2017年07月11日
強力なガン予防効果だけじゃない! 早老症の治療法にもブロッコリー
「ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群」という病気をご存知だろうか。400万人に1人の発症率と言われているもので、通常の4〜10倍の速さで老化が進む「早老症」の一つだ。
この病気に、新たな治療法が浮上した。ブロッコリーの成分「スルフォラファン」に、病気の原因物質を排除する効果があることが、ドイツのミュンヘン工科大学の研究により明らかになったのだ。
□10歳なのに40歳の風貌に見える「早老症」
10歳なのに40歳の大人の風貌に見える、早老症の少年を描いたフランシスコッポラ監督の名作「ジャック」という映画がある。主人公のジャックは、通常の4倍の速度で老化が進む。そのため小児期に動脈硬化や心筋梗塞などの、中年期の病に襲われてしまう。
ジャックの症状は、早老症の中でも最も老化するスピードが速いタイプの「ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群」の症状に、とてもよく似ている。
早老症にかかったアメリカ人のサム君がTEDにて、早老症の原因や人生観について話している動画があるのでご紹介したい。
□早老症の発症原因は遺伝子異変
ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群は、先天的な遺伝子の変異によって人種や性別によらずまれに起こる。
患者数が少なく原因遺伝子の追究は難しかったが、最も一般的なハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群の変異が、LMNA遺伝子のエクソン11内の位置G608Gという所で見つかった。プレラミンAというタンパク質についての遺伝子が突然変異したもので、「プロジェリン」と呼ばれる欠陥タンパク質を生み出していた。
□早老症の原因か、プロジェリンがたまって老化を引き起こす
ミュンヘン工科大学の研究グループは、プロジェリンがどんな問題を引き起こしているかを調べた。
すると、細胞の核にあるタンパク質の構成が変化して、タンパク質を分解する酵素も働かなくなり、分解後の処理もうまくいかなくなっていることが分かった。プロジェリンが細胞内に蓄積してしまい、それが老化を引き起こしていたのだ。
□早老症治療法に光 ブロッコリーの成分が遺伝子変異を回復
そこで研究チームは、アブラナ科の野菜ブロッコリーの有効成分である、抗酸化物質の「スルフォラファン」を用いてみた。
すると、なんと今までたまってしまっていたタンパク質分解機能が回復して、分解後の処理機能も回復した。スルフォラファンで、細胞にたまったプロジェリンを取り除くこともできることが分かったのだ。
□早老症の治療薬になりうるか ブロッコリーが細胞のオートファジーを促進
生命を維持するためには、細胞はいったん合成したタンパク質を適切に分解処理する必要がある。
オートファジーと呼ばれる大規模な分解システムが、細胞には存在している。ブロッコリーの成分であるスルフォラファンは、遺伝子異変により働かなくなったこの分解システムを、再びうまく働かせる効果がある。そして、DNA損傷のレベルを回復させることが分かったのだ。
今後この発見は、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群の有望な治療法につながっていきそうだ。
□がん予防やデトックス、アンチエイジングにも。スルフォラファンを含む野菜は?
ブロッコリーのスルフォラファンは今、大注目の成分でもある。ブロッコリースプラウトや大根、わさびなどのアブラナ科の野菜に含まれている。
注目を集めている理由は、強力ながん予防効果があり、肝機能改善やピロリ菌の除去、デトックス、アンチエイジングなどの効能もあるといわれているためだ。
今回の早老症の研究により、スルフォラファンには細胞の生命維持システムを回復させることも分かった。これがさまざまな健康効果につながっている可能性もあるだろう。
□ブロッコリーなどのスルフォラファン、摂取するなら生で!
スルフォラファンは、ブロッコリースプラウトに豊富に含まれている。生で細かく砕いて摂取すると効果的だ。果物や野菜とともにミキサーでジュースにするなどして食生活に取り入れてみてはいかがだろうか。