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2021年09月09日
カブール救出作戦 アフガン人協力者等を置き去りに
カブール救出作戦 日本は何故韓国にも〔大負け〕したのか
アフガン人協力者等を置き去りに
9/9(木) 5:58配信 9-9-1
アフガニスタン人600人超を乗せ、カブールからカタールに向かう米軍のC17輸送機の機内(米空軍公式Twitterより)9-9-2
〜アフガンから怒りの声を上げるのは、現地で日本人の活動を支えながらも見捨てられたアフガン人達。盟友を保護すべく〔カブール救出作戦〕で結果を出した韓国と比較すれば、我々とて日本政府の体たらくには憤りを覚える。一体何が明暗を分けたのか〜
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〔日本、カブールの恥辱〕との見出しで〔アフガニスタン退避計画は失敗に終わった〕と報じたのは、8月28日付の韓国紙・中央日報だ。東亜日報等他の大手メディアも横並びで日本政府の対応を取り上げると共に、中国メディア迄もが〔韓国紙が日本を嘲笑〕と報じる等、中韓がココゾとばかりに〔日本叩き〕に熱を挙げて居る。情け無い話だが、彼の国々が喧伝(けんでん)する様に日本が大負けしたのは否め無い事実だ。
振り返れば、米国が今年4月にアフガンからの撤退を表明して以降、イスラム原理主義組織タリバンは攻勢を強め米軍の後ろ盾を失ったアフガニスタン政府は壊滅状態に陥った。8月15日にはタリバンが首都カブールを掌握。以降、31日の米軍完全撤退に間に合わせるべく、タリバンの制圧下で唯一の脱出口と為ったカブール国際空港には世界各国から航空機が殺到したのだった。
その目的は残留する自国民と、協力者として通訳や警備業務等に従事したアフガン人とその家族の救出で在る。実際、韓国政府はアフガン人協力者390人を3機の輸送機に分けて移送。25日にカブールを発ちパキスタンを経由して無事に韓国迄送り届けて居る。
冒頭の韓国紙は文在寅大統領が陣頭指揮を執った脱出劇を〈ミラクル作戦〉と呼び〈カブールのミラクルが成し遂げられた〉と褒め称えた。
片や日本はと云えば、韓国軍機がアフガンを飛び立った翌日の26日、要約自衛隊の輸送機がカブールに到着。現地で飲食店等を営みながら共同通信のカブール通信員を務めて居た安井浩美さん(57)只一人を救出出来たが、日本大使館や国際協力機構(JICA)の現地事務所に雇われて、日本人と共に汗を流して来たアフガン人協力者の退避希望者約500人は置き去りにされた。
タリバンは外国勢力に協力したアフガン人の身柄を次々に拘束し、場合に依っては殺害して居るとも云われて居り、彼等は命の危険に晒されて居る。全国紙の外報部記者曰く、
「日本政府は、カブール市内に集まった脱出希望者をバスに乗せる処迄は漕ぎ着けたのですが、折悪しく26日に空港周辺で米兵を含む140名もの死傷者が出た自爆テロが発生し自衛隊機迄運ぶ事が出来無かったのです。後1日早ければと云う声も在りますが、ソモソモ日本政府が自衛隊機の出動を決めたのは23日に為ってからでした。カブール陥落後、直ぐ軍用機を出して救援活動に乗り出した欧米各国と比べれば、1週間程遅かったと思います」
結論から云えば、日本政府の初動が遅れた理由は二つ。一つ目は現地事情に最も精通して居る筈の外務省の対応に在る。「救出作戦の明暗を分けた背景には、日韓の〔外交官格差〕が在ると思います」とは、元時事通信外信部長で拓殖大学海外事情研究所教授の名越健郎氏だ。
「韓国の報道に依れば、カブールが陥落してから韓国の大使館員も国外へ一旦避難しては居ますが、救出作戦を遂行する為に4人が現地に戻り、大混乱の中でも米軍が契約するバスを素早くチャーターして空港迄脱出希望者を送り届ける事に成功して居ます。
外交官の日頃の人脈や行動力、機転が成功に繋がったのだと思いますが、これに対して日本大使館の日本人職員12人は、カブール陥落2日後の17日、全員が英国軍の輸送機に便乗してドバイへと脱出してしまって居るのです」
因みに日本大使館ご一行様が脱出時に頼ったイギリスは、米軍が撤退するギリギリのタイミング迄大使自らが残留しビザ発給業務等を続けたと云う。結果、取り残された人々が居るものの、英国は8千人超・ドイツは4千人超のアフガン人を退避させる事に成功した。
頼りに為ら無い国
一方、現場の〔最高責任者〕である岡田隆・アフガン大使の姿が、カブール空港で見られる事は無かった。日本の名誉の為付言すれば、自衛隊の先遣隊が派遣された22日以降、一部の日本大使館員がカブールに戻って救援業務に当たったとの報道も在る。
とは云え、刻一刻と治安状況が悪化するにも関わらず、米軍やタリバンとの折衝等に於いて空白期間が在った事は否め無い。名越氏はこうも指摘する。
「日本政府は過去20年で約7,700億円もの援助をアフガンに行い、欧米諸国と違って自衛隊を派遣してタリバンと戦っては居ません。日本人外交官が危害を加えられる事は考えられ無い。現地に踏み留まる気概は無かったのでしょうか」
時代や状況は異なれど、ナチスに迫害されたユダヤ人を救う為に〔命のビザ〕を発給し続けた杉原千畝の様な外交官は居無かったのか。
そして、もう一つの理由は〔法律上の限界〕で在る。当初は民間機をチャーターして救援に向かう計画だったが、想定よりカブール陥落が早く急遽自衛隊に要請が下った。本来の自衛隊は、騒乱の現場で邦人を保護して空港へ運び日本迄退避させる訓練を積んで居ると云うが、現状ではその能力をフルに発揮出来無いと云うのだ。防衛大学校名誉教授の佐瀬昌盛氏によれば、
「自衛隊法84条の4では、海外で邦人輸送出来るのは〈安全に実施する事が出来ると認める時〉との要件が定められ、今回は米軍のコントロール下に在るカブール空港の中でしか活動出来無かった。
元々自国民が危険に晒されて居るから自衛隊を派遣するのに、安全な場所でしか行動出来無いと云うのは矛盾して居ます。政治家はこの様な現実を直視して法改正を検討すべきですが、今の菅首相や政権与党は喉元過ぎれば熱さを忘れる。そうした危機意識の欠如が、救出作戦が難航した理由だと思います」
米軍が完全にアフガンを去った今、日本政府は出国を希望する協力者の救出を求めてタリバンと交渉するとは明言して居るが、タリバンは9月上旬にも新政府を樹立すると意気込む。イザと云う時に頼りに為ら無い国だとの烙印を押され無い様、救出作戦を完遂する必要がある。残された時間は限りなく少ない。
「週刊新潮」2021年9月9日号 掲載 新潮社
アフガニスタン前駐日大使に聞く「タリバンの今後」
最も気に為るのは〔イスラム教の法律の範囲〕
国際 2021年8月23日掲載
バシール・モハバット氏(著者撮影)9-9-3
モハバット氏は19歳で来日、拓殖大学・中京大学等に留学したが、ソ連の祖国侵攻で帰国出来無く為る。メーカーに就職し米国にも赴任した。2003年、カルザイ政権下で在日本大使館が再開すると「異国で祖国に尽くしたい」と外交官試験を受け二等書記官として勤務。2017年から駐日大使と為り、2019年12月の中村哲氏の銃撃死事件では葬儀で涙ながらに弔辞を読んだ。今年1月に退任した
混乱のアフガニスタン、20年振りのタリバンの支配国家に為れば如何為るのか。前駐日アフガニスタン大使のバシール・モハバットさん(64)に伺った。
タリバンの制圧は予測出来ましたが、コンなに早くとは驚きです。とは云え米国のバイデン大統領も私も誰もが同じ感想でしょう。アメリカは早くから「撤退する」として居ましたし、現地では半年前からタリバンの活動が活発でした。
タリバンは南のカンダハル等地方から制圧し今度は北部を抑えて行った。北部は1996年から2001年迄のタリバン政権時代も人々が強く抵抗して居た地域です。オバマ政権は2014年、カルザイ政権と米軍の撤退で合意し兵隊を減らして行った。昨年2月にトランプ大統領も撤退を約束した。バイデン氏はタリバンと交渉し、当初、撤退が5月1日だったのを9月11日にしようとして居た。
新政権が国際的に認められるか如何か。アメリカ・カナダやイギリス等の欧州諸国が認めるにはワンステップが必要でしょう。民主主義・言論の自由・女性の尊厳を守る・行動の自由等要はアメリカやヨーロッパ並みの「普通の社会」に為れるかどうか。駄目なら米国も経済援助もし無いでしょうね。
以前は、教育は小学校迄とか・女性は肉親の男と一緒で無いと外出出来無いとか・・・酷い社会でしたが、不完全ながらもこの20年で民主主義を手に入れました。自由・女性の解放・憲法・経済の自由等が新たなタリバン政権で失われる事を国民は恐れて居るのです。
タリバンも国際社会を知り賢く為ったとは思うが、アフガニスタンの国民に取っては過去の経験が在るので不安感は拭えません。タリバンの広報担当のムジャヘド氏は記者会見で国民の権利を守る様な事を言いましたが、本当に実践されるか如何か判りません。守る前提を〔イスラム教の法律の範囲〕として居るのが一番気に為りますね。
インドネシアからモロッコ迄皆イスラムの国ですが、何処も過つてのタリバンの様な事は遣って居ません。彼等の言う〔イスラム教の法律〕が何を指すのかが鍵です。タリバン政権の時はサウジアラビア・パキスタン・アラブ首長国連邦の三国しか承認して居ません。それでは国際的に孤立するだけです。アフガニスタンの若者も国際的な知識を持つ様に為り、タリバンも以前の様な事は出来無いでしょうが。
テロリストの温床も心配されますね。アフガニスタンはアルカイダだけで無く20以上のテロリストグループが活動して居ます。ウィグル・ウズベキスタン・チェチェン・・・そう云った地域からのグループや国際組織のIS(イスラム国)パキスタンからもテロリストが多く入って居る。
タリバンが彼等をコントロール出来るか如何か。未だ幹部が十分カブールには来て居ませんが、全ての民族・部族を政権に参加させるとして居ます。北部同盟(1996年からのタリバン政権で反タリバンとして組織された政権)の指導者も今パキスタンに居ます。
パキスタンも「タリバンと交渉して居る」と言って居ます。タリバンも自分達だけでは政権を維持し政治を遂行する事は出来無い筈ですが、指導者も未だ発表に為って居らず、未だ指導部の様相は判りません。
ムジャヘド氏が会見しましたが過去、国民の前に姿を現した事が在りません。会見の彼が本物かどうか、日本で云う影武者かも知れ無いとも言われます。
未だ政変が起きたばかりですが、私も含めてアフガニスタン国民の願いは、言論の自由・女性の自由・マスコミの自由・教育等「普通の国」にして欲しいと云う事ですね。タリバンはケシの実のから作る麻薬・コカインが資金源でしたが「ケシの栽培は全部消します」と云ってる。ダジャレみたいですが、代わりに何を栽培するかは不明です。
アフガニスタンは元々農業国で輸出する程農産物が在りました。最近も日本の援助で米作のプロジェクトも進んで居ました。ケシさえ無くせば代わりには何でも育ちますから大丈夫です。
タリバンに対して国民の間には既に反発が起きて居ます。8月19日は独立記念日で様々のセレモニーが行われて来ました。歌ったりアフガニスタンの旗を飾ったり・・・それをタリバンが認め無いと衝突します。市民は「政府が変わるのは仕方無いが、旗や国家の象徴は変えたく無い」とも思って居ます。ガニ政権の汚職等の腐敗に対しての不満が在った事も一因でしょう。
ガニ大統領は国外へ逃げましたが、サレー第一副大統領は国内に居る様です。彼は「憲法に基づけば今、自分は大統領に為る責任が在る。パキスタンの奴隷に為る事やテロリストは受け入れ無い」として政権に意欲を見せます。しかし、どれだけの人が彼に着くか判ら無いですね。
カブールの日本大使館の日本人職員は脱出しましたが、通訳等アフガン人のスタッフや家族でも脱出したい人も多い筈です。大使館の様子は未だ好く判りません。日本政府がどの様に彼等を守って呉れるのかも注目されます。
幸い、私の肉親や友達は大丈夫です。大きな混乱は空港だけ。市内では大きな混乱は無い様です。一番怖がって居る旧政権中枢の人等に対して「タリバンが恩赦を与える」と言って居る事は安心感も与えて居る面も在ります。
アメリカもEUも様子見です。ドイツも援助し無いと言って居ます。アメリカは「暴力で政権を取った政府は認め無い」として居た。ガニ大統領が未だ居た時、ドーハでタリバンと平和的な話し合いが在りました。
余り効果は無かったが、その頃、タリバンはカブールの周囲に居た。紛争が起き、タリバンは「治安を守る為カブールに入った」と主張し、国民は「仕方無い」と云う空気にも為って居ました。
タリバンの中にも昔の様な圧政を行いたい人物も居るでしょうが、彼等も或る意味で苦しい立場だと思います。イスラム教の教えの元で女性も教育も守るのかと世界が見守るが、イスラム教は一つしか無い。どう云う形にするのでしょうか。
ハザーラ(アフガニスタンのシーア派系の民族)の指導者アブドウル・アリ・マザリは、スンニー派で或るタリバン政権で処刑されましたが、バーミヤンでは彼の銅像が造られて居ました。今回、誰かに依ってそれが爆破された。イスラム教は偶像を否定するから、バーミヤンの石仏を爆破した事を思い出させますね。
タリバンは「我々の仕業では無い。我々は国の宝は全部守る」とし、カブール博物館等の文化財も守る事を言ってます。今回の爆破の真相は判りませんが石仏をタリバンが破壊して国際的非難を浴びて居た筈のバーミヤンでそう云う事が起きて居る事も心配です。
タリバンの幹部は教養も在るが末端は違います。彼等が規律を守れるか。アフガニスタンは民族が多く、ソ連侵攻からの49年間でも民族間の憎しみも深い。統制を取るのは難しい。
20年間の米国支援政府は、海外からも戻って来た協力者等に支えられました。タリバンには教育されて無い人が多く、彼等が教育されるには30年掛かるでしょう。彼等は「これ迄の国家システムを維持する」と言いますが、国家システムの構築には旧政権の関係者が居無くては出来無い。
「皆家に居ろ」では国は持た無いし、今の経済システムも変えられ無い筈。変えれば経済が瞑れ海外から資金が入らず最貧国に戻ってしまいます。只、これ迄のシステムを認めると、タリバンとしては「何の為に戦って居たのか?」と云う自己矛盾にも陥ります。
以前のタリバン政権はテレビの音楽や歌も禁止しました。OKにするのは好いのですが「何で今迄駄目と言って居たのか?」と為ってしまう「何の為に戦って来た?」同様、矛盾してしまう。矛盾をどう克服するかです。
何れにせよ、イスラムの法律で国民生活を何処迄制限するかが大きな鍵です。歌手はブルカの格好をさせられるとか・刺激的な音楽はダメとか・宗教的な歌に限らせるとか・・・に為るかも知れ無い。これ迄は大統領を「ボロクソに」批判しても好かったが、新政権で本当の言論の自由が許されるのかどうかです。
選挙制度も認めず、イランと同じく最高指導者の号令だけの国に為ってしまうのか。記者会見の様な対外向けの顔と、国内向けの顔が違わ無いか如何か。未だ政変が起きたばかりですが、予断を許しません。(8月18日取材)
粟野仁雄(あわの・まさお)ジャーナリスト 1956年 兵庫県生まれ 大阪大学文学部を卒業 2001年迄共同通信記者 著書に「サハリンに残されて」「警察の犯罪」「検察に、殺される」「ルポ 原発難民」など
デイリー新潮取材班編集
〜管理人のひとこと〜
新生アフガニスタン・・・神学生集団・タリバンが治めるイスラム国家・・・この国の行方が世界から注目され、そこに住む市民・国民の安否が危惧されて居ます。我が国で言えば、大使館員とその家族だけは救出されましたが、大使館で働いた現地人の職員や協力者・その家族は置いてけボリを食って居ます。
重要度から云えば軽ーい〔自民総裁選一本〕にメディアが集中してしまい、ミャンマーの軍事政権の問題もそうですが、その他の大切な案件が埋没して仕舞って居ます・・・誠に軽薄で残念な国です。その中で大変に貴重な記事を配信して頂き感謝します。そして、現地人で在る前駐日大使のお話も掲載して頂きました。
頑なな宗教観の出現・・・信仰心が極端に篤く強く表れるのは、それだけ精神的・経済的な不安感・不信感が強い事への裏返しの気がします。それだけ自由陣営やロシア・中国の様な大国からの圧迫が身に染みて居るからだと考えられます。自分達弱い者の味方は〔頑なな宗教への帰依〕しか無いと考えるのでしょう。
お酒の効用と同じで、適当に飲む分には健康にも好いのだが、飲み過ぎると他人に迷惑を掛ける・・・宗教心も程々が好いのでしょう。救われるのは、我が国は仏教国と云われるが、実は無宗教・無信仰の国とも云われ「八百万の神々」が支配する何でも在りの国柄です・・・何事も自分に都合好く解釈したら好いのですから。