『安全地帯 アナザー・コレクション』三曲目、「We're alive」です。「ワインレッドの心」カップリングでしたから、アルバムを買わないような人にも広く知れ渡った曲です。A面「ワインレッドの心」作詞はご存知陽水さん、そしてこのB面「We're alive」の作詞を担当したのは、わたしたちが知ることのできる安全地帯楽曲の中ではこれが最後となった松尾由紀夫さんでした。ですから、ここでもA面B面で時代の分かれ目をみることができます。
「ワインレッド」にはじまる初期のコンサートでは、「今日はほんとに〜どうもありがとう〜また会う日まで〜」「会場に灯り〜点けてください〜みんながみたい〜」と歌詞を変えて歌われ、客電がついてまもなくコンサートが終わることを示すアンコール用の曲といった位置づけの曲でした。野外ステージだとこの曲が終わるのに合わせてドカンドカンと花火が打たれたほど、フィナーレ感のある曲でした。
『ONE NIGHT THEATER』ころから、そして近年でも、もはやコンサート序盤の盛り上げ役といった役回りで使われています。「悲しみにさよなら」の頃からもうこの曲は「ワインレッドの心」のカップリングだからほとんどの人が知っているもう一つの曲、という位置づけを失いつつあったのです。近年では当然ですが、この曲やたらライブで歌われてるけどどのアルバムに入ってるの?という不思議な曲にすぎません。いまはコンサート序盤をほどよく温めるノリのいい曲、にすぎないわけです。でもまあ、いまでも使われてるんですからそのデキは普通ではありません。
イントロ、いずれも最初は武沢さんなんですが、クリーントーンで四小節、ライブによってはそれ以上、バスドラだけの伴奏で細かいカッティングを披露してくれます。武沢マニアのわたくしにはうれしい時間なのですが、『ENDLESS』ライブや『ONE NIGHT THEATER』では一小節の三拍目四拍目に「ジャカジャッジャッ!」と鋭くリズムを入れるだけですぐに矢萩さんのソロが入るバージョンもあって、わたくしこっちのほうが好きですね。いやもう、「ジャカジャッジャッ!」のキレが良すぎて(笑)。これはみなさんもぜひ両方お聴きになって、どっちが心地いいか比べっこしましょう!
さて、バスドラ、ドーンと伸ばしたベース、カッティング、うすーいシンセに乗せて、玉置さんの歌が始まります。ワンフレーズしてから六土さんが短いリックを入れて、おそらく矢萩さんの細かい短音リフが始まります。そしてそのままもうワンフレーズしてからいきなりサビに行きます。
「We're alive!」とコーラス入れて、武沢さんのアクセントのきいた素晴らしいカッティング、丸っこい短音で超効果的なアオリを入れる矢萩さん、「ド、ドドッ、ダダッダッダ!」と二人一組でパーフェクトなリズムを取る六土さん田中さん、いやもう、このリズム隊はもう時折どっちがどっちの音がわからなくなるくらい完璧に絡み合ってます。
曲はもう一番、今度はスネアを入れたAメロになりますが、大きくは変わりません。そのままサビに行き、サビあと、調子が変わりいわゆる大サビが入ります。ライブ、とりわけ『ENDLESS』だと、深く歪んだオーバードライブのギターが大音量で入り、気分爽快ったらありゃしません。曲はそのまま間奏へ、スタジオ盤だとブラスの音とギターの音でかわるがわる旋律が重ねられますが、わたくし大好きな『ENDLESS』盤ですともちろんオーバードライブのギターで「ギュイーン!」と!六土さんのベースも「ガガーン!」とうねり、そのまま曲のラストまでなだれ込みます。矢萩さんはオブリ入れまくり、武沢さんはカッティングしまくり、ライブももう少しで終りだ!最高に盛り上げるぜ!って感じの熱い演奏を聴かせてくれます。二時間もライトを浴びてアクションして汗だくで気力を振り絞って演奏するメンバーのことが思われます。スタジオ盤だとクリーントーンのギターでいろいろフレーズが重ねられてますから、これはこれで追うと楽しいですが、どうしてもライブ盤のほうが好きなんで、今回スタジオ盤きいてみて、あ、こうなってたんだと(笑)。
スタジオ盤ではフェードアウトでささっと終わっていきますが、ライブ盤は「ドーンドンドーン!(パラリラパラリラ〜)」というキメが繰り返され、ギューン!ときっちり終わります。ライブですと、最後の盛り上がり、その余韻を数分は身体で感じることができるくらいの押しの強さです。いやこれ、体が痺れて呆然としますよ、コロナ騒ぎが終わったら、まだ安全地帯のコンサート行ったことない人はぜひ行きましょう!
さて歌詞なんですが、「生きてるんだ!命ある限り夢を追いかけるんだ!」という内容です。内容はそれだけなんですが……「遥かな広野」「駆け上がる丘」「透きとおる風」と、広さと清々しさを目いっぱいに感じさせる歌詞で、若くて爽やかな青年バンドのイメージをこれでもかと高めるナイス歌詞になってます。でもA面がアレですから(笑)、イメージ戦略ハッキリさせたほうがよかったんと違いますかと、後からは無責任なことが言えちゃいますね。
「たしかな出逢い」「たしかな夢をこの手につかむ」と、見事な歌詞のノリなんです。玉置さんの歌の巧さだけじゃありません、これは歌詞の巧さでもあります。松尾さん、あなたすげえよ。安全地帯が演奏して、玉置さんが歌ってこうなるってわかっていてこういう歌詞にしたんじゃないのってくらいハマっています。松尾さんの歌詞でいうと、「エイジ」と同じくらいハマってますね。丘があると思わず駆け上がってハアハアやってみたくなります。おじさんですが(笑)。
安全地帯がこの歌をリリースした時はまだまだ苦しく、A面の「ワインレッドの心」で大胆なイメージチェンジ、勝負!でもB面はいままでの色を残したギターロックで……という二正面作戦をとらざるを得なかったのでしょう。結果としてこの曲は、ライブでは定番の地位を確立したものの、イメージ的に、そしてタイミング的にどのアルバムにも収録されないままになっていました。まあ、この曲『安全地帯II』のどこに入れるのって言われても困りますね。
「吹きぬける風」は、横浜スタジアムの、そして甲子園球場の風であり、そして、メンバーが生まれ育った北海道の風でもあったのです。アルバムに収録されずにライブで演奏され続けたからこそ、安全地帯のヒストリーのいたるところで「時のながれをそのまま美しくとどめ」てきた、そんな名曲です。
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Rememberのアルバムで松井さんだったらコケちゃいますね。抱きしめたいわかるかい俺の思いをとか、そんな直接的な歌詞書きませんもの。でもあの頃の安全地帯はまさにそういう直接的な歌詞の似合うバンドで、松尾さんが器用にビタッとはまる歌詞をお書きになったんだと思います。
We're aliveは松尾さんが歌詞を書いた安全地帯の曲の中では一番知られてる曲なんじゃないかなと思います。とはいえ、B面では……と思わなくもないですが。帰らない二人みたいなもので、心もようと並び立てる曲としてリリースされてるわけですから、実はナイスな立ち位置でもあるのでしょう。
やっぱり"Remember to Remember"は松尾さんの歌詞あってこその世界ですよね。あの時代は松尾さんじゃなきゃダメだったんですよ。
でも、その世界観が、「ワインレッドの心」のB面に、アウトテイク的な扱いで終焉を迎えるとは、なんとも歯痒い。だからこそ、ライブで昇華という感じになったのではないかと。
ただ、「会場に明かり つけて下さい...」に替えられる運命もまた皮肉ではありますが(苦笑)。
松尾さん亡くなったんですか……松井さんの印象が強くてあまり言及されないですけど、功労者の一人だと思います。「エイジ」の歌詞には震えました。ハウンドドッグの歌詞も好きでした。そうして後に(奇しくも「悲しみにさよなら」と似た時期に)報われた格好になって良かったです。合掌。
なんだか、子どもの頃に活躍してた人たちがここ数年で続々と亡くなって、とてもさみしく思います。
「ワインレッドの心」に始まる「哀愁ロック」でようやくヒットするという運命を前に、「アメリカンロック的」安全地帯のフィナーレに位置する楽曲になったかな、と。
松尾さん(昨年2021年に亡くなられたとか)の歌詞ですから、もしかしたら1stのアウトテイクかお蔵入りか、という気もしないでもないですが。
松尾さんが「安全地帯楽曲の作詞家」として脚光を浴びることは終ぞ無く、HOUND DOG の「ff」で脚光を浴びたのは、既に安全地帯が松井ワールド全開の「悲しみにさよなら」発売から2ヶ月後だったという話です。