『安全地帯アナザー・コレクション』十四曲目「時計」です。「月に濡れたふたり」カップリングでした。
玉置さんとBAnaNAだけで録ったんじゃないですかね、シンセとギターだけで作ったように聴こえます。ああ、女性コーラスも入ってますね。あれ?この声薬師丸さんじゃないですかねえ?玉置さんが作曲した「胸の振子」(1987年10月)と似た時期(1988年3月)にリリースされていますし……玉置さんとBAnaNAだけで作って最後に薬師丸さん呼んで歌ってもらったんじゃないかと思われます。この声がぜんぜん違う別の女性でしたら失礼しました!でも、できすぎですねえ、「振子」ということばもアレンジも振り子時計をイメージさせますし。玉置さん(と松井さん)、わざとやってるに一票。【追記:カラオケバージョンの収録されたシングルカセットをお持ちのせぼねさんによると、薬師丸さんの声ではないそうです。もしかして大山潤子さんなんじゃないかとは現時点では考えております】
さて秒針が進む音にしちゃあんまりチクタクしてませんが、Voice系の音で曲ははじまります。そして玉置さんと女性ボーカルで歌が入り、一番を歌い上げて二番までの間奏から美しいアコギの音が入ります。二番が終わり、短いサビがあるんですが、そこからベースが入ります。これも六土さんが弾いたんだか弾いていないんだか……ああ、ギターは矢萩さん武沢さん弾いてないと思います。玉置さんが弾いたんでしょう。音がどうとかでなくて、状況証拠です。『TWIN GUITAR』のライナーノーツやWEB記事からは、自分でこれを弾いてレコーディングしたという口ぶりは一切なく、玉置の曲にいいのがあって昔から好きだったからやってみたらやっぱよかった的なことをおっしゃっているからです。
そしてまた間奏、なにやらNHK「きょうの料理」テーマ曲(冨田勲)で使われているような音色(木琴の類だと思います)でAメロのメロディーが奏でられます。そしてBメロをすこし改変した大サビを歌い、アウトロへと向かう。大まかにいうとこんな感じの構成になっています。
うん、ふつうにいい曲ですよね。矢萩さんみたいに琴線に触れまくるかどうかはともかく、美しい旋律と構成、工夫された音色による伴奏、そしてやさしくも力強い歌、これ以上何を望む!いやー安全地帯のみなさんでアレンジして演奏してほしかったなあ、と思わなくもないんですが、おそらく『安全地帯V』の頃から始まった完全分業制による曲の大量生産によって、こういう曲も生まれる土壌ができていたのでしょう。メンバーも、あっそう、じゃ任せるわ、くらいの感覚だったのではないでしょうか。あるいは、日常的にそういう活動があったため、ああこんな曲できてたの?これをカップリングに?いいじゃん、くらいの軽いノリで採用されたんじゃないかと思います。普通のバンドだったらそんな曲知らないよおれ関係ないもんねという態度をとるかもわかりませんが、あの壮絶な『安全地帯V』を乗り越えた安全地帯はそうじゃなく、もっと鷹揚な音楽集団であったのだと思われるのです。
さて松井さんによる薬師丸さんオマージュの疑いのある歌詞ですが(笑)、そう思って聴くとなんと思わせぶりなことか。「胸の時計が動いた」とは、石原さんとの破局後に止まったままだった玉置さんの恋愛装置が薬師丸さんによって再起動されたことを意味するように聴こえてくるのです。いまみてる「夢」は……音楽で出会ったふたりなのですが、その後の薬師丸さんをご覧になればわかるように、薬師丸さんはそもそもあんまり音楽活動する気はないんだと思います。女優として生きたい、アイドル歌手じゃなくて、という夢なのではないか……そのわりには堂に入った歌いっぷりなのが薬師丸さんなわけですが。そんなわけで、音楽という共通の場で結ばれた縁なのですが、薬師丸さんは「どこか」へ行きたい。だから「はなれていても」、つまり活動は違うことをやっているんだけれども、「おんなじ夜に」、つまり夜をともに過ごして互いを労わりあいたい、とまあ、熱烈なラブソングになっているわけです。
「夢の雫」とは……そんな、いわば異業種共稼ぎ生活を夢見るふたりが、これからその生活を構築していくにあたって夢をはぐくんでゆく道のりに、時計の振り子からひとしずくずつ滴ってその跡を残しては消えてゆく、そんな雨のように降り注いでは少しずつ漏れいずる、ふたりによって語られた「夢」なのだと思います。
その夢はほんの数年だけ、いやもしかしたらそのうちの僅かな期間にすぎなかったのかもしれませんが……実現したのでしょう。ですが、人間の悲しさ、夢の実現は人生の終りではありません。状況は刻一刻と変わりゆきますし、人も変わっていきます。ふたりの結婚した年にこそバブルは崩壊し、『太陽』がリリースされたのです……。
なお上述のとおり、この曲、矢萩さんがお好きで、ワタユタケでカバーなさっています。ライナーノーツによると、バッキングのギターをぜんぶオープンチューニングでお弾きになるという工夫をなさっているようです。そのチューニングもお書きになり「やってみてね(笑)」とメッセージまで書いてくださるというサービス精神を発揮!いやーこれはありがたいです(そのうちやってみようかなと思いつつやらない。矢萩さん武沢さんのマネは若いころからさんざんしているんですが、このニュアンスは再現できないと確信)。
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川上進一郎さんなんです。
星勝さんの繋がりです。
youtubeでも声聞けますので、聞いてみてください。
大山潤子さん、あれからいろいろ意識して歌を探して聴いてみました。いやこれは巧い!すごい声です。作詞家としてのセンスもすごいですが、もっと歌ってほしいですね。リンダ・ロンシュタットとのデュエットみたいに、ほしい感じでピタッとハマる、さらにそれ以上のパフォーマンスをしばしばみせるんですよ。80年代後半にはもうスマートルッキンやめてキティ関連のお助けボーカリスト、作詞家として活動されてたんじゃないかと思います。
ただ、「月に濡れたふたり」から矢萩さんのシングル「冒険者」までタイムラグがありますよね。やっぱり違うのかなぁ。
矢萩さんの初アルバム「冒険者」は、東京バナナボーイズという盟友を得た矢萩さんによる、まさにフィル・スペクターとジョージ・ハリスンの「オール・シングス・マスト・パス」のように、安全地帯での鬱憤を晴らすような...と大げさにはならなかったところが矢萩さんと近藤由紀夫さんの人の良さと申しましょうか。
いかん、「時計」の話でしたね。「喜びの歌」のジャケットも時計がいっぱいでした、なんてね(苦笑)。
ではいったい誰なんだ?AMAZONSにこの声を出せる人はいないし。
で、ふと思ったんですが、矢萩さんのソロアルバムでコーラスやっている人の声に似ているんですよ。
あれって矢萩さんの奥様?