アフィリエイト広告を利用しています
<< 2017年11月 >>
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
検索
リンク集
最新コメント
チェコの銀行1(十二月二日) by ルイ ヴィトン 時計 レディース hウォッチ (03/20)
メンチンスキ神父の謎(四月卅日) by にっしやん (12/30)
メンチンスキ神父の謎(四月卅日) by にっしゃん (12/30)
メンチンスキ神父考再び(七月卅日) by にっしゃん (12/30)
カレル・チャペクの戯曲残り(二月朔日) by K (08/16)
最新記事
カテゴリーアーカイブ
記事ランキング
  1. 1. 『ヨハネス・コメニウス 汎知学の光』の刊行を寿ぐ(四月十日)
  2. 2. no img 『羊皮紙に眠る文字たち』『外国語の水曜日』(三月十九日)
  3. 3. no img コメンスキー――敬虔なる教育者、あるいは流浪の飲んだくれ(九月廿七日)
  4. 4. no img すべての功績はピルスナー・ウルクエルに(一月廿六日)
  5. 5. no img 「トルハーク」再び(三月廿日)
  6. 6. no img トルハーク四度(十月二日)
ファン
タグクラウド










ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

2017年11月05日

「ニューズウィーク」にチェコの記事が……(十一月二日)



 ヤフーの雑誌のところを見ていたら、「日系議員オカムラがチェコの右傾化をあおる」と題した、今回のチェコの選挙結果についてまとめた記事が出てきた。チェコの政治のことが日本のマスコミに取り上げられるのは珍しいと思いつつ読んでみた。記事を提供している雑誌は日本版の「ニューズウィーク」である。

 結局、日本での、もしかしたらドイツあたりのEU諸国でも、現在の旧共産圏諸国の状況に対する認識はこの程度でしかないのだよなと、改めて納得した。これでは、現在の傾向がとどまらないわけである。記事ではオカムラ氏の成功を、チェコ社会の右傾化という一言で済ませているが、そんな簡単なものであれば、下院の第四党(議席数では第三党の海賊党と同じ)になんかなりはしない。
 確かに、今回の選挙で極右政党である労働者党の得票は、前回の選挙を大きく下回った。その分が、極右的な発言をしつつ下院に議席を獲得できそうなオカムラ党に向かったであろうことは想像に難くない。しかし、それだけで、10パーセントを越える得票になるもんか。人口の一割もの人が、ネオナチ的な外国人排斥を叫んでいるなんてことはありえない。

 そもそも、チェコは、チェコスロバキアの昔から、アフリカ諸国、アラブ諸国から留学生を受け入れてきており、その一部はチェコに残って医師などとして活躍している。あまり目立たないのは、チェコの社会に溶け込んでいるからで、チェコ人は、外国人差別がないとは言わないけれども、チェコ社会に溶け込もうとする外国人に対しては比較的寛容である。芸能界で活躍するアフリカ系、アラブ系の人々も結構いるし、アラブ系の国会議員もすでに輩出しているはずだ。
 チェコの人々が恐れているのは、チェコ社会に溶け込もうとしない移民の増加である。宗教上の理由で、これをしなくてもいいことにしてほしいというところまでは許容できても、信教の自由があるのだから特別にこれをさせてくれという要求には、チェコのような小さな国では対応しきれないし、一つ認めてしまったら際限がなくなるという恐れもあるのだ。

 ついでに言えば、イスラム教を拒否する気持ちがあるのは、イスラム教だからと言うわけではないはずだ。オカムラ氏のいう「イスラムはイデオロギーだ」という言葉を信じている人は本当の極右の人を除けばほとんどいるまい。むしろイデオロギーであったはずの共産主義が、宗教的であったのだと感じている人のほうが多いはずだ。
 そう、イスラム教が警戒されるのは宗教そのものだからなのである。記事には「国家消滅の脅威に怯えてきた」とあるけれども、チェコ人が怯えてきたのは民族の消滅である。そして、その原因は共産主義も含めて、宗教、宗教的なものであった。だから、現在のチェコのキリスト教のように、熱心な信者の少ない宗教ならともかく、イスラム教のような熱心な信者であることを求める宗教には警戒感、嫌悪感を抱いてしまうのである。フス派を含むプロテスタントとカトリックが血で血を洗う殺し合いを演じてきた国には、積極的に過ぎる宗教には居場所がないのである。

 仮にチェコ人が「国家消滅の脅威に怯えて」いるとすれば、その脅威はEUからもたらされている。選挙速報で解説者が異口同音に言っていたのが、「オカムラ氏はメルケル首相に感謝しなければならない」ということだった。メルケル首相の強硬な姿勢が、特に極右でも反移民でもない有権者をオカムラ党への投票へ導いたというのである。これは、チェコだけで起きていることではない、ハンガリーでも、ポーランドでも、スロバキアでも、極度に単純化すれば右傾化と言えるような現象は起こっているが、それは結果であって、原因ではない。原因はメルケル首相登場以後のEUの変質、具体的には硬直して一部の加盟国に対する束縛を強化して、強いヨーロッパなどとのたまっていることにある。
 特に、難民の受け入れを無理やりにでも強制しようとする姿勢に対する反発は、非常に強く、政府も反対していたし、既存の大政党も反対しているのだけど、そのやり方が生ぬるいと感じた人たちが、強硬な発言をするオカムラ党へと流れたのである。もし、難民問題に限らないEUの強硬な姿勢がなくなれば、オカムラ党への支持は大きく減少するはずである。今なら、選挙には間に合わなかったけれども、社会の将来という意味では、まだ間に合うのである。しかし、現実にはドイツでメルケル首相が再任されそうだから、今後もオカムラ党への支持は増えることになりそうである。

 日本の一部のマスコミが現実を見ていないのは、日本の政治についての報道を読んでいればすぐわかることだけれども、EUに対しても、ドイツ、メルケル首相に対しても、無条件に称賛するところがあって、ドイツとEUの関係に関して批判する記事は見たことがないような気がする。お得意の自主規制でもしているのだろうか。
 ただ、仮に去年ぐらいの時点でEUが、古き良き寛容なEUに戻っていたとしても、オカムラ党は議席を獲得していただろう。なぜかと言うと、今回の選挙でオカムラ党に一番支持を奪われたのは左翼の共産党だからである。もちろん共産党支持者が、何となくの支持者であったとしても右傾化するわけがない。オカムラ氏の政策、発言に極左に支持されるものもあるのである。だから、オカムラ氏の存在を極右とか右傾化という言葉で説明したのでは、何の説明にもならない。

 バビシュ氏のANOが右傾化しているともいうけれども、これもおかしな話である。2013年の選挙の際は、確かにANOが狙ったのは市民民主党やTOP09などを支持する中道から右寄りの有権者であった。その後の与党としての政権担当期間にこの層の支持をある程度固めたANOが今回狙ったのは、左寄りの社会民主党、共産党支持の有権者で、それは有権者を右傾化させるのではなく、自党の主張の中に左寄りの人たちに支持してもらえる政策を加えることによって実現した。少なくとも今回の選挙について言えば、有権者が右傾化したのではなくANOが左傾化した、いや政策の幅を左寄りにまで広げたのである。これによって右から左まで幅の広い中道政党になったというのが正しい。
 移民の無条件の受け入れへの反対は今に始まったことではないし、海賊党はちょっとわからないけれども、それ以外のすべての政党が異口同音に主張していることなのだ。だから、ANOが移民問題に対して強硬な姿勢をあらわにしたということもない。チェコの政治家たちが無条件の難民受け入れに強硬に反対しているという点は、難民問題が勃発し、何も考えずに無条件の受け入れを表明したドイツで受け入れきれなくなった時点から現在まで全く変わっていないのである。

 それに海賊党の躍進に触れていないのも物足りない。結局、今回の選挙結果が示すのは、失政を繰り返すEUとメルケル首相に対する反感と、これまで政治を恣にしてきた既存政党に対する反感が、かなり危険なところまで高まっているという事実でしかない。現在の状況が続けば、右であれ左であれ過激化する可能性がないとは言わないが、現時点ではまだそこまでは来ていない。チェコの政治も他の旧共産圏諸国と同様に強くEUの政策の影響を受けているので、EU次第というところが大きいのがもどかしいのだけどね。
 EUがいわゆるディーゼルゲートを起こしたフォルクスワーゲンに巨額の罰金と、車を買わされた消費者への賠償を命じるぐらいのことをすれば、対EU、メルケル感情は、多少はよくなるのだろうけど、メルケル首相は自動車業界に補助金をつぎ込むらしいからなあ。泥棒に追い銭とはこのことである。そう思わないのかな?
2017年11月3日17時。







プロフィール
olomoučanさんの画像
olomoučan
プロフィール


チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。