2017年07月21日
シフト勤務に優しくしよう!? 不規則に働く人の体内で起こる変化
人間は昔から、明るくなったら起きて、暗くなったら寝るというサイクルを繰り返してきた。人工的な明かりがない時代であれば、当然のことである。暗くて何も見えなければ、寝る以外にやることがない。
だが、24時間いつでも明るい現代では、夜に働いている人も多い。ではその人たちの体の中はどうなっているのであろうか?概日リズムをコントロールしている体内時計を含めて体内の変化を調べた研究を紹介しよう。
□シフト勤務・夜勤勤務者への体内時計調査 研究対象は看護師
研究対象となったのは、シフト勤務をしている看護師23人と、昼間のみに働いている看護師25人。
調べた内容は、末梢(四肢)の皮膚の温度、唾液中のコルチゾール(ストレスホルモンとも言われるホルモン)、メラトニン(睡眠時に分泌される睡眠ホルモン)、陰毛毛包細胞中のPer2遺伝子(生体リズムを調節する体内時計に関する遺伝子)の4項目である。
1日の休日の後、24時間のこれらの物質の変化を調べた。
□シフト勤務で働く看護師では体内時計の日内変動が少ない
シフト勤務をしている看護師と昼間のみに働いている看護師の間で違いがみられたのが、皮膚温、コルチゾールだった。一方メラトニンに関しては大きな差はみられなかった。
生体リズムを調節する体内時計に関する遺伝子については、発現量の最大値には差がみられ、シフト勤務をしている看護師では時間経過に伴う体内時計の変化が乏しいという結果が得られた。
□抹消の体温が上がると中枢の体温は低下し、眠気をもよおす
四肢の皮膚の温度というのはどういう意味があるのだろう。
実は中枢と末梢の体温には逆相関がみられ、末梢の体温が上がると、中枢の体温は低下する傾向にあるのだ。
そして、中枢の体温(深部体温)が下がると、体内時計は眠りの合図を出す。眠くなると体が熱くなるのは、中枢の体温が下がって、体が眠る準備ができているからなのである。
赤ちゃんが眠くなると手足が暖かくなるのは有名な話だろう。そのとき、赤ちゃんの体内の深部体温は下がっており眠気が起こっているのだ。
□昼間だけ働いている看護師の方がしっかりと目が覚めている
シフト勤務をしている看護師と昼間のみに働いている看護師の体温の変化については、どちらも午前中に末梢体温が下がり、夜中に上がる傾向がみられたが、昼間のみに働いている看護師の午前中の末梢体温はシフト勤務をしている看護師のそれよりも下がりが大きかった。
これは昼間のみに働いている看護師の中枢の体温はシフト勤務をしている看護師よりも上昇しており、しっかり目が覚めている状態であることを示唆している。
□シフト勤務の看護師は体を目覚めさせる働きが活発ではない
シフト勤務をしている看護師と昼間のみに働いている看護師で、生体リズムを調節する体内時計に関する遺伝子の発現量(Per2)の最大値には差がみられたが、それ以外に大きな違いはなかった。
シフト勤務をしている看護師のPer2の発現量が1日を通してほとんど変化が認められないのに対し、昼間のみに働いている看護師のPer2の発現量は午前中に非常に高くなっている。昼間のみに働いている看護師では、午前中に体内時計遺伝子が、体を目覚めさせるために活発に働いていると思われる。
□シフト勤務によって体内のON/OFFのメリハリがなくなる
シフト勤務をしている看護師の体内では、本来であれば、体内時計がon/offをはっきりさせ、睡眠と覚醒のメリハリをつけるのだが、そういった体内の変化が起きにくくなっている。
この変化は有害なものというよりも、睡眠の時間帯が変化することへの体の対応であり、リズムが変わっても睡眠・覚醒をしやすくするためであると考えられる。
□それでも必要なシフト勤務。対応策は「シフト勤務者に優しく」
シフトで働く人々の体はそれに対応すべく変化しているのである。
夜働く必要性が一般的になったのは、人類の歴史の中では非常に浅い。その対応能力があらかじめ備わっていたということには驚きである。そして、そんな対応ができなければ、夜間シフトをこなせないとも言える。
接客態度に疑問を感じるような、深夜のコンビニやファミレスの店員さんと出会った時には、このけなげな体の変化を思い出し、優しい気持ちで見守ってあげてほしい。