神戸で事件取材や調査報道に携わりました。後半はマニラとバンコクで特派員を務めた後、東京を拠点にアジア各地に出没しました。各国の大統領や首相、識者等にインタビューし、官僚・経済人からスポーツ選手、ヤクザ、路上生活者迄様々な人達と会って来ました。暇を持て余した事が1日も無い幸せな会社員人生でした。今もアジアの政治・社会情勢を中心に執筆して居ます。サッカーとポップ・ロックミュージックが好きです。




 〜管理人のひとこと〜

 学び舎に留まり幾多の書籍を読み漁り先人の教えを学ぶ・・・この様な方達の真逆の位置に居るのが〔現場主義〕をモットーとする柴田 直治・近畿大学教授の様な方なのだろう。今後は、実際に社会の中で揉まれ苦労され学んで来られた方々が教鞭に立つ・・・血の通った教育が新たな人種を育てて行くだろう。心強いばかりである。
 無論、政府が民間に金儲けの話を持ち掛けても悪くは無い。大いに民間にその様な旨い話を持ち掛け延いては社会に貢献出来る蓄財をし困った人達に援助する様な仕組みが出来るのも大いに有難い。大阪は、国際万博にIRと次々とテコ入れしないと経済的に立ち行か無い地域的ジレンマに陥って居る。是非、何でも構は無いので起死回生のチャンスを与えて欲しい。早く閉鎖的な〔大阪気質〕を捨て去り経済・文化の再生を願うばかりだ。

















 

2021年09月01日

アッと云う間に2億円が集まった 「戦艦大和」の〔超巨大旋盤〕と〔職人技〕



  アッと云う間に2億円が集まった

 「戦艦大和」の〔超巨大旋盤〕〔職人技〕



 9-1-1.png  9/1(水) 10:00配信 9-1-1


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 1941年9月 呉海軍工廠で建造中の大和 手前に写るのが46センチ主砲 ひとつの砲塔に3門 計9門の主砲を装備した(大和ミュージアム提供) 9-1-2


 全長263メートル・史上最大の戦艦大和 その象徴と言える口径46センチの主砲を製造した〔旋盤・せんばん〕と呼ばれる工作機械が役目を終え、兵庫県明石市のメーカーに置かれて居る。それを保存展示する為、広島県呉市の市立博物館〔大和ミュージアム〕が寄付を募った処、僅か1カ月で目標額の2倍の約2億円が集まった。

               *   *   *

 「全く予想し無かった展開ですね。北海道から沖縄県迄、本当に全国から寄付を頂きました」  

 大和ミュージアム学芸課の兼光賢課長は笑顔でこう語る。大和ミュージアムは2005年に開館。兼光さんは「開館準備中、旋盤が〔きしろ〕に在る事を知り寄贈を打診したんですが、当時は未だ現役でしたので断られました」と一度断念した事を語る。〔きしろ〕とは、兵庫県明石市に或る大型機械部品の加工会社だ。その後、旋盤は2013年に稼働を停止。昨年〔きしろ〕から博物館に寄贈の申し出が在り話が進んだと云う。 

 ちなみに〔旋盤〕と云うのは筒状の部品の外側を加工する機械で、筒の両端を保持して回転させ、それにバイトと呼ばれる刃物を横から押し当て削って行く。旋盤の重さは約219トン、丸棒を回転させる巨大な〔面盤〕は、マルでトンネルを掘削するシールドマシンの様だ。  
 戦後、破壊を免れたこの旋盤は1953年に神戸製鋼所に払い下げられ、96年に〔きしろ〕に買い取られたと云う経緯が或る。


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                  稼働中の旋盤 9-1-3


 ■21時間で1億円を突破■  

 博物館への寄贈を受けて、呉市議会では旋盤の海上輸送や展示場建設の費用として1億5,000万円を盛り込んだ予算が可決された。処が、新型コロナ感染症対策の費用が膨らみ旋盤の展示に必要な予算は枯渇。そこで博物館が試みたのが、クラウドファンディングを通じた資金集めだった。目標額は2カ月間で1億円に設定した。

 「8月3日午前9時にスタートして、翌日午前6時には1億円を突破しました。21時間。1日も掛かりませんでした」と、兼光さんは驚きの声を上げる。
 「今、新型コロナの影響で大和ミュージアムは休館中。昨年度は通常の1/4迄入館者が減りました。アフターコロナはこの旋盤を展示の目玉にしたい」と意気込む。流石に〔動態展示〕は無理な様だが、稼働停止迄丁寧なメンテナンスが施され、殆ど故障する事無く、船舶推進用の大型部品等を削り続けてきたと云う。

 ■主砲に生かされた日本刀作りの技術■  

 戦艦大和の主砲はどの様に作られたのだろうか。〔きしろ〕の中島千寿常務は主砲の製造方法に付いてこう語る。

 「長さ約21メートルの主砲の材料は鉄の塊です。鉄には様々な鋼種が在るんですが、ニッケルクロムモリブデン鋼とか、粘り強くて硬い鉄を〔鍛造・たんぞう〕して、先ず長い丸棒が作られました」  

 〔鍛造〕と云うのは材料の鉄を熱して繰り返し叩く事で組成の均一度や強度を高める加工法で、日本刀作り等で培われて来た技術だ。

 「その丸棒の外側を削るのに使ったのが今回の旋盤です。更に砲身ですから、中も繰り貫か無ければ為ら無い。特別なガンボーリングの機械で穴を開けます」
 
 それが〔砲身中ぐり盤〕と呼ばれる全長約65メートルの巨大な装置で、唐津鐵工所(現唐津プレシジョン)が製作した。

 「唐津さんと戦艦大和の話をして居たら『主砲を作ったガンボーリングの機械はうちで製造したんです』と仰って居ました。戦前からの技術が脈々と生き続けて居るんです」  

 砲身を削った際には〔焼入れ〕〔焼戻し〕と呼ばれる〔熱処理〕が行われる。

 「切削(せっさく)加工をすると、どうしても(熱が発生し)品物に歪が出るんです。その歪を取る為に、例えば、熱風炉みたいな所に入れて700度位迄加熱し、焼入れた後、放冷します」  

 砲身は僅かな歪みでも命中精度に大きく影響するからだ。


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                停止中の大型旋盤 9-1-4


 ■複雑な砲身の構造■  

 戦艦大和の主砲は、大量の火薬で巨大な砲弾を遥か遠方まで飛ばす。砲身は大きな爆発力に耐えられる強度が必要とされる一方、太く作れば重く為り砲塔や船の動きが鈍く為る。その為、砲身の構造には様々な工夫が施され、出来るだけ軽く丈夫に作られて居る。砲身は一見すると、1本のパイプの様に見えるが、実は紙コップを重ねた様な多層構造に為って居ると云う。

 「層を重ねる事で薄くても丈夫に為る訳です。例えば、3層構造で在れば、3本の鍛造材から寸法を変えて筒状に削り、それを組んで行く」

 それ等の筒は単に重ね合わせたものでは無く「間にピアノ線の様なものを幾重にも巻いて強度を高めて居る」それが〔ガンワイヤ〕と呼ばれるもので製造は東京製綱が担当した。ガンワイヤを巻いた砲身は〔焼き嵌(ば)め〕と云う方法で強固に組み上げられた。

 「外側の筒に熱を加えると、膨張して径が太く為る。そこにコイルを巻いた筒(砲身)を挿入し、冷やす事で圧着する」


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               作業中の大型旋盤 9-1-5


 ■戦艦大和から生まれ育った技術■  

 説明を聞いて居ると、大和の主砲は単に巨大なだけで無く、極めて精密な作りで当時の技術の結晶で在る事が伝わって来る。そんな感想を伝えると中島さんはこう話した。

 「昔はこの機械でこう云うものを作って居たと云うのは非常に魅力が在りますよね。色々勉強してみたく為る処が在ります」  

 戦艦大和の主砲の製造に携わった日本製鋼所・唐津プレシジョン・東京製綱は現在、夫々の業界のトップメーカーと為って居る。大型旋盤の除幕式は来年4月23日に行われる予定だ。



 AERA dot.編集部・米倉昭仁




 〜管理人のひとこと〜

 ものを作る・・・それも、今までに無い新しいものを作ろうと考えるのは、人間の果てしない欲望と探求心以外の何物でも無い。人類は何世代にも渉ってこの様な挑戦を続けた生き物だ。ミラミッドにしろ出雲大社にしろ果てし無い夢の実現に向かって、一歩一歩小さな技術を積み上げて成し遂げた訳だ。
 挑戦しては修正し何度も何度も積み重ねて得た結果が又新たな課題を生み、今度はそれに挑戦する・・・その繰り返しだった。中には人類に取っては不必要で不幸な結果しか生まない〔悪魔〕も存在しただろうが、その悪しきものは二度と作り出さない知恵も無論持って居たのも人類だった。
 戦争・武器・人を殺す・・・その悪魔の象徴足る兵器の〔大和・武蔵〕であるが、当時としては、民族の将来を賭けた一大プロジェクトで在った訳である。実に貴重な〔戦争遺跡・遺品〕だろうこの大型旋盤は、是非とも稼働可能な状態で保管・展示して頂きたい。恐らくそれは可能だと信じます。














 
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