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2021年09月16日
未婚化の原因は「女性余り」と云う壮大な勘違い
未婚化の原因は「女性余り」と云う壮大な勘違い
東洋経済オンライン 9/16(木) 9:01配信
写真 takeuchi masato PIXTA 9-16-30
文章 天野 馨南子 ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー 9-16-31
日本に於いて第2次世界大戦以降で最も多く子供が生まれたのは、現在の70代前半の世代です。1947年から1949年に生まれた彼等は〔団塊の世代〕とも呼ばれ、年間約270万人も出生して居たのです。
処が昨年2020年の出生数は84万人で、270万人の僅か31%に過ぎません。詰まり、70代前半の祖父母世代の頃は9クラス在った小学校で在れば、今や何と3クラス、もし当時3クラス在った小学校で在れば今や1クラスと云うのが令和時代の日本の姿です。
団塊世代の夫婦の子供達で、現在はアラフィフで在る1971年から1974年に生まれた〔団塊ジュニア〕も年間約200万人生まれて居ました。半世紀前に生まれたアラフィフ人口の約4割しか赤ちゃんが生まれ無い・・・当然ながら、日本の人口の未来は極めて危機的と云えるでしょう。
この〔半世紀で出生数半減〕とホボ同率で減少して居るのが、実は〔初婚同士の結婚数〕です。1970年から新型コロナ禍前の2019年迄の約半世紀で、出生数は45%水準に迄減少しましたが、初婚同士の婚姻数も48%水準に迄大きく減少して居ます。判り易い迄に日本の出生数減少(人口減少)は未婚化に起因して居るのです。
人口総数は「女性余り」だから女性は焦るべき?
未婚化の話をするとイメージで「女性が高学歴化して社会進出して結婚し無く為った」「行き遅れは産期の在る女性だけの話」等と、未だに「何時の時代の話でしょうか」と云う話を持ち出す婚活当事者・結婚支援者等が必ず居られます。
しかし統計的に解説する為らば、日本は〔男性未婚化大国〕です。未婚化、と云う為らば圧倒的に男性の話と云えます。
確かに人口の総数だけを見てしまうと、男性は女性の95%水準の人口と為りますので「男性の方が女性よりも少ないのだから女性余りなのだ」と言いたく為るでしょう。しかし、総数で全てを語ろうとすると統計的に正確な事象の解釈が出来無く為ってしまい、物事の真相を見失い易く為りますので注意が必要です。
未婚化と云った時に、小学生や後期高齢者の結婚をイメージする方は流石に居ないと思います。結婚と云うと、法的に結婚が可能と為る10代後半から、ソロソロ老後を意識し始める初老期(凡そ50歳前後)前迄の年齢での結婚をイメージする方が一般的ではないでしょうか。
驚く方も多いかも知れませんが、総数でコソ女性の方が男性よりも多く為るものの、50代前半の年齢迄は男性人口の方が女性人口よりも常に多い状況なのです。生物学的な解説は此処では最低限に留めますが、ヒトと云う動物は男児が女児よりも5%(1:1.05の比率で)多く生まれて来ます。これは医療が介在し無い自然の状態に於いては、女児よりも男児の方が乳児死亡率等が高い為です。
子孫を残す大人に為る迄に〔自然淘汰〕に依って男児の方が女児より多く死亡してしまう為、成人時に男女が同数程度に為る様に5%男児が多く生まれて来る仕組みがヒトと云う動物の出生に内蔵されて居るのです。正に自然界の神秘と云えるでしょう。
10代後半〜40代の合計で70万人の違い
処が、医療先進国ではこの自然淘汰が人工的に抑止される為、結果的に成人しても男性の方が女性よりも多く為ってしまうのです。日本もこの例外では無く、2015年の国勢調査確定値から筆者が計算した結果では、男性人口が女性人口に比べて、
⊡ 10代後半 16万2,444人 男性が多い
⊡ 20代 22万6,479人 男性が多い
⊡ 30代 17万0,863人 男性が多い
⊡ 40代 14万2,768人 男性が多い
⊡ 10代後半〜40代での合計 70万2,554人 男性が多い
と為り、正に結婚活動を行う主たる期間全てに於いて、男性人口が女性人口を超過して居る状況が発生してしまって居る事が判ります。一部の結婚相談所等に於いて「男性の方が結婚したいと思って居無いからで、それ自体は問題無いのでは?」と云った意見も聞きますがこれは印象論と云えます。
統計的には、生涯を通して観れば男女で結婚する意志の割合に大きな差は無く(2015年国立社会保障・人口問題研究所調査) 単に男性の方が結婚したいと強く思う時期が女性と比べて可成り遅れる為に、20代・30代の年齢で相談所に来るのは圧倒的に女性の方が多く為り、相談員には男性の方が一見焦って居無い様に見えてしまうだけ、と云う事が指摘出来ます。
筆者が九州の結婚支援者向けに「エリアの年齢別の男女の未婚者数」に付いて講演をした際
「男性の方は既に結婚して居て、結婚出来無い女性ばかりが婚活イベントに来るのだと勘違いして居ました! 女性余りだと思って居たんです。男性はソモソモ婚活の土俵に上がら無いで婚期を逃して居るのに、産期も無いので何時かは結婚出来ると思って居るとは・・・」
と愕然(がくぜん)とされて居ました。ソモソモ結婚したいしたく無いに関わらず、絶対数で女性不足で在ると云う事を男性の結婚希望者や結婚支援者は好く理解して置いて頂きたいと思います。
人口総数で見ると女性が多いワケ
そんなに男性が余って居るのに、総数では女性が多いのか・・・と云う点に付いて確認して置きましょう。
本当に、女性は男性よりも長生きですね。50代からは男性の方が女性よりも早くお亡く為りに為って行く様子が伺えます。そして80代以降とも為ると、正に〔お婆ちゃんだらけ〕と云った様相です。
そう云う意味では、女性は男性よりも〔長生きリスク〕に備えて置か無ければ為りません。只、2015年の国勢調査結果から計算した〔50歳時点で結婚歴の無い人口割合〕は男性は4人に1人ですが、女性は7人に1人ですので、長生きリスクに関して、子孫が面倒を看て呉れる可能性は男性より可成り高く為ります。
問題は男性の未婚化に依る〔おひとり様〕問題です。男性の孤独死は女性の孤独死の3倍から4倍に上る・・・との孤独死物件の清掃対応業者の現場記事や、男性の孤独死に関する著書や発信を目にして居る方は少なからず居るのではないでしょうか。
統計情報としては、2020年11月に公表された一般社団法人日本少額短期保険協会のレポート「第5回 孤独死現状レポート」が在り、孤独死の男女比は8:2(サンプル数4,448人)と男性の孤独死が圧倒的と為って居ます。又、65歳以上の高齢者の孤独死は約5割、死亡平均年齢は60歳辺りと為って居り「孤独死は高齢者の話でしょう」とは言え無い状況と為って来て居ます。
男性の孤独死研究は専門外ですのでこれ以上は述べませんが、男性の未婚化が齎(もたら)す孤独死・介護離職・介護トラブルは今後、未婚化割合の高さから更に社会問題化して行くと思います。
統計的に「キリギリス婚活」は成功しない
残念ながら全国の結婚支援の現場の方からも、婚活当事者の健康や親の健康問題が発生し始めてからの「ソロソロ結婚したい」「子供も欲しい」と云った、マルで童話「アリとキリギリス」のキリギリスの様な男性の結婚行動(介護婚活 親又は自らの介護目的の婚活)を問題視する声が多数筆者の処にも届いて居ます。
筆者の過去記事でも何度もお伝えして居ますが、男女で結婚適齢期(結婚が成立し易い時期)に差はホボ在りません。初婚同士のカップルの結婚ピーク年齢は、男性27歳・女性26歳です。
初婚同士の結婚の7割が男性32歳迄・女性29歳迄で発生します。統計的に見て、アリとキリギリスの「キリギリス婚活」は成功し無いのです。もし、介護婚活に近い不安を持ちつつ過ごして居る場合は、1日も早くそして自分の身体のケアや親の介護に関して「お互い様」と思って貰える年齢のお相手との結婚を急いで頂きたいと思います。
天野 馨南子 ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー 9-16-32
9・11から20年・・・何故タリバンは此処迄「衰え無い」のか
《タリバン・新首相等幹部と対峙した日本人元外交官の証言》
9・11から20年・・・
何故タリバンは此処迄「衰え無い」のか
文春オンライン 9/11(土) 11:12配信
2001年9月11日 2機目の飛行機が突入する瞬間の世界貿易センタービル AFLO 9-11-10
9・11同時多発テロから20年を迎えた今、古くて新しい問いが再び私達の前に立ち現れて居る。2001年の9・11を首謀した外国人オサマ・ビンラディンを匿った事でアメリカの攻撃を受け、政権崩壊に至った筈のアフガニスタンの〔タリバン〕が、追及の手を逃れ、散り散りに為り乍らも生き永らえ今回の復活劇へと急展開して居るのだ。
私は、9・11の半年前に起きた〔バーミヤンの大仏破壊事件〕が、同時多発テロの〔プレリュード(前奏曲)〕だったと云う仮説に基づき、タリバンが国際テロ組織・アルカイダのリーダー、オサマ・ビンラディンに依って乗っ取られて行く道筋を取材した。
それをNHKスペシャルとして放送し、書籍として『大仏破壊 ビンラディン、9・11へのプレリュード』(文春文庫 大宅壮一ノンフィクション賞受賞)にまとめた。
当事者で在るタリバンや、彼等を良く知るアフガニスタン人・パキスタン人、そして欧米人等を広く取材した中で、ストーリーの中心に据えたのが、日本人の国連外交官だった田中浩一郎さん(現・慶應義塾大学教授)だ。
9・11に至る数年間田中さんは、国連アフガニスタン特別ミッションの政務官として、数限り無い程タリバン政権下のアフガンに入り、その語学力を活かして今回の組閣で首相に選ばれたアフンド師を初め、30人を超えるタリバン幹部達と渡り合い様々な交渉を行って来た。
タリバンを、その各個人の性質や行動パターンに至る迄熟知して居る貴重な存在で在る。本稿では、再び世界の前に登場して来たタリバンとは何者なのか、現在も研究者としてアフガニスタン情勢に付いてフォローを続けて居る田中氏に聞いた。
高木 徹
◆ ◆ ◆
国連外交官だった田中浩一郎さん(現・慶應義塾大学教授)
「謎の神学生」の正体
高木 タリバンは、8月15日にアフガニスタンの首都カブールを電光石火の進撃で陥落させました。田中さんは、どの様にお感じに為りましたか。
田中 実は、2002年の夏から「これは拙いな」と思い発信して居ました。アフガニスタンを「キチンとした形に整え無ければいけ無い」と云う国際社会が持って居た狙いが、9・11から1年足らずで別の処に持って行かれて行くのを現地で目の当たりにしたからです。それが20年掛けて此処迄来てしまった・・・と云う印象を持って居ます。
高木 「別の処」に持って行かれたと云うのは、具体的にはどう云う事ですか。
田中 2003年にアメリカがイラク戦争を遂行する訳ですが、それに向けてアフガニスタンに対する関心が、その1年前の2002年夏から急速に下降線を辿り始め、アフガニスタン国民の間で「コレって民主主義なの?」と感じてしまう様な事態が、アメリカに依って自ら作り出されて居たのです。
この事は2002年6月に開催された、緊急ロヤジルガ(アフガニスタンに伝統的な〔全国長老・部族有力者会議〕の様な存在)でハッキリ出て来ました。
アメリカは、ハミド・カルザイ(初代大統領)を国家元首にしようと云う方針をハッキリ持って居て、これに異を唱える人々をアメリカが脅して回ったのです。それを見て、アフガニスタンの人々に「結局、自分達の意見は聞いて貰え無い」と云う思いが広がってしまいました。
民主主義に付いて本当にヨチヨチ歩き以前、未だ乳飲み子ですら無かったアフガニスタンに於いて、民主的な体制を構築しようとする大プロジェクトが行き成り可笑しな方向に進んでしまった。民意に基づくのが民主主義の大前提の筈が、アメリカが寧ろ民意を封じ込める様な動きをした事で、大い為る幻滅をアフガニスタンの人々は感じてしまったのです。
〈ロヤジルガは選挙で代議員が選ばれる訳では無いが一種の議会的なもので、これを活用する事で、正式な大統領選挙の準備が整う前に国家元首を選び、民主主義の第一歩と出来る・・・と当時捉えられて居た。
田中さんに依れば、ロヤジルガの参加者の間で最有力だったのは、宮廷クーデターで廃位と為る迄その地位に在ったザヒル・シャー元国王だったが、英語堪能でアメリカとも話が出来るカルザイの国家元首就任にアメリカは強引に拘ったのだ〉
「大い為る幻滅」は何故生まれたのか?
田中 アメリカのブッシュ政権としては、2004年のアメリカ大統領選挙に向けてサクセスストーリーを欲した訳です。その為に、アフガニスタンの大統領選挙もギリギリ間に合うタイミングで行った。
その結果「現地は万事上手く行って居り、何も修正する必要が無い」と云う自明の前提を作ってしまう事に為り、思考のトラップに陥ってしまった。これは日本の原発の安全神話・・・安全に作ったのだから安全を疑う議論自体が許され無い・・・と同じ構図です。そこから修正のタイミングを失ってしまいました。
高木 ブッシュ政権の後を継いだオバマ政権で増派も行われましたね。
田中 これだけの死者を出して多くの戦費を払ったアメリカには、非常にキツイ言葉に為りますが明らかに遣り方を間違えた。これは私も現場に行って見聞きして居ましたが、その増派が進む中で、兎に角色んな人にお金をバラ撒く。それに依って人々の忠誠心を買おうとする。
これはアメリカがイラクでも遣って居た事ですが、少なくともアフガニスタンに於いては、そのお金の可成りの部分がタリバンに流れ、軍閥の長老格のポケットに入り、その後問題に為る汚職の元に為りました。
中国・ロシアに利用されてしまった「テロとの戦い」
高木 正直な処、私も含めてアフガニスタンへの注意関心が少し薄れて居た処に、予想外の早さでカブール陥落に為り、多くの人がショックを受けたと思います。そもそもアメリカが20年前に「アフガン戦争を始めた事自体が好く無かったじゃないか」と云う声も在ります。しかし、私はアノ9・11の後の状況ではアレしか選択肢が無かったと思って居るのですが。
田中 アノ攻撃は、国連憲章に定められた個別的自衛権の行使・NATO憲章第5条に基づく集団的自衛権の行使を初め、法的な枠組を踏まえて居ます。只、相手が国家では無かった訳です。
一つはアルカイダと云うテロ組織で、もう一つはタリバン政権と云う国家を名乗って居るけれども、国際社会に認知されて居ない政治運動体でした。特に前者に対して武力行使を行う事で、本当にテロを撲滅出来るのかと云うのは大きな疑問だったと思います。
又、その後の歴史の展開を見ると、この時の〔対テロ戦争〕と云う形は、中国とロシアには散々好い様に使われた。中国はウイグルの弾圧を〔テロとの戦い〕を理由に拡大させ、ロシアはチェチェンやダゲスタンのイスラム勢力の掃討にこの論理を使う様に為る。テロとの戦いと言いさえすれば全てが容認されてしまう〔聖域〕を作り出してしまいました。
何故タリバンは「衰え無い」のか
高木 この30年位の間、世界各地に様々なイスラム主義の暴力的な勢力が登場しました。〔アルカイダ〕〔IS〕やその分派組織、或いは東南アジアに於ける〔ジェマ・イスラミア〕等、夫々栄枯盛衰をして来たと思います。その中でタリバンは息が長い。
1994年に突然アフガニスタンに現れた謎の〔神学生達(タリバン)〕は、1996年の首都占領から5年間〔タリバン政権〕をアフガニスタンに作りました。その時と同じ様な雰囲気のメンバーも重為って居る人達が2021年迄続いて来て一気に復権した訳です。その〔長持ち〕の原因に付いてどう思われますか?
田中 それは、彼等の意識がブレ無いからだと思います。客観的に見て正しいかどうかは別にして、90年代の時も現在もそうですが、アフガニスタンは〔外国軍に依って占領されて居る〕と云う認識を彼等は持って居ます。
その占領から解放する為に自分達は立ち上がり戦って居るのだと云う思いが在る。或る種のナショナリスティックな民族主義的な運動として勢いを保つ事が出来るのです。そして、此処は又非常に厄介な問題なのですが、それを支えるパキスタンと云う国家の存在が在る訳です。
パキスタンは2001年の時もアメリカに対して面従腹背(めんじゅうふくはい)でしたし、それ以降はドンドン中国に靡(なび)いて行く事に依って、面従腹背以上にアメリカのコントロールの及ば無い状態に為って居る。この隣国がタリバンを匿い、隠れ家を提供し食事も与えて医療も与えて、偽のパスポート迄発行して、場合に依っては武器も提供して居たのだろうと考えられて居ます。
高木 外国勢力からの祖国防衛と云う考え方は、アルカイダやIS等の〔グローバルジハード〕的な考え、詰まり彼等の言う処のキリスト教徒とユダヤ教徒の連合軍に対して世界で戦いを仕掛けて行くと云うコンセプトより、強い共感を得られると云う事でしょうか?
田中 そうですね。或る種の地場勢力としての強さは在ります。例えばISのケースは、世界各地で様々な領域を占領して行きますが、結局ISは歓迎され無かった。ISは外から遣って来て、占領された人々は迫害されたり場合に依っては殺されたりした訳ですから。
一方、タリバンの場合は同じアフガン人、場合に依っては同じ民族パシュトゥン人で在る事をベースに国土を解放させ様と云う思いで戦って居る。勿論、過去に酷い事を遣った事で反発や反感を受けても、もう少し親和性が在り得た訳です。
更にアメリカ軍を初め外国軍が誤爆を繰り返し、タリバンやアルカイダの摘発だと言って夜中に個人宅に押し入って無茶な捜査をする等、個人の権利侵害を平然と遣って行くに従って、アメリカへの反感が広がり、タリバンに対する同情心も作り出されました。
知事でさえ映り込む事を許さ無かった「カメラ嫌い」達の変化
高木 そのタリバンに依る今回のカブール制圧で多くの人が驚いて居るのは、彼等の広報戦略です。何人かの報道官が出て来て、テレビに対して立て板に水と云う風情で語って居ます。
2001年以前のタリバンはテレビを〔悪魔の箱〕と言って禁止して居たので、此処は全く変わりました。しかも、その報道官達が、国際社会が今心配して居る事を正確に捉えて、それに対して逐一答える。詰まり、テロの基地に為るのでは無いか・女性の権利は如何為るか・少数民族は如何為るのか・・・等、次々と答えて行く姿に驚きながらも、その言葉を信じて好いのかと疑問にも感じます。
田中 以前のタリバンは、テレビは疎か写真も撮らせ無かった。私も多くのタリバンと交渉しましたが、一緒に写った写真は持って居ません。親しく為っても写真の一枚も撮った事は無いのです。或る時に、アフガン南部・カンダハルの国連の事務所が爆破テロの巻き添えに為って、被害状況を確認する為に現場写真を撮りに行きました。
そこに当時のカンダハル州知事だった隻脚(せっきゃく)のオジサンが居て、彼が一寸写り込みそうに為っただけで、彼はターバンの端で顔を隠しました。知事ですらそれ位写りたく無い訳です。 これは偶像崇拝を禁じる宗教的理由とされて居ますが、実は、アフガン人では無い人間がタリバンと称して紛れ込んで居るので、その怪し気な素性がバレ無い様に警戒して居る為だと現地では実(まこと)しやかに言われて居ました。
それに引き換え、現在のタリバンはメディアを通じて自分達の正当性を訴え、正統な政権として国際的に認知して貰う事を狙ってメディア戦略に力を入れて居ます。只、その言葉を額面通り受け止めて好いのかはナカナカ難しい。
タリバンと云う組織の権力構造、更に報道官と為って居る人物の地位がどれ位かを考え無ければ為りません。その彼等にしても、人権尊重等に付いて語る時、飽く迄〔シャリーア(イスラム法)〕の下で、と条件を着けて居ます。
アメリカの作り上げた「タリバンのナンバー2」と云う虚像
〈それでは、現在のタリバンでは誰が権力を持って居るのか。20年前のタリバンは、創設者で絶対的なカリスマで在るオマル師が全権を掌握し、評議会で在る〔シューラ〕を率いて居た。そのオマル師は2013年に病死し、次の指導者も2016年に米軍の攻撃により死亡、その後は3代目と為る〔ハイバトゥラー・アフンドザダ師〕が指導者の座に着いたとされる。
副官として、タリバンの最強硬派〔ハッカーニ・ネットワーク〕と云う武装集団を率いるシラージュッディン・ハッカーニ師、オマル師の息子で〔軍事委員会〕の長と呼ばれるヤクブ師、更には、カタールの首都ドーハの事務所にはバラダル師が配置されて居た。
この中で、最近の報道で好く見掛けるのがバラダル師。トランプ政権以来のアメリカとの交渉に出席し、最近は訪中して王毅外相と会談する等、タリバンの表に出て来るメンバーでは最高位と言える。国際舞台に姿を見せて居る為か〔穏健派〕とも言われる〉
高木 近年のタリバンの権力状況に付いて、田中さんは如何見て居ますか?
田中 今のタリバンには、パキスタンのクエッタ・・・これはアフガニスタンのカンダハルに移りつつ在ると言われますが・・同じくパキスタンのペシャワル、カタールのドーハと3つの拠点が在りますが、このドーハ事務所がどれ位の発言力を持って居るのか好く分かりません。
最近ドーハからカブールに入ったと言われるバラダル師を〔タリバンのナンバー2〕と言う事も在りますが、彼は複数居る副官の一人でしか無く、ナンバー2だと云うのは、アメリカの一方的な宣伝です。
確かにバラダル師は、オマル師がタリバンを作った時からの盟友で、一時期その右腕と言われる地位に居たと観られますが、アレからもう20年経って居る。その間、8年余りパキスタン軍に捕らわれて居た。それが何時の間にかアメリカの差し金に依って釈放され、政治交渉のヘッドに為って居ました。詰まりアメリカが交渉の為、都合の好い人物を盛り立てて来たのです。
彼を〔ナンバー2〕に仕立てる事はアメリカ側にはメリットが在る。タリバンからすれば、元々アメリカと交渉する事は本意では無いのですが、アメリカが早く出て行く様に仕向ける為には、交渉して居る様に見えた方が好い。詰まりタヌキとキツネの化かし合いを遣りながら、アメリカは全てが上手く行って居る様に見せて居るのです。こうした実情はバイデン大統領にも届いて居ないと思います。
「日本で云えば〔織田信長〕と説明して居たが・・・」
〔力が全て〕のタリバンに持ち得る「2枚の交渉カード」とは
元国連アフガン特別ミッション政務官・田中浩一郎氏インタビュー#2 高木 徹
「結局、タリバンは戦闘集団 力が全ての〔ヤクザの世界〕ですから」
高木 8日に発表されたタリバンの「組閣」の内容をどう見て居ますか?
田中 未だ最終承認で無いと示す為か大臣「代行」と云う言い方ですが、正直言って、それを見ると行政機構としては機能するとは思えません。ソモソモ、字が読めるか如何かも分から無い様なメンバーが宛がわれて居ますから。
高木 以前からタリバンには「強硬派」と「穏健派」が居て、表に出て来るのは「穏健派」だが、結局は「強硬派」が力を持って居ると捉えられて来ました。
田中 「強硬派」と云うよりは、私は「武闘派」と呼んで居ます。力が全ての世界、云わば〔ヤクザの世界〕ですから。米軍を追い出した今、その「武闘派」の意見が強い事は間違い在りません。
今回「首相」に為ったアフンド師は、前回の政権では外務次官から外務大臣に為った人で、私は10回以上会って居ますが、彼の口から教条的な原則論以外の事を聞いた事がありません。今好くメディアに登場して居るバラダル師も「武闘派」として鳴らして居ました。
今回の組閣では副首相と云う微妙な役職ですし、米軍が撤退した以上、タリバンに取ってこれ迄彼が遣って来た様なアメリカとの交渉はもう必要が無いと云う事でしょう。
副官の一人だったハッカーニ師が内務大臣と云うのはブラックジョークの様に思えます。彼は云わば〔狂犬〕の様な存在です。アルカイダとも繋がって居ると言われますし、これ迄国内でも爆破テロとか暴力行為を遣って来て居た人が、これからは治安の維持を担当すると云うのですから。
創設者オマル師の息子で今回国防大臣に為ったヤクブ師は知り合いではありませんが、少なくとも軍事委員会のヘッドだったと云う事は、話し合いで物事を解決しようとする人では無いでしょう。詰まりタリバンの上層部は「武闘派」に依って占められて居る。結局、タリバンは戦闘集団なのです。戦闘で相手を打ち負かす事を、いの一番に考えている。
その彼等の第一のミッションは外国勢力を駆逐する事。第二のミッションは、アフガニスタンをシャリーア(イスラム法)に基づくイスラム国家に戻す事です。
軍事的緊張状態が続けば、第一のミッションも残り続け「武闘派」の意見が常に強く出る。緊張状態が無く為れば様子は変わる筈ですが、国際的なタリバン嫌い・イスラム嫌いの脅威に晒されて居ると彼等が感じる限り、必然的に「武闘派」が主導権を握る状態が続くと思います。
「武闘派」から主導権を奪う為には、国際社会がタリバンに対して融和的に為り、タリバン内の融和論を優勢にする必要が在るのですが、タリバンはイスラム法に基づいた国作りと云う方針は変えられませんし、国際社会も女性を初め人権問題を見逃す訳にはいか無い。その結果「国際社会から爪弾(つまはじ)きにされて居る」と云う彼等の〔被害妄想〕も止ま無いので、結局は「武闘派」が力を持ち続ける事に為るでしょう。
〈今回の「組閣」メンバーの中で、田中氏が「納得が行く」と表現するのが、外相のアミール・ハーン・ムタキだ。拙著『大仏破壊』でも、武闘派の出身ながら国際社会の論理に理解を示し、強硬派とは異なり文化遺産の保護に動いた事を描いて居る〉
田中 ムタキは前回の政権でも、オマル師から指名されて国連を仲介者とする和平交渉に当たって居ました。私達の言う事を咀嚼して、自分為りの考えを巡らせて居る様子が見て取れました。交渉の進め方に関する覚書にもタリバンを代表してサインした事があります。
キルギスでウズベキスタンの武装勢力に囚われた日本人人質4人の解放に力を貸そうとして呉れた事も思い出されます。只、彼一人が政権を動かせる訳では無く、今後のタリバンの外交交渉がスムーズに進む事を意味して居る訳ではありません。
「人々が動いて呉れ無ければ、結局は力に訴えるしか無いのです」
高木 2001年迄の数年間、タリバン政権がアフガニスタンを一応「統治」して居た事に為って居ますが、その形に戻る事に為るでしょうか。
田中 今回も銃をチラつかせて同じ事を遣ったら間違い無く国は動きません。アフガニスタンの人々の期待が当時とは違うレベルに達して居ます。2001年以前は、内戦で焦土と化し国として何も機能して居ない、安全も保たれ無いと云う状況でタリバンが出て来て、カブールを占領し政権を担うと云う事に為った訳です。
当時も大臣や次官を決めたりして居ましたが、行政機構として実際にどれ位動いて居たのか正直疑問です。私も当時の外務省に出入りして居ましたが、職員も少なくガラガラでした。役人が最も多かったのは教育省ですね。教育省はマドラサ(神学校)を管轄するので、その数が結構在りますから、それで割と活気が在ったのかも知れませんが、他の省庁は人が居なかった。
今タリバンは、前政権の協力者でも恩赦する等して、行政機構に勤めて居た人達を呼び戻そうとして居ますが、彼等だって、これ迄遣って来た事が全否定されるかも知れ無い環境の下にワザワザ戻ら無いと思います。在り得るとすれば、家族等を人質に取って無理やり働かせるパターンです。
特に軍関係では在ると思います。2001年以前のタリバン政権はソ連製のミグ21戦闘機を数機持って居たのですが、タリバンは飛ばす能力が在りませんでした。それでアフガニスタンの旧共産党政権期の軍パイロットを探して来て、その家族を人質に取ってタリバンの為に働かせて、空爆させて居ました。
そう云う事は又遣ると思います。今、タリバンは柔らかい顔で呼び掛けをして居ますが、号令に従って人々が動いて呉れ無ければ、結局は力に訴えるしか無いのです。
民主主義に手を着けると「タリバンはタリバンで無く為る」
高木 以前からハッキリして居る事が在って、タリバンは民主主義と云うものは全く採用しないですよね。
田中 選挙と云う制度は認め無いですね。タリバンは、地元アフガニスタンで幾世紀にも渉り続いて居た意志決定機関〔ロヤジルガ(全国長老・部族有力者会議)〕ですら否定する訳です。ロヤジルガの代議員は、例えば長老格や部族長の様な人達が伝統的に選ばれる。処が、タリバンはそれすら〔非イスラム的〕と否定して居ました。彼等が求めて居たものは、ウラマー(宗教指導者)に依る会議です。
詰まり、イスラム法・シャリーアに依る統治です。その「シャリーアを緩めます」と云ったらウラマー達が黙って無い。タリバンがシャリーアの厳格適用を辞める事は無理、と云うのが私の結論です。構造的に出来ない。そこに手を着けて市まったら、タリバンはタリバンで無く為ってしまうのです。
〈2001年以前のタリバン政権時代から、タリバンのイスラム法解釈の強硬振りを象徴する存在として「勧善懲悪省(かんぜんちょうあくしょう)」と云う奇矯な名の省庁が在った。人々がイスラム法に違反して居ないかを取り締まる〔宗教警察〕で、銃を持って街頭をパトロールし、女性が身内の男性を帯同せずに歩いて居ないか、全身をスッポリ覆うブルカを着用して居るか、顎髭の短い男性は居ないか、音楽を楽しむものは居ないか等を見張った。
アフガニスタン1,500年以上の文化遺産で在るバーミヤンの大仏像の破壊を命じたのも勧善懲悪省だ。そして、今回の組閣でコノ「勧善懲悪省」が復活し「大臣」が任命された。20年前を知る人々の「悪夢」が再び現実に為るのだろうか〉
高木 現在のタリバンの指導者とされるハイバトゥラー・アフンザダ師は、どんな考えを持って居るのでしょうか。
田中 ハイバトゥラーは90年代に一時、勧善懲悪省のトップだった人です。20年経って多少変わったとしても、彼はシャリーアの厳しい適用と、それが色濃く反映された社会制度を作る事に為るでしょう。私が注目して居るのが、組閣を発表したムジャヒド報道官が、会見の最後に「制度や法はこれから作って行くが、それ等が決まり発表される迄デモは禁止だ」と言った事です。
この先、タリバン政権の考える事に反対する人々は、叩かれ銃で撃たれる事も在り得ると危惧します。彼等はそれを躊躇い無く遣るのです。
実は、タリバンの中心に居た人で、此処数年で外された人が結構居ます。この人達の内の一部とは、僕も或る時迄メールの遣り取りが在りました。90年代のタリバンの遣り方に関して、間違えたと云う事を彼等は認識して居ました。或る種の反省や自省が在りました。
その後も、彼等はタリバンに残って居たのですが、今回の組閣の30人以上のメンバーにも全く名前が出て来ませんでした。私が「良識派」と呼んで居る彼等が今表に出て来ない。この事からも、タリバンの中枢部では「武闘派」が優勢で、これ迄のタリバンの在り方に反省をする人達に対しては非常に冷たい事が推測されます。
タリバンは〔織田信長〕なのか?
高木 タリバンと云う存在は、日本人には分かり難いものです。敢えてタリバンと云う存在を日本の教育現場で若者達に説明すると、どんな存在なのでしょうか? 山賊とも違いますし、日本なら戦国時代の様なイメージでしょうか?
田中 難しいですよね。極端な言い方をすると、1994年に内戦状態のアフガニスタンを平定する為に出て来た当時のタリバンを例えるとすれば、例えば織田信長でしょうか。全国を平定して安定させようとしたとか、商業を発達させようとしたと云う観点で見ると、タリバンもそう云う要素も少し持って居ましたから。その過程では、織田信長は比叡山焼き討ち等の酷い事も沢山遣って居る訳で、それをどう捉えるかですよね。
ただ、最近はドラマやゲームでも、織田信長は余りにヒーローとして描かれてしまって居ますから、その方向で勝手なイメージを膨らませるのは的外れに逸れて行くだけですし、特に今の若い世代の人達には例えとして適切では無いかも知れません。
高木 アフガニスタンの人の多くは「本当はタリバンを歓迎して居る」と、日本でも言われる事が在りますが、実際はどうなのでしょうか?
田中 都市部と農村部で相当受け止め方が違いますし、民族的な背景で言えば、何処の地方の話をして居るかに依っても変わって来ます。それでも「今のタリバンが、この20年間のアフガニスタン政府よりマシ」と確証を持って言うアフガニスタン人は圧倒的に少数派だと思います。
外国の支援に依って成り立っては居ましたが「医療の機会は確実に増えたし、子供が学校に行ける機会も与えられた。前回のタリバン政権も実現したかったでしょうが、余りにも行状が悪く、外国人の活動に対して制約を設けた事で、十分に出来ませんでした」
今回もタリバン政権が発足したと為れば、アフガニスタン政府の名前の着いた銀行の外国に於ける資産は、国連安保理の制裁に基づいてタリバンの資産として凍結の対象に為ります。詰まり遅かれ早かれ、アフガニスタンにはお金が無く為る事に為る。国の民生レベルも劣化して行くのは避けられ無いでしょうから、尚の事「タリバンの方が好い」と思えるとは考えられません。
普通の個人が作り出す、度を過ぎて残虐な組織
高木 タリバンも人としては普通の人だ、と云う言い方もされる事が在りますね。
田中 同じ人間を個人として捉えた時と、組織の一員として捉えた時の、殆ど180度異為る様な態度をどう捉えるのか、と云う問題でしょう。タリバンも話せば普通の人だし、一人の人間に変わりは無く、彼等を悪の化身の様に見立ててアメリカ等が軍事攻撃する事は可笑しいと云う、タリバンに同情的な言説が或る。
例えば、アフガニスタンでお亡く為りに為った中村哲さんの言葉も、その様なニュアンスで伝えられる事が在る。強(あなが)ち間違った評価では無いのですが、それに囚われると私は危ないと感じるのです。
私の経験でも、タリバンは人の子だし人の親です。話をすれば一人の人間だと判る。彼等の中には心境や内情を吐露して呉れた人達も居ます。処が、その普通の人が、内戦の最中とは云え組織と為ると、途轍も無く残虐な事、人間のする所業では無い様な事を遣って退ける。
少し話は逸れますが、第2次世界大戦の時のナチスの研究をした哲学者、ハンナ・アーレントが言った様に、個人としては普通の人が作り上げる全体主義やホロコーストの様な惨劇も歴史上在った訳です。こうした側面を直視しないと「タリバンとは何者か」と言う問いに向き合う事は出来ないと思います。
タリバンに対する解釈に関して「普通の人」説が日本で独り歩きして「国際社会が軍事力で作り上げた〔民主主義の幻想〕を壊したタリバンに正義が或る」と結論付けてしまう事は避け無ければ為りません。
タリバンに持ち得る「2枚の交渉カード」
高木 先程のお話では、今後「強硬派」に勢いを着けさせ無い為には、日本も含めた国際社会も或る種の融和姿勢が必要だと云う事でしたが、同時に田中先生は、タリバン政権の国際的な承認は簡単にするべきでは無いと主張されて居ますね。
田中 難しいバランスが求められます。政権の承認は国際社会が持って居る数少ないカードです。もう一つ在るのがお金ですが、これ迄のアフガニスタン政府に対して供出して来た様なお金が無条件に渡されるとタリバンに思われても困る。我々はタリバンに対して、殆どレバレッジ、詰まり彼等を動かすテコを持って居ない訳です。
在るのは、政権の承認とお金の2枚のカードだけです。それ等は大切に使わ無いといけ無い。かと云って待って居るだけではいけませんから「エンゲージメント(関与)」し続ける事が必要です。アフガニスタンの国民が飢えて居る事は間違い無い。人道支援は続けて行く事も大事なポイントです。
高木 此処迄のお話をお聞きすると、タリバンの下で、急速にアフガニスタン国内の状況が悪化する事も予想されます。この先どう為るのでしょうか。
田中 このママでは、好くて90年代のタリバンが我が物顔で歩いて居た時代に戻るだけでしょう。もう少し悪く為ると、フェイルドステート(失敗国家)に為りかね無い。折角、これだけ世界の様々な人が関わって、医療や教育の向上や女性の社会進出等数字で見える成果も在った。それが消えてしまわ無い様に何とかしたい。
結局はタリバンが、どう云う政治をするかです。国際社会は、彼等の首根っこを捕まえて「こうしろ」と指導する事は出来ません。他方、言葉でタリバンを誘導する事は未だで切るかも知れない。難しい事ですが、その努力を続けるしか無いと思います。
高木 徹
「共産党と組むとか言い出すと自民党も危ない」
政権交代に動き出した立憲民主 自民幹部は苦笑
「共産党と組むとか言い出すと 自民党も危ない」
9/15(水) 17:00配信 9-15-20
立憲民主党の枝野幸男代表は9月7日 国会内で会見し公約を掲げながら「政権を代えるのは私に課された責任だと思う」と語った (c)朝日新聞社 9-15-21
立憲民主党が衆議院選挙に向けた公約第1弾を発表した。一早い発表の背景には、自民党総裁選に埋没する危機感の他、共産党との共闘が進んで居る事が在る。AERA 2021年9月20日号の記事を紹介する。
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首相の首がスゲ替わっても、自民党には絶対に出来無い事が在る・・・9月7日、立憲民主党の枝野幸男代表が衆議院選挙で政権を獲得した場合、初閣議で決定して直ちに取り組む政策を発表した。何れもこの10年の「安倍・菅」政権で実現出来無かったメニューが並ぶ。 例えば、
@ 新型コロナウイルス対策として30兆円規模の補正予算の編成
A 官房長官を司令塔にした新たな感染症対策の部署の新設
B「モリ・カケ・サクラ」問題の再調査
C 入管施設で亡く為ったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33)の入管施設内の映像開示。そして
D 菅政権に依って任命拒否された日本学術会議の会員6人の任命等だ
■二者択一の環境整える
これ迄解散総選挙に先駆けて「影の内閣」を発表し、政権交代後の政治の有り様を有権者に「人事」で示す政治方法は在った。しかし、具体的な政策として何がどう変わるのか。この発表は「初閣議で即日、決定出来る」趣旨のもので、例えば、立憲民主党が政権公約の目玉にして居る「選択的夫婦別姓の実現」等国会質疑に時間を要するものは入って居ない。
詰まり、政権交代の翌日からどの様な変化が起きるのか、と云う点に重点が置かれて居る。今回の発表は政治のダイナミズムを具体的に見せた格好だ。
会見で枝野代表は、これ迄消極的だった「政権交代」と云うワードを明言。2010年代には自民党か立憲民主党か、2大政党が政権を競い合う構造が作れて来無かったと釈明した上で、要約「自民党か立憲民主党か」と云う二者択一の選択を出来る環境を整える事が出来たと語った。
新立憲民主党として衆院定数の単独過半数に当たる233人以上の候補者を全国で擁立出来る見通しが立った事。又共産党等との野党共闘が一定程度、調整出来た事も、この発言の背景に在る。
「コノ10年間、政府の敵か味方かと国民すら分断されて来た。この状況は一刻も早く止め無くては為ら無い。その為には政権を代えるしか無い。政権を代えるのは私に課された責任だと思う」(枝野代表)
希望の党騒動に象徴される民進党の分裂劇から4年。ツイッター上に溢れた「#枝野立て」と云う国民の声に推されて誕生した立憲民主党が、要約政権交代の意思を具体的に明らかにした事で、その他の野党との連携も加速すると思われる。
8日には、立憲民主・共産・社民・れいわ新選組の野党4党が、野党共闘を呼び掛ける市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)との政策合意に調印した。野党第1党が衆院選に向けて合意に加わるのは初めてだ。
■自民も野党共闘を危惧
7日の会見を見た自民党幹部の一人は、こう苦笑いをする。
「毒を以て毒を制す、と言うでしょ。政権交代の為なら、共産党と云う毒を以てでもね、それを実現しようと枝野氏が言い出したら厄介。選挙で歴史的大勝をする時は何時も、身内を切って、浮動層の圧倒的支持を得る。05年の小泉旋風がそうでしょ。連合と云う労働組合の足枷を枝野氏が外してでも、共産党と組むとか言い出すと自民党も危ない」
試されて居るのはもう「悪夢の民主党政権」だとは言わせ無い、枝野氏率いる野党第1党の本気度だ。
編集部・中原一歩 ※AERA 2021年9月20日号
れいわ新選組の山本太郎代表は衆院選で何処から出る?
吉田照美の直球に回答
AERA 9/15(水) 18:27配信
山本太郎代表(東スポWeb)9-15-23
れいわ新選組の山本太郎代表(46)が15日、ユーチューブチャンネル「吉田照美のフルモチ」に生出演し、次期衆院選で自身が立候補する選挙区に関し注目発言した。フリーアナウンサーでMCを務める吉田照美(70)とオンラインでの掛け合いで、衆院選への展望を語った。
れいわを含む、立憲民主党・共産党・社民党の野党4党は市民連合と政策協定を結び、今後は小選挙区での候補者一本化が焦点と為る。吉田は「(野党共闘が)拗(こじれ)れる心配は無い?」との質問に山本氏は「野党側が1人の構図に持って行か無いと政権交代は難しい。何処を退くのか?誰を退かせるのか?別の選挙区に移る話は在るのか? テクニカルな部分をもう話し合わないといけ無い時期」と話した。
れいわは、これ迄衆院選に24人の候補者を擁立して居る。吉田は「決まって居ないけど、出て欲しい人は居るのか?」とサプライズ候補の存在に対し、山本氏は「2019年の選挙終わった後の直ぐなら動く可能性は在ったが、2年位干されて居る。腰がナカナカ上がら無い。今回の選挙は自分達の実力で、誰かのフンドシを借りながらには為ら無い」と現時点で著名人等の大物候補のカードは持って居ないと云う。
只、れいわの場合、最大の〔爆弾〕と為るのが山本氏だ。過去、衆院選や参院選では、自身が出る選挙区に付いては直前迄明言し無かった。山本氏は「もう2つ位に絞られて居る。出来れば、この場でお伝えしたかったが…」とケムに巻き、今回も告示ギリギリでの発表に為ると観られる。
それでも吉田は食い下がり「大阪1区や萩生田さん(光一文科相)に勝てそうな東京24区は?」と水を向けられると「成程。維新の帝国に為って居る大阪に行くのは非常に重要な役割」と意義は在るとした。
更に吉田は「菅さん(義偉首相)の神奈川2区は?」と振られたが「総理だったら面白いが、弱り切った動物を虐めるイメージは無いですか?」とヤンワリと否定した。
その後、山本氏はれいわの政策に付いて、約1時間に渉って熱弁を振るい、吉田は「れいわに政権取って欲しいわ」と感嘆頻りだった。
東京スポーツ
〜管理人のひとこと〜
政策的に応援して居る〔れいわ新選組〕がどれ程の票を捕れるか・・・今回の衆院選で野党の中心と為って躍進出来るかかが政権交代の実現に懸かって居る。消費税ゼロ・共闘為るなら5%迄の減税・・・を公言して居たが最低限の野党共同提言を勝ち得た。
デフレからの脱却で国民全員に活力を! とのマルで救世主の様な政策には頭が下がる思いだ。それも、予算等の全ては計算されて居る。コレだけの政策武装されても国民は懐疑的だ。廻り回って山本氏が首相に為った暁には〔新しい日本〕が目の前に現れる。そんな夢を見たいものだ。