2021年09月04日
「権力に酔って、権力に負けた」悲しき菅首相の最後
菅義偉(すがよしひで)とは何者だったのか? 望月衣塑子記者が語る
「権力に酔って、権力に負けた」悲しき首相の最後
AERA.com 9/4(土) 8:00配信
東京新聞の望月衣塑子記者(写真 本人提供) 9-4-20
将(まさ)に、逃げる様な退任劇だった。菅義偉首相の自民党総裁選不出馬が報じられた3日、13時からの囲み取材では「総裁選よりもコロナ対策に専念する」とだけ語り、記者の相次ぐ質問を振り切った。この1年の菅政権とは一体何だったのか。
ホボ何も説明もせず、首相の座を放り出した菅氏とは、結局、どの様な人物だったのか。官房長官時代から〔天敵〕として菅氏を鋭く追求して来た東京新聞の望月衣塑子記者に聞いた。
* * *
・・・急転直下の辞任劇でした。内閣支持率が危険水域に入り〔菅下ろし〕の声も大きく為っては居ましたが、総裁選直前にこの様な形で辞任するとは想定外でした。どう受け止めましたか?
望月衣塑子記者(以降略) 世論の逆風が吹く中で総裁選モードに突入しましたが、途中迄は実に菅さんらしい遣り方だったと思って居ました。8月30日に下村博文政調会長に対して「(総裁選に)立候補するなら政調会長を辞任しろ」と迫り出馬を断念させました。
更に岸田文雄前政調会長が出馬を正式表明し「党役員を刷新する」と明言した途端に力技で〔二階俊博幹事長を交代させる方針〕を打ち出し、総裁選の〔争点隠し〕を図りました。そして総裁選前に党役員人事を行って解散総選挙に打って出ると云う〔禁じ手〕の様な事迄模索して居た。
どんな状況でも人事権を行使して、形振り構わずに自分の権力を最大限に見せる様執着して居る姿は、如何にも菅さんらしいと感じて居ました。只、リークも含めて解散総選挙の腹案がマスコミに漏れ、自民党内部から想像以上の反発が上がった辺りから、今迄とは様相が違って来ました。
直ぐに菅さんは「今は解散出来る状況では無い」と火消しに走り、小泉進次郎環境相と5日連続で会談して意見を仰ぐ等、迷走の度合いを深めて居る様に見えました。この状況下で、小泉さんしか進言して呉れる人が居ないのかと不思議に思いましたし、そうだとしたら相当な〔菅離れ〕が進んで居ると感じました。
しかし表面上は強気の姿勢を貫いて居たので、総裁選から降りると云う選択をしたのは驚きました。余程、助け舟が無かったか、安倍晋三前首相や麻生太郎財務相等の〔菅下ろし〕の圧力が凄まじかったのだろうと察します。
・・・菅首相と云えば〔勝負師〕〔ケンカ師〕等とも呼ばれ、負け戦でも勝負に出る性格で在ると言われて居ます。過去の政局でも〔賭け〕に出た事も在りますし、東京五輪開催の判断に付いて「俺は勝負したんだ」と発言したとの報道も在りました。今回は何故勝負に出無かったと思いますか?
選挙を戦う自民党議員に取っては、此処迄世論の支持を失って居る菅さんは〔選挙の顔には為ら無い〕と云うのが一致した見解だったのではないかと思います。その一方で、殆ど脅しに近い形で下村さんの立候補を取り辞めさせた辺りから、菅さんの圧力の掛け方は常軌を逸して行きました。
これ迄霞ケ関の官僚達は、人事権を握られ言う事を聞かざるを得無かったのでしょうが、自民党議員に同じ事をしても理解は得られません。周囲に圧力を掛け過ぎた結「好い加減にしろ!」と与党内での反発が広がり、菅さんを引き摺り降ろそうとする圧力が想像以上に働きました。
辞任を受けて、涙して居た小泉さんも「解散をしたら自民党が終わる」と菅さんに迫って居た訳で、或る意味、慕って居る側近達からも権力維持に固執し解散の可能性を探る菅さんに「NO」が出されて居た訳です。
結果、自らの策に溺れた感が在りました。外堀を埋められて自分で遣れる事が殆ど無く為ってしまった。解散権が封じられてしまい、頼みの党役員人事も受け手が見付からずに相当難航して居た様です。人事権を行使しようとしても状況を変えられ無い、人を従わせられ無いと云う状況は菅さんに取って相当辛かったと思います。それコソが、菅さんの権力の源泉だった訳ですから。
更に、自身の選挙区で在る神奈川2区でも野党候補優勢と云う情報が永田町で出回って居る中で、このママ解散総選挙に突っ走り政権交代でも起こったら、政治家生命が絶たれ兼ね無いと云う恐怖も在ったかも知れません。
そんな事に為る位なら、選挙の〔顔〕からは降りて総裁選を盛り上げれば、少なくとも与党には恨まれず野党にはダメージを与えられる。自民党を政権与党として存続させる為に〔身を引いた〕政治家として評価される可能性が在ると思ったのかも知れません。
何れにせよ、人事権を行使しても状況を変えられ無いと悟った以上、もう自分を強くは見せられ無いと判断したのだと思います。
・・・結局、菅義偉と云う政治家はどの様な人だったと思いますか?
菅さんは、権力を維持する為に人事を操り頂点迄上り詰めた人です。でも、その権力が無力化すると予想以上に弱かった。権力に酔って居た政治家が最後は権力に負けたと云う事だと思います。裏で参謀として権力を振るう事には長けて居ても、日本をどうしたいのかと云う国家観を語れず、コロナ禍で浮き彫りに為ったのは、ワクチン一本打法で市民の命を犠牲にし、五輪利権に血眼に為って居る菅さんの姿でした。
記者会見では、相変わらず噛み合わ無い質疑が続きました。ソコから市民の命と健康を預かって居ると云う覚悟は感じられませんでした。菅さんの語る言葉には、市民を思う魂が込められて居らず、これ程言葉に重みが無い政治家は居なかったと思います。
今、国民の為に遣るべき事は、臨時国会を開いてコロナ対策の議論をする事です。それしか在りません。外交的には、総裁選の最中、アフガンでの救出作戦も体制を立て直さ無ければいけ無い。当初退避予定者は、JICAや大使館の関係者含めて総勢500人と言われて居ましたが、日本が救出出来たのは僅か1人です。
総裁選に明け暮れて居る裏で、多くのアフガニスタン人の命が現在も尚危険に晒され続けて居るのです。国会でもこの問題は何よりも先ず議論され無ければ為ら無い筈ですが、菅さんは〔野党から追及されるのは選挙で不利に為る〕からと国会を開く気配さえ無い。
アフガンに関しても興味を示さず、五輪開催の時と同じで将に人命軽視の政治が繰り広げられました。こうした姿を見せられ続けた結果、菅さんが遣って居る政治は単なる政権維持の手段で在って、市民の為の政治では無かったのだとハッキリ判ってしまった。
裏方の官房長官時代には、判り辛かった菅さんの政治家としての本質的な姿勢が、首相として表に出て来てから、より鮮明にハッキリと浮かび上がってしまいました。
そして最後は、菅さんの周りからは人が次々と居なくなり、市民の心も離れて行った。結局は、市民の為に尽くす思いが無い人が政治家、増してや首相等遣ってはいけ無かったと云う事に尽きると思います。 これから次の総裁選に向けての新たなレースが展開されます。
忘れては為ら無いのは、首相を目指す人は、権力のトップに立つ事を目的とせず、日本や世界に住む人々の命を預かる仕事をするのだ、と云う当たり前の覚悟を誰よりも深めるべきだと思います。
構成 AERA dot.編集部・作田裕史
〜管理人のひとこと〜
れいわ小父さん・・・とマスコミから持ち上げられ、全く人気も無いのに兎に角首相だと取り上げられた人で、私は今でも満足に名前も読めない体たらく。すがよしひで・・・と辞める時に為ってヤッと覚えた。実に情けない話である。
最悪な安倍晋三の後を受けて出て来た人なのだから・・・これ以上の〔悪〕は無いだろうと期待して居たのも在る。が、科学者の任命のゴタゴタで躓いてしまった。この人事は安倍氏の意を受けたものだろうが、こんな事で我を通しても無駄だと理解出来ない〔風を読め無い鈍感さ〕は酷かった。意味も無く多くの人達を敵に回してしまった。国民・市民・有権者達の・・・先ずは人の心を憶測する能力・優しさに欠け思いやりも見受けられない誠に残念な人だった、アーメン。
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