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2019年10月27日
待望の辞書(十月廿五日)
語学の学習において、辞書というものが果たす役割の大きさは言うまでもないだろう。初学のころは、教科書の後ろについている単語集みたいなものでごまかせても、学習が進むにつれて辞書の必要性は大きくなる。最初に買う辞書は単語数もそれほど多くない小さな辞書でいいだろうが、専門的に勉強したり、翻訳や通訳などを仕事にしようと思うと語彙数の多い大きな辞書がほしくなる。
日本では英語の辞書なら、小さなものから大きなものまで、どこに需要があるのかといいたくなるぐらいたくさんの種類の辞書が、出版されている。ドイツ語やフランス語も以前ほどではないかもしれないが、それなりに充実しているはずである。かつては学ぶ人の多かったロシア語は、今はどうなっているのだろう。どうなっているにしても、チェコ語よりはましだというのは確実だけど。
チェコ語の場合、これまで手に入る辞書はひとつしかなかった。それがこれ↓。
もともとは1990年代の初めに京産大が出版したものが、長らく絶版になっていたのを、語学の教科書、辞書の出版社である大学書林が版権を買い取って再刊したものである。大学書林では、90年代の後半に独自のチェコ語日本語辞典を編集する計画があったらしい。それが頓挫した結果、京産大の辞書を再刊することになったのだろう。
チェコに来てからは、カレル大学の日本語関係者から、チェコ側と日本側が共同でチェコ語日本語辞典、日本語チェコ語辞典を編集する計画があったという話を聞いた。それには、作業はかなり進んでいたのに、日本側でPC上においてあったデータが、何らかの事情で消えてしまったので、出版できなかったという落ちがつく。これが大学書林の計画と同じものを指しているのかどうかは不明だけど、これで新しくて大きなチェコ語日本語辞典は刊行されないだろうと諦めた。
チェコ語と英語の辞典なら大きいものもあるのだけど、英語の説明を読んでも理解できない人間には使いようがない。それで、仕方なく意味を調べる必要があるときには、チェコ語のチェコ語辞典を使うようになった。辞書で調べるよりも、人に訊くことの方が多かったけど、チェコ語で言葉の意味を説明されたという点では、チェコ語の辞書を使うのと大差ない。
それが、チェコスロバキア独立100周年の記念日をめどに大型のチェコ語日本語辞典を刊行する計画があると聞いたのは、いつのことだっただろうか。去年は刊行されたというニュースがなかったのでどうなったのかなと思っていたら、今年の10月になって、日本の知り合いから出たよという連絡があった。「honto」で確認したら、編者は、わがチェコ語の基礎を作った教科書の著者、石川達夫氏。詳しすぎるとまで言われた教科書と同様に辞書も詳しい記述がなされているに違いない。
全三冊+別巻二冊という大部の辞書で、編集に携わった石川氏以下の方々には感謝の言葉しかない。さあ、買うぞと言いたいのだけど、現時点では、取り扱いができないことになっている。残念。
念のためにアマゾンで確認すると、別巻の二冊だけは買えるようである。全冊セットじゃなくて、一冊ずつの販売ということのようだ。別巻だけあってもなあ。必要なのはチェコ語日本語の部分であって、逆じゃない。
実はこの辞書、電子版も存在するようで、辞書編集プロジェクトのHPが存在する。そして、電子版チェコ語日本語辞書はシェアウェアとして販売されていて、60日間の試用期間が設けられている。
個人的には紙の本の方がいいんだけどなあ。日本にいれば出版社に直接注文できるはずだから、電子辞書よりも紙の辞書のほうがいいという方はこちらから是非。送料と税関で引っかかって取られる税金の問題さえなければ、親に買わせて送らせるのだけど……。親不孝は今に始まったことじゃないしさ。
2019年10月26日22時。
タグ:辞書